キャラ崩壊注意。
ジャパリパーク、アンインエリア。
かつてはヒトとサンドスターで生まれたフレンズが共に暮らしていたこの場所も、人がいなくなりフレンズだけが暮らすようになって久しい。
人が作った物は多くが失われるか、放置されている中、アンインエリアにあるボーダー港と呼ばれる場所では、早朝から明かりが漏れる建物があった。
その建物はレンガ造りで、大きな扉があり、その扉の下には二本の鉄の棒が間隔をあけて並び、それがどこまでも伸びていた。
レンガ造りの建物の扉の横には、木の板に「ボーダー港機関庫」と書かれていた。
「ふんふんふーん」
機関庫の中では、黄土色のロングヘア―、頭頂部に灰色の耳を持ち、こげ茶色の甲冑を身にまとうフレンズ、スマトラサイがある機械の手入れをしていた。
その機械はとても大きく、鉄の丸い脚をたくさん持っていて、丸い筒のような胴体を持っていた。
その機械の名前は蒸気機関車、パークがパークになる前に持ち込まれた物であった。
スマトラサイはその機関車の正面についている【C58 204】と記されたプレートを布で磨いていた。
「よし、これだけぴかぴかなら、今日の仕事もばっちりですね」
額の汗をぬぐって地面に降りるスマトラサイ、機関車は各部が磨き上げられ、いつでも動かせように整備されていた。
彼女が機関車の運転室の方へ向かうと、そこにも別のフレンズが準備をしていた。
ボリュームのある髪を左右で束ね、紺色のブレザーを身に着け、青と水色のチェックがらのスカートをはいたフレンズ、ダイアウルフであった。
「ダイア先輩、磨き作業終わりました」
「ごくろう、高いところまでよく磨いてくれた」
「崖上りに似ていて楽しいので」
「楽しめてるなら何よりだ」
ダイアウルフはそういうと自身の作業に戻る、各種計器とにらめっこしながら、機関車の機嫌を確認する。
運転室にスマトラサイも来ると、彼女も確認を開始する。
「水量よし、誤差修正よし、火を入れるぞ」
「わかりました、シマリスちゃん、薪をもって降りてきてください!」
「はーい」
かわいらしい声は運転室の後ろにある、燃料と水を積む専用の車、炭水車から聞こえてきた。
降りた来たのは小柄で茶色い毛をもち、なによりもふもふしたいおっきなしっぽを持つフレンズ、シマリス、その手には薪が抱えられていた。
「火を入れるんですね、はい、どうぞ」
「ありがとう、ダイア先輩の後ろに」
「はい」
「ほら、運転中は大丈夫なのにな」
「あれはやることがいっぱいあるから」
シマリスがダイアウルフの後ろに隠れたのを確認すると、スマトラサイは細い薪や落ち葉をを運転室中央にある口のような穴、焚口投げ込んでいき、ある程度入るとマッチで松ぼっくりに火をつけると焚口のなかに放り込む、火が先に入れていた燃料に燃え移り簡単に消えなくなるほどの勢いになるとシマリスとともに薪を投入していく。
「ゆっくりでいい、出発まで時間はある」
「はい、シマリスちゃん、あとはお願いね」
「はい」
火が付いたところで再度の点検、そうこうしているうちに日も登り、蒸気の圧力も暗転していく。
「よし、出発だ」
「はい」
「はーい」
ダイアウルフが足元のペダルを踏むと、機関庫に汽笛が響き渡る。
続いてブレーキを解除し、機関車がゆっくりと、独特の音を経てながら動き出した。
「右前方進路異常なし」
「左前方進路異常なし、シマリス、薪をくべてくれ」
「はい!」
ゆっくりと進むなか、ダイアウルフが速度を、スマトラサイが蒸気圧を調整し、シマリスが燃料の薪を釜にくべる。
一定の速度を保ちながら進むと、機関車は沢山の線路が並ぶ場所につく。
そこには黒く塗られた掘っ立て小屋に車輪をつけたような貨車が3台、そこに窓と出入りできる軒をつけたような車掌車が後ろについて、周りにはフレンズやボスが荷物を積み込んでいた。
「客車はないのか」
「シマリスちゃん、降りる準備」
「はーい、おいしょ」
汽笛を鳴らしながら貨車の脇を抜けると、機関車を一度止める。
シマリスが旗を腰に刺して降りて駆け出すと、分岐機を操作して進行方向を変える。
「進路変更、問題なし」
「解った」
ダイアウルフは機関車を後ろへゆっくりと走らせる。
スマトラサイは自分の仕事に加え、シマリスの振る赤と緑の旗を確認する。
機関車は先に止まっていた貨車に近づいて行き、大きな音を出して連結する。
シマリスが問題ないか確認し、必要なホースを繋いでいく。
その間、ダイアウルフはボスから渡された書類に目を通していた。
「魚、海藻、海岸に流れ着いたもの、概ねいつも通り」
「行き先は」
「鉱山跡地」
「やったー!」
「スマトラサイは本当に好きだな」
「山を上る機関車を見て機関士を目指しましたから」
スマトラサイは目を輝かせて興奮している。
ダイアウルフはそれを軽く流して積み込みの様子を見る。
海で取れた魚や海藻が箱詰めされて貨車につまれ、その奥ではパークの外から流れ着いた機械や金属の箱やよくわからないものが積まれる、と言うより貨物の大半がそのよくわからない物だった。
眺めていると直ぐに積み込みが終わり、シマリスが帰って来た。
「ダイアウルフさん、ホース繋ぎ終えました、発車出来ます」
「ご苦労、直ぐに発車する」
ダイアウルフがブレーキを解除して、蒸気を調整するハンドルを操作する。
機関車はゆっくりと動き、貨車も一台づつ動き出す。
そうして列車はゆっくりと走り出し、速度を少しづつ挙げていく。
「スマトラサイ、線路に入ってくる存在はいないな」
「はい、フレンズもセルリアンもいません」
「もっと薪をくべますか?」
「いや、山登りに取っておきたい」
「わかりました、少なめにします」
シマリスは薪を手に取ると釜へと放り込む、列車は速度を上げながら進んでいくが、3人に風景を楽しむ余裕はない。
人がいなくなって久しいジャパリパークでは、事情を知らないフレンズが線路に入り込むということが少なくない、そのため汽笛を定期的にならしつつ、ダイアウルフとスマトラサイは進行方向を常に確認しなければならない。
「今日は揺れませんね」
「ボスたちが保守してくれたんだろうな」
「ボスって働き者ですよね」
線路をはじめ、列車を走らせるには多くの手間暇がかかる、ボスは数が多くて最低限だが線路の保守をしてくれる。
先代曰く、ボスはパークの維持に必要なものは優先して保全する、かつてはこの線路もパークの維持に必要なものであった。
だが、今のパークで動く機関車は、この機関車だけだった、ほかの機関車は。
「脱線車両の陰からの飛び出し注意」
「了解、こちらからの飛び出しにも注意します」
線路の脇に転がっているのは側面に大きな扉のついたバスと似た塗装の客車と、同じ色に塗られた四角い棒の様な機関車、どちらも草や若木に飲まれ始めていた。
列車は速度を落として、汽笛を鳴らしながら通過する。
「あれが使えたら楽なのに」
「あれはボスしかうごかせないし、動かしてくれないよ」
あの機関車はパークができたあと持ち込まれたもので、ヒトがパークにある施設や設備の修理や利用のため作られ、ボスが動かしていた。
かつての異変ではボスが動かしていたところをセルリアンに襲われたり、セルリアンの標的にならないよう輝きを壊すため人が意図的に脱線させた。
だが、それを免れた車両もあり、ボスたちが手入れしている。
だが今のパークにヒトは居ない、だからボスは動かしてくれない、ダイアウルフたちには仕組みがさっぱりなので動かせない。
その点、蒸気機関車は先人が使い方を教えてくれた、燃料もパークには木がたくさんある、水も同様、整備にはボスの協力もいるが、何とかこなせている。
線の脇で自然に飲まれていく最新鋭の機関車をしり目に、骨董品の蒸気機関車が駆け抜けていく。
「信号確認、間もなく分岐駅だ」
「こちらでも確認、シマリスちゃん、水の補給があるから」
「はい、あそこのお昼はおいしくて好きなんです」
信号は明かりをともしていない、ただの駅までの道しるべ。
今のパークで線路を走る列車はこの機関車だけ、ボスたちの列車は日の出てる間は走らない。
信号を過ぎてしばらくすると、線路の横に石を積んで作った一段高い場所、ホームとこじんまりとした建物、奥にはネギ坊主のようにも見える給水塔、そしてフレンズが立っていた。
列車がゆっくりと速度を落とし、ホームに入り停車する、駅にいたフレンズはちょうど機関車の運転室のところに立っていた。
黒い髪に赤い目、頭には茶色の羽、そして首にはこげ茶色のマフラーを巻くエミューが、バケットを抱えて待っていた。
「皆さんご苦労様、こちらお昼のジャパリまんサンドウィッチです」
「ありがとう、この駅で休憩する、水を入れ終わったらお昼だ」
「わーい、いそいで入れまーす」
「私も手伝うわ」
シマリスとスマトラサイが炭水車の上に上ると、給水塔についている排水口に括り付けられたひもを引っ張り、水の補給を始める。
給水はすぐに終わり、4人はお昼ご飯を食べ始めた。
「エミューさんのお昼おいしーですー♪」
「こらこら、ゆっくり食べなさい」
「やれやれ、シマリスは相変わらずだな」
「そうですわね」
頬を膨らませて食べるシマリス、それを注意するスマトラサイ、それを見守るダイアウルフとエミュー、駅には静かで平和な時間が流れていた。
「シマリスちゃん、火はもう大丈夫なんですか?」
「あぁ、まだあたしの後ろに隠れることはあるけど、運転中は恐れずに薪をくべてくれる」
「昔のダイアウルフさんみたいですね」
「・・・あまり触れないでくれ、シマリスには話してない、恥ずかしいしな」
「そうしますわね、とくに機関車を追いかけまわしてヒクイドリさんに捕まった話は」
「たのむ、絶対にしないでくれ」
食べるのに夢中でシマリスが聞いていなかったのはダイアウルフにとっては幸運だった。
走る機関車を追いかけまわして最後には怒った先代機関士のヒクイドリの蹴りで一発KO、そこで捕まって今に至るのだが、ばれたら威厳とかそういうのがなくなるので知られたくなかった。
「さて、出発するぞ」
「わかりました」
「はい、エミューさん、ごちそうさま」
「御粗末様でした」
ダイアウルフ達が機関車に乗り込むと、駅舎に入ったエミゥーがポイントを切り替える。
列車は海沿いを離れて、山へ向かう。
「山登り、もうすぐ楽しい山登り」
「シマリス、薪を目一杯投げ込め」
「はい、どんどん投げ込みます」
楽しそうなスマトラサイ、一方でダイアウルフは注意を強める。
列車が山を登り始めると、指示かが激しくなる。
「スマトラサイ、蒸気の調整を細かく」
「はい!」
「シマリスはもっと薪を」
「は、はい!」
「水量に注意を向けろ」
「了解、水量問題なし」
「薪はもっと満遍なく」
「はい、満遍なく、偏りなく」
蒸気機関車は煙を吐きながら山を登っていく、水の調整、薪の調整、ダイアウルフ達は気を抜かず、外を見る余裕もなかった。
そうして苦労して山を登っていくと、勾配が緩くなっていく。
「よし、後はゆっくりと行こう」
「ふぅ、大変でしたけど、外の景色を見れば」
「海が見えないね」
列車は山を登り、間を抜け、終点へと近づく。
沿線には踏切の遺構や建物の残骸が増えていく。
線路も増えて、パーク設立以後の客車や貨車が留め置かれている。
「構内進入」
「構内進入、また増えてますね」
「でもボロボロです」
列車はエミューがいた駅よりも大きいが駅舎がなく、沢山のホームが並ぶ、その一つにはいる。
パーク設立以前は鉱山の駅だったここは、パーク設立以後は設備を生かして鉄関係の再利用施設になり、今もボスとフレンズが稼働させていた。
列車が停車すると直ぐにボス達が貨車につまれていた荷物を下ろし始めた。
そんなボス達の後ろから白衣に眼鏡、髪の一部が白い、バビルサ。
「ご苦労様、やはり君達の仕事は速いね」
「バビルサか、相変わらず変な薬を作ってるのか?」
「そちらに全力を注ぎたいのだが、機械や設備の修理が多くてね、私はドクターなのにだ」
「ここにいるからでは?」
「スマトラサイ君は厳しいな」
バビルサはオーバーにやれやれとため息をつく。
彼女の本業は薬の開発や医療だが、それに使う道具を作るためここを縄張りにしたのが運のツキ、機械や設備の修理を押し付けられ、本人も自分の道具を修理するため技能があり、今では薬を作るより機械を弄る時間が長くなりそうな状況であった。
「とにかく、外の機械は届けたぞ」
「パークで金属は貴重だ、手先の器用な連中も呼んで調べるとしよう」
パークの外から流れ着いた機械や金属はパークで産出しない金属を手に入れる数少ない手段、集めて鉱山跡に持ち込めば、後はボス達が加工する。
運が良ければまた使えるようになる、バビルサのラボには外からの機械だらけらしい。
バビルサと話していると、列車の横に客車が入って来るが、機関車が見えない。
客車が汽車に並ぶと客車の後ろに小さな機械、それを操るフレンズがいた。
「ダイアさん、皆さん、お元気そうでよかったです」
「ミナミコアリクイも元気そうだな」
「はい、この子を使っておっきな車両を動かすのは楽しいですよ」
「その車両移動機と君の相性はぴったりだね」
白い服に丈の短い黒いオーバーオールを着たフレンズ、ミナミコアリクイは車両移動機の上で手を振っていた。
彼女もこの鉱山跡に住んでいるフレンズで、別のエリアから来たらしい。
「ミナミコアリクイさん、客車の修理終わったんですか?」
「はい、古い客車は頑丈だから」
「なか見てきてもいいですか?」
「やった、ミナミコアリクイさん、見せて見せて」
「シマリスちゃん、落ち着いて」
シマリスは線路に降りると一目散に客車に入り、ミナミコアリクイが続く。
「シマリス君は相変わらず騒がしいな」
「元気なのはいいことだ」
「そうですよ、元気がないと機関士はできませんわ」
「火を克服するほどの好き、興味深いが、詮索はやめておこう、ヒトのことは言えないからな」
ダイアウルフ達もバビルサも、理由は違えど好きなことの為に火への恐怖を克服している。
本気で好きなことの為なら、なんとかなるものらしい。
「それより、今日は泊まっていくのか?」
「いや、アタシ達はシマリスが戻って来たら帰るよ」
「そうか、次来るときまでには新型を直そう」
「あら、直すつもりだったんですか?」
「何分、脱線や転覆で損傷が激しくてね、倉庫や遊具になっていた古い客車の方が直しやすかっただけだ」
パーク設立以後の客車もここに修理の為に集められたが、セルリアン対策の破壊で修理に時間がかかり、直せない機材も多い。
古い客車は公園の遊具や倉庫、または放置されていたが、使われている技術が今のパークで何とかできたので、客車と言えば古いやつとなっていた。
「私は列車に乗るならエアコンの効いた快適な列車がいいのだよ」
「昔走っていた、豪華列車のようにか?」
「職員用の列車にすらあったそうだが」
そんな話をしていると、客車の窓を開けてシマリスが嬉しそうに叫ぶ。
「ダイアウルフさーん、スマトラサイさーん、この客車いすがふっかふかです!」
「それはよかった、あとは帰ってからだ」
「帰り支度をするから戻りなさい」
「はーい、ミナミコアリクイちゃん、またね」
「はい、特別な客車、見せてくださいね」
「うん!」
シマリスが戻ってくると、機関車と貨車を切り離し、機関車だけで進む。
鉱山跡の隅には、機関車の向きを変えるための設備、転車台がある。
丸い輪の中に橋が架かったような見た目のそれに、ゆっくりと機関車が進入し、収まったところで止まる。
「行ってくる、シマリスはスマトラサイの代わりに水圧系を確認してくれ」
「はい、頑張ります」
「気張らなくてもいいんですよ」
ダイアウルフが機関車から降りると、転車台の端に行き、橋の部分にある棒をつかむ。
「さて、よいしょっと!」
彼女が少し力を入れると、転車台が動き出す、力を調整してゆっくりとだが、数分の内に機関車は反転、スマトラサイの運転でゆっくりと転車台を出た。
先ほど客車がいたホームに戻ると、引っ張て来た貨車に、修理されたばかりの客車が2両つながっていた。
「よし、スマトラサイ、連結作業はアタシがするから、運転は任せる」
「は、はい」
スマトラサイはゆっくりと後退させるが、少し勢いがついていたようで、連結とともに列車全体が少し後ろに下がった。
「もっとゆっくりするんだ、焦る必要はない」
「す、すいません」
「ゆっくり覚えていけばいい」
ダイアウルフは手早くホースをつなげると、運転室へと乗り込み機関士席に座る。
スマトラサイが蒸気圧や水量を確認し、シマリスが薪をくべる。
「さて、ここから楽しい山下りだ」
「ダイア先輩、好きですものね」
「あの風を切る感覚が何よりもたまらないんだ」
「気持ちいいですもんね」
「さぁ、行くぞ」
汽笛を鳴らし、列車が出発する、今日は家に戻り、明日もどこかへ何かを運ぶために。
人選は半分が直感でございます。 以下簡単な選んだ理由とか設定とか。
ダイアウルフ
アプリではサーバルの自転車を追いかけていたので、機関車がいたら追いかけるかなと。
当代の機関士、運転は体で覚える。
スマトラサイ
サイが火を消す話を聞いたので、最初はシロサイでしたが変更。
当代の機関助士、高いところのお手入れが好き。
シマリス
スコップ持ってたかなと思ったがそれは別の子、だけど気に入ったので続投。
当代の火夫、薪を頬袋に入れて怒られたことが1回。
エミュー
アプリでアンイン関連のエピソードがあったので。
バビルサ
博士、学者タイプで、火を扱えて薬品とかも使えるからいいかなと。
ミナミコアリクイ
EX、アントに乗せたかった、ただそれだけ。
C58 204
製造番号はパークになってからつけられたものでフレンズのごろ合わせ、実際の製造番号とは関係なし。
パークには石炭がなさそうだけど木はたくさんあるから薪炊き、タイのC56は薪炊きだったとか。
パークがパークになる前に持ち込まれた、パークになった後も当時の機関士がボランティアで維持していてフレンズに運転を教えたのも彼ら、その技は人がいなくなった今も受け継がれている。