氷柱は人生の選択肢が見える   作:だら子

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其の十: 「左腕」

「弱者は引っ込んでいろ。虫酸が走る」

「ハハ、そう言わないでくださいな」

 

私、明道ゆきは上弦の参『猗窩座』と対面していた。引きつった顔と震える手を押さえ込む。なんとか目の前にいる猗窩座に対して笑みを浮かべるが、表情が持ちそうになかった。今、とてつもないほど帰りたい。目の前にいる鬼があまりにも強すぎる。一目見て敵わないと理解した。私はポンコツ剣士なので初対面では相手との実力差が分からない場合が多いのだが、その自分が一瞬で『逃げるべきだ』と思ってしまった。理解できてしまった。敵わない。逃げるべきだ。乗客や主人公達を見捨てるべきだ。

 

(でも、ここで炭治郎達を見捨てれば彼らが死んでしまう可能性が高い)

 

チラッと横目で列車の方向を見る。主人公・炭治郎は原作通り腹に怪我を負ったのか地面に横になりながら私達へ視線を向けていた。伊之助も同じようにこちらを窺っている。善逸の場合は漫画と違い、気絶はしていなかったが、足に怪我をしたのか炭治郎と共に転がっていた。彼らの近くには禰豆子・弟子の二名がおり、この二人は乗客を守ったことにより気絶している。この時点で猗窩座との戦闘が無理ゲーすぎて泣けてきた。戦える人間が私と伊之助しかいねーじゃねーか。現段階ではまだまだ未熟の伊之助と、クソ雑魚剣士の私で上弦に勝てるわけねーだろ。

 

余談だが、列車は一番先頭の車掌室がある車両以外は転倒せずに線路上に残っていた。理由は先程放った技により上弦の参『猗窩座』の攻撃が全車両に通る前に車掌室のある車両と次の車両を切り離せたからである。これだけ聞けば私がとんでもない技量を持つ強者に思えるだろうが、違う。あの時、私は猗窩座へ攻撃を入れるつもりだった。

 

ここで思い出して欲しいのが『明道ゆき』の剣の腕だ。

 

氷の呼吸・参の型『墜ち氷柱』はつららのように斬撃を飛ばす遠距離攻撃の技で、剣撃が当たるかどうかは本人の技量が大きい。剣の才能がまるでない私の斬撃は大幅に猗窩座から逸れ、先頭車両と次の車両の結合部分に当たってしまったのだ。車掌室のある車両が他の列車から離れていく瞬間を見た時はマジで血の気が引いた。だが、不幸中の幸いというべきか、それのおかげで上弦の参の攻撃が一番前の車両を伝って全車両に通ることなく終わりを告げたのである。結果、全車両の転倒を阻止することができた。

 

そこまではいい。偶然にしろ、乗客に怪我を負わせずに済んだのだから。問題はここからだ。

 

(どうする…。この状況、どうする…?! 上弦の参からどうやって自分と他を守る…?!)

 

表面上、上弦の参『猗窩座』は弱者が嫌いで、強者が好きな人物だ。脆弱な人間は直ぐに殺し、武に優れる者とは心行くまで戦いたいタイプの鬼である。武に関して白黒はっきりしている奴ほど戦いでの油断は生まれにくいため、絶対に猗窩座と戦うものかと考えていた。故に『二十五で死ぬ呪い解除のためにどの上弦と戦うか』という自分の脳内会議で『猗窩座』の名を直ぐに消去したくらいである。

 

(一番警戒していた鬼と何の対策もなく一対一の戦い? 冗談も大概にして欲しい。マジで胃が痛い)

 

だが、この状況で何もしないわけにはいかない。猗窩座に弱者だと思われて直ぐに殺される前に強キャラ感を出さなくては。そう考えて私は即座に口を開いた。余裕ありげに笑みを浮かべながら名乗りを上げる。

 

「私は氷柱・明道ゆき。鬼殺隊最高位を戴いている隊士の一人です」

「『柱』? まさか偽りの階級を言ってくるとはな。時間稼ぎでもする気か? 愚かにもほどがある」

「明道先生は柱だ! 最高位を戴くのに相応しい柱だ…!」

 

援護ありがとう炭治郎! お陰で猗窩座が「そうなのか」と興味を少し持った顔をしてくれた。でも、炭治郎、君が死んだら原作崩壊もいいところなので端で待機しててくれ。自分のことしか考えてなくてごめん。炭治郎達に「待機。上官命令です」と声をかけた後、前を見据える。

 

(さて、どうやって逃げ…)

 

そこまで言葉を内心で紡いだ瞬間だった。

 

――――腹に爆弾でも当たったのかというくらいの衝撃が走ったのだ。

 

「ーー!」

「明道先生ぇ!!」

 

思考も感情を抱くことすらも出来ずに、私は背中から後方へ吹っ飛ぶ。途中、地面に何度か叩きつけられ、身体が何度かグルンッグルンッと回った。それでも自分は止まらずにひたすら後ろへと飛んでいく。受け身が一切できないままでんぐり返しを五、六回繰り返した辺りで端にあった木にドンッと当たった。瞬間、カハッと血を吐き出す。ズルリと木から地面へ力が抜けたように座り込んだ。「ハーッハーッ」と息を整えてようやく私は理解する。

 

(上弦の参『猗窩座』から、攻撃を、受けた…?)

 

何一つ、見えなかった。

 

その事実に愕然とする。ここまでか、ここまで上弦の鬼というのは強いのか。想像以上だ。この『猗窩座』相手に炎柱・煉獄はどうやって対等に戦えていたんだろう。彼以外の柱達も皆、どうやって上弦と刀を交えることができたのだろう。確かに私は自身がクソ雑魚剣士だと理解している。けれど、少しくらいは上弦に食らいつけると思っていたのだ。まさかこれほどまでに手も足もでないとは思いもしなかった。柱達と(強制的な)手合わせを毎回していただけに、この事実が信じられない。

 

(まさか柱達は皆、手加減してくれていた、とか?)

 

新事実に息が詰まった。しかし、直ぐに私は否定する。いや、そんな訳はない。柱同士の熾烈な手合わせを何度も熟しただけではなく、見学だって飽きるほどしたはずだ。アレで力量くらいは分かるはず―――そこまで考えて、思わず黙った。先程も述べたように私はポンコツ剣士だ。見ただけでは相手の技量がどれくらいか分からないことが多い。力の差が分かるのもまた強者として必要な要素の一つである。それなのに自分は相手との力量差を中々測ることができなかった。そこから導き出される答えは一つ。

 

(才能がなさ過ぎて柱同士の手合わせの凄さを私は理解していないんだ…!! 身内としての安心感もあって余計に気がつかなかったっぽいぞ…!)

 

やっべえ!! マジでやっべえ!! 柱として何だかんだで生き残れているので、最近は「私、上弦戦に横入りしても足手まといにならずにイケるんじゃね?」と思っていた。それは全て間違いだったのだろう。私は上弦戦で横入りどころか、立ち会うことすらも出来ない雑魚オブ雑魚なのだ。まさかの新事実にのたうち回りそうになる。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。先程の攻撃で折れたであろう肋骨や傷ついた内臓の痛みを堪えながら唇を噛んだ。

 

だが、羞恥心で死にそうでも今、解決しなくてはいけない問題があった。勿論、目の前で殺気立つ上弦の参『猗窩座』である。彼からどうやって逃げるか考えなくてはならない。どうする? 本当にどうする? 自分だけでも逃亡が無理ゲーなのに炭治郎達も連れて行くとなると絶対に死ぬだろう。

 

(炭治郎達を見捨てるか?)

 

駄目だ。彼が死ぬと上弦の鬼の打倒が困難になることが予想される。上弦を倒せなくては二十五で自分は死ぬだろう。そんなのは嫌だ。主人公はキーパーソンだ。人生を謳歌するためにも炭治郎には生きてもらわねば困る。

 

私がゲスすぎる逃亡の算段をしていると猗窩座が羽虫を見るような目でこちらを見てきた。もう視界に入れること自体、無駄だというような表情を浮かべている。

 

「弱い。弱い。あまりにも弱すぎる。これが柱? 鬼殺隊も落ちぶれたものだな。許せないほどの弱さだ。弱い。弱い。その弱さが許せない。もう死ね。見る価値もない」

 

猗窩座が指を振り上げた。空気がピリッと震える。流石の私も「これはマズイ」と悟り、重い腰を上げた――その瞬間だった。聞き慣れた電子音が脳内に響き渡ったのは。

 

 

《ピロリン》

▼どう行動する?

①氷の呼吸・弐の型『氷結』を猗窩座に向けて放つ … 上

②何もしない … 死

 

 

軽率に『死』の選択が登場するのマジでやめろ!!

 

危機的状況によるストレスで選択肢にガチギレしそうになる。どうして私はこんな命の危険しかねえ場所にいるんだ。一人で上弦の鬼と対面とか悪夢すぎるだろ。なんでこうなった。煉獄杏寿郎マジでどこ行きやがったんだ。帰ってこいよ。何でいないのアイツ。いや私のせいだったな。私が煉獄に弁当を外へ買いにいくよう勧めたからだな。クッソやってらんねえ!! 自業自得乙!!

 

(あと、氷の呼吸・弐の型『氷結』使いたくない)

 

私が呼吸の使用を渋っているのには理由がある。『氷の呼吸』は非常にリスキーな技しかないからだ。

 

まず簡単にこの呼吸について説明していくと、この『氷の呼吸』の売りは高威力・高リスクである。また、『型』は壱の型『青蓮地獄』、弐の型『氷結』、先程列車停止に使用した参の型『墜ち氷柱』のたった三つの技しかない。あまりにも少ないと思うよな。私も思った。師範から聞いた時「少ねえ」と思わず口から本音が溢れたもん。だが、その技の少なさを補うほどの高威力を『氷の呼吸』は発揮してくれるのだ。一代前の『氷柱』は壱の型『青蓮地獄』を使用した際に「山を割った」らしい。それほどまでの強さがこの呼吸にはあった。

 

しかし、メリットもあればデメリットも当然のようにある。先程も述べたように『氷の呼吸』は高威力・高リスクが売りだ。ではリスクとは何なのか?

 

――――リスクはいくつかあるが、代表的なのは『威力が強すぎて数回技を放つだけで手が使い物にならなくなる』である。

 

氷の呼吸の使い手は常に身体の損傷や欠損の可能性が付きまとう。確かに鬼狩りをやっている限り、どの隊士にも当然のように怪我等の危険が伴うだろう。しかし、『氷の呼吸』は雑魚鬼だろうと技を放てば自滅しかねない危険性があった。強いのに戦えば戦うほど自分を傷つけてしまうのである。これほどまでに効率の悪い呼吸はないだろう。

 

それ故に氷の呼吸の使い手は普段、派生前の水や風ばかりを使用している。私も氷の呼吸は滅多に使わず、水の技を頻繁に用いていた。今まで『氷の呼吸』の「こ」の字も出てこなかったのはこのせいだ。自分の呼吸ではあるが、出来るだけ使いたくない呼吸なのである。

 

(熟練の『氷の呼吸』の使い手でも呼吸の多用はしなかったらしいからな…。そんな流派を雑魚剣士の私が使えばもうお察しだよね)

 

実を言うと今、自分の手が動かない。先程、列車に向けて氷の技を咄嗟に放ったばかりだからだろう。次の技を使えば一生刀が握れなくなる可能性があった。マジで勘弁してほしい。他の上級隊士なら一日数回、技の使用ができるのだが、私だと一日一回が限度である。本当にどういうことなの。剣の才能が切実に欲しい。

 

だが、どんなに嫌でも、手が動かなくなっても、命には代えられない。私は腹をくくって選択した。

 

 

▼選択されました

①氷の呼吸・弐の型『氷結』を猗窩座に向けて放つ … 上

 

 

「氷の呼吸・弐の型『氷け――――」

 

自動的に自身の口から紡がれた言葉が続くことはなかった。また、剣撃が猗窩座へ繰り出されることもなかった。理由は単純明快。

 

 

私・明道ゆきの左腕がなくなったからだ。

 

 

片腕に煮え湯を浴びせられたような衝撃が走る。目の前を赤色が彩った。唖然と空中に舞う『何か』――自身の腕を見つめる。腕と共に空へ飛んだ刀が月の光を浴びてキラリと反射した。その反射した光が自分の瞳に入った瞬間、脳がピリッと刺激され、唐突に理解する。

 

上弦の参『猗窩座』に左腕を斬り落とされたことを。

 

腕がなくなったことにより、私は体勢を崩してそのままゆっくりと膝をつく。鈍い音を立てつつ地面へ座り込むと、ドッと身体が重くなった。眼球の限界まで目を見開せる。手が震える。息が上手くできない。斬り落とされた部分が熱い。死ぬほど熱い。玉のような汗が額からボロボロと落ち始めた

 

(う、腕が…なくなった…?)

 

嘘だろ。嘘だろう…?! 左腕がなくなるってそんなことある…? どうしようどうしようどうしよう死ぬほど痛い。痛すぎる。ぜ、全集中で止血止血…って、ここまでの大怪我では血が全部止まらねーよ。止まるわけねーよ。冷や汗で背中が驚くくらいビッショビショなんだけど。目の前もチカチカしてきたんですけど。いや、これ死ぬだろ。死ぬんじゃないかこれ。出血性ショック死するだろこれは。選択肢で『上』を選んだのにこんなことってある? ……いや、あったな。義父を殺した時も選択肢『上』で死にかけたわ!

 

内心で荒ぶっていると猗窩座が大きな足音を立ててこちらに近づいてきた。腕がある方の私の右腕をガシリと掴んで持ち上げる。目線をこちらに合わせてきた猗窩座は嫌悪を滲ませた表情で言葉を発した。

 

「ここまで生きていること自体が許せない愚か者に会ったのは久方ぶりだ。俺が以前に殺した氷柱はもっともっと強かった」

「そう、ですか」

「お前が先程俺へと放とうとしたのは氷の呼吸・弐の型『氷結』だろう? あんな技で氷結を名乗るなど笑わせてくれる!」

「それは私も考えていたことです。気が合いますね」

「…まさかここまで鬼殺隊が落ちぶれていたとはな。これだから人間は駄目なんだ。こんな弱者を柱にするという愚かな選択をする。その上、例え強くなれても寿命で直ぐに死んでしまう」

「ハハ、自分でも何故私が柱になれたのか不思議なんですよ」

「そろそろ鬼殺隊は俺達を滅するなんていう馬鹿な思想は捨て、鬼になるべきだ。だが、お前達は皆、鬼にはならない。何故だ。理解ができない。……ああ、もういいぞ。話さなくて。お前は今ここで死ぬのだから」

 

誰が死ぬかァ!! 全力で生きてやる。助けて選択肢パイセン…!!

 

いつもは私を苦しめる選択肢パイセンだが、命の危機には頼りになる。例え先程、選択肢『上』を選んで死にかけたとしても、自分が生き残る道は転生特典しかなかった。ああなんて惨めなんだ。悔しい気持ちになったが、背に腹はかえられない。祈りに祈っていると、選択肢パイセンから反応があった。ピロリンという聞きなれた電子音が脳内に響き渡ったのだ。

 

 

▼どう行動する?

①命乞いをする … 死

②戦おうとする … 死

 

 

自分の中の時が止まった。

 

思わず目の前に現れたドット文字を三度見どころか五度見、十度見する。眼球をグルリと回しても、瞼を閉じても、その選択肢が変わることはなかった。それを理解した瞬間、私は天を仰いだ。

 

(神は死んだ)

 

私が一番危惧していたことが今ここで来ちゃうのかッ! 叫び散らかして地面で転がり回りたいくらい荒ぶっている。もしも転生特典により時間停止の呪いがかかっていなければ私は咽び泣いていだろう。それくらい嘆き苦しみ、のたうち回っていた。

 

(あ、やばい無理。心折れた)

 

いつも理不尽と戦い、頑張っていただけに心がポキッと折れるのが分かった。私が何をしたって言うんだ。善良に生きていたぞ…って、確かに死なないためにゲスいことをしてきていたな…。そのせいか、そのせいなのか? でも、私のせいじゃない。選択肢と左目の呪いのせいなんだ。本当なんだ。

 

(『死』の選択肢だけは受け入れたくない。無理。マジ無理)

 

無理。絶対に無理。死にたくない。絶対に死にたくない。自分の死を回避するためにどれだけ精神力と今世の人生を犠牲にしたと思っているんだ。マジ無理。何があっても死ぬのだけは嫌だ。靴の裏でも何でも舐めるのでそれだけは勘弁してください。なんなら炭治郎を差し出しますんで。本当に命だけは勘弁してください。

 

まるで映画に登場する三下のような最低なセリフをツラツラと内心で並べる。だが、現実は無慈悲だ。何を考えても、あらゆる念を送っても、選択肢は変わらなかったのである。絶望で愕然とした時、ピロリンと電子音が聞こえてきた。そう、私を嘲笑うかのように目の前に新たな文字が浮かんできたのだ。

 

 

▼ステータス … 一定条件クリア

▼パラメーター … 一定条件クリア

▼好感度 … 一定条件クリア

▼イベント回収率 … 一定条件クリア

▼称号回収率 … 一定条件クリア

 

▼条件を満たしましたので、新たな選択肢が追加されました

 

▼どう行動する?

①命乞いをする … 死

②戦おうとする … 死

③自由にカッコいい時間稼ぎのセリフを言う … (一定基準を満たす必要あり)

 

 

どういうことなの。

 

ツッコミ疲れてきた…。一周回って落ち着いてきたぞ…。この選択肢が表示されている間は時が止まるので左腕の痛みや折れた骨と内臓の激痛もないし…。

 

(まず一つ言っていい? 「カッコいい時間稼ぎのセリフ」って何?)

 

ここまで曖昧ってそんなことある? 最近、選択肢パイセンサボりすぎじゃないか。もっと具体的に書けよ。「カッコいい強キャラ」の定義も分からないし、「時間稼ぎのセリフ」っていっても色々なシュチュエーションがあるし、曖昧にもほどがある。しかも、『一定基準を満たす必要があり』って記載があるけど、基準がまるで分からない。そんな中で(恐らく)一発勝負のセリフを述べないといけないの? 無理に決まってんじゃん。何言ってんのマジで。ふざけんなよ。

 

そうは思っても憎き転生特典から逃げる事は叶わない。『死』の選択肢を選べば本当に自分は死ぬのだろう。「いやいやもしかしたら違うかもしれないじゃん」と思う事もあるが、リスクを払ってまで選ぶことはできなかった。まだ生き残れるかもしれない選択があるなら尚更だ。

 

故に私は自分の人生を賭けて選んだ。

 

 

▼選択されました

③自由にカッコイイ時間稼ぎのセリフを言う … (一定基準を満たす必要あり)

 

 

私、『明道ゆき』は動き出した時の中でうっそりと笑う。掴まれた右腕を伝うように視線を上げて上弦の参『猗窩座』と目を合わせる。恐怖で身が竦みそうになるのを必死に抑え、斬り落とされた左腕の熱さに眉をしかめながら口を開く。

 

「私が死ぬ? 笑止千万。死ぬのは貴様の方だ、上弦の参」

 

――この瞬間、戦いの火蓋が切られた。


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