ただ旅をさせたかった、それだけなんだ、許してくれ。
鉄道での旅が好き。
そういうと、ほかのフレンズには変な顔をされる。
フレンズが鉄道に乗るときは、遠くでイベントとか、アイドルのライブとか、しかも余裕があるときに限る。
でも、私は違う、鉄道に乗って旅をするのが好きな、変わり者。
私はチベットスナギツネ、ジャパリパークのサンカイで暮らす、変わり者のフレンズ。
「ふぅ、おいしい」
仕事を終えて、何処にも寄らずに直行してきたから、夕飯と一緒に買ったお茶が美味しい。
自分がいるサンカイセントラル駅はサンカイエリア最大の駅、こんな時間でも観光客が沢山いる。
「まぁ、誰もこっちは見てませんけど」
観光客が沢山なのはパークセントラルからくる列車のホーム、こっちのアンイン方面のホームは自分だけ、少し早く来すぎたみたい。
「ホームに来るまで後10分ならそうでもないか」
観光客相手の列車は時間厳守だけど、職員、フレンズ相手の列車はそうでもない。
ホームに定刻通りに来ても、出発が遅れるのはよくあるし。
あっ、騒がしくなってきた。
「今のうちに、切符を確認」
サンカイセントラル駅発、ホクリクエリア経由、アンインセントラル行き、よし。
パークスタッフカード、よし。
後は列車を待つだけ。
「・・・来た」
遠くに明かりが見えて近づいてくる。
赤い機関車がホームに入り、その後ろに青い荷物車に客車、これから乗る列車。
「ナイトサファリ・アンイン、こじんまりしてて良いですね」
パークの職員、フレンズ向けの車両は古い車両が沢山ですけど、観光客の目に触れるので見た目は綺麗です。
機関車はよくわかりませんが赤いディーゼル機関車、客車は急行型客車が5両、荷物を積む荷物車、その間に、自分が乗る車両。
「やっぱり寝台車は私だけ」
寝台車、本当は一つの群れみたいに使うらしいけど、ポツンと1両くっついてる。
乗るのは自分だけ、まぁ、普通に乗るには高いし。
「切符拝見」
「どうぞ」
「パークスタッフカード認証、職員優待切符ヲ有効ト判断、ヨイ旅ヲ」
「ありがとう」
車掌のボスにスタッフカードと切符を見せる。
改札でもしたけど、不正防止とかでこうしないと安くならない。
これの為に頑張ってパーク関連会社の職員になったようなものだし。
「私の席は、ここですね」
座席は真ん中、誰もいないから車両は貸し切り同然。
これだから寝台列車の寝台車は楽しい、座席車は夜行性の子や職員が沢山乗るから少し窮屈だけど、此方は高い分楽に眠れるし静かだし。
「ふぅ、横になれるのはやっぱり良いですね」
寝台は広くないですけど寝転べるので楽ですね。
今日も1日よく働きましたし、体も疲れてます。
「次のお茶を・・・あ、いつの間に」
列車が発車してる、まどろんでる間に出発時間が来たんですね。
駅を出てすぐは建物がいっぱいですけど、少しすると、サンカイならではの光景が広がります。
「星がきれい」
サンカイエリアは砂漠と荒野が大半で、海辺や川沿い、オアシスの回りに町がある。
その間を結ぶように鉄道や道路が整備されてる。
だから町から少し離れるだけで街灯も減って星がきれいに見える。
「・・・星を見てたらお腹が空いてきました」
星は綺麗でもお腹はすきます。
買ってきたジャパリまんでささやかな晩餐を。
「やっぱり、ジャパリまんは美味しいですね」
急いでるときは取り敢えずジャパリまん、外れなしは正義ですね。
とはいっても、やっぱり飲み物は欲しいですね、買って来ましょう。
「今は止まってましたか、さて、ほうじ茶はあるでしょうか?」
パークだと夜行列車は貨物列車や荷物列車の合間を縫って走るんで、こうして小さな駅で止まることはよくあります。
揺れないので入口と反対にある自販機にいくのも楽ですし。
「ありましたね、おや、あれは」
隣のホームにいるのは、貨物列車みたいですね、アンインから来たのなら、あと少しで目的地か、そのままセントラルかですね。
っと、こっちが動き出す前に、座席に戻らないと。
「あぶないところでした、こぼしたらかっこ悪いですし」
この辺りから、動き出すときに結構来るんですよね。
これまでどれだけのほうじ茶が犠牲になったか、覚えたくもありません。
「山間だと、星もよく見えませんね」
北上すると線路は山肌にそって引かれてるので、夜の車窓はつまらないんです。
こうなると、出来ることは一つだけ。
「おやすみなさい」
消灯前ですが寝ます、どうせ深夜は事故防止で走りませんし。
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「・・・あぁ、朝ですか」
折角の夜行列車なのに、夢に職場の人間が出てくるなんて、しかもフェリー移動でしたし。
「朝御飯は・・・忘れてました」
ジャパリまんはきのうの夜に全部食べちゃいました。
車内販売もないですし、終点につくまでなにも買えません。
一番は、いまどこにいるかですけど。
「ジャパリ大鉄橋の上」
パークの外に広がる大海原を楽しめる絶景ポイント。
この景色を見ながら朝御飯はを食べられたら、最高だと思います、本当に。
でもありません、終点はまだ先なので、朝に朝御飯も難しいです。
「もっとジャパリまんを買うべきでした」
後悔先に立たず、仕方がないので飲み物で誤魔化しましょう。
私は鉄道の旅が好き、でも、旅はうまくありません。