スマホの中の女の子と合体したらTS変身したのですが、どうしたらいいですか!?   作:Plusdriver

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お久しぶりですね。

第二部、スタートです。


第二部第一章 残暑の中進む前編
奪われたスマホの行方


スマホを奪った男性を見つける事が出来ずにその日は終わりを告げた。あの後、学校に戻ったら先生に捕まり少々説教を受けることとなってしまった。黙って飛び出した事を謝り、本日の学校生活は終了した。

鞄のボールチェーンが静かに揺れている。

ふと、あの男性の言葉を思い出した。友の為にって一体?それに忘れて欲しいって...

 

「スマホのヒビを気にしていたよね...」

 

僕のスマホとあの男性には何か関わりがあると思われる。でも、友って一体誰の事を指しているのだろう?

僕のスマホは画面が割れているし、彼がロックを解除して使えるとは思えない。

理由を考えれば考える程に、奪った理由が全く見えてこない。

共通点はスマホ、だろうがあのスマホは...

 

「ラルと、ガングニール...」

 

動く完全聖遺物と、相棒といえる聖遺物の名前が思い出される。

まさか、あの子達と関係があるのか?

だとしたら、彼は消えてしまった作品を覚えているということになる。

または、彼はこちらの世界の住民ではないのかも知れない。

どちらにしても、彼とスマホの共通点は見付かった。

でも、今どこに居るのだろうか?

 

「...確か、スマホの位置を検索する方法があったはずだ!」

 

ゆっくり歩いていた足を家に向け、走り出す。家にあるパソコンを使えば、まだ電源の生きているであろうスマホの位置を発見できる可能性に掛けるしかない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

スマホの位置はわかった。スマホを持っていかれたあの公園に、その反応はあった。

残された熱に身体を侵されながら、全力で駆け抜ける。確認してから反応は動いていない。

動いていないのだ。辿り着いた公園の真ん中には、帽子を被った全身スーツの長身の男性が、スマホを静かに見つめている。

 

「あの!」

 

大きな声で彼に声をかける。彼に僕はどう写っていただろうか。

 

「やぁ、来てしまったんだね。ここに」

 

息を整えながら近付いて行く。彼の表情は悲しそうだった。

 

「スマホを、僕のスマホを返してくださいッ」

 

奪われた僕だけど、何故かそう言わなければいけない気がした。大切な事だろうと誰かに語りかけられているような気がして。

 

「出来ないよ、それはね」

 

彼の返事は予想通りできないの一点張りだった。なら、もう一つ確認しなければならない。

 

「...どうして貴方は、今日この場所から動いてないんですか?」

 

「気付いていたのか、やはり」

 

深々と帽子を被り彼は視線を逸らした。スマホの反応は、奪われてから一度もこの公園から移動していない。残暑残る夏の日差しがじりじりと照りつけてくる昼間に公園に数時間居るのはもう、

 

「この場所に、意味がある...」

 

「厄介だな、本当に。できないのさ、僕には。君を害することが」

 

彼はスーツの胸ポケットから僕のスマホを取り出し、画面を見つめている。ひび割れている液晶が光が様々な方向へと反射している。

 

「知っているかい?夏の秘密を」

 

「夏の秘密?」

 

「世界を歪ませるのさ、暑さは」

 

暑さ?世界を歪ませるって...

 

「昼間は暑く、夜は涼しい。世界が変わったように」

 

何故か立っていられなくなり、その場にしゃがみ込んでしまう。

 

「な、何を...」

 

「時間がかかったのさ、残暑だからね」

 

その場で動けなくなってしまい意識が徐々に薄れつつあった中で彼の声だけが耳に残る。

 

「また会おう、我が友よ」




夏は次元が歪む。
その理由は、過去の日本にある。昼は暑く、夜は涼しい。
夏の一日に起こる大きな気温の差は、過去の人々に妖怪等の存在を彷彿とさせた。だから、夏にはそう言った伝承が多いのだと考えられる。祭りが多いのもその為である。

(とある歴史学者による平行世界についての考察より)

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