【実況】掲示板でデンドロを進みたい【安価】   作:レイティス

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前回の産業:
ジーの<エンブリオ>【ルルイエ】の中での戦い!
【サジタリウス】必殺の一撃! 【嫉妬魔王】の迎撃!
【アムニール】の枝製の矢×億倍分裂×爆裂=領域内を全て包み込む<アクシデントサークル>

メテオローダー? 知らない子ですね……


第七十三話 天の星、海の澱その六

 

 □【鈍重術師】ルミナス

 

 

「着地!」

 

 辺り一面星空の【影星銀河 アマノガワ】の中、落下しながらその展開範囲に入っていた私たちは重力魔法を用いて着地……着地?する。

 見る限りでは上下左右何処も星空の宇宙空間という様相で落下というのも変な話だけど、展開前に定めていたカウントで発動した魔法により緩められた速度で降下する足にはしっかりと地を踏む感触がある。

 【サジタリウス】で相手をルルイエの中から追い出した後に【アマノガワ】で隔離する。ここまでは予め聞いていた限りの予定通りだ。

 

 全員華麗に着地して<星を見る者たち>の中に混ざる合間にも<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>のメンバーとのにらみ合いは続いている。

 とはいえ、強力な迎撃スキルを持つ【嫉妬魔王】も<エンブリオ>がクールタイムで出せない以上迎撃能力も範囲も大きく減じているはず。

 

「で、状況的にはどうなの?」

「うむ。見ての通り──愛だな」

 

 聞く相手を致命的に間違え(ファンブっ)たようだね!

 ちらりと視線をカノ……この場で一番状況を理解している人間に向けるも絶賛【嫉妬魔王】ジーと向かい合っている。目線ばちばち的な感じではないけど間に割り込めない雰囲気。

 

 

「どうするんですかルミナス様……」

「仕方ないので最後尾に紛れ込んでそれっぽさを演出しようか」

「それでいいんですかルミナス様……」

 

 状況的には有利のはずだけどそこからどうするのか知らないからしょうがないの!

 【狩猟王】も必殺スキルを使って<エンブリオ>が使えない状態だけど、<超級>のジーと<エンブリオ>の相打ちと考えたら相当な有利だし決戦のバトルフィールドもジーの【ルルイエ】からカノの【アマノガワ】となっている。

 詳細な他のメンバーの情報がないからなんとも言えないけど、普通に考えればこの後に始まるのは──一方的な狩りだ。

 

 

「──いて座」

「「「!」」」

 

 

 そしてにらみ合いが一方的にカノの宣言で破れ、()()()()

 事前に聞いた【影星銀河 アマノガワ】の能力特性は──星座の投影。つまり巨大なプラネタリウムだ。

 周囲の星天がそうと分かる速さで動き、輝きを形作る。

 

 ただし、その形は決してリアルで知るいて座ではなかった。

 

 

「「「「《スターアロー》!」」」」

 

 

 そして、<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>の面々が対応に動くまでにこれまで何度と見た星光の矢がこちら側の陣地から飛び出す。

 基本的により上位の魔法スキル程使用前に必要な時間(人によっては《詠唱》時間とも言う)は多いけれど、殆ど初級魔法のような"ないようなもの"と言っていいチャージ速度だ。

 

「ぐえっ!?」

 

 更に射出される星型の光の矢も異常だ。

 弾速は超音速以上、追尾性能もあり威力は一本でHPを三割以上削っている。

 掲示板の話とか能力特性から分かっていた事ではあるけれど、ここまでとは。

 

 

「うーんこれは【占星術師(アストロマンサー)】のオーナー」

「えぇ……なんですかこれぇ……」

「いいリアクションを取ってくれるモルテナと画面の前の皆と説明すると、<星を見る者たち>のオーナーの<エンブリオ>はプラネタリウム……星の投影を好きに変更出来て──このラビリンス内ではその星の並びが実際の物として扱われるってことだね!」

 

 

 星の並びによってスキルの性能が振り幅が大きく変わる、そんな【占星術師】の特性が盛大なレベル詐欺を起こしている。

 指定した【占星術師】のスキルを最大限に効率化する、ジョブの保有率が一般と違う専門クランならその強さは……御覧のあり様である。

 星空の変更のクールタイムとかは分からないけれど、それでも本来なら何十年、何百年、いやもしかしたら何千年に一夜という稀有な夜空なのかもしれない。

 

 そして《スターアロー》以外にも占星術が<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>に襲い掛かる。

 同じく超音速で射出され上級職の火力系奥義として有名な《クリムゾンスフィア》をも超える光の爆裂を起こす《スターボール》。

 チャージ速度も速く防御ごと貫通する光速の《スターレイ》などなど。

 カノの号令の下に一斉に魔法を放つ【占星術師】【高位占星術師】の集団に<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>は反撃に移れていない。

 防御系スキルや<エンブリオ>で凌いでいるけれど、このままではあちら側からしたらじりーぷあー、徐々に不利だ。

 

 この状況を打破するために必要なのは【占星術師】への超バフとなる【アマノガワ】からの脱出だけど……それは難しい。

 TYPE:ラビリンス……内部への干渉能力が高い<エンブリオ>の中でも【アマノガワ】は展開前の広さ以上に空間を歪ませており、星空に()は見えずどう見ても踊場全体どころか<ソラシェード>より広い空間となっているのが分かる。

 流石に宇宙の広さという訳ではないだろうけれど、それでも走って脱出できる距離ではないと思う。

 話を聞いていなければプラネタリウムという特性から「投影されているだけで実際の広さはそこまでではないのではないか」と思うかもしれないけど、<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>のメンバーもその類の手(内壁の破壊)を試みていないのを見るに索敵系スキルでここの広さについてはもうわかっているのかもしれない。

 迷宮を壁を崩して突破するなんて無法は許されず、TYPE:ラビリンスの突破の定石は──当然のように<マスター>の撃破だ。

 

 

「まああんな集団の真ん中にいるカノを倒すのは難しいだろうけどねー」

「【占星術師】は防御魔法もありますからね……」

 

 

 今なら上級職の奥義ぐらいだったら受け止められる《スターウォール》が何層も積み重なって防御されるのは間違いない。

 第六形態の必殺スキルでも余程貫通特化か特殊な攻撃でもなきゃ突破は難しいはず。

 <超級エンブリオ>である【ルルイエ】が紋章格納によるクールタイムとなっている以上後は<星を見る者たち>の蹂躙……という訳には残念ながら行かない。

 

 

「後は【魔王】の最終奥義次第というところだけど……」

「【魔王】の最終奥義ですか?」

「この手の情報はwikiとかにないしネタバレ系だから私も詳しくないんだけどね!」

 

 

 上級職と違い、一部の超級職にはジョブの特徴を突き詰めた奥義とは別に最終奥義が存在するらしい。

 大体の場合ハイリスクハイリターン、HPを九割消費するとかそもそも使ったらほぼ死亡が確定するとかとんでもないコストと引き換えに更に効果が強いバランスも何もあったもんじゃないスキル群だ。ついでに【超記者(オーヴァー・ジャーナリスト)】にはないらしい。

 そして聞くところによると【魔王】は例外なくこの最終奥義があるのだとか……姉さんが調べたなら確定で知っているはずだし占星術判定確定完全成功(クリティカル)な《星託》でも同様だろう。

 

 

「つまり、能動的にこの状況を作り出したカノには【魔王】の最終奥義に対して何らかの対策があると考えるのが自然なのだけど──」

 

 

 そんな話をモルテナ(と画面の前の皆)としていると、ふとカノが腕を下ろした。

 それに続いて他の<星を見る者たち>も攻撃を中断して……何だろう?

 

 

「私たちの力は見て頂けたと思いますが、ここで引く気はありませんか? これ以上戦えば<監獄>行きが増えると思いますがー」

「……えー、なにそれ。意味わかんないな、理解出来ないな?」

「いやぁ、単純な話でして。流石にここまで削っても《嫉妬の終焉(ジ・エンド・オブ・エンヴィー)》をされては壊滅してしまいますからね。それならここで痛み分けにした方が私たちは町を防衛出来てそちらはデスペナルティを受けるメンバーが減る、win-winだと思うんですがどうでしょう?」

 

 

 まさかの停戦交渉である。しかも札を晒しての。

 えぇー……伏兵の人がいたり増援が来たりはしない感じなの。

 

 

「それを言われて私が受けると思っているの? 流石にそれは<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>を舐めてるんじゃないの?」

「そういうつもりはありませんが、《嫉妬の終焉》のデメリットを考えれば考慮には……と言っても聞きませんよねぇ。しょうがないですか」

 

 

 カノが溜息をついてメモ帳アイテムである【情報手帳】を開く。

 

 あとなんかわかってるていで話が進むけどその最終奥義らしき《嫉妬の終焉》の情報は!!?

 私が知ってるのは以前会った【怠惰魔王】ZZZを姉さんが調べてくれた時の《怠惰の終焉(ジ・エンド・オブ・スロウス)》だけだけど、【魔王】の独自性を考えると全く方向性は違うんだと思う。

 《奉仕種族》に戦闘も何もかも任せていた【怠惰魔王】の最終奥義がまさに【魔王】と呼ぶ戦闘力を手にすると考えると迎撃特化の【嫉妬魔王】は一体……後で姉さんに聞いておこう。

 

 姉さんにアイコンタクトをしようとして【フギン・ムニン】のつぶらな瞳に疑問符が浮かんだ頃、カノが新たな情報を口にした。

 

 

「ファルコン・ディナー、@大家、クニタチ、ヴァイオレット、紅煉」

「!」

 

 

 スキル名……じゃない、まるでアバターネームのような感じの響き。

 ソレが読み上げられる度<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>のメンバーが反応をするところを見るに、誰かの名前というのは当たっているらしい。

 ただ構成員を列挙しているだけじゃない、今読み上げたのは──

 

 

「これでも()()()()()()()の五名なら、《嫉妬の終焉》でやられる前にデスペナルティにするぐらいの戦力は残っていますよ?」

「……」

 

 

 名前を呼ばれた<マスター>の特徴は私と同じ──<Infinite Dendrogram>内の映像をリアル側にアウトプットするカメラ動画アイテムを装備している。

 システムメニューから動画撮影やスクリーンショット撮影などをすることが出来ないデンドロではその手のプレイヤー(動画投稿者)でなくともカメラアイテムの一つや二つ【アイテムボックス】に入れているはず。

 でも、単に静画を撮るアイテムより動画を撮るアイテムの方がお高いのは自明の理……私は<DIN>価格(姉さんのコネ)で買ったけどさ。

 

「えぐぅい……」

「え、どういうことですか?」

 

 リアル事情に詳しくない(当然)モルテナが首を傾げて二人のクランオーナーの会話に疑問の声を上げる。

 解説役は姉さんとかの役割なんだけどなぁ、ご主人だから仕方ないか。

 

「あれで取った映像はこちら(デンドロ内)でも見れるんだけどリアル……向こうの世界でも見れてね、それで自分たちの活動を宣伝したり一緒に共有したり自己顕示に使ったりする人がいるんだよ。あっちのクランはその類だね」

 

 まあ宣伝に使ってるのは<星を見る者たち>、ひいては<Wiki編纂部>や姉さんもだけどね。

 動画再生に付随する広告費も入ってるって言うし!!

 

「それで、動画撮影をしているクラン同士で戦闘を行って片方しか動画を投稿出来ない状況になんてなったらどうなるか……それはもう編集切り取り恣意的解釈のオンパレードだよ、ペンの力怖いね!」

『風評被害も甚だしいですよ?』

 

 ごほんごほん。

 いやだって「敵の内誰が動画撮影用アイテムを持っているか?」レベルで予知できるとか普通にやばい……やばくない?

 本来ジョブスキルによる予知は遠い未来を漠然と告げる程度であると聞いていたのだけど、それもこの<エンブリオ(アマノガワ)>の中ではこれである。

 基本的に姉さんのおかげで情報有意に立つ側である私だけどやっぱり情報は力だね!

 

「それじゃあルミナス様は追加の撮影役、ということですか? それじゃあ巻き込まれないようにもっと離れた方が……」

「あー、大丈夫大丈夫」

 

 心配そうに袖を引くモルテナに笑って告げる。

 この交渉で相手が思い留まる時点で、少なくとも引き分け以上は確定なんだから。

 

「姉さんの【フギン・ムニン】はそのまま見た事がリアル側にアウトプット出来るし、(レギオン)がやられても録画データが失われる事はないからね。後はあちらがどう出るかって感じかな?」

「えぇ……」

 

 結局姉さんのおまけ扱いだけど気にしない。仮にここで戦闘になれば超級職(嫉妬魔王)を含む複数の<マスター>のラーニングが出来そうだし既に<星を見る者たち>の人からは大体ラーニングはさせてもらったから先払いとしてもこのぐらいはね。

 そして気になる<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>の反応はと言えば……

 

 

「つまり、《終焉》のペナルティとクランメンバーを犠牲にして私たちを倒してついでに<ソラシェード>を占領(壊滅)するか、痛み分けとしてここで帰るかの二択となりますねー」

「ん、んー……」

「オ、オーナー……」

 

 

 第一犠牲候補の動画撮影班が縋るような声を上げる。

 魔王然したジーは目を瞑って考えているようだけど、

 

 

「もう一つ言うと前者の場合はこちらだけが撮影した動画で炎上させます。あ、私たちのカメラは全滅させてもデータは残るのでご心配なくー」

「それは困るね、大問題だね!!」

「オーナー……!」

「信じてましたぜ!」

 

 

 いやどういう意味で「信じてました」なのか。

 やっぱり動画チャンネル持っていると色々とあるのだろう、私は姉さんに任せっきりだから良く分からないけど。

 

 その後は準備よく【契約書】を持ってきていたカノにより「<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>のメンバーはアニバーサリーイベントの間レジェンダリアに属するティアンや<マスター>に危害を加えない事」「<星を見る者たち>のメンバーはアニバーサリーイベントの間<アンダーグラウンド・サンクチュアリ>のメンバーに危害を加えない事」を締結してサインした。

 ついでにジーの「あ、あと今回の顛末の動画は私たちが投稿した後に投稿することにしてね! <超級>権限で追加だからね!」との声で【契約書】の条項も書き足された。

 本来【契約書】はリアルの事柄について条件に加える事は出来ないけれど、撮影アイテムのデータをリアルに出力する都合があるので今回は出来たという訳である。

 

 

「ところでこれ【契約書】の縛りがクラン単位になってるんだけど実は「臨時雇われの貴方たちが【嫉妬魔王】を不意打ちで倒してね」とかいう含みはないよね? 流石にからっけつの私じゃ不意打ち一発じゃ<超級>にして超級職(【嫉妬魔王】)の【ブローチ】まで届くかも分からないんだけど」

 

 小声で肩に留まる【フギン・ムニン】に問いかける。

 これまでの予知っぷりからありえないと言い切れないのが怖いんだよね、なんならあっちで集まってる【占星術師】の中にも傭兵(ジョブの【傭兵(マーセナリー)】に非ず)がいるかもしれないし。

 

『そういう類のアドリブを求める人ではないので大丈夫だと思いますが……?』

「なるほどー……何かあった?」

 

 <DIN>の繋がりである程度以前から交流のあった姉さんが言うなら大丈夫だろう。

 それよりその後の反応の方が問題だよ。

 視点の多い姉さんが言葉を濁した時は大体何かが起こる、これ今までのデンドロプレイの実体験ね。

 

 

 そして、その答えを聞くよりも先に事態は動いた。

 

 

「っ!」

 

 

 <アンダーグラウンド・サンクチュアリ>のメンバーの一人、確か幻術使いの<マスター>が弾かれたように上を見上げて腕を顔の前に掲げた。

 その直後、満天の星空に不自然に()()()()()

 耐性がある装備なのか空から注がれた光線は貫通する事はなかったけれど、異変はそれで終わらない。

 

 降りて来る星明りとは違う光を放つ円盤状の未確認飛行物体。物語で使い古されたそれとは違うのは全体が発光しているところか。

 それも一体ではなく二体、三体……どんどんその姿を増やしていた。

 その上部には揃って【ハイエンド・ルミナス・エレメンタル】と表示されている。

 

 

「「……え、なにこれ?」」

 

 

 そんな異常事態を前にして、二人のクランオーナーの声が揃った。

 名称からしてエレメンタルのモンスターなんだろうけど、その名前から私の事を知っている一部の<星を見る者たち>の<マスター>の目がこちらに向く。

 私は無実なんだけどなぁ!

 

 

 To be continued

 

 

 





 十七巻良かった……実に良かった。
 新登場の天地娘二人良いよね。
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