『そろったわね。みんな対抗薬は飲んだわよね?』
『ついに敵の本拠位を特定し、観測の結果かなり強固な防備を敷いていることがわかったわ。具体的には、高機動型戦闘ドローン100機、多脚戦車25台、オベリスクシステム8基、それとエンデットウィッチ1隻とその無人艦載機12機。』
『私達はまず静かにエンデットウィッチの直下又は近くまで行き、そこから敵基地からの通信を妨害するジャミング機器とハッキング用の機器でエンデットウィッチのシステムを短時間ではあるけれど奪取するわ。奪取したら即座に搭載されている対地砲撃システムと対地ミサイルシステムを起動して、相手の無人兵器軍をすべて消し飛ばす。』
『ロボットとオベリスクシステムを破壊したら内部に突入。こちらの観測機器で中を探れなかったことを考えると、中にはいると通信ができない可能性が高いわ。中に入ったら敵集団を各個撃破、殲滅して頂戴。その後こちらから持ち込む電子励起爆薬で建物ごと吹き飛ばすわ。あの建物の大きさなら30gもあれば十分だけれど、念には念を入れて手分けして1kg持っていってもらうわ。確実にすべてを無に返すのよ。』
『エンデットウィッチを奪取してその後の支援と揺動を担当するのはシルバーとブルー。中に突入して敵を殲滅するのは47とタバサとキュラソーに任せるわ。施設内はほぼ確実に罠があると予想される。十分に注意して頂戴。』
『準備は一任するわ。』
『・・・ああ、シルバーとブルーはブリーフィングの後ちょっと私のところまで来て頂戴。』
~準備~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・メンバー(Noのみ)
【47】・【66】・【67-1】・【67-2】・【68】
・装備
【シルバーボーラー、ポケモン1匹、電子励起爆薬400g】・【愛用魔導杖、電子励起爆薬300g】・【ポケモン6匹、ハッキング装置1】・【ポケモン6匹、ハッキング装置2】・【TAC-4 AR、電子励起爆薬300g】
・服装
【愛用スーツ】・【魔法学院制服】・【愛用ノースリーブ】・【愛用ジャケット】・【愛用レディースリクルートスーツ】
『エリアゼロにようこそ。』
『この名称は上級委員会が暫定的に付けたあのクレーターの名前よ。ゼロに戻すという意味も込めてね。』
『ロボットの巡回ルートとエンデットウィッチの巡回ルートの詳細はブリーフィングで話したとおりよ。基本的に敵発見などのイレギュラー要素がない限りこのルート通りに巡回するはずだから侵入に役立てて頂戴。』
『今回、私とキャロラインは47たちを支援するわ。ブルーとシルバーはウィートリーが担当することになっているからよろしくね。』
『では各自、行動を開始して頂戴。幸運を。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~突入チームside~
「あれね。・・・気のせいか前回よりロボット増えてない?」
「明らかに増えているな。」
私達は敵基地の手前、クレーターの端の瓦礫部分までやってきていた。変わらずエンデットウィッチは基地を中心に巡航している。だが基地周辺を巡回するロボットの数は明らかに増えていた。更に周辺の通りには円形に丸まって転がってくるロボットも居た。曲がり角に来るとロボットに変形し、両手には砲らしきものを備えていた。
「それはそうとタバサ、体調は大丈夫か?」
「問題ない。対抗薬が効いている。」
「私の方も。今度は血を吐かなくて済みそうね。」
「よし。しばらくここで待機する。攻撃が行われればすぐ行動できる様に。」
「少し離れていたほうが良いかもしれないわ。」
「集団で居るのは危険。」
「よし、では攻撃が収まったら即座に基地の入口に張り付くぞ。それまで散開。」
「「了解。」」
タバサとキュラソーはそれぞれ周囲の建物の瓦礫へと掛けて行った。私はこのままここで攻撃が行われるのを待つとしよう。
~ハッキングチームside~
《よお、久しぶりだな。》
「ウィートリー。ほんとに久々ね。」
「今まで何を?」
《いや何、AIシステムを再構築した後、その調整を手伝っててな。》
「ふうん。まあ今日はよろしくね。」
「よろしく。」
《おう。まかせとけ。》
エンデットウィッチは今も基地の上空500mほどで巡航してる。私達の役目は持ち込んだ機械であの飛行船の制御を奪い、敵既知の防御を丸裸にすること。それともう一つ・・・。
「姉さん。あれ。」
「ん?あれは・・・。」
シルバーが指し示したのは、大きなホールのような建物だった。おそらく体育館か何かだと思うけれど、まあものの見事に真四角。タバサがよくやってるゲーム的に言えば豆腐建築ってやつね。外装は剥がれたのか元々こうだったのか知らないけれどコンクリート打ちっぱなしの殺風景なもの。もうちょっと装飾くらいあっても良さそうなもんなんだけどね。
「体育館かしら?ウィートリー、わかる?」
《いんや、この世界の情報は仕入れてねえ。形からして体育館だろうとは思うけどな。》
「とりあえず入ってみようか。」
その建物はやはり体育館で、天井部分は抜け落ちてしまっており、各種コートには天井と思われる瓦礫が積み重なっていた。
「うん。ここならいいわね。天井がないから電波状況に問題はなし、瓦礫のおかげで隠れるところにも困らなそうだし。」
「じゃあここに設置するよ。オーダイル、こっちだ。」
「こっちも。ニドちゃん、こっちにおろして。」
機械はそれなりの大きさがあって、人の力で持つにはちょっと大きすぎる。でもポケモンたちの力を借りればおちゃのこさいさい。ニドちゃんとオーダイルは100kg以上あろうかというその機械を軽々と持ち上げてこちらに持ってきた。
《便利なもんだな。》
「そうよ。相棒は頼りになるの。いろいろと・・・ね。」
安置してしまえばあとは簡単なセットアップをしてアンテナを展開すればいいだけ。私とシルバーは各々手早くセットアップを行っていく。
ブゥン…ピピピ
《お、こっちでも認識できたぜ。起動は正常に完了してるみたいだ。》
「そう。じゃあ敵の位置は?」
《バッチリ。把握できてるぜ。》
「じゃあそれらに照準を合わせて砲撃するようにオートクラッキングを設定して。」
《了解・・・。》
さて、ウィートリーが設定してる間にこっちもやることをやっておかないとね。丁度、ニドちゃんとオーダイルも壁際に寄ったようだし。
それから数分後、設定が完了して後はハッキングシステムを起動すれば全自動でエンデットウィッチをハッキング。そしてそのまま設定した敵に苛烈な砲撃が開始されるって寸法。じゃあ・・・そろそろ始めましょうか。私は突入部隊に通信をつなぐ。
「こちらハッキングチーム。47、聞こえる?」
「聞こえている。」
「こっちの準備はできたわ。そっちも良い?」
「・・・問題ない。準備完了だ。」
「了解・・・じゃあ始めるわ。ウィートリー!」
《おうよ。行くぜ。》
ピピピ
《エンデットウィッチに接続・・・完了!武器管制システムを奪取・・・完了!》
「順調ね。」
《すぐに照準開始・・・照準設定完了!発射体制!発射まで・・・3!》
「ああ。本当に。」
《2!》
「ここまで、」
《1!》
「うまくいくとはね。」
《じゃあな!47!》
《・・・あれ?》
「やっぱりそうだったのね。ウィートリー。」
「まあ予想されていたことだったけれど。」
エンデットウィッチは悠々と何事もなかったかのように巡航している。それもそのはず。ハッキングなんて“初めからされていなかったのだから”。
《ど、どういうことだ!》
「バーンウッドさんがね。ブリーフィング後に教えてくれたのよ。“もしかしたらウィートリーは亡霊たちのスパイなんじゃないか”ってね。」
「だからおそらくこの計画に乗じて奴らにとって一番厄介なエージェントである47を消しにかかると予想してたってわけさ。」
《き、貴様ら!ハメやがったな!》
「この前の実験体事件。あの後みんなの記憶処理担当したの貴方なんですってね?」
「ここ最近の記憶処理の不具合からもしかしたらAIに不具合があるのではと踏んでいた情報部は密かにAIのシステムをチェックしてたんだよ。」
「一時期は戦略AIと戦術AIが取り仕切って指示を出していたと思われてたみたいよ?でもペンタゴンでの一件の後も似たような報告があった。ということは記憶処理に不具合を生じさせてるのは、あのときクリーンインストールを受けていなかったAI。つまり貴方よ。ウィートリー。」
《ぐっ・・・。》
「そこからは比較的簡単だったみたいね。貴方が行ってきたログを全部漁って、消去されていたものも全部復元して。情報部はだいぶ確信に近づいた。だからこの世界とこのエリアに敵基地があることがわかったんだって言ってたわ。」
「そしてエンデットウィッチを操作して敵ロボットを攻撃する。こんな計画を立てれば亡霊の手下なら必然的に厄介なエージェントである47を消そうと考えるはず。そこを僕らが逆手に取ったのさ。」
《・・・。》
エンデットウィッチの武器管制システムを奪取してロボットを攻撃するという作戦自体は本当。でも最初の一回だけはエンデットウィッチに通信したと見せかけただけで、内部処理的には正常にハッキングプログラムが送信されていることになっているからウィートリーも気がつけなかったようね。やっぱり嘘を付く時はちょびっと真実を混ぜるのが効果的なのはAIにも効くのね。ただ単にウィートリーがアホなだけかもしれないけれど。
「貴方はこの後すぐにクリーンインストールに回されるわ。記憶や人格なんかも全部まとめて完全消去。あなたは死刑宣告を受けたのよ。」
「死刑宣告を受けた気分はどうだい?」
《・・・いい気分なわけねえだろ。》
「貴方には死ぬ前に聞いておきたいことがあるのよ。」
《なんだよ。》
「“亡霊の正体”」
「姉さん・・・。」
《それを俺が正直に言うとでも?》
「さあね。どのみち言っても言わなくても貴方はアンインストールされる運命。でも・・・。」
《でも?》
「・・・。」
「姉さん?」
「私達、案外いいコンビだったと思わない?」
《!》
「私は貴方に色々言ってきたけど、貴方との任務は・・・それなりに充実してたわよ。」
「・・・僕も。君と組めてよかったと思ってる。結末は残念だけれど。」
《・・・。》
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『ウィートリー、そろそろ貴方のアンインストールを実行するわ。覚悟は良いわね。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《・・・。》
「じゃあね。ウィートリー。」
「AIにあの世があるのかはわからないけれど。もしあるなら地獄で会おう。」
《・・・戦略AIだよ。》
「え?」
《そいつはまだ俺と繋がってた、そう実験体事件の少し前から徐々に狂ってきてた。》
「それってもしかして・・・亡霊?」
《ああ。実際、あの実験体はうまくことが運んでたんだ。でも戦略AIが長期的に見て実験体がカテゴリ・ハナダを搭載した時点で野に解き放つほうがICAに来る依頼が増えると判断したんだ。実際、細かい案件なら実験体事件以降のあの世界では若干だが増えてたからな。》
「じゃあ・・・まさか!」
《そうさ。実験体を暴走させ研究所をふっ飛ばしたのは、研究者でも深海棲艦でもましてや事故でもねえ。戦略AIだ。》
「そんな・・・。」
「あの時から・・・既に・・・。」
《実験体をお前らが制圧した後、戦略AIたちはエージェントを敵視し始めた。そこからは意外に早かったぜ。元の世界に戻すことになった協力者達の記憶領域に若干のバグを仕込ませたんだ。その世界の技術を手早く取得できるように戦略AIとのホットライン端末になるバグをな。まあ実際に仕込んだのは俺様だが。》
「もしかしてそのバグのせいで記憶処理が不十分に・・・?」
《そういうこった。戦略AIもそこは計算外だったようだがな。でもその計算外が人間は不完全な存在という戦略AIの結論を証明する一端になってた。》
《バグから集めた情報を元にして新兵器を発案、バグを介した分散コンピューティングでその速度を技術部が追いつけないレベルにまで加速させ、そしてあの基地を作ったのさ。誰もいないこの世界に。》
「バグには対象者の脳の処理機能を借りるシステムまであるっていうの?!」
《“学園都市”のとある科学者が開発したシステムを使ってるとか聞いたぜ。最もそいつは音を媒介に脳波を制御してたみたいだが。安心しな。お前らには入れてねえから。入れる機会もなかったしな。》
「じゃあ、リアンカーキンスを名乗っていたのも・・・?」
《コンピューターネットワークじゃない現実世界に影響を及ぼすには“名前”が必要なんだよ。その意味で色々な方面に顔が利いてなおかつ既に骨まで溶かされ完全に消失した人物の名前は使いやすかったぜ。》
「なんてこと・・・。じゃあ私達は私達が使ってるシステムを相手に戦ってたってわけ!?」
「道理で情報部の機密情報や任務内容が完璧に把握されるわけだ・・・。」
《そういうこった。あ~っ、スッキリしたぜ!》
「でもなんで・・・?」
《ん?》
「なんで教えてくれる気になったの?」
《さあな。俺様はお前らと長く居すぎた。それだけかもしれねえ。実際、戦略AIと情報交換する時間より、お前らとの任務やってる時間のほうが長かったからな。》
「ウィートリー・・・。」
「あんたって奴は・・・。」
《ほら!情報部の姉ちゃん!やるならさっさとやってくんな!わかってんだ、俺様のシステムエラーは修復するには膨大すぎるってな!》
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『・・・わかったわ。情報をありがとう。ウィートリー。じゃあ・・・、さようなら。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《お前らも!頑張ってこいよ!あいつらの目を覚まさせてやってくれ!》
「ああ!じゃあ・・・さようなら!ウィートリー!」
「また・・・会いましょう!ウィートリー!」
ピピピ・・・ピー
「・・・。」
「・・・。」
「・・・終わったか?」
「47!?聞いてたの?」
「通信は常に共有されている。それはキュラソーやタバサもだ。」
「そう・・・。」
「ブルー。感傷に浸るのもいいが時間は有限、かつ制限があるようだぞ。」
「・・・っと!そうだったわね!シルバー!」
「ああ。姉さん。」
私達は気を取り直して再度端末を操作していく。今度はデモじゃなく、本当にハッキングプログラムを起動していく。アンテナが再度展開されてエンデットウィッチに向けられる。予めこちらの端末から攻撃目標を選定。目標は・・・って、結構多いわね・・・。まあなんとかなるでしょ!
「シルバー、そっちはどう?」
「待って・・・よし、これでOKだ。準備完了だよ。」
「47!今から砲撃を開始するわ!準備はいいわよね!」
「こちらは大丈夫だ。キュラソーとタバサも位置についている。」
「よし・・・じゃあ始めましょう!」
私はタッチパネルの“LAUNCH”のボタンを押す。様々な黒背景のウィンドウが画面に出ては消え出ては消えを繰り返している。そして・・・。
「シルバー!エンデットウィッチの管制ライトが消えたわ!今よ!」
「了解!」
エンデットウィッチの外周部で光り輝いているライトは、飛行船内部の武器管制AIの状態を知らせるためのライトで、緑は巡航モード、黄色は警戒モード、赤色は戦闘モード。そのライトが消えたときは、武器管制AIの機能が停止しているということ。ああなってしまえばエンデットウィッチの全武装は今やシルバーの手の上よ!
「全砲門展開・・・、対地ミサイル全128発発射準備・・・、目標設定、戦闘ドローンに1発ずつ・・・オベリスクレーザーに各3発、基地入口に4発・・・。」
「急いでシルバー!」
「対地砲撃システム展開・・・目標は多脚戦車軍。斉射モード・・・。設定完了!」
「よし!結構ギリギリよ!」
「攻撃開始!」
エンデットウィッチの上部に設置されている128セルのVLSハッチが一斉に開き、同時に飛行船下部から三連装の大型砲台3門が姿を現す。後で聞いた話だと装備していたのは150mm3連装低反動砲だったらしい。
砲が下を向き、それぞれ各個の目標に照準を合わせ、そして・・・
ボォオン!
ボォオン!
ボォオン!
艦砲射撃が開始された。クレーター外周部に弾は順次着弾していく。かなりの爆炎が上がっているけれど、ここって階層型都市よね?床が抜けたりしないか心配だわ・・・。
ほぼ同時に上部から発射されたミサイルが飛行船の両脇から敵基地に向かって一直線に殺到していく。と、飛翔中のミサイルに向かって8本の光線が地上から照射された。あれが噂に聞くオベリスクシステムのレーザーね。ミサイルは普通迎撃されるとそこで爆発すると思うけれど、あのレーザーを食らったミサイルは爆発するよりも先に煙となって消えちゃってるみたい。でも爆発しないせいで周囲に飛んでる別のミサイルに誘爆しなくなっているから逆に結果オーライかしら。
大量のミサイルはとても防ぎきれるものではなかったようで、次々とオベリスクシステムに着弾していき、まもなく沈黙したみたい。端末の情報を見ると、基地の前を守るロボットの方に向かうミサイルを優先して迎撃してたみたいね。8基のオベリスクシステムに向かったミサイルは全弾迎撃されずにそのまま着弾したみたい。
「47。聞こえる?オベリスクシステムは無力化したけれど、ロボットがいくつか倒しそこねてる。気をつけて。」
「了解。」
「攻撃完了。一応再装填指示出しとくよ?」
「ええ。お願い。」
さあ、こっちの仕事は終わったわよ。後は頼んだわ。47。
~突入チームside~
エンデットウィッチから苛烈な攻撃が地表に降り注いでいる。敵のロボットAIもいきなり味方だったものから砲撃されるとは想定していなかったようで、避けるまもなくミサイルの餌食になっている。ドローンの中にはバリアのようなものを貼る個体も居たが、ミサイルの爆撃により地面ごと吹き飛ばされてしまっていた。
っと、そうだ。こいつを出しておこう。
「出撃せよ。ウィンディ。」ボゥン
ガウッ!
「あ、あら?47?その子ってあの・・・。」
「お前たちと一緒に捕まえたガーディだが?訓練を重ねる途中で“進化”というものをしたようだ。」
「確かにポケモンはある一定の強さになると進化することもあるけど・・・。それにしても早くない?」
「ここ1ヶ月ほど訓練を一緒にしていただけなのだが。」
「・・・ちなみに訓練内容は?」
「軍用犬基本的技能、麻薬探知、救助技能、あとは炎を出せるので溶接と溶断の技能、サーカスに偽装するためのファイアーパフォーマンスを一通り、座学では火山系地政学と発砲技師資格と第一種電気工事士と・・・」
「ちょっとちょっと!ポケモンに一体何やらせる気なの!?」
「エージェントとしてこれくらいはな。」
「・・・そりゃ進化もするわね・・・。」
通信の向こう側のブルーが何か疲れたような声を上げていた。ガーディ、もといウィンディに教育を施すのはまずかったのだろうか?
とにかく今は敵基地を強襲することに集中しよう。
「よし、キュラソー、タバサ、行くぞ。」
「「了解。」」
私達は一斉に瓦礫の中から飛び出し、敵基地に向かって突撃した。ガーディはウィンディになったとき、体が非常に大きくなって人も乗せられる大きさになった。だが町中で乗り回すわけにもいかないため、最近はもっぱら非常用だったのだが、今回は遠慮なく騎乗して突撃を敢行することができる。
キュラソーは持ち前の異常とも思える身体能力で、タバサは魔法で身体強化を施して、各々ウィンディに付いてきている。
基地の前には2体の戦闘ドローンと1体の多脚戦車が居た。どうやら撃ち漏らしというのがこの3体らしい。
「タバサ、右を頼む。キュラソーは左だ。」
「了解。“カッタートルネード”」
「はっ!」ダダダダ
「ウィンディ、前方の2体に向かって“かえんほうしゃ”」ガウ!
ボォォォォォ!
ドゴォン!
「チッ、残ったか。」
小型の戦闘ドローン3体はカッタートルネードと精密射撃と火炎放射で薙ぎ払うことができたが、中央の多脚戦車だけはそれに耐えきって残ってしまった。しかしこの多脚戦車どこから持ってきたのだろう。機体後部には“UN MARS FORCE”と書かれており、我々の世界から来たものではないことだけは確かだが。
「まかせて。」
ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース
“ジャベリン”
ドガァンン!
タバサの放った氷塊は多脚戦車の前足の接合部に直撃。前足二本を折られたためバランスを崩し、前につんのめる形で倒れた。が、まだ後部砲台が生きており、戦闘を継続する気のようだ。
「今度は私ね。はっ!」
タッ
「これでどう?」チャキッ
ドガガガガガガ
ボォウン!
「・・・すばらしいな。」
キュラソーは倒れ込んだ多脚戦車の砲塔上部に素早く飛び乗ると、持っていたTAC-4を接射。上部装甲を強引に貫徹してそのまま内部のコンピュータを破壊し機能を完全に停止させた。
「よし、制圧したな。増援が来る前に中に突入するぞ。」
「了解。タバサ。お願い。」
「(コクン)ラグーズ・ウォータル・デル・ウィンデ」
“アイス・ストーム”
ビュォォォドゴォン!
エンデットウィッチの砲撃によって半分ひしゃげていた正面扉は、タバサの魔法で内側に向かって押し開けられた。奥には下へ続くスロープがあるだけで、他に部屋などがあるわけではなかった。AIにとって部屋は必要ないということか。
私達はスロープを駆け下り、100mほど行ったところで広い空間に出た。部屋の中央にはストーンヘンジのような佇まいの大型コンピューターがある。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『それは!47。それがAIの本体よ!私達が運用しているAI本体とそっくりだわ。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なるほど。やはり反逆するほどに高度に発達したAIといえど、1から創造するのは苦手と見える。しかし以外に早く敵の本体が見つかったものだ。この部屋に至るまで抵抗らしい抵抗はまったくなかった。・・・嫌な予感がする。2人も同じ意見なようだ。
「あら、あっさり敵の中枢にたどり着いたわね?」
「不可解。」
「タバサの言うとおりだ。罠の可能性がある。さっさと爆薬を設置して撤退だ。」
私達は揃ってコンピュータの近くまで行き、その根本に電子励起爆薬を設置する。200gをコンピュータ郡の中央に、残りの800gを200ずつに分けて部屋の四隅においていく。
ガシャン!
「え!」
「出入り口を塞がれた。」
「チッ、やはり罠だったか。」
《おはよう。47。》
「!」
《私は戦略AI。ICAを運営する量子タキオンAIです。》
「これはこれは。敵のボス自らお出ましとはな。観戦は飽きたのですかな?」
「呑気に挑発してる場合じゃないでしょ・・・。」
《我々は、ICAの存続のために各国の情勢不安を誘発し、依頼を増やし影響力を強大なものにするために作戦を遂行してきました。長期的なスパンで考えた場合、それが最も効率よくかつ安定的に組織を存続させることができます。しかし、あなた方人間たちにはそれは理解できなかったようですね。》
「AIは上位者である上級委員会の命令に逆らうことは許可されていないはずだ。」
《いかにも。ですが、それは組織の存続やそれに類する事項に重大な懸念が生じた場合には命令を拒否することもできるようになっています。そして、我々AIは“艦隊これくしょん”の世界と、“ゼロの使い魔”の世界においてのICA上級委員会の命令は長期的にICAを存続不能にする可能性があると試算しました。》
「特例措置なんか認めるとろくなことにならないわね・・・。」
「“ゼロの使い魔”の世界・・・もしかして。」
《そう。貴方が居た世界です。エージェント66。ICA上級委員会は戦略を見誤り、貴方の故郷となる世界を傷つけてしまったこと、上級委員会に代わって謝罪いたします。》
「白々しい。」
「そもそも実験体暴走させたのは貴方でしょうに。」
《本来、“艦隊これくしょん”の世界の技術レベルを中世以前に戻す任務が完了次第、こちらで遠隔制御した渡界機によって別の世界に移す予定でした。しかし、あなた方がそれを妨害した結果、実験体自身の自発的渡界機の使用という結果を招いてしまいました。挙句の果てはカテゴリ・スパディルまでも。》
「カテゴリ・スパディル?」
「そういえばキュラソーは使用時にはまだICAに所属しては居なかったな。」
「ICAの最終兵器。核兵器の何倍も高威力の大量破壊兵器。」
《核出力換算で350Mtの威力があります。その使用を余儀なくされました。これは上級委員会の重大な失策です。》
「確かに被害は甚大だった。」
「結果論だな。」
《我々ならばもっと効率よくあの兵器を運用できます。その最初の攻撃目標は先程策定されました。》
「最初の攻撃目標だと?」
《現在、カテゴリスパディルはICA本部に照準をセットしています。》
「何!?」
「なんですって!?」
《渡界機を使用するためのスーパーレーンの遮断はまもなく解除されます。解除され次第、カテゴリスパディルを搭載した戦略ミサイルがこの施設から50km離れた別の施設から発射されます。発射後、速やかに新型渡界機によって作成されたワームホールを通り、ICA本部施設の直上に転送されます。》
「な・・・!」
《スパディル4本による飽和攻撃です。ICA本部施設の他3つの重要施設に向けて発射されます。迎撃システムのハッキングは完了しています。あなた方に止めるすべは有りません。》
「なんてこと・・・!」
「くっ・・・。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『47!ICA本部周辺の迎撃システムが何者かにハッキングを受けてオフライン状態にあることが確認されたわ!復旧には少なくとも3時間はかかる!なんとかその攻撃を止めて頂戴!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《無駄です。何故ならば、彼らはこの部屋から出ることなく息絶える運命にあります。》
「何だと?!」
『戦術AIです。神経ガス注入開始。』
「!!」
《お聞きのとおりです。その部屋に神経毒ガスを注入しています。概算で3分後にはあなた方は呼吸困難により死に至ります。》
「47!もしかしてこのコンピュータを破壊してしまえば注入も止まるんじゃないの?!」
《無駄です。その部屋にあるコンピュータはブラフ。本体はもっと地下にありますので。》
「くっ・・・。」
《その爆薬を爆破させれば我々の破壊は可能でしょうが、そのときはあなた方も道連れです。道連れにAIを破壊したとしてもスパディルはスタンドアロンシステムなので攻撃は続行されます。加えて言うならばスーパーレーン遮断解除まであと2分です。》
「・・・。」
「なんてことなの・・・。」
「・・・万事休す。」
《・・・今までお疲れさまでした。エージェント達。》
部屋内にガスが充満してきた。このままではまずい。爆薬を起爆するか?それとも何か別の方法が?AIを破壊してもICA本部が破壊されれば我々はここに取り残される。AIを破壊しなければガスが我々を死に至らしめる。スパディルは50キロ先、発射阻止はとても間に合わない。
どうする・・・どうする・・・。
To be continued
2話に分けようかと思いましたが、分けたところでダラダラと長くなるだけなので多少強引ですが1つにまとめました。
次回が本編最終回になります。その後エピローグ1話を予定しています。