HITMAN2『世界線を超えた先に』   作:ふもふも早苗

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『みんな揃ってるわね。』

『今まで我々を翻弄してきた“亡霊”の本拠地をついに特定することに成功したわ。技術部が渡界機の技術を応用して渡界機での移動に使われる次元航行導線路、通称“スーパーレーン”を遮断することで、亡霊をその世界に封じ込めることに成功した。この技術はつい一昨日開発されたものだから相手側もまだ対応できていないはずよ。』

『世界を特定したと言っても敵の本拠地の施設はまだわからない。ある程度範囲は絞れたけれどまだ正確な位置がつかめていないの。そこで今回は、タバサとキュラソー、ブルーとシルバー、そして47の3チームで手分けして調査してもらうわ。』

『行ってもらうのはエリア12。このエリア名は我々が付けた暫定的なものだから、もしかしたら本当の名前があるかもしれないわね。亡霊の本拠地がこのエリアのどこかにあるはずよ。潜入して破壊できれば一番いいのだけれど、今回は万全を期すために調査に留めることになるでしょうね。』

『準備は一任するわ。』




~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー
【エージェント47】・【66(タバサ)】・【67-1(ブルー)】・【67-2(シルバー)】・【68(キュラソー)】

・装備
【シルバーボーラー】・【愛用魔導杖】・【ポケモン6匹】・【ポケモン6匹】・【クルーガーマイヤー2-2】

・服装
【愛用スーツ】・【魔法学院制服】・【愛用ノースリーブ】・【愛用ジャケット】・【愛用レディースリクルートスーツ】





HITMAN2『終幕の世界 Ⅰ』

『エリア12へようこそ。』

 

『先行部隊の転移周辺地帯調査によると、周囲100m圏内に人や動物はおろか植物すら見つけることはできなかったわ。それどころか土と呼べるものがない。周辺はすべて鉄とコンクリートもしくはそれに準ずる何かによる“建材”ですべてが構成されているわ。』

 

『簡易ボーリング調査も不発よ。地面はおそらく高強度コンクリート。それも3mほど掘ったら下は空洞になっていたわ。おそらく下にまだ階層があるわね。その下がどうなっているのかは深すぎて簡易調査では調査しきれなかったわ。少なくとも下の階層まで100m以上はある。』

 

『ともかく、この地域に敵の本拠地があるのはほぼ確実。調査を開始して頂戴。気をつけてね。』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「はー・・・すっごいところに来ちゃったわね・・・。」

「姉さん。足元見て歩かないと危ないよ。ところどころ穴が開いている。」

バキィ!

「きゃあ!」

「おっと。気をつけなさい。このあたりは床の建材がもろくなっているみたいよ。」

「あ、ありがとうございます。キュラソーさん。」

 

 

ブルーが周囲に見とれてしまうのも無理はない。少し高いところに登った我々が見たものは、水平線の彼方まで一面に広がる大都市。遠くには高架橋と思われる橋が永遠と続いており、川と思われる場所は底も含めて全てコンクリートの護岸で埋められている。そしてその全てが儚く朽ち果てており、神聖さすら感じるほどに静かだ。

 

このあたりのことを本部はエリア12と呼んでいたが、正式な名称は案外早く見つかった。

 

 

「ん?これは・・・標識かな?」

「んー・・・ちょっと形は変だけど日本語ね。“第42展望公園”かしら?その下にも何か書いてあるけれどかすれちゃって読めないわね。」

「47。この公園・・・にしては殺風景だけれど。ここを集合地点にしましょう。」

「それが良いだろう。ここは遠くを見渡せる。逆に言えば遠くからでもこの公園は見えるということだ。」

「はーい。」

「了解。」

「(コクン)」

「では各自、ブリーフィング時のチームで散開。3時間後ここに集合。」

 

 

ブリーフィング時に予め決めておいたチームに分かれて各々調査に乗り出した。

 

 

 

 

 

~ブルー&シルバーチーム~

 

 

私達は公園を起点として、とりあえず使用できるコンパスを頼りに北へ向かった。公園から見えていた大きな建物を左に見ながら移動していく。

 

 

「それにしてもほんとに誰も居ないわね。みんなどこ行っちゃったのかしら?」

「普通に考えれば大規模な戦争とかで共倒れとかだけど・・・。」

「核戦争が起こった形跡はないんでしょう?」

「ガイガーカウンターには反応なしだね。」

「じゃあ・・・伝染病とか?」

「あるいは生物兵器か化学兵器か。どちらにしろ死に絶えたとしたら死体の一つでも残っていていいと思うんだけれど。」

「屋外なら風化していてもおかしくはないけれど、室内も痕跡の一つすらないのよねえ・・・。」

 

 

だんだん気味が悪くなってきたわ。時々背筋がゾクッてする気がするし・・・。まあ時々ある変な像がどこから見てもこちらを見ているように見える細工が施されているせいかもしれないけれど。

 

1時間ほど進んだ後、開けたところに出た。中央には何か不気味な雰囲気ただよう工場のようなものが見える。あんまり入りたくないけれど、これも調査なのだから入るしか無いわよね・・・。

 

私が戸惑っている間に、シルバーの方はさっさとオーダイルで壊れかけていた外壁の一部を破壊して中へ入れるようにしていた。

 

 

「開いたよ。戻れオーダイル!」

バシュン

「・・・。」

「姉さん?どうしたの?」

「・・・ええ。わかったわよ。行けば良いんでしょ!行けば!」

「・・・?」

 

 

私達は意を決して工場の中へ足を踏み入れた。工場の中にはやはり所々に不気味な像が立っている・・・。っ!!

 

 

「ちょ、ちょっと!シルバー!」

「え?何?」

「あの像!今目が動いたわよ!」

「ええ?そんなバカな。」

 

 

シルバーが像を叩いたり目を覗き込んだりして調べてくれている。というかこの工場やはり何かおかしいわよ。入った瞬間から誰かに見られているような気がするわ・・・。

 

調べ終えたシルバーが戻ってきた。

 

 

「やっぱりただの像だよ。石灰か大理石かはわからないけれど。」

「う、うそ!?でも確かに・・・。」

「気負い過ぎなんだよ。生命反応はないんだ。何も出やしないさ。」

「・・・。」

 

 

私達は、というか私は恐る恐る歩を進めていく。私はお化け屋敷とか楽しめる方だと思ってたんだけれど、ここはお化け屋敷とは違うベクトルで気持ちが悪い。

 

暫く進むと、一つの部屋にたどり着いた。その部屋は他にいくつもあった部屋とは違ってちゃんと扉があるし、中から微かに機械音がする。設備がまだ生きてるのかしら?それとも私を見ていた何かがやっぱりこの中に・・・。

 

私が何かを言おうとするよりも先にシルバーは躊躇なく扉に手をかけて開けていた。いきなりすぎでしょ!

 

 

「・・・誰も居ないな。」

「え、ええ・・・。」

「ちょっと姉さん。大丈夫?顔真っ青だけれど・・・。」

「だ、大丈夫・・・。」

「そ、そう?なら良いんだけれど・・・。あれ?」

「な、何?どうしたのよ?」

「部屋の真ん中。瓦礫の中になにかあるよ。」

 

 

シルバーが指し示したのは部屋の丁度中央に崩れた瓦礫の中央にある小箱。多分この耳の近くで響くような音はこの箱からかもしれないわね。シルバーはまたも躊躇なく小箱を手にとった。

 

 

「なんだろう?なにかの機械?」

「ちょ、ちょっと。そんなもの触って大丈夫なの?」

「え?大丈夫何か罠があったりはしないみたいだよ。・・・ここに差込プラグみたいなのがあるな・・・。」

「は、早くその箱どうにかしてよ!この音を消して!」

「え?音?何も聞こえないけれど・・・。」

「嘘でしょ?この耳の近くでささやくように高周波の音が・・・。」

「・・・いや全く・・・。」

「そんな・・・。」

 

 

いよいよ音が激しくなってきた。耳のそばで響いていたその音は今や頭の中央で鳴り響いているかのよう。音は大きくなっていないにもかかわらず、どんどん頭の中が蝕まれていくかのよう。これがシルバーには聞こえてないっての?そんな事ある?

 

 

「あああ!何なのよもう!一体!どうしたってのよ!!!」

「ね、姉さん!?落ち着いて!」

「もういやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キュラソー・タバサチーム~

 

 

 

この女性と一緒に仕事をすることは少ない。私も彼女も基本的に一人で状況をくぐり抜けられるだけの知識と適応力を持っているため、大抵の状況には一人で対応できるためなのが主な理由だ。それでも47が私と彼女を一緒のチームにしたのはどういうわけがあるのだろう?

 

 

「タバサ。考え事かしら?」

「大丈夫。今度はあっち。」

「了解。」

ゴホッ

 

彼女は洞察力に優れているので私が何か考え事をしているのも瞬時に見抜く。出会った当初こそ私の感情に乏しい表情を読み取るのに苦労していたみたいだけれど、最近は47と同じくらい読み取ってくれている。それでも本部に帰ってきたときに顔を合わせるときくらいしかまともに会話をしないけれど。

 

ともかく今は任務に集中しよう。私達はブルーたちとは真逆の南側へ向かって歩を進めている。歩を進めると行っても私は魔法で身体強化を、キュラソーは元々の運動神経で、ふたりとも常人では追いつけないであろうスピードで動き回っている。周りにある廃墟を手当たりしだいに中を調べて回っている。

 

私達が向かう方向には、天にも届かんばかりの高層の建造物がある。実際頭頂部は雲の更に上にあるのかここからでは見ることができない。建造物は多層構造をしており、私達が居る地表から数百メートル登ったところに別の地面があり、そのまた上数百メートルに別の地面というように階層型になっている。遠見の魔法で見た限り、それらの階層の上にも建物が立っているのが薄っすらと見える。

 

ゴホッ…

しかしこのあたりは埃が多いのかわからないが、少し息苦しい。酸素が薄いというわけではなく、時折喘息のように咳き込んでしまう。確かにあたりの建造物は基本的にどこかしらが崩れており、窓はおろか扉すら殆どない建物ばかりだ。これでは建材の一部が粉塵化して大気中に漂っていても不思議ではないだろう。

 

私は時折咳き込みつつ、階層の根本に当たる大きな支柱の麓までやってきた。キュラソーもほぼ同時に到着する。最初に二人で決めた集合場所でもある。

 

 

ゴホッ…

「大丈夫?咳が出ているみたいだけれど。」

「問題な・・・い。」

「それならば良いのだけれど。」

「・・・平気?」

「私?私は特に問題ないわね。廃墟になってから随分と経っているのか空気も澄んでいるし。少し肌寒いけど。」

「・・・え?」

「?どうしたの?」

 

 

空気が澄んでいる?・・・確かに改めて感覚を研ぎ澄ましてみると、メイジとしての感覚では空気中に不純物はほとんど含まれていない。ならこの咳は?風邪でも引いた?それはおかしい。昨日の、というかこの世界に来る直前まで風邪のような症状はまったくなく、むしろICAの健康保全措置を受けたばかりで普段より調子が良かったくらい。なら・・・なぜ?

 

 

「それで、何か収穫はあったかしら?」

「(フルフル)特に。どこも朽ち果てたコンクリート製の廃墟ばかり。」

「そう。こちらも似たようなものね。いくつかの建物には壊れた機械や空の瓶があったりしたけれど。」

「年代測定すれば。」

「そうね。いつ頃から廃墟になったくらいはわかるかもしれないわ。」

「・・・。」ゴホッ

「・・・体調が悪いなら本部に連絡して・・・。」

「問題ない。」

「・・・まあいいわ。それよりもあそこ。」

「ん、出入り口?」

「そうみたいね。とりあえず中に入ってみましょうか。」

 

 

-----------------!

 

 

「くっ・・・。」

「ん、今のは・・・?」

「わからない・・・。」

 

 

塔に入った瞬間、頭の中に高音の衝撃が走った。まるで調整中のスピーカーのような・・・。でも最初の衝撃のあとは特に周囲に変化は無かった。キュラソーも頭を片手で抑えているところを見ると同じ衝撃を食らったようだ。

 

 

「もしかしたら・・・。」

「亡霊の攻撃。」

「その可能性はあるわ。用心していきましょう。」

 

 

塔の中は大きな支柱と材質不明の外壁、それに数メートル上に空中に吊り下げられる形で謎の機械があった。近くにあったスロープを登って機械のそばまで近づくと、その機械は屋外拡声器のようなものが上部に取り付けられていた。さっきの衝撃はこの機械からかもしれない。塔の外壁から伸びている謎の鉄骨の一つに飛び移ったキュラソーは機械を取ろうと手を伸ばした。

 

 

キィィィィィィィィィィィィィン…

「きゃあ!」

「っ!!」

 

 

キュラソーが手を伸ばした瞬間、先程とは比べ物にならない大出力の衝撃波が走った。思わず耳をふさいでしまったが、大きな音がしたというわけではなく、頭の中に直接響いたので耳をふさいでも全く意味はなかった。しかしその高周波も、3秒ほど放射された後に収まった。

 

 

「全く・・・なんなのよもう・・・。」

「触らせないため?」

「・・・もう一回、試してみましょう。」

「気をつけて。」

 

 

調査の一環なのでこの機械が何の機械なのか調べる必要がある。キュラソーが再度手を伸ばし、装置に触れる。今度は何事もなく装置を外すことができた。2つの拡声器の間にある金具のような部分が天井から吊り下げられていただけのようだ。キュラソーが装置を持ってスロープに戻ってきた。

 

 

「よっと・・・。さて何の機械かしらね?」

「わから、ない。放、送設備?」

「んー・・・、特に蓋や何かを差し込む場所もないし・・・。」

「持っ、てかえっ、て調べ、る必要があ、る。」ゴホッ

 

 

なんだろう。その装置の近くにいると、咳が・・・。

 

 

「ちょ、ちょっと?タバサ?」

「だ、だい、じょ、うぶ・・・で、はない、かも・・・」ゴホゴホ

 

 

咳はますますひどくなる。これは・・・まずいかもしれない。

 

 

「この機械のせいかしら。ともかくこの機械は置いて一旦戻って・・・。」

「機、械は、持っ、て帰、るべ、き。」ゴホゴホ

「でも・・・。」

「早、くし、たほ、うが、いい。」ゴホゴホゴホ

「・・・わかったわ。兎に角戻るわよ。」

 

 

私達が戻ろうとする矢先に全体通信が入った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『バーンウッドよ。ブルーの精神状態に異常が発生したわ。全員一旦集合場所に戻ってきて。ブルーはこちらから個人名転送で強制的に帰還させたわ。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「こちらキュラソー。タバサの体調もおかしいわ。咳が止まらないみたい。こっちもお願い。」

『了解したわ。そっちもすぐに転送する。』

「じゃあタバサ。後は私達でやるから、貴方は元の世界で少し休みなさい。」

「わか、った・・・。」

 

 

すぐに私の周りが光り輝き始め、私の体は渡界機によって元の世界に戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~47チーム~

 

 

 

この世界は何かおかしい。建物は全て朽ち果てている。それ自体は問題ないが、壁には弾痕のようなものもいくつか見受けられる。戦闘もしくは戦争が起こり人が居なくなったとするならば死体やその痕跡くらいは残っていてもおかしくはない。しかし、どこを探しても死体はおろか血痕すら見当たらない。しばらく単独で調査をしていたが、どこまで行っても廃墟ばかりで亡霊の痕跡も全く見つけられない。この方向ではないとしたら他のチームが向かった方向だろうか・・・。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『バーンウッドよ。ブルーの精神状態に異常が発生したわ。全員一旦集合場所に戻ってきて。ブルーはこちらから個人名転送で強制的に帰還させたわ。』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

どうやら他のチームで何かあったようだ。既に2時間が経過していたのもあり、私は足早に元の公園に戻った。既にシルバーとキュラソーは到着していたようだったが、私が到着するやいなや罵声が飛んできた。

 

 

 

 

 

「遅い!47!どこで道草を食っていたんだ!」

「やっと来たわね・・・。」

「シルバー?」

「なんだ!何か文句があるのか!」

「キュラソー、これは一体・・・。」

「わからないわよ。私がここについたときには既にシルバーも居て、既にあの状態。」

 

シルバーは傍から見ても正常とは言い難い状態だった。元々そこまで短気ではなく、激昂するタイプでもなかったのだが・・・。

 

 

「精神に異常が?」

「その可能性は高いわね。」

「何をごちゃごちゃと言っているんだ!」

「バーンウッド。」

『揃ったわね。』

「さっさとしろ!だいたいいつも対応が遅いんだよ!」

 

 

・・・これではまともに話を聞く状態にない。作戦遂行の障害にもなりかねない。

 

 

「・・・バーンウッド、まずシルバーも元の世界に戻したほうが良さそうだ。」

『・・・そのようね。』

「その必要はない!僕は今からこの世界を虱潰しに探さなきゃならないんだからな!」

「できれば急がせて。」

『了解。』

ブゥゥン…

「ちょっとまて!まだやることが・・・!」

「一旦戻れシルバー。」

「47!」

バシュウウン…

 

「やっと静かになったわ。私が来てからもずっと怒り続けていたから。」

「それは災難だったな。」

『こちらから観測した限り、ブルーを強制送還する直前あたりからあの状態よ。』

「そちらではどうなっている?」

『ブルーとタバサもそうだけれど、こちらに転送されてきた瞬間から一応個室に隔離しているわ。何かに感染している可能性もあるから。』

「そうか。」

『それで、キュラソーが持っているそれは?』

「ここから見えるあの塔の中で見つけた機械よ。この機械に触れた時くらいからタバサの喘息がひどくなったのだけれど。」

「見た目は地域放送用の屋外拡声器という風だが・・・。」

『とりあえずそれはこっちに送って頂戴。いろいろ調べてみるわ。』

「頼むわね。」

『それとそこに落ちている機械もお願い。』

「え?・・・ああ、これね。なにこれ?」

『シルバーとブルーも謎の小型機械を拾っていてね。シルバーはあの調子だからそれを別々に送らせることにしたのよ。』

「なるほどね。」

 

 

シルバーが置いていったその機械は、両手で持てるくらいに軽く、材質は不明。廃墟の瓦礫の中に放置されていたらしいが傷一つ点いておらずサビや腐食なども全く見当たらない。側面には1つだけ穴が開いており、何かを差し込むのだろうと推測できる。

 

向こう側の準備ができた後、キュラソーが2つの機械を転送した。ICAの技術部は西暦2300年レベルの科学力を持つと以前職員が自慢していた気がする。彼らならすぐにでも解明してくれるだろう。

 

なにはともあれ我々の方の任務も早急に済ませたいところだ。私とキュラソーは本部も交えて現状を報告しあった。謎の機械以外はお互い大した成果を得られていないようだったが。

 

 

「となると、あとは誰も向かっていない西側か。」

「そうなるわ。西側は特に破壊が激しい地帯。調査は大分骨が折れそうね。」

「調査しないわけにもいかない。早速向かうと・・・。むっ!」

「どうしたの?」

「隠れろ!」

 

 

西側に視線を移した直後、かなり奥の方、高層ビル郡の中に宙に浮く何かを視認した。それは段々と大きくなっていき、高層ビル群の隙間から特徴的なロゴマークが見えた。

 

 

「アレは・・・!」

「ICAの飛行船だな。バーンウッド、我々以外にも調査チームを送ったのか?」

『それはないわ。あなた達が到着する前に全員引き上げさせたはず。』

「じゃああれは何だってのよ。」

『スキャン完了。あれは・・・なんてことなの・・・。』

「どうした?」

『あれは“エンデットウィッチ”よ。完全自動制御の空中空母。記録では今ハルケギニアにいるはずなのだけれど・・・。』

「ハルケギニアに居るやつが何故ここに居る。ここはハルケギニアなのか?」

『それはないわ・・・もしかして!少し待って頂戴。』

 

 

エンデットウィッチはゆっくりと高層ビル郡の中を巡航しており、今まで何故気が付かなかったのかと思うほどに存在感を示している。円形に周回しているようで少しすると機体は後ろを向き、そのまま高層ビル群の中へ消えていった。

 

 

『やはり情報が改ざんされていたわ。』

「この前の作戦の時に修正したのではなかったのか?」

『エンデットウィッチがハルケギニアに派遣されたのは作戦より前なのよ。派遣申請を出したのもそれを承認したのも亡霊の仕業よ。』

「じゃあ今やあの空中要塞は敵の持ち物ってわけか。」

『そうなるわね・・・。』

「私には生身であれに敵うとは到底思えないのだけれど?」

「同意見だ。あれを無効化する必要があるな。まあ今の所はあの飛行船に感謝だが。」

「あら、何故?」

「あの飛行船は円を描いて飛行している。おそらくその円の中心に奴らの基地かもしくはその手がかりがあるだろう。」

「なるほどね。案外簡単に見つかりそうじゃないの。」

 

 

私達はひとまずエンデットウィッチが現れた高層ビル群へ向かった。マンハッタンのような300m級高層ビルが立ち並んでいる一角で、殆どのビルは規格が統一されているがいくつか形の違うビルも混じっている。ビルは完全に廃墟になっており、内装こそぼろぼろになって使い物にならなかったが、ビル自体は鉄筋コンクリート製の強固なものなのでしっかりと建っている。これなら崩れてくる心配はないだろう。

 

私達は高層ビル群を慎重に通り抜ける。明らかにマンハッタンや香港などよりも広範囲に高層ビルが立ち並んでおり、明らかに戦闘によって倒壊したビルの瓦礫などもあって隠れるところには困らない。

 

ビル街を抜けきると、郊外の集合住宅区画のような場所に出た。団地のような建物が整然と並んでおり、おそらくビル街で働いていた人間が住む場所だったのだろうと推測できる。

 

 

「47。あれ。」

「・・・やっと見つけたな。」

 

 

その集合住宅の中にポッカリと空いたクレーターを発見した。そのすぐ上にある階層にも大きな穴が開いていることからも、機動爆撃のようなものが着弾した後だと思われる。その中心に明らかに最近建てられたと思われる建物があった。周りの住宅やビルとデザインが違い、見た目の年代もずっと新しい。何より・・・。

 

 

「入り口に何かいるな。」

「あれは・・・何かしら?」

「少なくとも人ではないな。」

 

 

入り口付近を警備するようにロボット兵器と思われるものが闊歩していた。その形は今までの調査で発見しているロボットとは大分形が違う。先程のエンデットウィッチの旋回中心地点とだいたい同じなことも合わせて考えると、おそらく亡霊の本拠地はあそこだろう。

 

 

「もう少し近づいてみよう。」

「そうね・・・うっ!」

ゴフッ

「!?どうしたキュラソー!」

 

 

突如として隣で様子を見ていたキュラソーが吐血した。どこからか攻撃を受けた感覚はない。どういうことだ?

 

 

「さっきの・・・タバサを助けたときに私も何かしら・・・。」

「わかったもう喋るな。本部。」

『わかってる。強制転移させるわ。医療班!ストレッチャーの準備を!』

 

 

キュラソーは相手の本拠地から隠れるように横たわり、直後強制転移して元の世界へ帰還した。しかしこうも次々と謎の症状で行動不能とは・・・この世界なにかある。

 

 

『47。キュラソーは無事に医療チームに引き渡されたわ。』

「何が起こっている?」

『その世界の理に関することなのかもしれない。現在情報部の総力を上げて調査中よ。ただ・・・。』

「ただ?」

『さっきシルバーとキュラソーが持って帰ってきた機械。あれの第一段階の解析がさっき完了したの。』

「あの機械はどういうものなんだ?」

『それが“わからない”のよ。』

「は?」

『“わからない”ということがわかったの。』

「どういうことだ。」

『私達ICAの技術は私達の世界に換算して西暦2300年代から2400年代の技術を持っていると自負しているわ。実際2100年代後半からやってきた超鈴音の科学技術の大半は、我々にとって既知の技術だったわけだからね。』

「その超科学を網羅している技術部でも、とっかかりすらつかめなかったのか?」

『そうよ。シルバーが持ってきた小型機械はどうやら“発電機”のようだけれど、あの小ささで原発用の1500MWタービンクラスの出力があるわ。驚くべきなのは発電に“一切の資源を消費していない”という点ね。』

「資源を消費していない?空気で動いているということか?」

『それもない。真空中においても問題なく稼働しているからね。空気、水、光を含めたすべての資源を一切消費することなく1500MWを発電する小型発電機。少なくともICAにはこれは作れないわ。』

「・・・。」

『そんな超科学が存在している世界。世界の理を発見する作業も困難を極めそうよ。』

「そうか。ならばできる限り相手の情報だけでも持ち替えるとしよう。」

 

 

私はもう少し敵地に近づくことにした。集合住宅の間を縫って、時折住宅の中を通り抜けつつ近づいていく。広い道には巡回型の多脚戦車と思われるものが巡回していたが、仕事柄そういう物をかいくぐるのは慣れているので特段問題はなかった。

 

小一時間で敵の本拠地手前までやってくることができた。ここから先はクレーター部分になるため、バレずに近づくのは至難の業だ。加えて言うならば、本拠地に近づくに連れて私の体にも異常が見られ始めた。先程から急に頭痛がするようになった。

 

ともかく、ここからできる限りの情報を集めなくてはならない。私は倒壊した建物の影から索敵する。中央に高さ10m前後の2階建ての建物。窓はなく、入口は正面の一つだけと思われる。そこには戦闘用と思われるロボットが常時警戒している。そのロボットの横には何やら黒い石柱が立っていた。明らかに自然にできたものではない不思議な形をしている。

 

 

「本部、敵の本拠地と思われる建物の前まで来た。観測できるか?」

『ええ、できているわ。戦闘用と思われるロボットが2体と・・・え?』

「?」

『そんな・・・嘘でしょう?!』

「どうした。」

 

 

いきなり通信越しにバーンウッドが驚愕の声を上げる。先程から頭痛がしているのであまり大きな声は出してほしくないのだが。

 

 

『入口横の黒い石柱は“オベリスク・システム”。技術部が今開発中のレーザー兵器よ。』

「レーザー兵器だと?」

 

 

何故技術部が開発中の兵器を奴らが持っている?

 

 

『47。絶対にそれ以上前に出ては駄目よ。』

「こうも開けた場所では出るに出られないが。一応理由を聞こうか。」

『オベリスク・システムは我々が作っているものと同じならば、半径150m圏内の敵性勢力を1億5000万度の極超高熱線で一瞬にして蒸発させる威力を持っているわ。』

「なぜそんなものを・・・。」

『本当なら基地防衛用に使う予定だったのよ。まだその高熱を制御するのに苦労していて実用化は当分先のはずなのに・・・。』

「奴らはその情報を盗んで自分達で完成させたというわけか。」

『そうなるわね・・・。』

 

 

ともかくそんな兵器があるということは、これ以上近づくことはできなさそうだ・・・。うっ!

 

 

「・・・本部。聞こえているか。」

『聞こえているわ。』

「私の体にも何かしらの異変が起こっているようだ。頭痛がひどくなってきた。」

『なんですって?・・・わかったわ。でもそこでは危険すぎる。もう少し敵から離れて頂戴。』

「わかった・・・。くっ・・・。」

 

 

かなり激しい頭痛に見舞われており、時折視界がぼやけるほどだ。私はなんとか近くの無事な建物の中に身を潜め、そこで強制転移によって本部へ帰還した。帰還直後、頭痛は嘘のように治まった。

 

 

 

 

 

 

 

~~12時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『みんな揃ったわね。今回はご苦労さま。』

「いやー、ある意味で大変な任務だったわね。」

「ほんとにね・・・。」

「シルバー、もしかしてまだ気にしているのかしら?」

「そりゃあ・・・。」

「あれは精神波攻撃によるものだったって結論が出ているでしょう?気にしては駄目よ。」

「私の喘息もその精神波攻撃。」

「私が吐血したのもね。」

「私の頭痛もだ。一体あの世界はなんなんだ?」

『情緒不安定化、喘息、吐血、頭痛。全てはこれのせいよ。』カシャ

「これは・・・キュラソーが持ってきた機械か?」

『そうよ。これはある種の特殊電磁波を広範囲に掃射する機械だったみたいね。』

「特殊電磁波?」

『受けた人間の精神や肉体に直接作用するもので、解析するまで回避方法は実質無かったわ。』

「そんなものちゃっちゃと壊しちゃいましょうよ。百害あって一利なしじゃないの。」

『そう簡単にはいかないわ。これも例の発電機と同じく超科学を用いて制作されてるわ。構造は完全に謎。電磁波自体もダークマター観測機以外の観測装置には全く反応しないわ。開け方もわからないまま。ネジ穴はもちろん、蓋や扉があるわけでもなく、耐久性も抜群。少なくともプラスチック爆薬300kgでは開くどころか焦げすらつかなかったわ。』

「というかそんなものここに持ってきて大丈夫なの?」

『安心して頂戴。なんとか電源を切る方法だけは見つけたから。』

 

「それで、どうするつもりだ?」

『さっきまで情報部で対策を検討していてね。一応結論が出たわ。今から説明するわね。』

 

『さっきの機械のようなものはまだあの世界にあると思われる。そこで、それらから防護するための対抗薬を開発したわ。次回出撃時はこれを服用して頂戴。』

「さっそくその謎電波に対抗したってわけね。」

『次に、宙に浮いて警戒しているエンデットウィッチのコントロールを複数の機械を用いて一時的に奪取するわ。その間に相手の基地に砲撃を加える。その砲撃で基地周辺のドローン軍とオベリスクシステムを無効化する。』

「オベリスクシステムは大抵のものは蒸散させるのだろう?迎撃されるのではないか?」

『あのシステムは掃射方式の関係で石柱1つに付き光線は1本しか掃射できないのよ。飽和ミサイル攻撃をかければ突破できると思うわ。』

「物量作戦。」

「古典的ねぇ・・・。」

『それしか方法がないのよ。そしたら突入部隊で内部を制圧してもらうわ。』

「オベリスクシステムを実用化している相手なのだから内部も罠だらけではないの?」

『残念ながらその可能性は高いわ。』

「私はパスかなあ・・・。」

「姉さんがパスじゃなくても僕が行かせないよ。そんな危険なところに。」

『だからエンデットウィッチの奪取にはシルバーとブルー。それ以外のメンバーで基地内に突入してもらうことになるわ。覚悟を決めて頂戴。』

「準備はどのくらいかけられるのかしら?」

「準備なしは難しい。」

『実はあまり時間がないのよ。スーパーレーン遮断が突破されつつある。持って後1週間よ。』

「1週間・・・。大分対応が早いな。」

『突破されたら今度はどこへ行くかわからない。探すのは相当に骨よ。その前に相手を撃滅しなくてはいけない。』

「やれやれ。ゆっくり休んでる暇もなさそうだ。」

「いつものこと。」

『ブルーとシルバーはハッキング装置の操作マニュアルと設置マニュアルから覚えて頂戴。他の3人も行動を開始して。準備は一任するわ。』

 

 

 

 

~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・「世界の基礎」

 【+1000】『基盤支持塔へ入る。』

 

・「失われし太古の技術」

 【+3000】『ワノメトリック発電機とサイコスード波動機を見つける。』

 

・「煙のように消える」

 【+3000】『オベリスク・システムに200m圏内まで近づく。』

 

・「そして誰もいなくなった」

 【+2000】『全員が強制転移で帰還する。』




最終盤です。後2話+エピローグの予定です。

次回は亡霊の正体を突き止めます。
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