HITMAN2『世界線を超えた先に』   作:ふもふも早苗

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『おはよう47。』

『ブリーフィングルームの周りが慌ただしいのは容赦してちょうだいね。今ICAは非常事態なの。』

『今回の任務は、別件の任務でとある世界に向かったブルーとシルバーを大至急連れ戻してきてもらいたいの。』

『送り出した時点ではただ単に新しく見つかった世界での初仕事の依頼というだけで、暗殺対象も大したことは無いただの一般人。今の彼らなら1時間もかからずに終えられるような簡単な任務のはずだった。』

『でも渡界機で送り出してからわずか10分後、恐るべき生命体がその世界で発見されたのよ。手のひらサイズの小さな生物ではあるけれど、理論上その生物には銃火器も空爆も全く効果を持たず、格闘どころか触れることすらままならないわ。』

『加えて通信機が謎の妨害を受けており、ブルーとシルバーに連絡がつかないの。でも何処に居るかは把握できているから至急向かって頂戴。』

『準備は一任するわ。』


HITMAN2『もっともっと大きく!』

 

 

『東京へようこそ。47。』

 

『東京にしては結構のんびりした雰囲気だけれど、地形的特徴や建造物は東京中心部のそれと酷似しているわ。』

 

『町ゆく人への聞き込みは基本的に諦めて頂戴。彼らは人のような成りをしているけれど、言語を発するところが確認できていないわ。今思えば言語を話せない種族がどうやって依頼を出してきたのかしら?』

 

『でも今はそんなことを調査している暇はないわ。一刻も早くブルーとシルバーを見つけ出して渡界機で帰ってきて。彼らの任務は既に上級委員会によって強制的に中止になっているわ。』

 

『幸運を祈ってるわ。あなたも無事に帰ってきてね。』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

ピッピッピッ…

カーカーカー

ブルゥーン…

アハハハハハ…

 

 

 

何のことはない。普通の東京の町並みといつもの喧騒だ。空を舞う鳥や道を走る車、道を行く小学生くらいの子供。

 

だが違和感はある。どれもこれも行動が規則的だ。子どもたちは友人と談笑しながらも、まるで行進かのような正確な歩幅と速度で道を進んでいく。歩き方も全くブレておらず、下半身の動きだけ見ればまるで軍隊のパレードのようだ。

 

車の方も直線を走るときは常に一定スピード、曲がるときもまるでレールの上を走っているかのような滑らかさだ。あれはAIが自動操縦でもしているのだろうか?そう思えるような動きだ。

 

小鳥たちも米空軍も顔負けのきっちりとした編隊飛行で進んでおり、こちらも曲がる時はほぼ直角に曲がっている。もしかするとこの世界はすべての生物が極度に規則正しくなるような世界なのだろうか?

 

ともかく私は早足でブルーとシルバーを探すことにする。情報部はかなり慌てていたのかその肝心の“危険な生物”に関する情報が殆どなかった。わかったのは武器弾薬兵器類が理論上効かず、そして手のひら大の小ささということだけだ。

 

だが全くの非武装というのも心もとなかったため、一応いつものシルバーボーラーと、年のために技術部から電子励起爆薬と対物ライフル“OSV-96”を借りてきた。いつぞやの幻想郷で天狗の頭を吹き飛ばした強力な銃だ。爆薬も過剰と思われたが1kgを持参した。弾薬は効かずとも爆風なら多少なりともダメージを与えられるだろう。しかし「空爆すら効かない」と言われていたことをこの時点の私は頭から抜け落ちていた。

 

 

 

パーパーパー!

「うっさいわね!ちょっと道にはみ出しただけじゃないの!」

「ね、姉さん・・・」

 

 

 

・・・早速見つかった。というよりも聞こえた。この町は喧騒はそれなりにあるが、話し声や騒音という意味では我々の世界よりも大分少ないので、こんな町中でも数百m先のブルーとシルバーの声がはっきりと聞こえる。私は早速近寄っていく。

 

 

 

 

「・・・?あら?47?こんなところで何を?」

「本当だ。僕たちだけでやれるような簡単な仕事なはずだけれど・・・?」

「お前たちここに居たか。至急元の世界に帰るぞ。」

「ええ?だってまだターゲット見つけてないのよ?」

 

ブルーは怪訝そうな顔をする。若干無意識に臨戦態勢になっている辺り訓練の成果が出ていると言える。

 

「相手は一般人。そしてこの世界の人間たちはみんな他人がやることに全く興味を示さないからかなり暗殺は簡単なはず。諦める理由がない。」

「状況が変わった。かなり危険な生命体が居ることが確認されたために、通信が繋がらないお前達を連れ戻すために私が派遣された。」

「げっ・・・危険な生命体って何よ?コ○ナウイルスみたいなもん?」

「通信が繋がらないって・・・本当だ。何故か電波が全く来ていない。どうりでウィートリーが静かなわけだ。」

「ウイルス性の生命体ではないようだ。詳しくはわからないが手のひらサイズらしい。」

「コロボックルみたいなもんかしら?」

「とにかく戻るぞ。作戦自体、既に上級委員会の勅令で中止されている。」

「わかった。任務が中止されてるならいる意味はないね。」

 

 

私達は連れ立って戻り始めた。幸いにして渡界機のある臨時セーフハウスからそれほど離れていないためすぐに帰れそうだ・・・。

 

 

ピトピトピト

ギャーウワーキャアア

 

 

「な、なんだ?!」

「ちょ、47!シルバー!アレみて!」

「何?!」

 

 

町中に突如として悲鳴がこだました。その方向を見てみると、巨大な球体がゴロゴロと町中を転がっている。恐るべきことにその球体に接触した物体や生物がその球体に取り込まれていっている。いや、取り込まれているというよりも金属が磁石にくっつくように球体に貼り付けになっていると言ったほうが良いだろう。

 

 

「ちょ、ちょっと!アレ何よ!」

「あ!まずい!あの方向は!」

「くっ!」

 

 

なんとその球体は転がりながら臨時セーフハウスの方へ転がり始めた。私達は急いでセーフハウスに向かったが、既の所でセーフハウスはその球体に飲み込まれ建物ごと取り込まれて運ばれていってしまった。

 

 

「ちょ、ちょっとどうするのよ?!セーフハウス持ってかれちゃったわよ!?」

「セーフハウスを持っていかれるってすごい単語だよね・・・。」

「シルバー!茶化してる場合じゃないでしょう!?」

「違うよ!あまりの光景に唖然としちゃっただけさ!」

 

 

兎にも角にもセーフハウスが無ければ元の世界に帰ることはできない。個人名転送を依頼しようにも、私の通信機までセーフハウスが巻き込まれてからは圏外となって本部との通信ができない。となれば方法は一つしか無い。

 

 

「あの球体を止めるぞ。」

「本気!?」

「止めるったって・・・ビルまで飲み込み始めたよ?どうやって・・・。」

「電子励起爆薬を持ってきている。その爆発で止める。」

「おお。あの最強の爆薬。量は?」

「1kg。」

「随分持ってきたわね・・・。でもそれだけアレば!」

「ああ!止められるかもしれない!」

 

 

私達は早速行動を開始した。

 

 

 

 

「・・・アレガ怖イ怖イ暗殺者サン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観察しているといくつかわかったことがある。球体の大きさは既に10階建てのビルを余裕で飲み込むほどに大きくなっている。が、何でもかんでも巻き込めるというわけではないらしい。先程も結構な速度で東京タワーに衝突していたがタワーはびくともせずにその球体を弾き返した。思い返せばビルを巻き込むより前、住宅を巻き込んだ辺りでは中層ビルには弾かれていた気がする。つまりあの球体は大きくになるに連れ巻き込める物の大きさが大きくなっていくということだ。

 

既に直径が100mを超えているあの巨大な球体に爆薬がどれだけ効くのかわからないが、ともかく道の先の道路の真ん中に爆薬を搭載した車を停車させた。巻き込ませたあとで爆破する方法も考えたが、巻き込まれた信号機が未だに点灯しているところから見て、あの球体に取り込まれるとこちらの管制を受け付けなくなる可能性が浮上したため、巻き込まれる直前で起爆することにする。

 

 

「47!きたわよ!」

「真っ直ぐこっちに来る!」

「準備は完了している。離れるぞ。」

 

 

私達は転がってくる直線上から直角に退避する。車は丁度交差点の真ん中においたため遠くからでもよく見える。なまじ他の車が規則正しく車線を守って走行しているのもあって非常に目立つ。が、あの球体はそんなことを全く機にする様子もなく突っ込んでいく。先程、ついに東京タワーすら飲み込んだようだ。

 

 

「来た来た来た!今よ!47!」

「起爆だ!」

「ああ。」

カチッ

 

 

 

ドカアアアン!!

 

凄まじい爆炎とともに周囲の建物ごと盛大に爆発する。接触目前だった球体もその爆風に飲まれ・・・

 

 

・・・おかしい。確かに球体の動きは一旦止まったがそれよりももっと不思議なのは爆炎がいつまで経っても霧散しないことだ。煙が残るのは珍しいことではないが、中で発生した炎すら全く消える様子がないのはどういうことだ?

 

「え?アレどうなってるの?」

「えーっと・・・とりあえず止まったのかな?」

「・・・確認の必要があるな。」

 

 

私達は意を決して近づいていく。近づくに連れその状況はさらに詳細にわかり、そしてさらに疑問に拍車をかけた。

煙が一切動いていない。爆炎も、それで発生した大量の煙も。なんならあの壁に沿って走っている白いものはもしかすると・・・衝撃波か?

そう。衝撃波を含めたあの爆発によって発生したすべてのものが球体に接触した瞬間に、まるで時間が止まったかのように全てが静止している。私は非常に嫌な予感がした。

 

 

「・・・ブルー、シルバー。一旦退却するぞ。」

「え?どういうこと?」

「止まったんだからセーフハウスを探さないと・・・。」

「私の予想では・・・この球体はまだ止まっては居ない!」

「「えっ?!」」

 

 

言うが早いか球体は再びゆっくりと動き出した。恐るべきことにその爆炎自体すらあの球体は物体と判定して吸着したのだ。そしてあろうことかこちらに向かって突っ込んできた。

 

 

「まずい!」

「げげげ!こっち着たわよ!」

「車は・・・間に合わない!」

 

 

周りの高層ビルを巻き込みつつ、こちらに凄まじい速度で迫ってくる。我々が起こした爆発はただ単に球体の表面積を大きくしただけのようだ。

すぐに我々は踵を返してビルの間に逃げ込もうとするが全てが遅すぎた。既に球体は目前まで迫っている。今からビルの間に逃げ込めたとしてもビルごと取り込まれるのが落ちだ。万事休すかと思われたその時。

 

 

 

ニュルルン

「うわ!」

「きゃあ!」

「なっ!」

 

 

 

突如として球体との間に現れた巨大な“手”が我々をひっつかんでその手が出てきた空間の裂け目のような場所に引きずり込まれた。

 

次に気がついた時、我々は・・・宇宙に居た。

 

 

「うーん・・・あれ?ここは・・・?」

「アレって・・・地球?ってことはここって・・・。」

「宇宙ダヨ。一旦コッチ来テモラッタンダヨ。」

「「「?!?!」」」

 

 

突如として背後から話しかけられたことにも驚いたが、振り返ってみるとさすがの私も唖然とした。

話しかけてきた男はやたら極彩色の中世ヨーロッパ風の服装をしていたが、如何せん大きさが桁違いだった。なぜなら彼と我々の間には太陽と思われる光り輝く星があるにも関わらず、彼はその太陽の後ろ、しかも太陽の数十倍はあろうかという巨体で我々を見下ろしていた。

 

 

「でっか!!」

「あ、あなたは・・・?」

「ボク?ボクハ“王様”。イヤー危ウク ウチノ息子ノ“カタマリ”ニ、巻キ込マレルトコロダッタネ!」

「王様・・・この世界の統治者ということか。」

「マアソンナトコロ。今回ハゴメンネ。ウチノ“メイツ”ガ勝手ニ呼ンジャッタミタイデ。」

「メイツ・・・?ってクライアントのことかしら?」

「おそらくは・・・ということは依頼自体間違ってたってことか。」

 

 

色々突っ込みたいことが多すぎるが兎に角、権力者に会ったのは大きい。なんとか現状を打開する手立てを模索しなくては。

 

 

「デ、君達ハ元ノ世界ニ帰リタインダヨネ?」

「あ、ああ・・・。」

「ンー・・・返シテアゲタイノハ山々ナンダケド・・・。」

「なにか問題があるの?」

「君達ノ世界。コノ世界ト違ウヨネ。ソッチノ世界ガ何処ニアルカワカラナイト帰セナインダ。」

「えーっ?!じゃあどうするのよ?!」

「何カ手ガカリガアレバ良インダケド・・・通信トカデキナイノ?」

「それが・・・ずっとオフラインなんだ。何故かこの世界じゃ通信ができなくて・・・。」

「どんな状況でも通信できるのが売りなはずなんだけどねえ・・・。」

 

 

手元の通信機は相変わらず圏外だ。・・・が、さっきより若干ではあるが電波が微弱に入るようになっている。何故か“王様”が身動ぎすると通信が若干回復する。もしかすると・・・

 

 

「“王様”、少しよろしいだろうか。」

「ン?ドシタノ?」

「少し移動することはできるだろうか?」

「・・・47?」

「ドコニイキタイノ?」

「いや、王様自身が少し・・・あっちのほうに移動してほしい。」

 

私は明後日の方向、土星がある方角を指差した。

 

「イイケドサ。ドウシタッテノサ。」

 

王様はその巨体に似合わない凄まじいスピードで持って土星の向こう側に移動した。余談だが彼のシャツに付いているボタンよりも土星のほうが小さい。

 

 

「あれ!?電波が回復したよ!」

「うっそ!?あ!こっちも!」

「やはりか・・・。」

「エ?ドウイウコト?王様ニモワカルヨウニ教エテヨ!」

「王様はどうやらタキオン粒子やニュートリノすらも遮断するらしい。」

 

 

何のことはない。電波が常に圏外だったのは、ただ単に王様の巨体が電波を遮断していただけだったのだ。私は早速本部と通信を試みる。

 

 

「こちら47.聞こえるか。」

『47!よかった。あなたとの連絡すら途絶えてしまって・・・。』

「無事にブルーとシルバーと合流。それと・・・」

「コンニチハ!貴方達ガ彼ラの上司サンダネ!」

『ええ!?』

「王様、すみませんが気軽なノリで量子暗号回線に割り込まないでください。」

「オット、ゴメンネ。今回ハウチノ“メイツ”ガ迷惑カケチャッタミタイ。スグニ送ッテクカラ上司サンは心配シナイデ!」

『は、はあ・・・?』

「まあ、そういうことだバーンウッド。直ぐに戻る。」

 

 

ふと地球を見てみるとヨーロッパ大陸の一部が削り取られたようになっている。残っている海岸線から察するに、あの球体は国家を国土ごと取り込み始めたようだ。

 

 

「オ、ソロソロ星モデキソウダネ。ジャア送ルヨ。君達ト話セテ楽シカッタ!」

「勿体ないお言葉・・・って言ったほうが良いのかしら?」

「まあ・・・一応王様らしいし・・・。」

「イツカ息子連レテソッチノ世界ニモ遊ビニ行クヨ!」

『「「「それだけはやめて(くれ)」」」』

 

 

私達3人は王様の背後から現れた虹に包まれ・・・気がつくと本部の渡界機の送信装置の上に居た。

 

 

 

 

 

 

 

~~1時間後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『さて、どういうことか説明してもらうわよ。』

「ふむ・・・まず「危険な生命体」とやらは確認できなかった。代わりにすべてのものや事象を吸着して巨大化していく球体に出会った。」

「そうそう。すごいのなんのって、人や車はもちろん、家やビル、はては爆風すらくっつけて転がってきたのよ!」

『爆風すら・・・?どういうことかしら。』

「おそらくあの球体に触れた瞬間に爆風や衝撃波のような見えない動的な事象すら物体と同列に扱うような世界線なんだろう。」

「実際衝撃波は近くのビルを震わせる段階で止まってたしね。」

『ふうむ・・・非常に興味深いわね・・・。ああ、あとあの“王様”とか言うのは?』

「彼は・・・なんというかすっごいでっかかったわ。それこそ宇宙の星々よりもずっとね。」

「うん。地球や土星が彼の服のボタンよりも小さかったからね。」

「おそらくだが全宇宙を統括する覇者なのだろう。相当な権力者だと推察できる。」

「まあ、その割には結構フランクだったけどね。」

「ああ、あと息子さんがいるみたいだよ?あの球体は息子さんが作ったとか言ってたような・・・。」

「“作った”とは言っていなかったが“息子のカタマリ”とは言っていた。」

『カタマリ・・・調査の必要がありそうね。ICAの暗号通信に簡単に割り込める技術力も持っているようだし・・・。』

「アレは・・・技術なのかなあ・・・?」

「さあ・・・。」

『兎に角今回はお疲れ様。まだ聞きたいことが山ほど残っているけれど今日のところは疲れてるでしょうからまた明日にしましょう。』

「「はーい。」」

「では私は訓練施設に戻る。」

『47も少しは休みなさいな・・・。』

 

 

 

 

~~ミッションコンプリート~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

・「原初の玉」   

 【+1000】『カタマリに出会う。』

 

・「何でもかんでも」

 【+1000】『カタマリに爆風を当てる。』

 

・「史上最大の大物」

 【+1000】『王様に会う。』

 

・「帰リマース!」

 【+5000】『王様の虹で帰還する。』

 

 




仕事中ずっと塊魂のBGMが頭の中でループしてたのでその勢いで書きました。後悔はしていない。
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