本来、もっと後の
イベントのはずでしたが
七夕なんだから
さっさとシノちゃん書け!って
黒塗りの高級車に乗った男が...
今日は7月7日
とある地方では
一つの節目として七夕というものがある
そのとある地方では、笹に短冊を吊るして
詩や願い事を書き綴るという風習がある
一種のお祭りという一面もあり
多くの人が集まり賑わう日でもあり
また、運命の二人が
1日だけ会えるという言い伝えもある
ここ、グリフィンの司令部でも
戦術人形たちの安全祈願及び
交流、親交を深めるため
上層部より立派な葉竹と
戦術人形たちの休暇を受け賜わった
残念ながら私には、毎度のことながら
書類の山も受け賜わる羽目になったが...
せっかくなのでと一番目に付く
司令部入り口の大広間に置いた
願い事を綴る短冊を笹の横に置き
周辺住民も一緒に飾れるようにし
各戦術人形にも
一枚ずつ配布することにした
日が沈んて来て
短冊がたくさん吊るされ
少し重たそうに垂れ下がる葉竹
外ではお祭りを開いているらしく
とても賑わっている
こういうときだけは
平和というものを感じられる
戦術人形たちに誘われたが生憎
仕事の山があるため遠慮しておいた
代わりに休憩がてら
過労で私と同じく
腰の曲がってそうな葉竹を眺め
みんなの願いの詰まった短冊を
眺めることにした
緑から黄緑の
鮮やかなグラデーションで
彩られた竹の色と
シンプルでさまざまな
単色の短冊でおめかしされていた
...なぜか、笹の先には
星が刺さっているのだが...
それはさておき、本命の
みんなはどんな
願いをしているでショーの時間です
指揮官に対して書いてあることであれば
反省しなくてはいけないことなので
見なければならないし
私は、できる限り
戦術人形たちの願いもかなえたいのだ
のぞき見したいとか
そういうことではない、断じて
・・・
フフ、やっぱり私は、天才だからな
みんな私のことを褒めたり
いい志を持ってくれている
(一部真面目に指揮官が
仕事をしてくれますようにと
書かれているのは気のせいだろう)
本当にいい子たちに恵まれたな...
おっと、目から汗が...
それらのほかに
その戦術人形らしい願い事も
多く見られた
部下達ことを綴った願い
おなか一杯チョコレートが食べたい
猫を飼いたい
体を成長させたい?
416に起こされずにずっと寝ていたい..
長期休暇を取ってずっと休んでいたい....
喫茶店にジャックダニエルを置け......と
一部注意しないといけないことが
出てきたな...
でも、十人十色だなと思う
見てて楽しいな...
大体だれが何を書いたか察しはつく
日頃の行いがいい子は
できるだけ願いを聞き届けてあげたいな...
そういえばカルカノM91/38のは...
と、葉竹の反対側の短冊を確認しようと
回り込むと丁度を向かい側には
カルカノM91/38が短冊に願いを書いていた
声をかけようと思ったが
あまりに熱心に書いており
後ろに立っても気づく素振りはなかった
今日の彼女はいつもの衣装とは違っており
彼女の姉のカルカノM1891が作ったであろう
”ユカタ”というものを着ていた
いつもながらいい仕事をしている
彼女の色である紫色をベースに
鮮やかでありながら奥ゆかしく
かわいらしさなどを感じさせられる
服に仕立て上げられていた
どれだけ長い間見ても飽きないほどの
好奇心を持ちそうだったが
相手は女の子だ
たとえ戦術人形とはいえ
部下とはいえ
誓約しているとはいえ
あまりじろじろ見るのは良くはない
私は紳士だからね
少し名残惜しい気はするが
後ろからじっと見ていることが分かれば
恥ずかしがって
プライドを気付つけられた等々の理由で
話を聞いてもらえなくなりそうだ
今気が付いて
話しかけることにしようそうしよう
「願いはこれにしましょ...」
「おっ、シノか
どんなお願い事したんだ?」
「きゃっ!し、指揮官!
見てしまいましたか!?」
かなり慌てている
後ろからちらちら覗いてはいたが
短冊のお願いについては
本当に見ていないので
首を横に振る
「いんや、”まだ”見てないよ
まぁ~シノのことだから
カノ姉のことについて
書いたんだろうな!」
鎌をかけてみる
「い、いえ...そう...そうじゃ...
...
そうですね、お姉さんと
一緒にいられるように...と
そう、お願いしました」
カルカノM91/38らしいなと思えた
私が入ってないのはとてもさみしいが...
誰がどう見てもカルカノ姉妹は仲が良く
カルカノM1891も面倒見がよく
妹を見捨てるようなことはしない
カルカノM91/38も嘘をついたり
憎まれ口を言ってしまうようなタイプだが
彼女なりに姉を尊敬し
とても大切に思っているのであろう
とても大切に思っているがゆえに
失うのが怖いのだろう
気持ちはわからなくもない
彼女達は戦術人形だ
いくらバックアップがあるとは言え
絶対ということはない
好きで嘘をついているだろうが
どこか見捨てられはしないかと
心配しているところがある
心配をしているが故
嘘をついたりしているところも
ないとは言えないかもしれない
だが、あのお姉さんが
妹のことを見捨てるなんて
そんなことは絶対ないし
嘘も含めてカルカノM1891は
妹のことを愛しているであろう...
「...カノ姉ならお願いしなくても
シノの隣にずっといてくれると思うけどな
...でも、お願いすることは大事だね
それだけ大切に思ってるってことだから
...と思ってたけど
シノが正直に言うってことは
裏があるのかな?
もしかして
実は別のお願いだったりして...」
「...指揮官、戦術人形にも
プライバシーがあるんですよ
”あ の こ と”
お姉さんにいいつけてしまいますよ」
「それは困ったな~」
そんなことはない
純粋潔白な指揮官は何もやらかしてない
やらかしてない...はず...
これもカルカノM91/38の嘘だろうが...
...この嘘に騙されてみるか...
「茶化してますね...指揮官が司令部で...」
「待った!私が悪かった!!!
カノ姉にはこのことを内緒に!
あ~そうだ!書類整理が
まだ残ってるんだったな!!!
また後で~~~」
一目散で逃げ出した
あれは本当に何か握ってる顔だ
私の背中には冷たい汗が流れていた...
「指揮官...」
一言口からこぼれた
...指揮官も嘘つきですね
本当は後ろめたいことなんて
ないでしょうに
いっそのことさぼってることを
カリーナさんに密告してしまうと
言ったほうがよかったでしょうか...?
短冊の願い事”まだ”見てないなんて
私を勘違いさせようと言ってましたね...
確かにお姉さんのことも書きましたけれど...
そう呟きながら短冊に目を落とす
でも、願い事は添えるだけ...
嘘も......嘘は嘘であるから意味がある...
願い事もそう...
言ったり知られてしまったら意味がない
願いは願いのまま
そうあれば、いずれ叶うはず...
胸に短冊を当て
心から願った
所詮、願いは願いでしかない
気休めにすらならないもの
...それでもすがりたかった
今ある幸せを手放したくなかった
「それに...」
呼吸が早くなる...
「それに...本当にほしいものは
自分で手に入れますから...!」
顔に熱がこもり
少しふさぎ込んでしまったが
夏の夜風が頬を撫で熱を拭い去っていく
離れていく風が心地良い...
そんなことを思いながら短冊に願いを結んだ
短冊の願いは...
「ははっ、シノも大胆なことするな」
笑みが止まらなかった
傍から見たらとても気持ち悪いが
正直な気持ちを受けるものはうれしいものだ
もちろん、マイナスのことは
あまりうれしくは受け取れないが...
葉笹を片付ける為
一つ一つ丁寧に短冊を取り外していた
仕事の合間にだいたいの
短冊は見たつもりだったが
カルカノM91/38のは見れてはいなかった
”お姉さんと指揮官と一緒にいたいです”か...
この言葉には、言葉以上の意味がある
絶対にこの願いは守らなければならない
そして、その中に私も入っていた
それだけ大切に思われていたのか...
確かに誓約はしていたものの
歪な状態での誓約だったからな...
あまり思い出したくはないが
それ故に、ほんとうに彼女から
どう思われているのかを
しっかり把握できておらず
少し、胸につかえてるものがあった
一人になんかさせないさ
絶対に必ず生き延びてみせる
戦術人形とただの人間とでは
寿命も違うが...
命ある限り、精一杯生きて
隣に居続けよう
そう思った
「それにしてもシノにしては大胆だな」
私はつい、そうつぶやき
そう笑ってしまった
本命はこっちなのかもしれない
というよりそうだと私的にはうれしいな...
と思いながら書かれている文章を眺める
短冊の裏にはシノの気持ちが記されていた
嘘の裏に真実があると言いたげだけど
本音の裏にさらに本音があるとはね...
言葉はいらない
でも言葉がなければ伝わらない
そんな考えが頭の中をよぎった
とりあえず、ちゃっと片付けて
シノのところに遊びに行くか
”彦星様が迎えに来てくれますように”
怠惰な指揮官には珍しく
締め切りに追われた書類まとめるよりも
早く働いていた
...結局、遅くなったけど”織姫様”なら
待っててくれるよな
...待てよ、私のことお呼びじゃなかったら
どうしよう.......
そんな心配が頭によぎったが
心を決め
カルカノM91/38の部屋の前で
一つ咳ばらいをし
ノックをした
これは後日談なのだが
シノに織姫様と言ったら顔を真っ赤にし
二の腕をつねられ
半日いうことを聞いてくれませんでした
別の彦星様がいなかったことは良かったが
ちょっとおいたが過ぎてしまいましたね...
反省はんせい...
ちゃんちゃん