とある魔術の仮想世界[4]   作:小仏トンネル

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第84話 人間

 

『ですからね、どれほど本物に近づこうとも、偽物が本物になることは永遠にないんですよ。中世の錬金術と同じようなもんです。鉄や銅をどれだけ煮たり焼いたりしたところで、絶対に金にはならんのですよ!』

 

 

上条当麻がアンダーワールドから帰還して1ヶ月が過ぎた。その月の最初の日曜日、彼と同じく学園都市内に住まうパーティー仲間は、学園都市の第五学区ではなく、ALO内の央都アルンにてエギルが経営する『ダイシーカフェ』に集まっていた

 

 

『ですが先生。事前のプレスリリースによればですね、人間の脳の構造そのものの再現に成功したと……』

 

 

そんな彼らが視線を注ぎ込んでいるのは、リーファが用意したウィンドウに映し出された、彼女の住む世界で生放送されているお昼のワイドショーだった。上条達の住む世界ではまず見ることの出来ないテレビ番組に出演するレポーターないし、名前も聞いたことのないコメンテーターや識者達は、概ね否定的なトーンで議論を交わしていた

 

 

『それが無理だと言ってるんです!いいですか、私たちの脳には、百億以上、下手するとそれ以上の脳細胞があるんですよ?それを機械やコンピュータ・プログラムで再現するなんて、できると思います?思いますか?どう考えたって無理でしょう!』

 

「・・・けっ。見もしねぇうちから分かったようなこと言いやがら」

 

「えっ。分かんのかクライン?そもそも俺にはコイツらが何言ってんのかサッパリだ」

 

「アンタは当事者も当事者だったんだから少しは理解しようとしなさいよ……」

 

 

店主エギルの前にあるカウンターに座り、テレビに映る識者に向かって毒づいたのは、昼間からジントニックを片手にした火妖精のクラインだ。そんなクラインの隣に座る影妖精の上条が彼の言葉に感心していると、むしろ上条の関心のなさに、水妖精特有の水色の髪が伸びる頭を抱えて美琴が言った

 

 

「しょうがないわよ。実際この目で見たあたしだって、未だに信じられない気分なんだから。あの人たちが人工知能で、あの世界がサーバーの中の仮想世界だった…なんて」

 

「本当よね。空気の匂いとか地面の質感とか、ヘタすると現実以上に現実だったもの」

 

「それは、えっと…STLでしたっけ?でダイブしたシノンさんとリーファさん、カミやんさんとミコトさんだけの特権ですよー。アミュスフィアを使ってた私たちには、少なくともフィールドやオブジェクトはなんの変哲もないポリゴングラフィックでしたよ」

 

「だが、アンダーワールド人達がただのNPCじゃないことについては、誰も異論ねぇだろ?」

 

 

上条達のいるカウンターから少し離れた円卓のテーブルに座る鍛治妖精のリズベットが言うと、猫妖精に扮した二人の少女、シノンとシリカも続いて口を開いた。そして彼女らの談義を、土妖精にしてダイシー・カフェの店主であるエギルが取りまとめたところで、風妖精の姿となって彼女自身が住む現実のテレビを見つめるリーファに上条が声をかけた

 

 

「ところでリーファ、キリトとアスナは来てねえのか?もうあれから一ヶ月経ったんだし、色々と片付けなきゃいけないことも終わったろ?」

 

「うん。ALOにはログインしてないだけで、お兄ちゃんもアスナさんもとっくにオーシャン・タートルからは戻ってきてるよ。今日ここにいないのも、ちゃんと自分たちの目で見ておきたいから、って言ってた」

 

「そうだったのか…なんか悪いな。別にリーファだって、無理して俺たちに付き合わずに、現実で見てても良かったんだぜ?」

 

「いいのいいの。こんなの一人で見てたってつまんないし。それに実際、カミやん君達だって気になってたでしょ?」

 

「そりゃあな。だけど、このワイドショー見る価値がそこまであるかは分からねぇな。どうせアリスのフラクトライトが『駆動鎧』とまではいかなくとも、合金製の機械に入って出てくるのなんざ見たところで……」

 

『あっ、どうやら会見が始まるようです!それでは画面をメディアセンターからの中継に戻します!』

 

 

ワイドショーの司会者の言葉に、上条とリーファを始め、店内の仲間がしんと静まり返った。テレビの映像が、ワイドショーのスタジオからフラッシュの光が瞬く記者会見場の中継に切り替わると、彼らはかつて懸命に守ったものが、ついに一般公開されるその瞬間を固唾を飲んで待ち受けた

 

 

『・・・・・失礼致します』

 

 

記者会見場の扉を開ける音とほぼ同時に言った女性は、落ち着いた印象を受ける、パンツスーツ姿をした20代半ばの女性だった。カッ、カッというヒールの音を何度か響かせ、何十本ものマイクが並ぶ演壇の前で立ち止まった女性の前には『海洋資源探査研究機構 神代凛子博士』というネームプレートが置かれていた

 

 

「あの人が神代博士ね…確か、アスナさんがキリトさんを追ってオーシャン・タートルに侵入した時の協力者だったのよね?」

 

「はい。ついでに言うと、私たちの世界の茅場晶彦の元恋人らしいです」

 

 

美琴とリーファの話題に上がったのと同時に、テレビに映る神代博士は堂々たる態度で会釈すると、広大な会場を埋め尽くすテレビカメラやスチルカメラの放つ光の洪水に目を細めながらも、一つ咳払いを置いて落ち着き払った声で話し始めた

 

 

『本日はお忙しい中、お集まり頂きましてありがとうございます。本日、当機構は恐らく世界で初となる、真正人工汎用知能の誕生を発表させて頂きます』

 

 

いきなり主題に切り込む言葉に、会場が大きく騒めいた。しかし神代博士はそれに全く動じる事なく涼しい顔で左手を持ち上げ、ステージの上手を差し示した

 

 

『それでは紹介致します。・・・アリス』

 

 

期待と疑念に満ちた視線が集まる中、銀色のステージパネルの陰から姿を現したのは……金色に輝く長い髪。雪よりも白い肌。すらりとした手足と細い体を紺色のブレザーに包んだ、一人の少女だった

 

 

「え、ええっ!?」

 

 

アリスと紹介された少女の姿を見た上条は、驚愕すると同時に、自分の目を疑った。自分がアンダーワールドで共に戦ったアリスは、いくら秀でた人工知能だとはいえ、仮想世界でしか体を持たない存在のハズ。てっきり機械仕掛けの入れ物に知能を植えられた、仰々しいロボットが出てくるものだと彼は思っていた

 

 

「う、嘘でしょ…?本当にアリスさんの姿形そのものじゃない……」

 

 

しかしそう思っていたのは上条だけではなく、彼女を見た美琴も思わず声を漏らし、カフェの中にいる全員の視線が奪われた。そんな彼らの予想とは裏腹に、アリス・シンセシス・サーティの生き写しとでも言うべき姿で現れた人工知能は、中継映像が白飛びするほどのフラッシュが焚かれる中、お辞儀どころか記者席に顔を向けようともせず、昂然と背筋を伸ばしたまま歩いた

 

 

『・・・・・失礼致します』

 

 

一言置いて演壇に立つや、少女はくるりと体を回した。翻った金髪が、スポットライトを浴びて眩く煌めく。無言で記者席を見下ろす少女の瞳は、透き通るようなブルーだった。西洋人とも東洋人とも言い切れない、ある種凄みさえある美貌に、会場が徐々に静まり返っていく。それが生身の人間の容貌ではないことを、会場にいる全ての人間と、中継を見る無数の視聴者は直感的に悟った

 

微細なモーター音がすることから鑑みるに、金属の骨格をシリコンの皮膚で覆ったロボットであることに間違いはない。似たようなタイプの女性型ロボットなら、上条達が住む科学の最先端を行く学園都市はおろか、キリトたちのいる世界ですらいくらでも見ることができる。しかしながら先刻の滑らかすぎる歩行と、完璧な姿勢制御に加えて、金髪の少女から放たれる何かが人間たちに言い知れぬ衝撃を与え、長い沈黙をもたらした

 

 

『・・・リアルワールドの皆さん、初めまして』

 

 

ややもすれば、それは青い瞳の奥に秘められた、深い輝きのせいかもしれなかった。単なる光学レンズには絶対に宿らない、知性の光。それを目の当たりにした記者席の人間が完全に静まり返ると、金色の少女は仄かな微笑みを浮かべて口を開くと、続いて奇妙な仕草を見せた

 

 

(あ、騎士礼……)

 

 

央都セントリアの修剣学院でその仕草を習った上条だけが、アリスの取った行動を理解していた。軽く握った右拳を水平にして左胸に触れさせ、ゆるく開いた左手を、まるで不可視の剣の柄に添えるように左腰にあてがいながら一礼。さっと両手と上体を戻し、肩にかかる金髪を背中に払うと、清冽さの中にも甘さの漂うクリアな声が淡い桜色の唇から零れ落ち、会場のスピーカーと無数のテレビから流れた

 

 

『私の名前はアリス。アリス・シンセシス・サーティです』

 

 

そして、テレビ画面の向こうにいるアリスと神代博士は、演壇の後ろの椅子に着席した。するとアリスの前にも[A.L.I.C.E 2026ーアリス・シンセシス・サーティ]というネームプレートが自動で起き上がった

 

 

「なんだぁ?あの服…どっかの学校の制服か?」

 

「はい。お兄ちゃんが通ってるSAO帰還者学校に通ってる生徒の制服で、人界守備軍の救援に来てくれた皆さんと同じ騎士団の服がいいって、本人が希望したんです。まぁ第一希望は、向こうで着てたのと同じ純金のアーマーだったみたいですけど」

 

「んなもん着て出てこられた日にゃ、みんな怖がってロクすっぽ質問なんかできねぇよ」

 

 

アリスの服装を見たクラインが呟くと、兄と同じ制服に袖を通したアリスの姿に、少し感慨深くなったリーファが言った。そして未だに彼女の似姿を映すテレビに実感が湧かない上条が頬杖を突いて言うと、カフェ内に和やかな笑い声が生まれた

 

 

「それにしても、凄い再現度だわ。私、アンダーワールドで彼女と少しだけ話したけど、画面越しだとほとんど違いが……」

 

『それでは、少々例外的ではありますが、まず質疑応答から始めさせて頂きたいと思います』

 

 

シノンがそこまで呟いた時、テレビ画面内の神代博士が口を開いた。質疑応答から始まる、という段取りは事前に通知されていたようで、たちまち記者席から無数の手が上がる。最初に指名されたのは、大手新聞社の名札を首元から提げた男性の記者だった

 

 

『え〜…まず基本的なことから質問いたしますが、アリス……さんは、プログラムに制御された既存のロボットとは、具体的にどのような点が異なるのですか?』

 

『この会見では、アリスの物理的な外見は重要な問題ではありません。彼女の脳……あえて脳と呼ばせていただきますが、頭蓋内に格納される光子脳に宿る意識は、バイナリコードに置換可能なプログラムではなく、私たち人間のそれと本質的に同じ存在なのです。そこが、既存のロボットとは絶対的に異なる点です』

 

「これ日本語でおk?」

 

「アンタちょっと黙ってなさい」

 

 

男性記者からの質問に神代博士が答えると、脳内が一瞬の内に「???」で埋め尽くされた上条がテレビ画面を指差して言った。そんな彼に付き合い切れずに美琴が釘を刺すようにツッコんでいると、男性記者が小さく相槌のような息をした後でもう一度訊ねた

 

 

『は、はぁ…では、それを私たちや視聴者に、可能な限り分かりやすい形で示していただきたいのですが……』

 

『チューリング・テストの結果は、お手元の資料に記載されていますが』

 

『いえその、そうではなくですね。たとえば、アタマ……頭蓋を開いて、内部の光子脳というものを、直接見せて頂けたらと』

 

 

男性記者の質疑に、記者会見場で実際に答えていた神代博士はおろか、その中継を見ている上条達ですらも顔を顰めた。そして厳しい表情になった神代博士が記者に向けて言い返すより先に、アリスがにこりと自然な笑みを浮かべつつ答えた

 

 

『えぇ、構いませんよ。しかしその前に、あなた自身も、ロボットではないということを証明してくださいませんか?』

 

『・・・えっ?も、もちろん私は人間ですが…証明と言われても……』

 

『簡単です。頭蓋を開いて、あなたの脳を見せて下さい、と言っているのです』

 

「う、おぉ…アリスのやつ、ありゃ相当トサカにキてんな」

 

「あぁ、あの記者命拾いしたな。もしアリスの手元に金木犀の剣があったら、今ごろ頭かっ開くどころか全身バラバラだったろうぜ」

 

 

記者を威圧するようなアリスの言葉に、クラインが身震いしていると、上条は肩を竦めつつ笑った。テレビ画面に映る記者よりも、よっぽど彼女の凜々しくも苛烈な性格を知っている、ダイシー・カフェに集まったプレイヤーからすれば、彼女の返答には爽快感に近いものがあった

 

 

『・・・では、神代博士にお訊きします。既に一部労働組合などから、高度な人工知能の産業利用は、失業率の更なる上昇をもたらすという懸念の声が相次いでいますが……』

 

『その危惧は的外れなものです。当機構には、真正AIを単純労働力として提供する意図は一切ありません』

 

 

画面内では、憮然とした表情の男性記者が着席し、次の質問者が立ち上がっていた。ばっさり否定する博士のコメントに、質問した女性記者は一瞬口籠ってから、いっそう意気込むように続けた

 

 

『しかし、逆に経済界からは期待もかけられているようです。産業用ロボット関連企業の株価は軒並み上昇しておりますが、それについては……』

 

『残念ですが、真正AI…資料にあるように当機構は『人工フラクトライト』と呼称しておりますが、彼らは短期間で大量生産できるような存在ではないのです。私たちと同じように赤ん坊として生まれ、家族の元で子供から大人へ…唯一無二の個性を獲得しながら成長します。そのような知性を産業ロボットに組み込み、労働に強制従事させるようなことがあってはならないと考えます』

 

『つまり博士は…AIに人権を認めるべきだ、とおっしゃるのですか?』

 

『一朝一夕に結論の出るテーマではないことは解っています』

 

 

しばし、会場が沈黙した。硬い声色で訊ねた女性記者に対し、神代博士の声はあくまでも穏やかだったが、強い意志に裏打ちされた揺るがぬ響きを帯びていた

 

 

『しかし、我々人類は、もう二度とかつての過ちを繰り返すべきではない。それだけは確かなことです。ずっと昔、列強と呼ばれた先進国の多くは、競うように後進国を植民地化し、その国の人々を商品として売買したり、強制労働に従事させたりもしました。その遺恨は、長い年月を経た現在でも、国際社会に大きな影を落とし続けています』

 

『今この瞬間、人工フラクトライトたちを人間と認め、人権を与えて欲しいと言われても、違和感を覚える方々が大多数でしょう。しかし、百年、あるいは二百年後には、私たちは当然のように彼らと同一の社会に生き、分け隔てなく交流し、あるいは結婚したり家庭を築いてさえいるはずです』

 

『これは私の確信です。ならば、その状況へ至るプロセスにかつてのように多くの血と悲しみが必要でしょうか?誰もが思い出したくない、封印せねばならない歴史を再び人類史に書き加えることを望むのですか?』

 

『ですが博士!彼らはあまりにも私たち人間と、存在の定義が違いすぎます!体温のない機械の体を持つモノを、どうすれば同じ人類と認められるというのですか!?』

 

 

神代博士の言葉に、女性記者は我を忘れたように叫んだ。気づけば女性記者だけでなく、会場内にいる多くの人が声を上げている。彼らの発言に連れ、この放送を見る視聴者も段々と熱量が増しているであろうことを分かった上で、神代博士は冷静に答えた

 

 

『確かに彼女と私たちは、異なる材質、異なるメカニズムの体を持っています。しかしそれは、この世界に於いてのみの話です。我々と人工フラクトライトが、完全に同一の存在として認め合える場所を、我々は既に持っています』

 

『・・・その場所とは、どこでしょうか?』 

 

『仮想世界です。現在我々は、生活のかなりの割合を、汎用VRスペース規格である『ザ・シード・パッケージ』によって生成された仮想空間にシフトさせつつあります。今日のこの会見も、報道機関の皆さんはVRで行うことを希望しておいででしたが、当機構の要請によって現実世界で開催することとなりました。それは、人工フラクトライトと我々の違いを最初に認識して頂きたかったからです』

 

『しかし、仮想世界ではそうではありません。アリスたち人工フラクトライトの光子脳は、ザ・シード規格のVRスペースに、完全なる適合性を備えているのです』

 

 

再び、会場が大きく騒めく。AIが仮想空間にダイブできる…即ち、向こう側に於いては、相手が人間なのかAIなのかを区別するすべがないということでもあるのだと、多くの記者たちが理解した。言葉を失い、着席した女性記者に代わって、名の知れたフリー・ジャーナリストが、三人目の質問者となるべく起立した

 

 

『まず確認させていただきたいのですが、海洋資源探査研究機構…という名前を私は寡聞にして知らなかったが、これは文科省の独立行政法人ですね?つまり、あなたがたの研究開発に投じられた資金は、日本国民の払った税金なわけです』

 

『となれば、その開発の成果であるその…人工フラクトライトは、国民の所有物であるということになりませんか?たとえ真正のAIであろうと、産業ロボットとして利用するかどうかは、あなたがたの機構ではなく国民が決めることなのでは?』

 

 

これまで滞ることなく質問に回答し続けてきた神代博士の口許が、初めて軽く引き締められた。マイクに顔を寄せた彼女を、しかし隣から白い手が制した。長らく沈黙していたアリスだ。機械の体を持つ少女は、長い金髪を揺らして頷き、ゆっくりと口を開いた

 

 

『あなたがたリアルワールド人が、私たちの創造者であることを私は認め、受け入れています。生み出してくれたことにも、もちろん感謝しています。しかし、かつて、私と同じ世界に生まれた一人の人間はこう言いました……リアルワールドもまた、創られた世界だったら?その外側に、さらなる創造者が存在していたとしたら?』

 

『もしもある日、あなたがたの創造者が姿を現し、隷属せよと命じたらあなたがたはどうしますか?地に手を突き、忠誠を誓い、慈悲を乞いますか?』

 

 

アリスの青い瞳の奥に、鮮烈な光が灯った。彼女の言葉と、まるで心意を宿したような眼光が放つ迫力に、思わず気圧され身を引くジャーナリストと、多くの報道関係者を見据えながら、アリスはゆっくりと立ち上がった。胸を張り、体の前で両手を重ねた姿は、学校の制服を着ているにもかかわらず本来の騎士の姿を思い起こさせる。わずかに睫毛を伏せ、透明感のあるよく通る声で、世界初の真正AIは続けた

 

 

『私は既に、多くのリアルワールド人たちと交流を重ねています。見知らぬ世界で一人ぼっちの私を、彼らは励まし、元気付けてくれました。色々なことを教え、色々な場所を案内してくれました。私は、たまらなく彼らが好きです』

 

 

言葉を止め、アリスは一瞬眼を閉じて俯いた。彼女の知能が宿った鉄の体にそのような機能は存在しないはずだが、多くの人は、白い頰に伝う雫を見たような気がした。やがて穏やかな黄金の女性騎士は、しなやかな動作で右手を持ち上げ、真っ直ぐな言葉で言った

 

 

『・・・私は、あなたがたリアルワールドの人々に向けて差し出す右手は持っています。しかし、地に突く膝と、平伏する額は持っていない。なぜなら、私は人間だからです』

 

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