【吸血鬼】になったことだし夜間クエストだ!
<星を見る者たち>と天体観測!
同期の一人もいるよ!
□【
【占星術師】はリアルでの歴史や《星託》と言った代表的なスキルからジョブクリスタルのない東方の<マスター>の中では占術系……探査・予知系ジョブと思われている事もあるが、それは正しくない。
その実態は攻撃・回復・補助、様々な魔法を扱うことのできる【賢者】のような万能魔法ジョブだ。
《スターアロー》《スターヒール》《スターボール》《スターウォール》……他の属性の魔法が使えるという訳ではないのだが、
しかし【占星術師】の数は【賢者】と比べれば圧倒的に少ない。それは何故か?
勿論ジョブクリスタルの数もあるが……一番の理由は「スキルの性能が星の並びに依存しているから」に尽きる。
星の様子によって威力から消費MP、更には追加効果も変わると言うのだからとんだギャンブルジョブだ。
星空の模様は一期一会。定期的に開催される観測を外してしまえば全く異なる観測結果が浮かぶだろう。
そもそもデンドロの宇宙は
日によって……どころか秒単位で変化することもある【占星術師】のスキル群の性能を観測から計算・予測してWikiに上げている<星を見る者たち>は全【占星術師】の<マスター>にとって
◇
◇
◇
□【鈍重術師】ルミナス
『bow!』
「《ブラッディ・チェーン》!」
樹上に群がる甲虫……【トランプル・ビートル】を相手に血の鎖でその突進を受け止める。
というかラーニングで
しかも周囲には本職の人達も似た感じで対応しているし。まぁお手本にでも思えばいいかな?
「《フリーダム・ケイジ》……はーいどーぞー!」
「「《ブラッディ・インパクト》!」」
パスパース!
対象の重力を弱めて空中で無重力に拘束する魔法、《フリーダム・ケイジ》で隙だらけになったモンスターを手の空いた吸血鬼氏族の人が仕留める。
専業アタッカーが複数いると足止めに終始出来て楽である。
『wow!』
『bbbbbb!!』
「おっと!」
《擬粘偽心》によって狼型となっている【ゲリ・フレキ】の声に背後から突撃してくる【タイラント・シザーズ】の突撃を回避する。
吸血鬼氏族の人は……今は戦っている人が多くない。
【吸血鬼】、そしてその上級職である【血戦騎】のジョブスキルはSPの他にHPをもコストとする事で他のジョブより性能が良いのだけど、その分継戦能力は高くない。
《ブラッド・タッチ》の上位スキルである【血戦騎】の《バイタル・スクイーズ》ならば血の他にHPもドレイン出来るのだが、エレメンタル程ではないにしても魔蟲はドレイン効率がよろしくないらしい。(余談だが、超級職である【鮮血帝】はMPとSPもドレイン出来るらしい。やべーですよ超級職!)
しょうがないので《インビジブルハンド》で【タイラントシザーズ】転倒!
そして露出した腹部に向かって片方のみになっている【ゲリ・フレキ】を振り下ろす!
『bg』
「ヨシ!」
魔蟲にも様々な種類があるけど、甲虫系は総じてENDが高い。
相対的に見て柔らかいとされる腹部でも下手すると四桁END相当だったりするのだけど、重力魔法で振り下ろしの威力を強化してやれば初期武器に毛皮が生えた程度の【ゲリ・フレキ】でも問題なく【タイラント・シザーズ】を撃破する事が出来た。
まぁ、魔法職のくせして物理ステータスの成長度が高い【鈍重術師】の影響で私のステータスは魔法戦士系ビルドとしては結構バランスがいい感じになっているというのもある。
その分MPに関しては他の魔法系上級職に比べると控え目なので、重力魔法の補助と【吸血鬼】の《クリムゾン・プレッシャー》(※バフスキルです)の切り替えでMPSPを均等に消費しながら戦闘用のステータスを確保するのが
「ふむ……今日は《神蝕》は使わないのか? 中々面白そうなのがあったと思ったが」
防衛線の後ろで観測結果をメモしていたラブが注文を付けてくる。
本当観戦ムードは気楽だなぁこいつぅ。
「《インビジブル・マーチ》は甲虫のENDが高くて《擬粘偽心》で狼形態の【ゲリ・フレキ】じゃ不意打ちでも痛打にならないんだよ、AGI型の敵だったらまた別だったんだけどねー」
『kuun……』
「よしよし、ちゃんと他の感覚で役に立ってるからね」
「スライムの変化なのにちゃんと狼の特性があるのなんでなんですかね……」
なんでだろうね(素
夜間というフィールドならば暗視のないモルテナより感知能力が高く、【吸血鬼】により暗視を始めとして強化された五感をしても全く敵わない狼型の特性は割と便利だ。
種別としては武器だがスキル特化型の【ゲリ・フレキ】の攻撃力だけでは私のSTRやスキルの補正がないと最近の戦闘では火力不足が目立ったけれど、戦闘補助ではまだまだ使える事は多い。
ともあれ、攻撃用ではないので自身を含む配下の透明化を行う《インビジブル・マーチ》は効果が薄いということだ。
私自身はタゲが後ろのラブに向いても困るので論外……モルテナは有効活用出来るけどこの類の脳筋系モンスターの場合は自前のスキルで十分で私のSPを使うまではない。
「そして《辿り着く命の和音》は……モンスター討伐毎にランダムステータスが永続でプラス一される効果なんだけど」
「ラーニングで覚えるには十分チートなスキルじゃないか。その割には補助にも回っているようだが」
「ストックから外すと消えるんだよね……またセットした時には補正があるんだけどそれだけのために枠使うのはね!」
「成る程……」
「条件を満たすと永続的にステータスが増加する」「追加のジョブや装備枠を得る」とかその類のパッシブスキルはそのスキルを外すと効果がなくなるから【ゲリ・フレキ】との相性は良くないんだよね。
あの手のは長い間かけてスキルを育てる<エンブリオ>だから八時間毎にスキルを入れ替える《神蝕》では時間対効果が悪いのである。
そして安価で選択された最後のスキルである《天地貫く巨木が如く》はトバールが使っていた【星錬鉱房 テルース】の類似系、単純にMPをリソースに変換して植物を強化するスキルだ。
足場である<ソラシェード>が植物である以上やりようある……のだけど、正直レジェンダリアの固有名が付いているような巨大な植物は内在リソース量が多すぎて私がスキルを使用しても影響が少ない。
精々一部の枝葉を隆起させて壁や足場にするぐらいだけど、MP効率考えると重力魔法で障壁するのとどっこいなのが悩みどころだね!
「というわけでラーニングもそこまで万能じゃないのでーす! って追加来てる援護ぷりーず!」
「仕方ないな」
追加の魔蟲相手にラブの<エンブリオ>、【シュブニグラス】の眷属の一部が彼の護衛から攻撃のために動き出す。
本体である【シュブニグラス】自身はあくまで眷属生成がメインであり戦闘能力はないらしい。
翼の生えた黒山羊、鋭い一角の生えた黒山羊、二足歩行してどうやってか前足に剣を持つ黒山羊など、多様なぬいぐるみの黒山羊が新しい魔蟲、亜竜級である黒い甲虫【ハデス・ダークビートル】に殺到する。
『【ハデス・ダークビートル】は闇属性の遠距離攻撃手段も扱う種です。この<ソラシェード>に生息する魔蟲としては雑食で食料には困らないはずですが……これより上、純竜級の魔蟲に扇動されているみたいですね』
「うえー、このタイプの魔蟲ってSTRもENDも高めだから亜竜級以上は苦手だなあ、いや当然私ならやれるけどね?」
姉さんの解説を聞いている間にも黒山羊がそれぞれの特徴を活かしてその身を顧みず少しずつ【ハデス・ダークビートル】のHPを削って行く。
【シュブニグラス】は本体に素材を取り込み、素材の情報から特性を抽出して眷属に発現させるラーニングタイプの<エンブリオ>だ。
これだけ聞くと勿論強そうだけど、【シュブニグラス】の眷属生成スキル《仔山羊産み》によって生成される眷属の性能は運次第……そう、取り込んだ膨大な素材の特性の中から完全にランダムに決定されるのだ。
複数の特性の組み合わせで眷属の強さはばらばら……いや本当振り幅が広い。
ロケット頭突きwith槍角の一撃で二割強削れたと思いきや二足歩行の黒山羊の攻撃とかドット単位のダメージしか与えられていない。
恐らく外見的な特徴だけでなくパッシブスキルやステータスも取り込んだ素材からランダムなのだろう。
「中には《魔物育成》で手を入れなければ戦う事が出来ない子もいたからな。手がかかる子ほど可愛いとはよく言ったものだ」
「選別すればいいのに……」
「それは──」
「はいはい愛が無い愛が無い」
【シュブニグラス】の特性を見れば分かる。どんな素材も取り込んでその特性が確率で発現する……ラブの言う愛は博愛もしくは子に向ける愛だ。
聞いた話でも有機物無機物も関係なく、有害物質だろうがお構いなく取り込んでしまうらしい。(【シュブニグラス】はダメージを受けるけど)
効率最優先なら強特性の個体だけ残して厳選するのだろうけど、そもそもそんな性格ならこんな<エンブリオ>にならない……まぁ、私だって効率最優先なら安価なんてやらないでガチガチのガチに強スキルで固めるしね!
自分の楽しさ最優先なのは当たり前だよねぇ。
「現在他に三匹の亜竜級魔蟲、【ハデス・ダークビートル】二匹と【ブライト・ファイアフライ】一匹を氏族の人が抑えています。【ファイアフライ】の方が少し手こずっているみたいで……」
「あー、光属性だもんね。よし、それじゃちょっと一発入れて来るねー!」
「なので私が奇襲を……ってえぇ!?」
「任せた。そう間を置かずにこいつらを嗾けた奴が来るはずだから手早くな」
モルテナの報告に自分に重力魔法を使って跳躍する。《インビジブル・マーチ》は……使わなくていいか、MP節約!
落下方向を弄って位置を調整しながら吸血鬼氏族の人たちが戦っている巨大なホタル……【ブライト・ファイアフライ】(炎属性は使わない)の頭上まで移動する。
直上に到達したら落下方向を通常通りに戻して、自身の重力を増大!
「チッ! 閃光が鬱陶しいぞ!!」
「尻部から来るぞ、囲んで側面から叩け!」
「《ブラッディ・ミスト》! 今のうちに……ん? 何か上から──」
あっ気付かれてるまあいいか。
喰らえ【
「必殺! ハイパールミナスインパクト!」
「ネーミングセンスよ……」
いいんだよスキル外の技の名前なんて適当でぇ!
衝撃と共に【ブライト・ファイアフライ】に靴がめり込む。
今の私の装備は武器とアクセサリー以外はオーダーメイドとかではなく店で売られている既製品──合計レベルが400になった時に買い替えた【メテオライト】シリーズで揃えている。
特殊なスキルや能力はないけれど環境適応能力が高く、基本的な物理防御力や強度が高いシンプルイズベストなシリーズだ、星型の意匠もお気に入り。何より気に入ってるのは……外套とブーツに付いている《落下耐性》だ。
装備防御力と装備自体の頑丈さが別に存在するというあたりデンドロだけど、単純にキックをする時には装備の数値には現れない後者の頑丈さが必要となる。
『PIGYUAA!?』
「びくとりー! あ、お気になさらずー」
「あ、ああ……」
《落下耐性》と《オーバー・アクション》によってぎりぎり反動落下ダメージを受けない位置エネルギー×重力加速度アタックによって【ブライト・ファイアフライ】が爆散……もとい光の塵となる。
他の人に注意を引いてもらわないと避けられるから単独では使えないけれど、ラーニングを含まない単発火力としてはダメージとして五桁に乗るので十分と言えるだろう。
てーか【鈍重術師】の奥義である《ダル・プレス》が強拘束技でダメージ技じゃないのも原因という!
《ダル・プレス》で拘束してる敵にハイパールミナスインパクト(仮)が定着しそうだ、使いやすいラーニングスキルが欲しいね。
「というわけで戻ったけど、どう?」
「小休止と言ったところですね。亜竜級なし、《バイタル・スクイーズ》で回復を回しているみたいです」
「こちらもオーナーからクラン全体に連絡があった。大方終わったから手伝っていた組も観測業務を再開するように、だそうだ」
戻った頃には他の組も大体片付いていた。
まぁ、護衛任務とはいえその護衛されている対象も<マスター>、【シュブニグラス】のように戦闘に役立つ<エンブリオ>もいただろうしそんなものか。
そしてしばしの空き時間。
最初の《ブラッディ・チェーン》以外でHPを消費してないし、《瞑想》でMPを回復を待つしかやることはないかな。
なお《瞑想》と言いつつ別に目を瞑ったりする必要はなく、パッシブスキルでMP回復速度が上がるというだけだ。
非戦闘状態だと更に回復速度が上がるので他の場所に手出しもせずに待ちの姿勢である。
「しかし、これだけ頑張って天体観測しないといけないとか【占星術師】大変過ぎない? 専用の戦闘班があるのも納得だね」
「とはいえ戦闘班は【占星術師】取ってないんだけどな」
「ちょっと??」
いやまあパーティバランス考えたら当然と言えば当然だけど!
そんなことを話しながら吸血鬼氏族の人たちの戦闘を観戦していると姉さん……【フギン・ムニン】じゃなくて本人(アバター)である、が女性を連れてこちらにやってきていた。
姉さんと同じぐらいの年齢の赤い髪と身の丈程の杖が特徴の女性……先程も話していた<星を見る者たち>のクランオーナーだ。
「おやオーナー、話は良いのか」
「もうお仕事もほぼ終わりですし世間話ぐらいでしたから。機材も私は【アマノガワ】の中に入れてますしね。皆さんの様子を確認しに来ました」
「キャッスル系列の利点だな……ルミナス、知ってるかもしれないがこちら俺たちのオーナーのカノだ」
「【
「いえいえこちらこそー」
挨拶は実際大事!
なんでもカノは<星を見る者たち>のクランオーナーであるのと同時に<DIN>のレジェンダリア支部にも所属しているそうで、その縁で姉さんと話していたのだとか。
「まぁ、<DIN>で扱っているのは《星託》の情報ですけどね。天体や星座の情報はWikiに上げてますので」
「オーナーの<エンブリオ>は単純に【占星術師】とのシナジー系だからな」
へぇへぇへぇ。
扱いにくい占星術師系統とはいえやっぱり<エンブリオ>の数は力、その専門クランのオーナーともなればやはりシナジーが組める<エンブリオ>を持つ人がなることも多いらしい。
……というか星座あるんだデンドロ、ずれるんだよね?
「効果がずれるとはいえそれこそ宇宙は広大なので、数値にして検証しなければ気付かないレベルのずれが殆どですからね。ティアンだけならば気にならない誤差なのでこれまで星座は伝えられてきました」
「なるほど」
「……ついでにですが、今夜の星もこの<Infinite Dendrogram>内でとある星座として知られているのですが、何座か分かりますか?」
「ふむん?」
カノの設問に夜空を見上げる。
リアルと違って抜群の視力を誇る私の目に飛び込んできたのはレジェンダリアの中でも特に高い位置にある<ソラシェード>から見上げる満天の星空。
その中でも特に輝いているのは……六個、ちょうど六角形に配置されているように見える。
「横からヒントですが、ここの星座は超級職の名前にちなんで『〇王座』と称するのが一般的ですよ」
とは姉さんの言。この手の雑学は履修している姉さんだけど答えを言うつもりはないらしい。
モルテナに聞くのも折角の暇つぶしとして興醒め甚だしい。
とはいえ事前知識はないのだし素直に考えるとしよう。
六角形から思いつくのは……氷晶かな?
六芒星で陰陽師系の可能性もあるけれど、【占星術師】が西方のジョブだし薄いかな。
「となると、きっとあれは《氷王座》だね間違いない!」
「ふぁいなるあんさー?」
「……ファイナルアンサー!」
ざわ……ざわ……
突然のミリ〇ネアにノッて返すとカノは嬉しそうに溜めを作り、
「残念、違います!」
「ぐわあああああああ」
手で大きく×を示してきた。
違うのかーい!
まぁ? 知らなくても困らないし? いいんだけどね??
「実際星座については【占星術師】以外は知らない事も多いですから……調べなきゃ分かりませんし」
「でもモルテナは知ってたんだよね?」
「い、いやまぁ教養として習っただけですから……」
全く訳あり奴隷め……イベントの匂いがするタイプの訳あり奴隷なら大歓迎だけどさ!
クイズのチャレンジ失敗にモルテナに絡んでると苦笑しながらラブが解説しだした。
「すまんなルミナス。オーナーは宇宙の浪漫を広めるためによくデンドロ宇宙蘊蓄をばら撒くんだ」
「なんてはた迷惑な……それで答えは?」
「ちょっとした雑学じゃないですかー。……はい、答えは【炎王座】でしたー!」
炎王座……炎要素どこ……? 特に星が赤く輝いているとかも……この距離ではわからないけどなさそうだ。
まあ地球の星座も神話を元に割とこじ付けな形のもあるけれど。
「解説しますと、デンドロ内の星座は地球と違って──」
「来たぞ! 純竜級だ、気を引き締めろ!!」
「タイミングぅ!」
まさに狙ったかのように警戒に当たっていた氏族の人たちの声が夜の闇に響く。
これ聞く前に解説役のカノとか姉さんがやられるフラグのやつでは?
葉で覆われた緑の大地の端を見ると、馬車ぐらいの体躯ほ誇る蟲……【ナインスターズ・ハイビートル】が現れる。占星術師の同業他社ならぬ同業多種かな? え、全然関係ない?
『『『『『GITIGITIGITI……』』』』』
「うわあお」
更にその後ろからやってくる数十匹の魔蟲の群れ。その中には亜竜級も数匹混ざっているみたいだ。
毛虫とかの不快害虫はいないようだけどこの数と大きさはリアルでみたくないねー。
しかし戦力の逐次投入なんて所詮虫か……なんて言ってもいられない。私は典型的な個人戦闘型なのでこの規模となると他の人との連携が不可欠だ。
「というわけで──」
振り返って気付く。
護衛対象であるラブとカノが残っている……のは良い、機材に被害が出るぐらいならMPSPを使用して手伝ってくれるのだろうきっと恐らく。
だけど、戦闘能力のない姉さんがここに残っているのは珍しい。
看破解析に関しては【フギン・ムニン】で十分な以上姉さんが直接戦場に残る事は殆どない。
幻影魔法こそある習得しているものの、あくまで自衛手段でありカルディナを出た以降は戦闘は全て私に任せてくれているのに、だ。
<星を見る者たち>の戦力も踏まえて姉さんも幻影魔法を使わなければならない程に状況が切迫しているのか、それとも……
「──なんだい、害虫駆除に私の手を使うのかい?」
不意に聞こえたのはしわがれた声。
老化が遅くなる吸血鬼氏族や概ね美男美女揃いのアバターを持つ<マスター>の集団の中でその声は不思議によく響いた。
その方向を見てみると、いつの間にか現れたカノのすぐ傍に出来た黒い小屋……推定<エンブリオ>から一人の老婆が顔を出していた。
「そう言わないでくださいよお師様。元からクエストの分ケイかファルマ君の代わりで参加するという話だったでしょう?」
「まぁいいんだがね……ただカノは後で私の部屋に来てもらうよ」
「え、なんで……」
「集中講義だよ、あんたがもっと使えれば済む話だからね」
「りふじん!」
如何にも童話に出てくる魔女のような装いのお婆さんはカノの知り合いらしい……というより師匠?
万能の才能を持ち<エンブリオ>を持つ<マスター>なれどその多くは技術の面ではティアンに大きく劣る。
それでもステータスと固有スキルでごり押しする人も沢山いるけれど……技術の向上のためにティアンに弟子入りする<マスター>もいると聞く、そういった間柄らしい。
そして集中講義の宣言を受けたカノは……何故か笑顔でこちらに来た。
「というわけでこちらは私の師匠のステラさんです。それでさっきの話の続きなんですけどね」
「え、今それどころじゃなくない??」
さっきのお婆さんとの会話ぶった切ってこっちに来てする話? 助力してもらえるのは分かったけど。
「地球の星座が神話で語られるように、この世界の星座はここの信仰……ジョブクリスタルを基に名前が付けられています」
こちらの困惑を無視して話を続けるカノ。
奥からは魔蟲の群れが迫ってきているがもはや何も問題視していない。
「それはそのものずばり星に関わるジョブ、【占星術師】に……いえ」
「超級職、【
「──《
手に持った杖を魔蟲の群れに向けたステラがそうスキルを宣言すると、真夜中だというのにまるで昼のように一帯が明るくなった。
その原因は……スキルによって出現した人の身体を容易く飲み込む程の巨大な火球。
まさに【炎王】の奥義のようなソレが恒星のような輝きを放っていたのだ。
「フン」
杖を振り下ろすと火球も群れに向かって発射され……その中央に着弾し、爆発を起こした。
『『『『『GIIIIIIIIIIII!!??』』』』』
巨大テントウムシ率いる魔蟲の群れはその熱波に焼き尽くされ……驚く事にその炎は私たちはおろか<ソラシェード>にも被害を与えていなかった。
広範囲魔法の影響範囲を操る《魔法制御》、とんでもない熟練度である。
内心で「魔法で作った明りだとあの規模でも【吸血鬼】のペナルティを受けないんだな」と益体もない事を考えながら改めて超級職、【超占星術師】ステラ・セラリズムの参戦こそが姉さんがわざわざ移動しなかった理由だと察したのであった。
To be continued
〇《
【超占星術師】の奥義。
何らかの大規模現象を発現させる。
その規模は超級職の奥義に相当するものであり、<Infinite Dendrogram>内の星座はこのスキルの内容によって決まっているらしい。
ロストしている超級職などもあるため星座名が割り振られていない日もある。
昔と比べると一見は同じように見えて消費や制御難易度が変わっているところもあり、【占星術師】は感覚で誤差を調整する技能が求められる。
〇《クリムゾン・プレッシャー》
【吸血鬼】の汎用スキル。
自身の血圧を操作して身体性能を向上させるスキル。
HPとSPをコストとすることでステータスを上げるバフスキル。