Short Stories FRONTLINE 作:cu_tatsu
突貫工事気味ですが許してやってください。
12月31日、大晦日。
これはどこかに存在するとある司令部での話。
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こんにちは。ボクはとある地区で指揮をしているグリフィン所属の指揮官です。
もう年末も年末。今日は12月31日。早いものですね。年末なんかは大掃除に新年の準備とかなり忙しかったせいか記憶に残ってないほどですよ。気がついたら31日だったって感じかなぁ。
ボクが指揮官業を初めて早一年以上。思い返すとあっという間でした。
最初は右も左も分からずに先輩指揮官や上級代行官、挙げ句の果てには経験を積んだ人形たちへも分からないことを聞いて回ったなぁ。人形たちには苦笑いされたっけ。
もちろん聞いて回るだけじゃなく、空いた時間は過去の記録を元にシミュレーション訓練をしたり、戦術指南書を開いて目を通したりと基礎学習の時間に当てた。基礎がなければ応用もないからね。この辺りはどの分野でも一緒ですね。
色んな人と人形の助けもあって、最近はそれなりに任務を回してもらったりと仕事がある程度こなせるようになってきたって気がします。
実は、寝る間も惜しんで勉強、仕事、雑務と詰め込んで詰め込んで…最終的に体調を崩してしまった時があったんですが
「なんで仕事を全部一人でやろうとするんですか!」
「少しは私たちのことも信用してください!」
って人形たちから怒られたんですよ。
…ボクはみんなが最高のパフォーマンスで戦えるようにと思って雑務でも何でもこなしていたんですが、そのことが仇となった形ですね。
信用してくれって言われたときなんかは
「ボク自身は信頼していたつもりだけど、心の奥では信用しきれてなかったのかな」
って考えてしまいました。
それからは人形のみんなと協力して助け合いながら仕事ができるように気をつけました。みんなの充実して仕事をしている顔が忘れられません。そう、彼女たちは人間をサポートする労働力として生まれた存在で、彼女たちの労働を否定するってことは彼女たちを否定するって事にこの時に恥ずかしながら気付いてしまったんです。
仕事だけじゃなく、行事ごとのイベントも出来る限り開くようにしました。彼女たちも機械といえども人工知能を持った存在。昔の出来損ないとは違う格段に進化した人工知能はまるで人間のよう。いや、人間を超えた人間くささを持っているといっても過言ではないでしょう。
だからこそ、息抜きの時間も大切だと考え、みんなと企画を練ってワイワイ楽しくやってきて...楽しかったなぁ。
こんな事を考えてたらもう今年も残すは数分。基地のみんなが集まっている中、ボクは今年はお疲れ様、来年も宜しくね。といった内容の話を簡単にしたんです。すると、みんな口々に
「こちらこそ、来年もよろしくお願いしますね!」
「来年もバカ騒ぎしようぜ!」
と、楽しそうに返事をしてくれたんです。
そうこうしているうちに、新年まで残すはあと十秒!
10...
9...
8...
7...
6...
5...
4...
3...
2...
1...
「「「新年、明けましておめでとうございます!」」」
「指揮官、実は私たちからお年玉代わりのプレゼントを用意したんだ!」
「えっ、それは本当かい!?嬉しいなぁ!」
「ふふふ、手に入れるのにメッチャ苦労したんだから!」
「さあ、箱を開けてみてくれ!」
「わかったよ。ああ、楽しみだなぁ」
ピーッ、ピーッ、ピーッ........
「こちらチームA、壊滅した司令部を発見した。これより回収作業を開始する」
「うわっ、ひでえもんだぜ。建物も人形のパーツも全部混ざっちまって分かりゃしねぇ」
「無理もないさ、トーシャ。鉄血のエリートモデル率いる大部隊に総攻撃を受けて壊滅しちまってるんだぜ?しかもエリートモデルってのがはデストロイヤーにドリーマーさ。そこらの司令部ではまず耐えられないさ」
「そんな事は俺だって分かってるさ、アルセニー。分かってはいてもひどいもんはひどいもんさ...おい、アルセニー。こいつは人間の死体か?」
「見せてみろ...ああ、グチャグチャで判別が難しいが、コイツは恐らくこの基地の指揮官様だろう。吹っ飛んでた腕の腕章がグリフィンのソレさ」
「榴弾をモロに食らっちまったか。かわいそうにな」
「ああ。だが、戦場では普通にあり得ることさ。俺たちだって死を潜り抜けて今まで生きてるだろ?」
「違いねぇ。だが、コイツはココで指揮官やってて楽しかっただろうかな?」
「なんだよ、藪から棒に...」
「いや、ふと考えてしまったんだが...コイツ、毎日人形たちの指揮官をやってて幸せだったのかとな...」
「さあな。こいつばかりは死んじまった指揮官とやらに聞いてくれ...だが、案外充実してたんじゃないかと俺は思うぜ」
「なんでだ?」
「丁度コレを見つけたんだ」
「こりゃあ、プレゼント箱じゃねえか。よく残ってたな。しかも人形たちから指揮官宛へのじゃないか」
「そうさ。人形個人からの贈り物はあっても、全員を代表してのプレゼントをもらうまではなかなか無いはずだ。そこまで信頼されてたって事だと思うぜ」
「そういうものかねぇ...さあ、無駄話はここまでにして回収作業の続きでもしようや。終わるまで帰れねえぞ...」
「了解了解」
指揮官やってて楽しかったかって?もちろんめんどくさい事や命の危機を感じた事は幾らでもありましたが、信頼しあえる仲間たちと一緒なら乗り越えられましたし、これからもやっていけるはずです。
残念ながら、ボクはこの世界では死んでしまいましたがね。と...ああ、彼女たちが早くこっちへ来いって呼んでいます。本当みんなせっかちなんだから...
それでは、ボクの話を聞いてくれてありがとうございました。これから新しい世界へ彼女たちと行ってきますね!
ラストシーンなんかは突発で思いついた感満載だなぁとか思いつつ....
そんなこんなで2020年もよろしくお願いしますっ!