例えば、の話   作:鈴鹿

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猫。
気紛れで愛らしく、しかし人には懐かない。
そこに利があれば、話は別だが……。


トモダチの話

今日もまた、私の好きな歴史の授業がやってきた。

いや、より正確に表すならば、「やっと」のほうがいいか。

ここ二日ほど、この間の国王陛下の演説によって立候補していった生徒の抜けたアレコレの雑務やら何やらでバタバタとしていたせいで、授業のほとんどが自習ばかりになっていたのだ。

その中にはむしろ自習になってよかったと思う授業もあったのは勿論だが、この歴史の授業は元々の受講生が少なく、魔法を磨く上で必要とは言えないために再開が延びたのはいただけない。

お陰ですでに三回も歴史の授業が延期され、その間に先生と会うことは出来なかったのだから。

そのくせ、私はあまり好きじゃない魔術論理や実践の授業はやたら早々と再開されたのだからたまったものじゃない。

 

しかしこの歴史の受講生、あの演説からなんとたった一人しかかけていないのだ。

その一人の話はどうでもいいので割愛するとして、ここの受講生は陛下のお誘いはお気に召さなかったということか。それとも、アサインメンツ先生の思想に感化されているのか。

どちらにせよ、一名を除いてこの面々はまだ先生の授業を受けたいのだろう。

同志がいるのは喜ばしい限りだ。

もっとも、先生にそんなことを言おうものなら絶対に嫌そうな顔をするに決まっているけれど。

 

ただ皆と教室にいるだけだというのに、私は何となく嬉しくなっていた。

それは人数が減らなかったことがか、それともようやく歴史の授業が受けられるからかは分からなかったけど。

 

「おっとー?クロちゃん何笑ってるのー?」

 

ぼんやりと笑っていた私に、元気のいい間延びした声が届く。

その音源を辿って振り返ると、そこには猫のように幸せそうな顔をした私の友人――モナルカ・リュンクスが荷物を片手に立っていた。

何故後ろにいたのに私の表情が分かったのか。

 

「隣座るねー」

 

「あ、うん。どうぞ」

 

ほわんとした雰囲気に、先ほどの疑問が押し流される。

まぁ、いつもの事だ。気にするだけ無駄なのだろう。

モナルカは適当に教科書やらノートを広げると、その上にパタンとうつ伏せて顔をこちらに向けてくる。

 

「でー?何か良いことでもあったの?」

 

「良いこと、ね。やっとこの授業が再開されるのは、とっても良いことだと思うよ」

 

「あー、クロちゃんあの先生好きだもんねぇ」

 

「モナルカは好きじゃないの?」

 

んー、とモナルカが首を傾げる。

次いで人差し指でカリカリと頬を掻いてどうだろうなぁ、と呟いた。

 

「まー嫌いじゃないよ?でも、好きでもないかなぁ」

 

「それはつまり?」

 

「嫌いじゃないだけ、かな。色々教えてくれるのは楽しいんだけど、あの暗いのはダメかなー」

 

あの暗いのが苦手、というのはよく分かる。

先生はいつも何かと言えば皮肉混じりに薄ら笑いをする。

性格と属性が関係あるのかは知らないが、あの先生は確かに闇というのにぴったりだろう。

そんな薄暗いところばかり見ないで、たまには明るいものも見れば良いのに、と思うこともよくある。

それがあの先生の良いところでもあり、悪いところでもあると思う。

 

「クロちゃんはさー、あの先生のどこがいいの?」

 

「全部」

 

モナルカの何気ない問いかけに、短く即答する。

勿論その答えは本心からのもので、わざわざ誤魔化したり慌てふためくようなものではないと自信を持っている。

具体的に言うなら、あの容姿は同姓として羨ましいと思うしあの陰気な雰囲気は何処か落ち着く。知識の多さも尊敬するし、先生の感性は私にないものを見つけさせてくれる。性格に難があるかもしれないが、それは現実を直視しているということで、無闇に理想や思想を掲げていないし押し付けないから私は好ましく思える。

それだけのことなのだ。

何も難しいことはない。

 

「おー、即答だねぇ」

 

「一応断っておくけど、恋愛感情とかそういうのはないからね」

 

「流石にそれは分かってるよー?まぁ、恋愛は人それぞれだとは思うけどねぇ。私は嫌だけど」

 

「私もそれはちょっとね……。ところで、人それぞれって便利な言葉だよね。それ言われると大抵の話が続かないし」

 

「話を切るための常套句みたいなものじゃないかなぁ。ほら、「月が綺麗ですね」みたいな」

 

「それは何か違うでしょうに。でもまぁ、確かに常套句みたいなものね」

 

「それでも続けようとされるとイラッとするよねぇ」

 

何でもない会話をするうち、ガラリと扉を開けて先生が入ってきた。

わいわいと話していた生徒がそれを見て口を閉じ、すぐに席に着く。

先生はそれを確認もしないまま、いつものように淡々と授業を開始した。




猫可愛いよ猫。
家に三匹ほどいます。
でも猫アレルギー。
毎日が地獄です。
でも可愛いから許す!
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