【実況】掲示板でデンドロを進みたい【安価】   作:レイティス

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第三十話 <墓標迷宮>

 

 

 □【大食戦士】ルミナス

 

 <墓標迷宮>。

 それはアルター王国に存在する、私がカルディナで二度チャレンジした<貧富の墳墓>と同じ神造ダンジョンの一つである。

 しかし、都市から離れた上級モンスターが蔓延る砂漠のど真ん中にあったかのピラミッドと違い、<墓標迷宮>はアルター王国王都、アルテアの()()に存在する。

 

 街の、それも王都の地下にある事により<墓標迷宮>は神造ダンジョンの中でも最も侵入が容易い。

 「アルター王国に所属している」「【墓標迷宮探索許可証】を所持している」

 その二つの条件を満たせば二十四時間年中無休で無限ポップの神造ダンジョンに挑むことが出来るのだ。しかも許可証は十万リルで永続許可制。

 <貧富の墳墓>が割引を使ってもワンチャレンジ数十万リルと考えると、初期国家選択でアルター王国を選ぶ理由の三割が「<墓標迷宮>に入ることが出来る」だという事にも納得である。(<DIN>調べ)

 

 余談だが、神造ダンジョンは七大国全てにある訳ではなく、その所在は偏っているらしい。

 レジェンダリアに三つ、アルター・ドライフ・カルディナ・天地に一つずつ、そして黄河やグランバロアにはない。

 まぁ黄河はその広大な領土に眠る秘跡がいまだ数多くあるし、グランバロアにしたって海底に先々期文明の遺跡が沈んでることがあるらしいけど。

 いつかは各国の神造ダンジョンを回ってみたいね!

 

 話を戻して──アルター王国建国の折にいつの間にか作られていたという<墓標迷宮>はその入りやすさもさることながら、内部の「ダンジョンらしさ」という点でも神造()()()()()内でも有数だ。

 他の神造ダンジョンが一貫して配置モンスターやトラップなどにある一定の共通した特色があることに対して、<墓標迷宮>は五階層……フロアボスを経るごとにがらっとテーマが変わるのだとか。

 複数の対策が必要であるのと同時に──ここに挑み続けるだけで数多くの種別のモンスターやトラップに対する対処法を学ぶことが出来る。

 そんな事情からアルター王国スレでは所属する<マスター>に「ある程度の金策が出来たら<墓標迷宮>で地力を身に着けろ」と周知しているとかしないとか。

 

 

「──まぁ、結局ルミナスのお金が溜まるまで一週間ほどかかったわけなのですが……何か言う事は?」

「やっぱ競馬は悪い文明だよね! おのれ安価ァ!」

「安易に安価しないよう反省してください」

「ごめんなさい!」

 

 

 そして時は流れて水曜日。

 冒険者ギルドでの金策が済んだ私は梢さんのキャラ、「Barbaroi・Bad・Burn」──略してビー(B)スリー(3)と【許可証】を購入し、アルテアの墓地区画へと来ていた。

 墓地区画は<墓標迷宮>の玄関口として以外にも名称通りに一国の国営墓地としての側面もあり、かなりの広さがある。

 途中<墓標迷宮>から出て来たと思しき<マスター>や巡回中の【墓守】のティアンとすれちがったりしつつも神造ダンジョンの入り口へと到達したのは、墓地区画に入ってから十分ほど歩いてからだった。

 <墓標迷宮>の唯一の出入口である石門には見張りの兵士がいるが、入口を塞いでいる彼らが見ているのは迷宮内部……ではなくこちらの方。

 神造ダンジョンは内部からモンスターが溢れるようなことは起きないからね。

 

 

「<墓標迷宮>を探索する<マスター>の方ですか? この地の探索には【墓標迷宮探索許可証】が必要となります」

「わかりました」

 

 

 守衛のティアンさんの言葉にビースリーと同様に記名された【許可証】をアイテムボックスから取り出す。

 記名された【許可証】は売却出来ないことに加えて国を移籍する際に廃棄する必要があるので少し勿体ないけれど、それに値するだけの価値はあるはずだよねって。

 

「確認しました。それではお気をつけてください」

 

 守衛の人が発言の後に呪文を唱え、石門が開く。

 なお、聞き取ろうと耳を澄ませたけど全然分からなかった件。スキルか何か?

 

「それじゃ行きますよルミナス。とりあえずは行けるところまで、です」

「おっとぉ、はいはーい。魔法はお任せだよ!」

 

 明日も大学があるから潜れる時間は限られている。

 早速<墓標迷宮>、初攻略に挑戦してみよう!

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 私とビースリーが<墓標迷宮>に突入してしばらく後。

 

 

「《シールドチャージ》!」

「《ファイアーボール》!」

 

 

 ビースリーの盾が【シビル・スケルトン】に衝突してその身(骨)を砕き、私の魔法が物理無効の【ホーンテッド・スピリット】を消滅させる。

 ビースリーは典型的なEND型タンク(防御型前衛)であることは聞いていたため、突入前から彼女が前衛、私は後衛で対処できない相手を魔法で片付けることにしたのだ。

 

「追加でパーティメンバーを募集すれば楽ではあるのですが……すみません」

「いいってことだよー! 姉さんも今日はいないからねー」

 

 そしてこの<墓標迷宮>は神造ダンジョンの中でも異質で、通常通りに六人までパーティを組むことが出来るが、私たちは二人だけのパーティだ。

 姉さんはアルテアの<DIN>で仕事をしていて来れなかったけれど、その気になれば掲示板から暇な人を誘ってフルパーティを組む事も出来た。

 でもビースリー……というか梢さんはその手のが苦手みたいだったので今回は二人での攻略だ。

 というのも──

 

「ぶっちゃけこのレベル帯なら、それこそソロでもなんとでもなるモンスターだしね、《ウィンドカッター》!」

 

 風の刃で少し離れた位置の【スピリット】をまとめて吹き飛ばす。

 私の扱える魔法はサブジョブに置いてある【魔術師(メイジ)】……下級職の魔法スキルだけだけど、それでも一撃でモンスターを殲滅出来ている。

 何故なら、神造ダンジョンは一般的なRPGのように奥に進む程敵が強くなる。

 <墓標迷宮>の最初の五階層……アンデッドエリアの敵は最大でもLv50、一職カンストする程度で十分対処できる程度のモンスターしか出ない。

 第五階層に出るフロアボスモンスターは相性次第ではフルパーティでないと厳しいが、私たちは揃って合計レベル300弱。

 この階層の敵で苦戦していてはこの先やっていけないだろう。

 

 正直な話、今日の挑戦は第五層……運が良ければ十層のボスを倒して途中スタートが可能になる【エレベータージェム】が入手出来れば問題ない。

 廃人でもなきゃ一度のチャレンジで最後まで行けるような場所ではないのである。

 

 

「それもそうですが……前衛以外全て任せてしまっていますからね」

「ふっふっふ、安価の制約をなくした私は万能なんだよ? 今日の私はガチ構成なゲーミングルミナスな色配置!」

「むしろなんで安価してるんですか?」

 

 

 その方が面白いから、かな……

 なお、今回セットしてあるスキルは以下の通りである。

 

《赤》:《迷宮求道糸(ラビリンス・ナビゲート)

 【探宝導針 アリアドネ】の固有スキル、アクティブ発動のモンスター探知スキル。

 霊体だろうが地中にいようが反応してくれるので少なくともこのエリアでは取りこぼしはない有能スキル。

 

《青》:《ワイドビジョン》

 【万視万納 フリズスキャルヴ】の固有スキル、<DIN>に姉さんの様子を見に行った時ついでにラーニングしたスキル。

 パッシブの全方位視点を齎すこのスキルは慣れるまで酔ったけど今となっては墓石に隠れたトラップとかもすぐ分かってありがたい有能スキル。

 

《緑》:《リスペクト・ヒール》

 【愛癒天使 ヴァーチャーズ】の固有スキル、回復魔法スキルありがてぇ……

 その回復性能はお互いの好感度によって変動する。まーたデンドロは気軽にそういうこと(友情ブレイク案件)持ってくるー。当然有能スキル。

 

 

「エンブリオの固有スキルで固めた私は率直に言って超有能<マスター>では……?」

「ソウデスネ」

「すっごい棒読み!? ほらもっと私を尊敬して回復量あげよ!?」

 

 おかしい、《リスペクト・ヒール》の回復量がまるで変化しない。

 ツン期ってやつかな?

 

 

 ◇

 

 

 その後も私たちの快進撃は続いた。

 レベルを考えれば当然ではあるけれど無双ゲーをしているようで気分は爽快だ。

 <貧富の墳墓>と比べれば一階層あたりの大きさも抑えられているようで三十分程で次の階層へと進む階段も見つかった。

 

 適正レベルとなる十一層以降まで探索や交戦は最低限でも良さそう、とのコンセンサスも取れたことで足早に進む私たちはアンデッドモンスターを蹴散らしながら進んでいった。

 たまに足止めは喰らうけれどそれはモンスターではなくむしろ……

 

 

「うわっ!?」

「あっごめんなさい!?」

「これで四回目ですね……」

 

 

 ある意味モンスター以上に厄介な、他の狩りをしている人との不意の遭遇だ。

 <墓標迷宮>内は不思議に発光する石が随所に設置されていて探索者が別途たいまつやランタンのような照明を持ってくる必要はないけれど、薄暗いことは確か。

 そして出て来るモンスターはよく見れば全然違うことは分かるけれど、()()という点では遠目では分かり辛いアンデッドモンスター。

 通路の辻や墓石の影から遭遇する場合や、モンスターと間違われることもあった。こんな美女二人を捕まえてアンデッドモンスターと間違うとは……

 

 《ワイドビジョン》で見つけられる場合前者は事前に避けられるけど、後者はそうも行かない。

 こちらからは《迷宮求道糸》等で判別出来ても、相手も視界拡張系スキルを持っているとは限らず、単純な思考のアンデッド相手に待ち伏せをする人は一定数いるのだ。

 ……幸い、まだ当たったことはないけれど「モンスターと見間違えた」ことを口実にPK(プレイヤーキル)を仕掛けて来る人もいるかもしれない。

 

「申し訳ありません……」

「ん、いいよいいよー。気を付けてねー」

「はいっ。それでは──」

 

 互いに手を振り物陰から飛び出して来た少年と別れる──その左手に紋章はない。

 神造ダンジョンは運営が作っただのゲーム的ダンジョンだのとよく言われるけれど、神造ダンジョンに入るのは<マスター>だけではない。

 【魔王】の座を夢見て、尽きぬ宝物を求めて、そして何より己の鍛錬のため、ティアンもその身を迷宮に投じている。

 特に王都のすぐ地下にあり、【許可証】がそれなりの金で解決出来るアルター王国ではティアンの戦闘職見習いが訓練のために潜ることも多いらしい。

 

 

「む。失礼」

「いえいえお先にどうぞー」

「ありがたい。では」

 

 

 更に言うならば、神造ダンジョンの中でも<墓標迷宮>に限ると更にティアンの数は多く、幅が広い。

 相手も慣れているのか問題は起きていないけれど、如何にも手練れと言った風情の騎士が私たちを追い越して行く。

 籠手により紋章の確認は出来ないけれど、鎧に刻印されているのは……王国の近衛騎士団の徽章。

 

「あんな重武装であの速度はすごいねぇ、カンスト付近なのかな?」

「そうですね。この階層で全速力は出さないでしょうし基礎ステータスが高いのでしょう」

「……一体()()()()>なんだろうね、姉さんなら知ってるかな?」

 

 そんなティアンの中でも最上位にいるような猛者もこのダンジョンに潜るのは【魔王】の座……ではない。

 なんでもこの<墓標迷宮>の成立はアルター王国の国起こしに近しい起源を持つとの話だ。

 国父である【聖剣王】が【邪神】を討伐し、その邪気が払われ人が集まりかつて"業都"と呼ばれた都市が"王都アルテア"へと至る前後に出来たとされるダンジョン。

 そのダンジョンに何が眠っているのか、アルター王国にはいくつもの御伽噺や伝承がある。

 

 ──曰く、【聖剣王】が両断した【邪神】の遺骸が眠っているとか。

 ──曰く、【邪神】を討伐した褒美にかつてこの世界を去った真なる神々が偉大なる【聖剣王】に安らかな眠りを迎えるために用意した揺り籠であるとか。

 ──曰く、最後の力を振り絞り【邪神】がこの世に残した呪いが"八番目の【魔王】"の座を作り出したのだとか。

 

 他にも【墓守】や【暗黒騎士】の超級職があるとか神話級の<UBM>を超える化け物が埒外の宝物を抱えて挑戦者を待っているとか本当に様々な話が残されている。

 王国の上層部がどう考えているかは分からないけれど、近衛騎士団のような最精鋭が挑戦しに来るのをスレも含めるとそれなりに確認されているあたり何らかの思惑はあるのだろう。

 ……まぁ、私たちにはあまり関係ないけどね!

 

 

 

 ◇

 

 

 

 その後、更に数十分の探索で第五階層に続く階段を見つけた。

 先に行った騎士の人の影響かモンスターとも殆ど出会わなかったのが大きかったね、流石アンデッド特攻【聖騎士】。

 

「この下に行けばボスですが、準備は大丈夫ですか?」

「だいじょーぶ! MPもまだまだ余裕はあるよー」

 

 流石にこの程度のモンスター相手なので最下級の攻撃魔法で十分なのでMPは自然回復分でほぼ全快。

 正直に言うと、フロアボスとはいえレベルがレベルなので二人でも余裕を持って倒せるはずなんだけど……

 

「とりあえず【ソウルレス】じゃなければ楽勝でしょ、ぶっちゃけ」

「でもルミナスって基本屑運じゃないですか」

「あれ今すごいさらっとディスられた?? なーにを根拠にそんなこと言うのかな!」

「ダウトール」

「んっんんんんごほんごほん」

 

 今は私の装備品の一つになったミミックスライムの話は止めるんだ!

 

 それはさておき、神造ダンジョンの特定階層ごとのフロアボスは複数パターンからのランダムに選出される。

 次の第五階層ではアンデッドタイプのボスが……wiki調べでは五パターン(余談だが、パーティで組める神造ダンジョンということもあり最もwiki情報が集まっているのもここ)

 

 HPと再生能力に秀でた【レブナント・リジェネレーター】。

 多様な攻撃方法と手数が特徴の【スカルレス・セブンハンド・カットラス】。

 物理無効の霊体と叫び声によるデバフを撒き散らす【バンシー・カノン・スクリーム】。

 しもべとなる下級アンデッドの大量召喚を行う【ミニングレス・グレイブレイダー】。

 強力な呪詛攻撃を連発する【ソウルレス・グラッジ・アジテーター】。

 

 私は今は万能戦士でビースリーがタンクと考えると魔法攻撃を行う【ソウルレス】か【バンシー】だと少し辛いけど、それでも()()辛い程度だ。

 大正義レベル(とエンブリオ)によるステータスの暴力。

 

 それこそ──万が一<UBM>が乱入したりしなければ問題はないのである!

 

「<墓標迷宮>でトラップ系<UBM>はもう討伐報告あるしへーきへーき! というわけでレッツゴー!」

「油断はしないでくださいよ……」

 

 準備も万全に、隊列を整えて闇が続く階段を降りて行った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 階段を降りた先の第五階層。

 フロアボスの待ち構える大空洞で私たちを出迎えたのは……左右三本ずつの腕を──もとい、刃骨を持った巨大なスケルトンだった。

 

「よっし大当たり! 【レブナント】の方が楽ではあったけど臭いしね!」

「同意見ですけど少しは緊張感を……来ますよ」

 

 歓声を上げる合間にもビースリーは前に出て自身の身長ほどもある巨盾(タワーシールド)を構え、巨大スケルトン……【スカルレス・セブンハンド・カットラス】の鞭骨を弾き飛ばした。

 頭部に当たる部分から伸びた鞭骨はその左右の刃骨をも超えるリーチを持っているしかなりの速さだ。

 けれど、それはビースリーに痛打を与える程ではない。

 

「初っ端からお辞儀とは()()()だね! 《フレア・ボム》!」

「後ろから出ないでくださいね。《アストロガード》」

『RRRRR!?』

 

 防御スキルを発動したビースリーの後ろから山なりに飛翔する火球を放つ。

 その巨体故に避けきれなかった【スカルレス】は爆発と共に僅かに後退る。

 

「一撃でダメージ約八%、問題なさそうですね」

 

 後退した隙に相手を《看破》したビースリーが今の魔法の戦果を呟く。

 うーんやっぱり姉さんに任せてたけど私も《看破》の取得を考えた方がいいかな。

 実況が広がるから空いた下級職枠を考える参考にしてみよう。

 

 その後もビースリーは安定して鞭骨だけでなく刃骨の攻撃も難なく防ぎ、その間に私が炎属性魔法を溜めるというパターンが続いた。

 やっぱりレベル300近くの防御特化タンクともなると特殊能力のない物理型モンスターは完封のようだ。

 

 

『KRRRRRA!』

 

 しばらく後、それでもただでは負けられないと両手(?)の六本の刃骨を交差させて盾ごと圧し切ろうとしたが

 

「──《天よ重石となれ(ヘヴンズ・ウェイト)》」

『RUA!?』

 

 それを読んでいたかのようにビースリーの<エンブリオ>、【大天蓋 アトラス】の固有スキルが発動する。

 ビースリーを中心に発生した高重力圏に囚われた刃骨は勢いを大きく落とし、盾を叩いて甲高い音を出すだけに終わった。

 というかあのタイミングは読んでいたかのように、じゃなくてわかってたよね? 攻略動画で予習とか優等生め……

 

「あかまきがみあおまきがみきまきがみ《フレアボム》!」

 

 勿論、その隙を逃さず早口で《詠唱》による威力強化を乗せた魔法を発射する。

 私にも高重力の影響はあるけれど、距離はあるし魔法を撃つだけなら問題なし!

 

 度重なる弱点属性攻撃を受けて【スカルレス・セブンハンド・カットラス】のHPが尽きたのは、それから二分後のことだった。

 

 

 

 

 





〇《詠唱》事情
ルミナスは主に発動速度重視という名目で早口言葉を多用する。滑舌はいい。
なお後日そのことがバレて《詠唱》安価をすることになったら酷いことになったとかなんとか。
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