ソードアートオンライン~Immortal Legends~ 作:ワッタン2906
それでは、五話目をどうぞ!!
2022年12月4日 (日) AM10時00分
─第一層 トールバーナ ─
昨日会議が行われた噴水広場に、おそらく現時点で集めれる最高の戦力を持ったプレイヤー達が続々と集まってきていた。ある者は談笑し、ある者は今日のボス攻略の為に装備の点検や自分たちの役割を確認していた。俺達は後者の方で、自分たちの役割を確認していた。
「俺達は、ボスの周りに湧く取り巻き、《ルインコボルド・センチネル》の相手をすることだ。昨日も言ったように、ボスを攻撃している本隊が後ろから襲われてボスとの挟み撃ちを防ぐ為の大切な役割だから気を抜かないようにな」
俺がそう説明すると、続いてヒロが説明を引き継いだ。
「それとセンチネルは、頭と胴体の大部分を鎧で覆ってるから普通に攻撃してもダメージはそんなに通らない。だから弱点の喉元を攻撃する必要がある。そこで俺とキリトが、奴らの武器をソードスキルで跳ね上げさせるから、その間にスイッチで飛び込んでくれ」
「リョーカイ!!」
「分かった」
ヒロの説明が終わると、ユウキとアスナの二人は、システムウインドウを開きそれぞれ装備の確認を始めていた。
実は俺は、昨日の夜の記憶が曖昧だった。自分でも何故だか分からないのだが、昨夜の部分だけ記憶がすっぽりと抜け落ちていた。そしてヒロも何故か昨夜の記憶が曖昧らしい。どうして二人共の記憶が曖昧なのか理由を知ってそうなユウキに尋ねてみたら、
「二人共、その先を思い出したら...ボクとアスナの鉄拳が飛んでくるよ」
と、顔では笑っているが本心では絶対笑ってないという顔をしながら答えてくれた。
思い出したら無事では済まないなと思いつつも、いやもう少しで思い出せる!!というような天使と悪魔のせめぎあいが俺の中では起きていた。俺が唸っていると、背後からとても友好的とは言い難い声が聞こえてきた。
「おい」
反射的に俺は振り返った。そこには、昨日俺に剣の買い取りを断られた男──キバオウがそこに立っていた。
「ええか、今日はずっと後ろに引っ込んでれよ。ジブンらは、おとなしくワイらが取りこぼしたコボルドの相手だけしとれや」
そう言うと、キバオウは身をひるがえし仲間のE隊の方に戻っていった。俺はその背中を呆然と眺め続けていたが、隣で響いた声で我に返った。
「.....何なんだアレ?」
ヒロがキバオウの立ち去った方を訝しげな視線で見ながら呟いた。
「さ、さあ....」
俺はヒロの方に向き直り呟いた。すると話を聞いていたのか、ユウキが話に入ってきた。
「もしかして、キリトが昨日剣の買い取り断ったからムカついてるんじゃない?」
俺の返答にユウキがそう答えた。
ユウキの言葉を聞き、俺はもう一度キバオウの背中に視線を向けた。その時ちょうどキバオウの装備に目が留まった。そしてあることに気づき、息を飲んだ。
(あの男は昨日、四万コルを使って俺の剣を買い取ろうとした。目的は多分、今日のボス戦で使うことだろう。しかし俺が剣を譲らなかったので、その目論見は崩れ結局アイツは四万コルを使わなかった。だから、アイツは四万コルを武器や防具の更新に使うはずだ。更新する時間もタップリあった。なのに見た感じアイツの装備は昨日と全然変わってない何故だ.........アイツは何故更新しなかったんだ?もしかして.........四万コルを使えない理由が....)
俺が思考していると、広場の中央に自称ナイト──ディアベルが広場の中央に現れた。
「皆、今日は集まってくれてありがとう!!たった今、全パーティーが集まった!!俺から言うことはたった一つだ!!......絶対に勝とうぜ!!」
ディアベルが右手を掲げながらそう言った瞬間、周囲のプレイヤーから巨大な歓声が起こった。その歓声は、はじまりの街で起こった絶叫に似ている感じがした。
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2022年12月4日 (日) AM11時00分
─第一層 迷宮区へと続く道─
(何故こんな事に...)
アスナはこのゲームに囚われてから、何回目か分からない自問をしていた。今アスナ達は、第一層のボスを撃破する為に迷宮区タワーを目指し大人数のプレイヤー達と歩いていた。
(本来私は、あの時力尽きてこの世界から退場するはずだったのに.....それをこの男に助けられ、その上この男の仲間と一緒にパーティを組んでボス攻略をする羽目になるとは...)
アスナは思考を止め顔を上げた。周りからは、おしゃべりが聞こえたり、頻繫に笑い声が聞こえてきた。隊列の最後尾を歩きながら、ふとある事が気になり昨日の惨劇のことも忘れ、隣を歩くアスナを助けた男──ヒロに話し掛けた。
「.......ねえ、あなたは、ここに来る前も他のエ.......、MMOゲーム?っていうのやってたの?」
「ん.......ああ、少しだけな」
男が頷いた。男の仲間である二人は、話に夢中でこっちの話には気づいていない。
「他のゲームでも、移動の時ってこんな感じなの?こんな遠足みたいな.......」
アスナが男に尋ねた。すると男は頭の後ろをかきながら答えた。
「.......残念ながら俺がやってたゲームは、ボイスチャット搭載じゃなかったから、とてもじゃないけど移動しながらチャット欄に発言を打ち込んでいる暇はないよ」
「ふうん....そうなのね」
アスナはしばらく考え込んでいたが、再度呟いた。
「.......本物は、どんな感じなのかしらね」
「ほ、本物?」
男が怪訝そうな視線を向けてくるので、自分が考えていたことを口に出して説明した。
「だから.......もしこういうファンタジーの世界があったとして、そこを冒険する人達が恐ろしい怪物を倒しに行く時、道中彼らは押し黙って歩くのか.......それとも今みたいにおしゃべりをしながら歩くのか。そういう話」
男はしばらく顔を下に向けていたが、サッと顔を上げ呟いた。
「.......それは、多分どっちでもないんじゃないかな。話したければ話すし、別に話す必要が無い時は黙る。もしかしたらこのボス攻略レイドも、当たり前の日常になって、いずれは.......ちょっと遠くに出かけてみようかな.....っていう風に感じるようになるかもよ」
「.......ふふ、ふ」
男の言葉が素直におかしくて、アスナは小さく笑ってしまった。すると男は少ししょげていた。
「わ、笑わなくてもいいじゃないか.......」
「笑ってゴメンなさい。だって.......この世界は究極の非日常なのに、その中で日常だなんて.......」
(こんな風に笑ったのって、いつぶりだろう.......助けるメリットも無いのに私を助けて、しかもあぶれた私を自分のパーティに誘って、ホントこの人って.......面白い人ね)
アスナはヒロとまた話をする為に、話し掛けた。
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「どうやら彼女、打ち解けれたみたいだな」
「うん、そうだね」
キリトとユウキは、背後から聞こえてくるヒロとアスナの話し声に耳を傾けつつ、話していた。
「けど、....当たり前の日常かぁ。ねえキリトはそんな風に感じる日って来ると思う?」
ユウキが俺に尋ねてきた。
「どうだろうな。でも俺は、このゲームをクリアするのに.......二年か、三年はかかると予想している。だからそれだけ続けば、.......この非日常も日常に感じるようになるかもな」
「そうなのかな。.......まだボクにはそんな未来のこと考えれないや」
ユウキが呟く。すかさず俺が、
「まあ何はともあれ、それを考えるには少なくとも今日は生きて帰ろうぜ」
と、ニヤリと笑いながら言った。
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2022年12月4日 (日) PM12時30分
─第一層 迷宮区最上階 ─
俺はついに姿を現した巨大な二枚扉を集団の後方から、つま先立ちになって仰ぎみた。この扉は一応、βテストの時に見ていたのだがあの時とは違う緊張感が俺の体を包んでいた。ふと周りを見てみると、流石に誰もおしゃべりをせず黙って目の前と扉を見ていた。レイドの先頭にいたディアベルが、レイドに向かって最終確認をしている。俺も一応形としては、パーティのリーダーなので、最後の役割確認をした。
「二人共、俺達が言ったこと覚えてるよな?」
アスナとユウキに確認を取った。すると二人は深く頷き、
「分かってる。貫けるのは喉元一点だけ、でしょ」
「後、基本ボクらは一撃離脱だよね」
と、即座に言葉が帰ってきた。
「大丈夫みたいだな、.......二人共、最後に一つだけ。ボス戦では何が起こるか分からない、だから絶対に気を抜かないでくれ」
「リョーかい」「分かった」
再度、二人が頷いたのを確認し正面を向いた。するとヒロが話し掛けてきた。
「.......後は、俺達がタイミングよく奴らの武器を、ソードスキルで跳ね上げさせるだけだな。俺は大丈夫だけど.......キリトも勿論大丈夫だよな?」
「当たり前だろ」
ヒロに心配されたので、俺は自信満々に答えた。するとヒロが笑いながら、
「良かった、キリトが柄にもなく緊張してる風に見えたさ、ちょっと心配してたんだけど.......その様子じゃ大丈夫だな」
「ああ、その点については心配してないんだけど.......一つ心配があるとすれば、アスナとの連携かな。彼女とは、初めて一緒に戦うからちゃんと連携がとれるかどうか.......」
俺はそう言うと背後にいるアスナをチラッと見た。どうやら彼女はユウキと話しているようだ。
「なんだ、そんなことか。それなら大丈夫だ、彼女の実力は前にも言ったように俺と比べても遜色がないくらい強い。それは俺が保証するよ」
「そうか.......ヒロが言うなら大丈夫だな」
俺はそう言うと前方を見た。ちょうどディアベルが、全パーティを綺麗に並ばせ終えたところだった。ディアベルが銀の長剣を高く掲げ、大きく頷いた。レイドメンバーも同じように頷き返した。レイドメンバー全員が、頷いたのを確認し、二枚扉に手を当てて、
「.......行くぞ!!」
と叫び、扉を開け放った。
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2022年12月4日 (日) PM12時40分
─第一層 迷宮区最上階 ボス部屋─
扉が開け放たれると、ボス部屋の左右の壁にある松明が燃え上がった。松明は部屋の奥に向かって数を増やしていった。松明が燃え上がったことにより、部屋の中を見渡せるようになった。ひび割れた床や壁。部屋の最奥には巨大な玉座が設けられ、そこには何者かが座っていた。
ディアベルが掲げたままの剣を振り下ろし、
「攻撃───開始!!」
その言葉が合図となり、レイドメンバー全員がボス部屋になだれ込んだ。先頭のA隊と玉座との距離が半分を切った瞬間、玉座に座っていた何者かがA隊に向かって跳んだ。A隊がその場で止まり、衝撃にそなえる。何者かが着地し、俺達に向かって吠えた。
「グルァァァァァァァァァァ!!!」
咆哮と同時に、壁の穴から《ルインコボルド・センチネル》が三匹降りてきた。これが合図となり、
第一層ボス、《イルファング・ザ・コボルドロード》との戦いが幕を開けた。
戦闘開始から数十分が経過していた。途中ヒヤッとする場面もあったが、ボスの四本のHPゲージの内、三本まで削っていた。攻略本の通り、ゲージを一本削るごとに《センチネル》が湧いてきたが、たちまち瞬殺されてしまう。そしてヒロの言った通り、アスナの実力は想像以上だった。
「スイッチ行くぞ!!」
ヒロが叫んだ。
ヒロが盾で《センチネル》の攻撃を受け止めつつ、ブレイクポイントを見つけるや否や、ソードスキルを使って武器を跳ね上げさせた。そしてその間にアスナが、飛び込み
(想像以上だな.......アスナの実力は。あのリニアーの速さは、ヒロの言った通り剣筋が見えない.......まるで流星のようだ.......下手すれば速さだけを見れば、ユウキを凌ぐかもしれないな、.......そしてアスナが安全にソードスキルを放てれるように、センチネルを充分に行動不能にさせる時間を与えるヒロのソードスキルの放つタイミングと正確さ.......この二人組むと強すぎる!!けど.......)
「俺達も負けてられないな!!」
「キリト来るよ!!」
ユウキが叫ぶと、《センチネル》がこちらに突っ込んできていた。対する俺はセンチネルに向かって行った。センチネルが武器を振り下ろす前に、俺はソードスキル《レイジスパイク》を発動させ思い切り武器を弾き返した。
「スイッチ!!」
叫び、飛び退くとユウキもレイジスパイクを発動させ、センチネルの喉元を穿った。残り五割だったHPが、残り数ドットで止まる。そこですかさずユウキがスイッチし、俺が止めを指す。この間約30秒。
「ナイスだユウキ」
「キリトもグッジョブ!!」
俺とユウキが互いを褒めあっていると、俺の背後で戦っているE隊の一人.......キバオウが話し掛けてきた。
「アテが外れたやろ、ええ気味や」
「.......なんだって?」
ユウキをヒロ達のサポートに行かせ、キバオウと向き合う。
「とぼけんなや。ワイは知っとんや、ジブンがこのボス戦に参加動機っちゅうやつをな」
「動機だと?ボスを倒す以外に、何かあるのか?」
「はっ!ワイは知っとるんやで.......あんたが昔、汚い立ち回りでボスの
「な.......」
ラストアタック、文字通り最後の攻撃である。このSAOでは最後に攻撃すると、通常のドロップアイテムとは別に、もう一つアイテム(ほとんどがゲームに二つとないユニーク品)がドロップする。それが通称ラストアタックボーナスという。俺は、βテストの時ラストアタックを取ることを得意としていた。しかし何故キバオウがβテストの時のことを知っている?
「.......キバオウ。あんたはどうやってβテスト時代の情報を入手した?」
「決まっとるやろ。大金詰んで《鼠》から情報を買ったんや!!このボス戦に紛れ込むハイエナを見つけるためにな」
(嘘だな、アルゴはβテストに関する情報は絶対売らない。)
「ウグルゥオオオオオオ──!!」
そんなやり取りをしていると部屋の中央から、ボスの雄叫び声と、おおっしゃ!!というような歓声が聞こえてきた。と同時に、壁の穴からセンチネルが三匹飛び降りてきた。どうやら、ボスのHPゲージが最後の一本に突入したようだ。
「.......雑魚コボ、もう1匹くれたるわ」
そう言葉を吐き捨て、キバオウは仲間の元へと戻って行った。俺もユウキの所に戻った。戻るとちょうどヒロがスイッチをして、アスナとユウキに変わった所だった。
「キリト、キバオウと何話してたんだ?」
「いや.......何でもないまずは敵を倒そう」
そう呟くと同時に、《センチネル》がアスナとユウキによって倒されていた。
「よし!!.......ってキリトキバオウさんとの話は終わったの?」
「ああ」
俺が頷く。
「そっか、じゃあこのまま残りの《センチネル》もやっつけよう!!」
「そうだな.......じゃあヒロさっきと同じ手順で倒そう」
剣を構え直しヒロの方を見てみると、ヒロはちょうど部屋の中央を見ていた。
「.......キリト、ボスって最後のゲージになったら、曲刀を装備するよな?」
「ああ、そうだけど?」
「.......キリト?ボスの武器何かおかしくないか?」
ヒロにそう言われ、部屋の中央を見てみる。ちょうどディアベル達A隊とC隊がボスの周囲をぐるりと囲んでいた。その隙間から、チラリとボスの持つ武器が見えた。
(あの剣.....曲刀にしてはかなり細くないか?それにあのテクスチャは粗雑な鉄のテクスチャじゃない。あの色合いは研ぎ上げられた鋼鉄の色合い.......まさか!?)
俺がそう考えていると、ヒロが再び話し掛けてきた。
「キリトもしかして.......あの武器、俺達が第十層で見たのと同じ.......」
「あ.......ああそうだ!あの武器は.......」
次の瞬間、俺とヒロは同時に呟いた。
「「野太刀だ!!」」
呟くと同時に、ボスがソードスキルを発動させようとしていた。
「だ.......だめだ!!全力で後ろに跳べ──!!」
しかし、その声は届かず無慈悲にもボスはソードスキルを発動させた。ボスが垂直に跳び、落下すると同時に深紅のごとき刃が全方位を襲った。
カタナ専用ソードスキル《旋車》。その威力は絶大でA隊、C隊のHPが一撃でイエローゾーンに陥った。更にこの技は恐ろしいことによりスタン効果があり、A隊C隊のメンバーは全員スタンしていた。
それだけでは終わらなかった。ボスが技後硬直から回復し、近くにいたプレイヤー(ディアベル)に狙いをつけると、野太刀を床すれすれの軌道から高く切り上げた(ソードスキル《浮舟》)。更にボスは浮いているディアベルに向かって、ソードスキル三連技《紅扇》を放った。
「ぐあぁ!!」
ディアベルは苦痛の声を上げ、後方に吹っ飛ばされ床へと叩きつけられた。俺はすかさずディアベルの元に駆け寄った。初めて近距離からディアベルの目を見た俺は、脳がチクリと刺激されていた。
(──俺はこのプレイヤーを知っている!!名前も姿も思い出せないけど、確実にβテストの時に話をしている.......)
そう認識すると同時に、全ての疑問が解決した。
(キバオウはアルゴから情報を買ったと言っていたが、本当はディアベルが情報をキバオウに流していた。そして、ディアベルは俺の事をβテストの時に、ラストアタックボーナスを取りまくったプレイヤーと確信していた。そして俺が、βテストの時みたいにLAボーナスを取られるのを防ぐために、キバオウに情報を渡した見返りにキバオウを使って俺に剣の買い取りを依頼した.......自分のリーダーの地位を磐石にする為に.......)
俺が刹那に考えたことをディアベルも察したのだろう。一瞬顔が歪んだが、しかしその後で俺にしか聞こえない声で呟いた。
「.......後は頼む、キリトさん。ボスを、倒」
ディアベルは最後まで言い終えることなく、その体を青いガラスの欠片へと変わった。
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「うわああああ!!」
「なんで、ディアベルさん!!」
レイドメンバーの全員が、両目を見開いて誰も動こうとしなかった。
それは、俺も同様だった。しかし、ディアベルを殺した諸悪の根源は再び暴れ出そうとしていた。
「.......何で......何でや.......。ディアベルはん、リーダーのあんたが最初に.......」
(.......おそらくキバオウは、ディアベルがβテスターってことを知らないはずだ。だから真実(LAを取ろうとしたこと)を告げる必要は無い.......)
そう考えている内に、ヒロ達三人が《センチネル》を片付け俺の元にやって来た。
「キリト、ディアベルさんが.......」
ユウキが呟く。
「ああ、分かってる...」
俺は答えると、キバオウの元に歩み寄った。ディアベルの遺志を叶えるために.......
「へたってる場合か!!」
「...な.......なんやと?」
キバオウが目を見開き驚愕の顔をしながら見てくる。だが俺は、気にすることなく続ける。
「E隊リーダーのあんたが腑抜けてたら、仲間が死ぬぞ!いいか、《センチネル》はまだ湧く可能性が.......いや、きっと湧く。そいつらの処理はあんたがするんだ!!」
俺はそう言うと、ボスの方に向かって歩き始めた。すると背後からキバオウが問いかけた。
「.......なら、ジブンはどうするんや。一人とっとと逃げようちゅうんか!?」
俺は振り返ることなく答えた。
「そんな訳あるか。.......ボスのLAを取りに行くんだよ」
剣を握りしめ走り出そうとした瞬間、人影が俺の横に現れた。
「キリト、ボクも行くよ!!」
「全くキリト、俺の事も忘れないでくれよ」
ヒロとユウキが同時に言った。
「ああ.......頼む!!」
俺はそう言うと、ボスの方に駆け出した。
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キリトとユウキが駆け出した。俺も駆け出そうとしたが、その前に隣に居るアスナに声を掛けた。「前線から離脱しろ」と言う為に....。だが俺の思考を読んだのか俺が言う前に、アスナが口を開いた。
「わたしも行く」
「で.......でも」
俺はそう言われ迷った。
(アスナには、俺が到底及ばない程の才能がある。それが花咲く前に、蕾のままで散らされてしまうことは容認できない.......)
そう思っていると、アスナが再び口を開いた。
「.......わたしは、最後までわたしのままでいたい....そう思ったから、最初の街を出たの、だから私はこのまま離脱するのは嫌。わたしはこのゲームには負けたくない。」
その理由はヒロが知るよしもないが、偶然にもキリトが強くなりたいという理由に似ていた。
そんな理由を聞かされては、俺は断ることが出来なかった。
「.......そうか.......分かった行こう!!」
アスナが頷き、俺達はキリトとユウキの後を追いかけた。
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俺とユウキが前線に着いても、未だにプレイヤー達は怒号と絶叫が飛び交っていた。
「全員、後ろに下がれ!!」
しかし、俺の言葉は周りの喧騒に掻き消されてしまう。
(まずい、このままじゃレイドは全滅するぞ.......早く何とかしないと.......)
その時だった、俺の横を二人のプレイヤーが通りすぎた。アスナとヒロだ。
(どうする気だ.......)
すると、アスナがフード付きケープを邪魔そうに掴み、一気に体から引き剥がした。栗色のロングヘアが、松明の光に照らされて鮮やかに輝いた。
長い髪をなびかせて疾駆するアスナは、まるで闇の底を照らす流星だった。そして、プレイヤー達はその美しさに目を奪われ沈黙した。その時、ヒロが叫んだ。
「全員、出口方向に下がれ!!さっきの技が来る前に!!」
ヒロの言葉に、プレイヤー達が我に返り一斉に後方へ下がる。しかし、その時、運悪く《センチネル》が湧いた。《センチネル》が後退するプレイヤーの前に立ち塞がる。
「キリト!!俺とアスナが、皆が後方に下がれるだけの時間を稼ぐ!!その間に、二人でボスを!!」
「え.......なんでわたしの名前を.......」
しかし、その声はボスの咆哮で掻き消された。どうやら、ボスが 後退するプレイヤー達に狙いをつけたようだ。けれどヒロはボスの方を振り返ることなくセンチネルの元に駆け出した。それにアスナも続く。
「行くぞアスナ!!早く倒して、キリトの援護に行くぞ!!」
「了解」
そう言うと、二人はセンチネルに立ち向かって行った。
(ヒロ.......ありがとう!!)
俺は心の中でそう呟き、ボスの方に向き直った。
「ユウキ、手順は《センチネル》と一緒だ!!行くぞ!!」
「リョーかいっ!!行こうキリト!!」
前方では、コボルド王が野太刀を構えてソードスキルを発動させようとしている。俺はそう認識すると、自分もソードスキル《レイジスパイク》を発動させた。ボスとの距離十メートルを一気に駆け抜ける。横にいるユウキも同じように《レイジスパイク》を発動させていた。二人の剣の軌道とボスの野太刀の軌道が交差した。
凄まじい衝撃。だが俺達の剣技が僅かに上回った。ボスが二メートル以上ノックバックし、両手を床に着いた。すかさず俺達は、ソードスキル《スラント》を発動させ追撃をした。
(手応えアリ!!)
だがボスは甘くない。ボスはすぐに体勢を立て直し、再びソードスキルを発動させた。俺とユウキがボスから飛び退く。飛び退いた直後にソードスキル《幻月》を俺に向かって発動させた。《幻月》は軌道が上下どちらか来るかわからないフェイント技。アニールブレードで防御しようとしたが、間に合わず攻撃を受けてしまう。
「キリト!!くっ.......」
ユウキが心配そうな声を出す、そして一人でボスに突っ込んだ。だが《幻月》は技後硬直が短い。ボスの硬直が解け野太刀がユウキを襲う──間際、
「ぬ.....おおおッ!!」
太い雄叫び声が轟き、巨大な武器がソードスキル特有の光芒を引きながらボスの野太刀と激突する。このソードスキルの名はソードスキル《ワールウインド》放ったのは、B隊リーダーエギルだった。エギルの攻撃によりボスが大きくノックバックする。そこに、
「待たせたな!!キリト!!」
ヒロがソードスキル《レイジスパイク》を発動させながら突っ込んできた。それに続くようにユウキとアスナが、渾身のソードスキルを放った。
「あんたがPOT飲み終えるまで、俺達が支える!!ダメージディーラーにいつまでも壁をやらせる訳にはいかないぜ」
「.......すまん、頼む」
エギルはそう言うと、ボスの方に戻って行った。
ヒロやエギル達の攻撃によってみるみるボスのHPが減っていった。しかしボスも黙っている訳なく、ソードスキルを発動させて小癪なプレイヤーをなぎ払おうとする。だが、ボスが使うカタナソードスキルはヒロしか見切れない。なので俺はそのモーションを見て、エギル達に「右水平切り!!」だの「左切り降ろし!!」などの指示を出す。幸いな事にエギル達B隊は元々タンク編成なので、彼らが壁になって攻撃を防ぎ、ユウキ、ヒロ、アスナがその間にソードスキルを叩き込むという連携が取れていた。
(頼むこのまま行かせてくれ)
俺はポーションを飲みながら、何者かに祈った。
だが気が緩んだのだろう、B隊の一人が脚をもつれさせボスを囲んでしまう。ボスが《囲み状態》を検知し、垂直にジャンプした。あのモーションは、全方位攻撃《旋車》───俺はそう認識し、前線に走り出した。
「させるか!!」
俺は思い切り飛び、ソードスキル《ソニックリープ》を発動させた。《ソニックリープ》は同じ片手剣突進技の《レイジスパイク》と違い軌道を上空に向けれるという特性があり、俺はそれを活かしボスの左腰に剣を叩きつけた。
「ぐるう!!」
見事に命中し、ボスが背中から落ちてきた。立ち上がろうとするが、手足をばたつかせるだけで、立ち上がれない。
俺は何とか着地に成功し、叫んだ。
「今だ!!
「お.......オオオオ!!」
エギル達B隊が鬱憤を晴らすかのように叫び、ソードスキルを発動させた。ユウキ達もソードスキルを連発する。ボスのHPゲージが残り二割を切ったところで、ボスが起き上がり再び《旋車》を発動させようとする。
しかし、エギル達B隊や、ヒロとアスナは技後硬直を強いられ動けない。つまり今動けるのは、俺とユウキだけで残りHPからするとこれが最後の攻撃だ。
「ユウキ、最後の攻撃頼む!!」
「リョーかい!!」
俺とユウキは同時に地を蹴った。
「行け!!キリト、ユウキ!!」
後ろからヒロが叫んだ。俺とユウキはそれに応えるために渾身のソードスキルを放った。ユウキのソードスキル《ホリゾンタル》が右脇に命中する。僅かに遅れた俺の剣が、左肩から腹まで切り裂いた。《ホリゾンタル》ならここで終わりのだが俺が放ったのは、《ホリゾンタル》ではなく──
「お......おおおおおお!!」
全身全霊の気合いと共に、剣をはね上げさせる。先の斬撃と合わせ、V字が描かれる。
ボスが後方へとよろめき、天井に顔を向け小さく吠えた。その直後、体に無数のヒビが入り、《イルファング ザ コボルドロード》はその体をガラス片へと変えて爆散した。同時に全てのプレイヤーの前に《Congratulations!!》と表示された。
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ボスを倒したことにより、センチネルも消滅し松明が明るいイエローへと色彩を変えた。
「か.......勝ったぞ!!」
「うおっしゃああ!!」
プレイヤー達が大きな歓声を上げた。中には、抱き合うものや滅茶苦茶な踊りを披露する者もいた。そんな中、キリトは切り上げたままの姿勢で動けなかった。
(ホントにやったのか.......?まだ何かあるんじゃないか?)
俺がそう考えていると、小さな手が右手に触れた。
「キリト、お疲れ!!」
俺はその言葉を聞いて、ようやく確信した。ボス戦は終わったのだと.......俺は右手の剣を背中の鞘に納めた。すると背後からやって来たヒロに肩に手を置かれた。
「やったぜ、キリト!!やっぱお前はすげーよ!!」
「いや.......ボスを倒せたのは皆のおかげだよ」
そう言うと、ちらっとユウキを見る。どうやら、アスナと話しているようだ。
「何言ってんだよ、お前の指揮のおかげで倒せたんだ」
「その通りだ」
不意に、ヒロ以外の声が背後から響いた。後ろを振り返る、そこにはB隊リーダーエギルがいた。
「見事な指揮だったぞ。そして見事な剣技だった。Congratulation、この勝利はあんたのものだ」
途中の英語を、見事な発音で言ってのけた巨漢は、俺の目の前に拳を突き出してくる。俺も自分の拳を合わせた。
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ユウキは少し離れて、キリト達のやり取りを見ていた。すると、アスナが近寄ってきた。
「.......あっお疲れ!!アスナ!!」
「お疲れ様.......ねぇユ..ユウキさん?」
「うん、何?」
アスナが少し不安な声で尋ねてくる。
「わたし、あなた達に名前教えてないのに、どうやってわたしの名前を知ったの?」
「え.......だってここに名前が.......」
そこまで言って、ユウキは一つの結論に辿り着く。
「もしかして、パーティ組むの初めて?」
「そうよ」
「なるほどねー.......この辺にアスナ以外のHPゲージが見えてるでしょ?そこの所をよーく見て」
「こ、こう?」
アスナの、はしばみ色の瞳がぎこちなく動き、ユウキには見えない文字列を捉えた。
「ホントだ.......何か書いてある。ユウキと.......キリトにヒロ?」
「うん、そうボクがユウキ。そしてあっちがキリトで、あっちがヒロ」
ユウキが指でさしながら、アスナに説明する。
「なぁんだ.......こんなとこに、ずっと書いてあったのね.......」
アスナが呟くと同時に、キリトとエギルが拳を付き合った。
「ボク達も、キリト達の所に行こ」
アスナが頷き、ユウキ達はキリト達の元に歩み寄った、その時だった。ボス部屋に泣き叫ぶような声が響いたのは、
「なんでだよ!!なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ!!」
ボス部屋に居た全員が声の発生源の方を向いた。声を発したのは、A隊の.......ディアベルの仲間のシミター使いだった。見ると彼の背後には、他のA隊のメンバーが顔をくしゃくしゃにして立っていた。
「見殺し.......?」
俺は彼が言った言葉の意味が分からず呟いた。しかし、言葉の意味はすぐに判明した。再び彼が口を開く。
「そうだろ!!だって.......だってアンタは、ボスの使う技が分かってたじゃないか!!その情報を伝えていれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」
彼がそう叫ぶと、プレイヤー達がざわめき始める。「確かに.......」「攻略本にも書いてなかったのに.......」などと言う声が徐々に広がっていく。その時、E隊の一人が俺の近くまでやってきて、右手を俺に突きつけ叫んだ。
「オレ.......オレ知ってる!!こいつは、元βテスターだ!!だからボスの使うソードスキルを知ってたんだ!!知ってて俺達に隠してたんだ」
その言葉を聞いても、プレイヤー達は驚かなかった。俺がボスのソードスキルを見切った時点で気づいたのだろう。俺がβテスターってことを.......。
再度、彼が何かを叫ぼうとしたが、別の声によって遮られた。
「でもさ、攻略本にはボスの攻撃パターンはβ時代の情報って書いてあったろ?もし彼が元βテスターなら、知識は攻略本と同じなんじゃないか?」
「そ、それは.......」
E隊メンバーが押し黙る。代わりにシミター使いが叫んだ。
「あの攻略本が、嘘だったんだ!!アルゴって情報屋だって元βテスターなんだから、タダで本当のことを教えるわけなかったんだ!!」
(まずい、この状況はまずい。俺一人なら、どんな糾弾も受けよう。けど、アルゴやヒロ、他のテスターに敵意が向くことは避けないと.......でもどうすれば......)
そう考えた瞬間、俺に一つのアイデアが浮かんだ。但しこれを実行すれば、俺は今後どのような目に遭うか分からない.......でも少なくとも、ヒロ達に敵意は向かない.......俺は覚悟を決めた。
沈黙する俺の背後で、今まで我慢していたエギルとアスナとユウキが、同時に口を開いた。
「おい、お前.......」
「あなたね.......」
「ちょっと!!いい加減に.......」
しかし俺は、ユウキ達が言い終える前に一歩前に出た。
「元βテスター、だって?.....俺を、あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」
「な...なんだと....?」
「思い出してみろよ。SAOのβテストはとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。その内、本物のMMOゲーマーは何人いたと思う?ほとんどはレベル上げを知らない
俺の言葉に、他のプレイヤー達が一斉に黙り込む。
俺は構わず続けた。
「でも、俺はあんな奴らとは違う。俺はβテスト中に、他の誰も到達できなかった層に
「....何だよ、それ....そんなのβテスターどころじゃねえじゃんか...もうチーターだろそんなの!!」
シミター使いが叫んだ。周囲から、そうだ、チーターだ、βのチーターだ、という声が沸き上がる。やがて《ビーター》という単語が俺の耳に届く。
「《ビーター》、いい呼び方だなそれ」
俺はそう言うと、ウインドウを開き先程ボスからドロップしたLAボーナスの《コート・オブ・ミッドナイト》を装備した。俺が今まで着ていた灰色のコートが、黒いロングコートに変化した。
「そうだ、俺は《ビーター》だ。これからは、元テスター如きと一緒にしないでくれ」
(これでいい、今後新規プレイヤーの敵意は全部ビーターに向けられるはずだ。βテスターってバレてもすぐに目の敵にはされないはずだ)
俺はそう言うと、ボス部屋の奥にある小さい扉に向かって歩き出した。
「二層の転移門は、俺が
振り返ることなく言い、第二層へと続く扉を押し開け螺旋階段を上り始めた。
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2022年12月4日 (日) PM13時40分
─第一層 迷宮区 第二層へと続く階段─
上り始めて数分、目の前に扉が現れた。扉を開けると、途轍もない絶景が目に飛び込んできた。下り階段が岩肌に沿って左に伸びてるが俺はその場に腰掛け、第二層を見渡した。何分かそうしていると、背後から階段を上ってくる音が聞こえてきた。振り返るとそこにヒロがいた。
「...来るなと言ったのに....」
「死ぬ覚悟があるなら来いって言ったろ。それよりも....すまん、キリト!!」
そう言うと、ヒロが突然俺に頭を下げた。
「と...突然どうしたんだよ?」
ヒロに尋ねる。するとヒロが頭を上げ答えた。
「...キリトだけにβテスター達の尻ぬぐいをさせてしまって、本当は俺もやらないといけないのに....」
「なんだ.......そんなことか、大丈夫だよ。そもそも俺が選んだ道だからな.......だから気にすんな」
俺がそう言うと、ヒロは渋々納得した。
「.......分かった。けどいつかこの恩は返させてくれ!!必ずだ!!」
俺はその言葉に頷いた。
「.......それとキリト、俺が【ホルンカ】で言った事覚えてるか?」
「.......ああ覚えてるよ」
俺はアスナの戦闘を見て薄々と勘づいていた。このボス戦が終わると、ヒロがパーティから抜けるだろうということを.......
「アスナはとんでもない才能を持ってる。それに彼女は、俺達が身につけれないもっとずっと大きくて貴重な強さを身につけられる筈だ。そしてそれは必ず、このゲーム攻略に必要になる....けど彼女はゲーム初心者だ。今は知識や仲間が無いとこのゲームを生き残れない.......だから俺は、彼女が誰か信頼出来る人にギルドに誘われるまで.......一緒に行くよ」
「そうか.......分かった」
俺がそう言うと、後ろの階段から足音が聞こえてきた。
「.......キリトが今一番話さなきゃいけない人が来たようだな」
ヒロがそう言うと、右手を高く掲げた。俺も同じように、右手を掲げた。そして、右手同士でハイタッチを交わした。
「.......またな、
「ああ、また会おう」
ヒロはそう言うと、階段に消えて行った。ヒロが階段に消えてから数秒後、足音の主が現れた。それは俺の想像した通りの人物──ユウキだった。
「ユウキ...」
俺が呟く。ユウキは黙って俺の元に近づいて来た。
「...ユウキ、何で来たんだ?」
「言ったでしょ。ボクはどんな事があってもキリトの味方だから」
ユウキが迷いもなく、真剣な表情で言い切った。
「俺と一緒にいると、ユウキも《ビーター》扱いされるぞ」
「大丈夫、ボクは気にしないよ。それにヒロにも頼まれたしね」
「えっヒロ?」
俺は驚きの声を上げた。
「うん、さっきすれ違った時にヒロが、「キリトを頼む。アイツは結構無茶するからさ、それに...一人で何でも抱えちまうから傍にいてやってくれ」って言われたからさ」
(全く、ヒロには何でもお見通しだな....)
「....ホントにいいのか?」
俺がそう言うと、ユウキがとびきりの笑顔で頷きながら、
「うん!!だってボクはキリトの....
俺はその様子を見て、思わず笑みが零れた。
「ありがとな、ユウキ....よし、転移門を有効化しに行くか!!」
「うん!!」
そう言うと俺達は、二人で主街区に向けて歩き出した。
「あっ!!そういやキリトに、エギルさんとキバオウさんから伝言預かってるんだ」
「伝言?」
「うん、エギルさんは「二層のボス攻略も一緒にやろう」って。キバオウさんは、「今回は助けてもろたけど、やっぱりワイはジブンのことは認めれへん。ワイはワイのやり方でクリアを目指す」だって」
俺は再び、笑みが零れるのを感じていた。
「そうか、なら頑張らなきゃな」
「そうだね.....ところでキリト、二層ってどんなモンスター出るの?」
「ああそれは....」
俺はユウキに説明しながら主街区を目指した。
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2022年12月4日 (日) PM16時00分
─第一層 トールバーナ ─
(まだかな、兄さん)
一人の少女が、トールバーナの街でボス攻略に行ったレイドを待っていた。何分かすると、ゲートからレイドメンバーが帰ってきた。
(帰ってきた!!....アレ?、でも何か様子が....)
レイドの様子を見てみると何やら不穏な....誰か亡くなった....という感じの空気が漂っていた。少女は恐る恐るレイドメンバーの一人に話しかけた。
「あの、すみません」
レイドメンバーの一人が、少女に反応した。
「.......なんだよ」
少女に対して、レイドメンバーの一人がぶっきらぼうに反応した。
「突然すみません、あの.......レイドリーダーの方は何処にいるのでしょうか?」
少女がそう呟くと、答えた男性が肩を震わせながら呟いた。
「.......ディアベル.......ディアベルさんは.......くっ.......」
突然男性が泣いたので、少女は困惑した。しかしすぐに、男の仲間とおぼしき人が近寄ってきた。
「おい、大丈夫か?.......君は誰だい、何かようかな?」
「.......あっ、あの.......レイドリーダーの方を探してるんですけど.......」
少女がそう言うと、男の仲間の人が一瞬だけ顔をくしゃくしゃにしたが、すぐに戻し今すぐに泣きそうな声で呟いた。
「.......ディアベルさんは、ボス戦の最中に死んだ。ごめんもういいかな.......皆、心の整理がついていないんだ」
男はそう言うと、泣き崩れた男を引き連れ去って行った。ただ一人、少女が取り残される。しかし突然少女は、街の中心にある転移門から【はじまりの街】を指定すると、一直線に【はじまりの街】の中心にある黒鉄宮に急いだ。
(死んだ?.......兄さんが.......そんな、なんで有り得ない!!.......だって、だって、この前まで元気だったのに!!.......)
黒鉄宮に着くと、少女はDの列を探し始める。そこに書いてあったのは、
Diavel 死因 モンスターによる攻撃
その事実が、少女に突き刺さった。
(ホントだった.......そんな.......兄さん......私はどうすれば.......助けてよ誰か助けてよ!!.......)
そう認識すると同時に、少女は床に泣き崩れ、人目もはばからず泣き続けた。
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2022年12月4日 (日) PM16時00分
─???─
とある少年が、ベットに横たわる少女を見ていた。その寝顔はまるで天使のような可愛い顔をしていた。しかし、その可愛い顔を壊すかのように頭の機械が稼働していた。
「待ってろ天舞音.......僕が、.......僕が必ず助ける」
少年はそう言うと、近くにあった椅子に腰掛け持ってきたバックから、少女が被ってるモノと同じ物を取り出す。それを、迷いもなく自分も被る。そして、少女のベットに突っ伏すように体勢を整えた。そして今となっては、言ってはいけないコマンドを口にした。
「リンク・スタート‼」
少年の意識は、遠い仮想世界へと引き継がれていった。
いかがでしたでしょうか。前回も言った通り、戦闘描写書くの不安だったので上手く表現出来てるか不安です。(笑)さて、前置きはこれくらいにしてお知らせというのは、このたびTwitterを始めました。
理由は2つありまして、1つ目は小説の進捗状況をお知らせするのと、2つ目は私はご存知の通り書くのが遅いので、皆さんに催促してもらおうということで、Twitterを始めました。私のIDはプロフィール欄に貼っていますので、気軽にフォローよろしくお願いします。
今回も読んで頂きありがとうございました。何とか五話目まで続けれたのは、読んでくれる皆様のおかげです。本当にありがとうございます。それでは、またお会いしましょう。
(エクスクロニクル京都開催決定!!
だけど、行けれなーい(´;ω;`))