ソードアートオンライン~Immortal Legends~   作:ワッタン2906

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どうもワッタンです。
祝!!十話目です!!
.......かといってなにも特別なことはしてないのですが.......
ここまで来れたのも皆様のおかげです。
ありがとうございます。

それでは第十話をどうぞ!!
(アンケートの結果、今まで通り執筆することにしました。協力してく れた皆様ありがとうございました)


第十話 《黒の剣士》と《絶剣》

2024年2月23日 (金) PM19時30分

──第三十五層 ミーシェ──

 

「ん~、美味しい!!」

 

シリカの横に座ったユウキが、シリカにお勧めされたチーズケーキを頬張り言葉を呟く。

キリトもチーズケーキを頬張る。

 

「ホントだ、旨いなこれ」

 

チーズケーキを頬張りながらそんな言葉を呟いた。

あの後キリト達は、シリカに案内され、シリカの定宿《風見鶏亭》で食事をとっていた。

 

「良かったです。お口にあって」

 

シリカがそう言ったその時、ウェイターのNPCがマグカップを三つこちらに持ってきた。

目の前に置かれたそれは、不思議な香りの立つ赤い液体で満たされていた。

 

「あの、これは.......」

 

シリカがキリトに尋ねた。

チーズケーキを食べ終わり、俺はシリカの質問に答えた。

 

「NPCレストランはボトルの持ち込みが出来るから、デザートを食べ終わるころに持ってきてもらうように、ウェイターに頼んどいたんだよ。遠慮せずに飲んでくれよ」

 

キリトに促され、シリカは熱い液体を一口飲んだ。

その味はまるで、遠い昔に父親が味見をさせてくれたホットワインに似ていた。

どこか懐かしい味は、悲しいことの多かったシリカの心をゆっくり解きほぐすようだった。

そして飲み終わり、シリカはポツリと呟いた。

 

「......なんで.......あんな意地悪言うのかな」

 

「君は....大規模ネットワークゲーム(MMO)は、SAOが....?」

 

「初めてです」

 

「そうか、.......どんなオンラインゲームでも、人格が変わるプレイヤーは多い。それをロールプレイと、従来はロールプレイって言ってたんだろうけど、でもSAOの場合は.......少し違う。他人の不幸を喜ぶ奴、アイテムを奪う奴、挙句の果てには.......殺しまでする奴が多すぎる」

 

キリトの目が鋭くなったが、一瞬シリカの横を見るとすぐに柔らかくなった。

 

「でも.......裏を返せば、優しい人や、見ず知らずの人を助けてくれる人もいる」

 

そう言うと、キリトはシリカの横を見た。

シリカも釣られて自分の横を見た。そこには、幸せそうに二個目のチーズケーキを頬張るユウキが居た。

 

「だから.......その、.......大丈夫だよシリカ。意外とこのSAOにも良い人はいっぱい居るからさ」

 

キリトの言葉にシリカは笑みを浮かべ、

 

「はい、そうですね」

 

と言葉を返した。すると、

 

「ん〜美味しかった。.......ん、何か話してたの?」

 

とユウキが呟やき、キリトはシリカと二人で笑いあった。

 

──────────────────────

2024年2月23日 (金) PM20時02分

──第三十五層 ミーシェ──

 

食事を終えた時には、時刻は既に午後八時を回っていた。中々に遅い時間だったので俺とユウキは、いつもホームにしてる五十層には戻らず、明日の攻略の為に備え早めに休む事にした為、シリカと同じ宿に泊まることにした。

 

 

シリカ達と別れ、コートを外し、部屋着に着替えるとドアがノックされた。

キリトは、返事をするとドアを開けた。そこには、部屋着を着たユウキの姿があった。

 

「早いな、ユウキ」

 

「そうかな?」

 

キリトは、ユウキを中に入れヒロから貰った情報を共有した。

 

「.......ねぇ、キリト?この情報を踏まえて、さっきのオバサンの状況を見ると.......」

 

「ああ、多分間違いなく、明日あのオバサン.......ロザリアは、動いてくるな」

 

「だよね」

 

「.......だからユウキ、万が一の事を考えユウキは明日シリカから離れないでくれ」

 

「リョーかいっ、キリトも無理しないでね?」

 

「ああ、分かってるよ」

 

一通り情報を共有した後、ユウキと一緒に明日の準備をしていると、時刻は午後十時を回っていた。

 

「ユウキ、そろそろお開きに.......」

 

そこまで言った時だった。

ドアをノックする音が聞こえてきた。

 

「シリカかな?」

 

ユウキが呟いた。

 

「そうかもな、ユウキ念の為に警戒しといてくれ」

 

「リョーかいっ」

 

ユウキが頷いたのを確認し、俺はドアを開けた。

そこには予想通り、シリカの姿があった。

 

「あの、明日の事を、聞いておきたくて!!」

 

「ああ、いいよ。今ユウキも来てるし、さ、中に入って」

 

俺はそう呟き、ドアを大きく開けてシリカを中に入れた。

シリカを椅子に座らせ、俺はウインドウを開き水晶が入った小さな小箱を実体化させた。

 

「きれい....これ、何ですか?」

 

「これは《ミラージュ・スフィア》ってアイテムでね....」

 

シリカの呟きにユウキが答え、

ユウキが水晶をクリックすると、球体が青く発光し、第四十七層のホログラフィックが出現した。

 

「うわあ....‼」

 

シリカが夢中で、青い半透明の地図をのぞき込んだ。

そんなシリカを見ながら、俺は説明をしていった。

 

「ここが主街区で、ここから南の道を下りていくんだ。その先に橋が....」

 

そこまで説明を続けた時だった。

 

──ガタッ

 

扉から、物音が聞こえた。

 

──────────────────────

 

「キリトさん....?」

 

不意にキリトの声が途切れ、キリトに呼びかけた。

その瞬間、キリトは稲妻のように動き、扉の方に駆け出した。

ユウキは、キリトが飛び出した瞬間シリカを庇う様に前へ出た。

 

「誰だ!!」

 

扉を開け、キリトが叫ぶ。

しかしそこには誰もおらず、どたどたと階段を駆け下りる足音が聞こえてきた。

 

「.......聞かれてたね」

 

「ああ.......」

 

二人がキリトの方に近づき、ユウキがキリトに話し掛けた。

その言葉に、シリカは疑問を覚え二人に問い掛けた。

 

「え.......でも、ドア越しじゃあ声は、聞こえないんじゃ.......」

 

その質問にキリトは、首を振り質問に答えた。

 

「聞き耳が高いとスキルが高いとその限りじゃないんだ。そんなの上げてる奴は.......なかなかいないけれど.......」

 

そう言うとドアを閉め、三人は部屋の中に戻った。

 

「でも、何で立ち聞きなんか.......」

 

シリカが不安そうな声で呟く。

キリトは少し考え込み、ユウキに話し掛けた。

 

「.......一応大丈夫だと思うけど.......念の為にユウキ、廊下の方を見てきてくれないか?」

 

キリトの言葉にユウキは頷き、

 

「リョーかいっ」

 

と言葉を返すと、ユウキは部屋の外を確認しに行った。

ユウキが、部屋を出て行ったのを確認するとキリトはシリカの方に向き直った。

 

「という訳で、ユウキが戻って来るまで待ってくれないか」

 

シリカに微かに笑いかけると、キリトは《ミラージュ・スフィア》を片付け、ウインドウを開きホロキーボードを表示させ指を走らせ始めた。

シリカはその背後で、ベットに丸くなった。先程感じた不安はもう感じていなかった。後ろからキリトを眺めているとシリカの瞼は自然に落ちていた。

 

──────────────────────

2024年2月23日 (金) PM22時30分

──第三十五層 ミーシェ──

 

「ただいま」

 

ユウキが外から戻ってきた。ユウキが部屋に戻って来ると同時に、メッセージを打ち終わり、ウインドウを閉じた。

 

「おかえり、ユウキ。大丈夫だったか?」

 

「うん、とりあえず怪しい人影はこの宿には居なかったよ.............あらら、シリカ寝ちゃってるね」

 

ユウキの言葉に、俺は自分の後ろを見た。するとそこには、ベットに丸くなっているシリカが気持ちよさそうに寝ていた。

 

「ホントだ、全然気づかなかった...........」

 

俺がそう言うと、ユウキがシリカに近づき毛布を掛けて上げ呟いた。

 

「疲れてたんだろうね.......シリカは今日大変だったから」

 

「そうか.......とりあえず俺はそこのソファーで寝るよ」

 

そう言うと、俺は椅子から立ち上がった。

するとユウキが、

 

「いや、.......ボクがこの部屋で寝るよ。キリトはボクの部屋で寝なよ。明日は一応万全の準備をするべきだから、ベットで寝たほうがいいよ」

 

と話しかけて来た。

 

「でも.......ユウキはどこで寝るんだ?」

 

「ボクは、シリカの隣で寝るよ。同じ女性だから大丈夫、それに.......同じ部屋で男女を寝させる訳にはいかないよ、もしかしたら一層の時みたいになるからね」

 

そのユウキの言葉に、心当たりはなかったが、何故か背筋が震えた。

 

「うっ、わ、分かった。じゃあお言葉に甘えて寝させてもらうよ」

 

そう言うと俺は荷物をまとめた。

 

「じゃあ、明日は七時半に集合な、おやすみユウキ」

 

「うん、おやすみキリト」

 

ユウキにおやすみを言うと、俺はユウキの部屋に向かった。

ユウキは、キリトが部屋を出て行くのを確認すると、部屋の電気を消しシリカの横で、丸くなった。

 

(おやすみ、シリカ)

 

心の中で呟き、ユウキは目を閉じた。

──────────────────────

2024年2月24日 (土) AM7時00分

──第三十五層 ミーシェ──

 

耳元で奏でられるチャイムの音に、シリカはゆっくりと瞼を開けた。

自分だけに聞こえる起床アラームだ。設定時刻は午前七時。

毛布を剥ぎ、体を起こす。

大きく伸びをし、ふと隣を見た。

 

そこには、ユウキは毛布にくるまって寝ていた。

侵入者かと思い、息を吸い込んでからようやく昨日のことを思い出す。

 

(──あたし、自分の部屋で寝ずにキリトさんの部屋で、そのまま......)

 

それを認識したとたん、顔が恥ずかしさのあまり熱くなり両手で顔を覆って身もだえる。

どうにか数十秒を費やしてどうにか思考を落ち着けると、ユウキを起こすことにした。

 

「ユウキさん、朝ですよ!!」

 

と声を掛けた。

しかしユウキはその声では起きず、

 

「うーん、......もうちょっと寝かしてよ.....お姉ちゃん」

 

そう言うと、毛布の下に潜り込もうとした。

 

(お姉ちゃんって.......ユウキさん、お姉さん居るのかな?.....っていやいや、早く起こさないと)

 

再び起こそうとすると、ドアがノックされた。

 

「シリカ、ユウキ起きてるか?」

 

どうやらキリトが、シリカとユウキを迎えに来たようだった。

シリカは、ウインドウを開き素早く防具を装備すると、ドアを開けた。

 

「あ、おはようシリカ」

 

「おはようございます。キリトさん」

 

「..........もしかして、まだユウキ起きてない感じ?」

 

「.......はい、そうです」

 

シリカが肯定すると、はぁとため息を着いた。

 

「やっぱりか.......ちょっと中、入らせてくれ」

 

そう言うと、キリトは部屋に入り、

未だ寝ているユウキのベットの前に立った。

 

「.......ユウキは、朝寝覚めが悪いんだけど.......ある一言を言えば、すぐ起きるんだよ」

 

そう言うとキリトは、息を吸い込みユウキに声を掛けた。

 

「あ、あそこに、黒くてカッコイイ、レア物の剣があるぞ」

 

キリトがそう言うと、ユウキがガバッと起き、

 

「どこ?どこ?ね、キリトどこ?」

 

と辺りを見回した。

その様子を、見ていたシリカは思わず笑ってしまった。

そんなユウキにキリトはまたため息をつき呟いた。

 

「寝坊だぞ、ユウキ。さ、朝飯に行こうぜ」

 

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2024年2月24日 (土) AM9時30分

──第四十七層 フローリア──

 

四十七層主街区《フローリア》は、無数の花々で溢れかえっていた。円形の広場を細い通路が十字に貫き、それ以外の場所は花壇となっていて名も知れぬ草花が咲き誇っていた。

 

「うわあ.......きれい.......!!」

 

シリカが辺りを、見回しながら呟いた。

 

「この層は通称《フラワーガーデン》って呼ばれてるんだよ」

 

ユウキがシリカに向けて、層の説明をする。

その言葉に、シリカがユウキの方を見る。

 

「へぇ〜そうなんですか」

 

「うん、そうだよ。後、街だけじゃなくてフロア全体が花だらけなんだ」

 

ユウキにそう言われ、改めて辺りを見回した。花が咲き誇り、その間の小道を歩く人影は、ほとんど男女の二人連れだった。皆しっかりと手を繋ぎ、あるいは腕を組んで楽しげに談笑しながら歩いていた。どうやらこの場所は、そういう場所らしい。

それを認識すると、顔が赤くなってしまっていた。

 

「シリカ?」

 

そんなシリカに、キリトは不思議そうに話しかけた。

シリカは、慌てて首を振り、

 

「な、なんでもないです。さ、さあ!!フィールドに行きましょう!!」

 

と慌てて答えた。

 

「う、うん?分かった。《思い出の丘》はこっちだよ」

 

キリトは不思議そうに言葉を返し、歩き始めた。

その直後はユウキもシリカに向かって

 

「さ、行こ。シリカ」

 

と言うと、キリトの隣をすぐにユウキも一緒に歩き始めた。

そんな二人を後ろ見ていたシリカは、ひとつの事を頭がよぎった。

 

(二人は付き合ってるのかな.......?)

 

 

しばらく歩き続け、《思い出の丘》の入り口の橋にたどり着いた。

橋を渡る前に、キリトが高価なアイテム《転移結晶》を取り出しシリカに渡した。

 

「君のレベルと今の装備なら大丈夫だと思うけど、.......フィールドではでは何が起きるか分からない。だから、俺達が逃げろと言ったら、すぐそれを使って逃げてくれ」

 

しかしシリカは戸惑った。

その時、ユウキが、

 

「大丈夫だよシリカ。それをシリカには使わせないよ。ボクが剣に誓って君を守るよ」

 

と言った。

 

「は、はい。分かりました」

 

シリカはその言葉に頷き、

《転移結晶》を腰のポーチにすぐ使えるように入れた。

 

「よし、じゃあ行こう!!」

 

キリトがそう言うと、三人は橋へと踏み出した。

──────────────────────

2024年2月24日 (土) AM10時07分

──第四十七層 フローリア──

 

「い、いや───!!キリトさん助けて────!!」

 

《思い出の丘》に向けて、歩き出して数分後最初のモンスターと遭遇したのだが、そのモンスターは一言で言うと《歩く花》だ。根っこの部分でしっかりと大地を踏みしめ、茎もしくは胴体 のてっぺんはには黄色い巨大花が乗っており、その中心には牙を生やした口がばっくりと開いている。

そして茎の中ほどから二本のツタが伸びており、現在そのツタでシリカを宙吊りにしていた。

 

宙吊りにされている為、仮想世界の重力によってシリカのスカートが下にずりさがる。それをシリカが片方の手で止めているため、上手いことモンスターに攻撃が上手くいってなかった。

 

「ス、スカートが.......きっ、キリトさん見ないで助けて!!」

 

このような状況に陥ってる為、シリカはキリトに助けを求めているのだが.......

 

「.......ごめんシリカ、今ちょっと無理」

 

キリトは現在、左手で目のあたりを覆っていた。しかしそれだけではなく、ユウキが剣を抜きキリトの方に、剣先を向けていた。

 

「キリト、絶対見ちゃダメだよ?もし、見たらどうなるかわかってるよね?」

 

と、とてつもなく冷ややかな声で言われキリトは思わず、

 

「は、はい」

 

と言わざるを得なかった。

 

「シリカ!!キリトには、見させないから大丈夫だよ!!」

 

「は、はい!!この.......いい加減に、しろっ!!」

 

ユウキにそう言われ、シリカは意を決してスカートから左手を離し、ツタの片方を持つと短剣で切断した。そのまま落下しながら、弱点であるモンスターの頭に向かって、

短剣高速突進技(ソードスキル)《ラピッドバイト》を放った。

ソードスキルは見事にモンスターの弱点である頭に命中し、HPを全て削り、モンスターの体がポリゴンの欠片に包まれた。

 

ポリゴンの欠片に包まれながら着地したシリカは、

振り向くや否や、キリトに尋ねた。

 

「.......見ました?」

 

「み、見てないよ.......」

 

そう言いながら、キリトは目を逸らした。

キリトがそう言ったのを確認したユウキは、腰の鞘に剣を収め、

 

「さ、行こ」

 

そう言うと、スタスタと歩き始めた。

 

──────────────────────

2024年2月24日 (金) AM11時47分

──第四十七層 フローリア──

 

それから五回ほど順調に戦闘をこなし、他愛もない話をしつつ《思い出の丘》に向いて歩くこと、約一時間、小川にかかった小さな橋が見えてきた。そしてその向こうに、一際小高い丘が見えた。

 

「あの丘が、《思い出の丘》だよ」

 

「あれが.......《思い出の丘》」

 

シリカが呟き、丘の方を見た。

 

「ここから、モンスターのエンカウント率が上がるから、気を引き締めていこうか」

 

「はい!!」

 

ユウキの言葉に、元気よく返事をし橋を渡り始めた。

もうすく、ピナを生き返らせれる。そう思うと自然に歩みが速くなる。

そして遂に、高く繁った木立の連なりをくぐると──そこが丘の頂上だった。

 

丘の頂上には、周囲をぐるりと木立に囲まれ、ぽっかりと開けた空間一面に美しい花が咲き誇っていた。そこはまるで、「空中の花畑」そんな形容が相応しい場所だった。

 

「とうとう着いたね」

 

ユウキが腰の鞘に剣を収めながら言った。

 

「ここに.......その、花が.......?」

 

「ああ、あそこに台座があって、近づいたら花が咲くはずだ」

 

キリトが指を刺し、台座の場所を教える。シリカは走り出し、台座の方に駆け寄る。するとちょうどその時、白い花のつぼみが開き光の粒が宙を舞った。

 

シリカはその花におそるおそる手を伸ばし、花に触れた。

その瞬間、花が小さく光り茎が崩れ、シリカの手の中に白い花──《プネウマの花》だけが残った。

 

「これで.......ピナを生き返らせれるんですね.......」

 

「うん!!、でもここで生き返らせたら危険だから、街に戻って生き返らせようか」

 

「はい!!」

 

ユウキの言葉にシリカは頷くと、メインウインドウを開き、花をそこに乗せアイテム欄に《プネウマの花》を格納した。

キリトはそんな二人は微笑みながら、二人の後ろから見ていた。

しかし時々、キリトは辺りを警戒していた。

まるで、何者からかの襲撃を備えているように.......

 

──────────────────────

2024年2月24日 (土) AM13時06分

──第四十七層 フローリア──

 

幸いにも、帰り道ではほとんどモンスターと出くわすことなく、小川にかかる橋まで戻って来た。

 

(もうすぐ、ピナに会える)

 

そう思いながら、橋を渡ろうとしたその時、

不意にキリトとユウキが、シリカの前へ出た。

ユウキはシリカを庇うように、キリトはその二人を庇うように.......

そしてキリトとユウキは、橋の向こうの道の両脇にある木立を睨んでいた。

キリトから一際低く張った声が発せられた。

 

「──そこで隠れている奴、出てこいよ」

 

「え.......!?」

 

シリカは慌てて一歩踏み出し木立の方を見た。

すると、がさりと木の葉が動いた。そしてゆっくりと木立からプレイヤーの人影が現れる。そしてプレイヤーを示すカーソルが表示された。そのプレイヤーはシリカの知っている顔だった。

 

「ろ.......ロザリアさん.......!?どうしてここに.......!?」

 

ロザリアは、シリカの言葉には答えず、

キリトとユウキに向かって言葉を投げかけた。

 

「アタシのハイティングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、剣士サン達。少し侮ってたかしら」

 

そう言いながら、ロザリアはようやくシリカの方に視線を向け、嫌な笑みを浮かべながらシリカに

 

「その様子だと、《プネウマの花》を首尾よくゲットできたみたいね。おめでと.......それじゃあその花を渡して頂戴」

 

と言い放った。

 

「.......!?な.......何を言ってるんですか.......」

 

シリカはロザリアの言葉に絶句し一歩後ずさる。

その時、今まで無言だったキリトとユウキが前に出た。

そしてキリトが口を開いた。

 

「そうは行かないな、ロザリアさん。いや───犯罪者(オレンジ)ギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、と言った方がいいかな」

 

キリトの言葉にロザリアの眉がぴくりと跳ね上がり、顔から笑いが消えた。

 

「え.......でも.......だって.......ロザリアさんは、グリーン.......」

 

眼前のロザリアの頭上に浮かぶH&Mカーソルは、どう見ても緑色だった。その疑問にユウキが答えた。

 

「オレンジギルドって言ってもね、全員が犯罪者じゃないんだ。.......グリーンのメンバーが獲物見繕って、待ち伏せのポイントに誘い込むんだ。.......多分昨日部屋を盗聴してたのもオバサンの仲間だよ」

 

「じゃ.......じゃあ、この二週間、一緒のパーティにいたのは.......」

 

「そうよォ」

 

シリカの言葉に、ロザリアは再び嫌な笑みを浮かべた。

 

「あのパーティーの戦力を評価すんのと同時に、お金が貯まるのを待ってたんだけどォ」

 

シリカの顔を見ながら、ロザリアは唇を舐めた。

 

「一番楽しみな獲物だったあんたが抜けちゃうから、どうしようかと思ってたら、なんかレアアイテムを取りに行くって言うじゃない。だったらそのアイテムを手に入れてからから、襲えば一石二鳥よねぇ!!」

 

その言葉にシリカに悪寒が走った。

ロザリアはそこまで言うと、キリトとユウキに視線を向けた。

 

「でも.......そこまで解っていながら、ノコノコその子に付き合うなんて、馬鹿なのあんた達?」

 

ロザリアの侮辱に、シリカは憤りを感じ、短剣を抜こうと腕を動かしかけたところで、ユウキに肩をぐっと掴まれる。

 

「大丈夫だよ。シリカ」

 

その言葉に、シリカは冷静になり動かそうとした腕を元に戻した。

 

「俺達は、あんたを探してたんだよ、ロザリアさん」

 

キリトがロザリアに向かって言い放つ。

その言葉に、ロザリアは訝しんだ。

 

「──どういうことかしら?」

 

「あんた、十日前に、三十八層で《シルバーフラグス》っていうギルドを襲ったな。メンバー四人が殺されて、リーダーだけが脱出した」

 

「.......ああ、あの貧乏な連中ね」

 

ロザリアが興味なさそうな感じで頷いた。

それに対し、キリトは静かな怒りを込めてロザリアに問いかけた。

 

「リーダーだった男はな、必死に毎日仇討ちを、最前線のゲート広場で探してたよ。.......けど彼は、あんたらを殺してくれとは言わなかった。《黒鉄宮の牢獄》に入れてくれと、そう言ったよ、──あんたに、彼の気持ちが解るか?」

 

そこ声はまるで、触れるもの全てを切り裂くような声だった。

しかし、ロザリアは面倒そうにロザリアは答えた。

 

「解んないわよ、何よ、マジんなっちゃって、馬鹿みたい。ここで人を殺しても、ホントにそいつが死ぬ証拠なんてないし。で、あんたらはその死に損ないの言うことを真に受けた訳だ。ヒマな人達だねー。.......でもさあ、たった三人でどうにかなるとでも思ってんの.......?」

 

ロザリアが不敵な笑みを浮かべ、指を鳴らした。

途端、両脇の木立が激しく揺れ、カーソルがオレンジ色をした男性プレイヤーが現れた。その数──十四。

 

その数を見たシリカは、ユウキの後ろに姿を隠した。

逆にキリトは、剣を背中から抜き放ち、集団に向けて歩いていた。

 

「に、.......人数が多すぎます、脱出しないと.......」

 

シリカの言葉にキリトは、柔らかな声で言葉を返した。

 

「大丈夫だよ、心配しないで」

 

「で、でも.......」

 

そんなシリカに対しユウキは、穏やかな声でシリカに話しかけた。

 

「大丈夫だよ、シリカ。ボク達が逃げろと言うまでは、そこで見てて」

 

そう言うとユウキも剣を抜き放ち、シリカを下がらせると自分も一歩前へ出る。

いくらなんでも十四人を、二人で挑むのは無茶だ。そう思い、二人に大声で呼びかけた。

 

「キリトさん、ユウキさん.......!!」

 

シリカがそう叫んだ瞬間───

 

「キリト.......、ユウキ.......?その名前どこかで.......?」

 

不意に、賊の一人が呟き、記憶を探るように視線を彷徨わせる。

そして急激に顔を蒼白にしながら、男は数歩後ずさった。

 

「その格好.......二人組の片手剣使い、.......まさか、《黒の剣士》と《絶剣》!!や、やばいよ、ロザリアさん。こいつら.......ビーターの、こ、攻略組だ.......」

 

そう叫び、キリトとユウキ以外のこの場にいる全員が驚いた。

(こ、攻略組.......!!キリトさんとユウキさんが.......)

 

今までの戦いぶりから、相当な高レベルプレイヤーとは予想していた。

しかしまさか、最前線で未踏派の迷宮に挑み、ボスモンスターを次々と屠り続ける《攻略組》、真のトップ剣士の一人だとは思わなかった。

 

ロザリアも、たっぷり数秒間口をポカンと開けてから、我に返り叫んだ。

 

「こ、《攻略組》がこんな所にいる訳ないじゃない!!どうせ名前を騙ってる偽物に決まってるわよ、さっさと身ぐるみ剥がしな!!」

 

その声に勢いづいたように、オレンジプレイヤーの戦闘に立つ男性プレイヤーも叫んだ。

 

「そ、そうだ!!攻略組なら、すげえ金とかアイテムとか持ってんぜ!!それにこの人数だ。負ける訳がねぇ」

 

男がそう叫んだのを、きっかけにオレンジプレイヤー達は武器を構え、

 

「オラァァァ!!」 「死ねやァァァ!!」

 

そう叫びながら十四人の内十人は、橋を渡り始めキリトに襲いかかった。

様々なソードスキルがキリトの体へと叩き込まれる。

 

逆に四人は、キリトをスルーしユウキの方に襲いかかってきた。

キリトと同じように、様々なソードスキルがユウキを襲うその瞬間、

ユウキもソードスキルを発動させ.......

 

 

 

その刹那、シリカを驚愕させることが起こった。四人が別々に放って来たソードスキルを、ユウキは四連撃以上のソードスキルで全て相殺し、相手の武器を全て小川に叩き落としたのだ。

 

「なっ.......」「嘘だろ.......」

 

叩き落とされたプレイヤー達は、何が起きたのか分からずに呆然としていた。シリカも呆然としていたが、我に返りキリトの方を見る。

 

十人の賊のプレイヤーが手を休めることなく攻撃を続けていた。ある者は哄笑しながら、ある物は罵りながら、攻撃していた。ロザリアは顔に興趣の色を浮かべながら、食い入るように惨劇を見つめていた。

 

(助けないと.......)

 

シリカは、助けに行こうと短剣の柄を握る。

が──、そこである事に気づいた。

 

──HPバーが減ってない。

キリトのHPバーが、確かに賊の攻撃によって減らせれているのだが、数秒経つと、右端まで回復してしまうのだ。

 

(どういうこと.......!?)

 

シリカは戸惑いの表情を浮かべた。

賊達も一向に倒れないキリトに対して、戸惑いの表情を浮かべた。

 

「何やってんだ、アンタら!!さっさと殺しな!!」

 

中々死なないキリト対して、ロザリアは苛立ちの声を上げる。

そこでようやく、キリトは口を開いた。

 

「──十秒あたり400って、とこかな。それがあんたら十人が俺に与えるダメージの総量だ。俺のレベルは78、ヒットポイントは14500.......さらに戦闘時回復(バトルヒーリング)スキルによる自動回復が十秒で600ポイントある。何時間攻撃しても俺は.......いや、俺達は倒せないよ」

 

キリトとユウキを襲っていた賊達は、その言葉に愕然としたように立ち尽くした。やがて、サブリーダーらしき男が掠れ声で呟いた。

 

「そんなの.......アリかよ.......。無茶苦茶じゃねぇかよ.......」

 

「そうだ、たかが数字が増えるだけで、そこまで無茶な差がつくんだ。それがレベル制MMOの理不尽さというものなんだ!!」

 

そこまで言うと、キリトは懐から《転移結晶》よりも色が格段に濃い結晶を取り出した。

 

「これは、俺達に依頼した男が全財産をはたいて買った《回廊結晶》だ。場所は、監獄エリアに設定してある。あんたら全員これで、牢屋に飛んでもらう!!逃げられると思うなよ。.......コリドー・オープン!!」

 

キリトがそう言い放つと、瞬時に結晶が砕け散りその前の空間に青い光の渦が出現した。

 

「畜生.......」

 

先頭にいた、長身の斧使いが最初に飛び込んだ。それをきっかけに次々と諦めた賊達が、その中に飛び込んだ。そして最後に残ったのはロザリアただ一人だけだった。

 

「さて、ロザリアさん。あんたはどうする?」

 

キリトがロザリアに言い放った。

 

「っ.......やってみなよ。グリーンのアタシを傷つけたら、今度はアンタらがオレンジに......」

 

ロザリアの言葉が言い終わらぬうちに、ロザリアの首に剣が突きつけられていた。

突きつけたのは.......ユウキだった。

 

「ねえ、オバサン。......ボクが一番嫌いなのはね、()()()()()()()()()()()()()()が一番嫌いだ!!」

 

ユウキがそう叫ぶと、ロザリアの襟首をつかみ回廊に向けて歩き出した。

ロザリアが手足をバタバタさせて抗った。

 

「ちょっと、やめて、やめてよ!!悪かったわよ!!..........そ、そうだ、あんたらアタシと組まない?あんたらの腕があれば、どんなギルドだって........」

 

ユウキはロザリアの言葉に耳を貸さず、そのままコリドーにロザリアを放り込んだ。放り込んだ直後、回廊が一瞬眩く光って消滅した。

 

ロザリア達が消えたことにより、静寂が訪れた。しかしシリカは動けないでいた。そんな中、キリトが背中の鞘に剣を収めシリカに近づいた。ユウキも剣を収め、キリトの方を見た。

 

「ごめんな、シリカ。君を囮にするようなことにしちゃって。.......とりあえず街まで送るよ」

 

キリトがそう言って歩き始めた。その背中に向かって、どうにか声をかける。

 

「あ────足が、動かないんです」

 

振り向いたキリトは、軽く笑って手を差し出した。シリカはその手を握り立ち上がった。

 

「さ、帰ろうぜユウキ」

 

「うん!!」

 

──────────────────────

2024年2月24日 (土) AM16時25分

──第三十五層 ミーシェ──

 

「ユウキさん.......行っちゃうんですか.......?」

 

「うん.......五日も前線から離れちゃったからね。すぐに、攻略に戻らないと.......」

 

「.......そう、ですよね.......」

 

あの後ユウキ達は、三十五層の風見鶏亭に戻ってきていた。ちなみにキリトはここには居ない。

 

「俺、ちょっと事の顛末を依頼主とヒロに説明してくる」

 

そう言ってキリトは、四十五層の転移門で別れていた。

 

「.......あ、.......あたし.......」

 

シリカはそこでぎゅっと唇を噛んだ。本当は連れて行って下さいと、言いたかった。しかし、レベルという分厚い壁が立ち塞がっていた。

それを頭で理解している.......が、理解しようとすればするほど気持ちが溢れそうになる。

不意にユウキが、シリカの頭に手を置いた。

 

「レベルなんてただの数字だよ。この世界ではもっと大事なものがある。レベルなんかよりも大事なものがね。.......だからさ、次は現実世界で会おうよ。.そしてまた、友達になろうよ!!」

 

優しく微笑みながら、ユウキはシリカの頭を撫でた。

ユウキの言葉は温かさとなって心に染み込むのを感じ、シリカは心からの笑みを浮かべ頷いた。

 

「さ、ピナを生き返らせようか」

 

「はい!!」

 

そう言うとシリカは、《プネウマの花》を実体化させその中の雫を、《ピナの心》に振りかけた。振りかけた瞬間、羽根が光り輝いた。

 

(ピナ。いっぱい、いっぱいお話ししてあげるからね。今日の凄い冒険の話を.......ピナを助けてくれた、二人の話を.......)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

2024年??月??日 (?) AM??時??分

──???──

 

何者かが追われていた。

時刻は深夜、とある層の森の中。

追われる者は、木々を巧みに使い、追跡者から逃れようとする。

しかし、追跡者──ヒロは、その撹乱を意に介さず追い続ける。

 

(逃がすものか.......!!)

 

ヒロは、木々を避けながら必死に追う。

そして遂に、森の行き止まりに辿り着いた。

 

「遂に、追い詰めたぞ.......」

 

ヒロは、剣を抜き今まで追っていた者に向けて剣を構える。

追われていた者は、観念したのか両手をあげおどけた風にヒロに話し掛ける。

 

「いやー、流石だな。()()()()()()()、ここまで俺が追い詰められたのは.......しかも追い詰めた人物が、()()()()()()()()とはな」

 

そう言うと追われていた者は、短剣を抜き放ち構える。

そしてヒロは、追っていた者に質問を問い掛ける。

 

「お前はクリスマス前日のあの日、《迷いの森》に居たな、その目的は、キリトとユウキを殺す為だ。何故、黒の剣士と絶剣を襲う!?」

 

ヒロの質問に、追われていた者が答える。

 

「ハハハ.......ちょっと違うな、殺す為じゃない。ゲームの為だよ。《黒の剣士》は、唯一兄弟(ブロ)が殺せなかった男だ、だからアイツだけは兄弟(ブロ)と一緒に、地面に這わせてやるんだよ。その為に、あの二人を追い詰める為に、.......《黒猫団》って言ったか?、それと妙にお前と《閃光》が肩入れしてるあの二人組.......アイツらをあの日殺そとしてたんだぜぇ?」

 

その言葉に、ヒロは遂にブチ切れた。

 

「っ.............こん.......の、許さねぇ!!」

 

そう叫ぶと、ヒロは駆け出し剣を振り上げる。追っていた者の名前を叫びながら。

 

「許さねぇぞ!! ()()()()()!!」

 

ジョーカーと言われた追われた者は、フードの奥でニヤリと笑い、ヒロに向かって駆け出した。

自分が所属しているギルドの合い言葉と共に.............。

 

「.......イッツ・ショウ・タイム!!」




いかがでしたでしょうか。実は今回の話で自分が登場させたかったオリキャラを一応全員登場させました。ひとまずはオリキャラはこれで一区切りです。
そして原作を知ってる人からしたら、あのくだりが無いじゃないかと思ってると思いますが、すみません自分の実力不足により入れ込むことが出来ませんでした。いつかはそのくだりを入れますのでしばしお待ちを。
そして今回も読んで頂きありがとうございました。節目の十話目を迎えれたのも皆様のおかげです。ありがとうございます。これからも励んでいきますのでよろしくお願いします。
それでは、次の話でお会いしましょう。

(ユウキ誕生日おめでとう!! 5/23)
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