というわけで今回は特別編。チビたちとはまた……別のお話となっております。予めご了承ください。
そしてTwitterを見てくれている人へ
アレは全部これの伏線だった訳だけど、気づいてた?
「は~疲れた」
「渚ちゃん、お疲れさま。まかないだよ」
「ありがとうございます、店長」
私の目の前に、親子丼が出てくる。ついでにアルコール臭の漂う琥珀色の液体まで置かれる。これがもうたまらないんだよね。
「今日は特別いそがしっかったからね、サービスだよ」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
グラスに少し口をつければ、独特の風味と自己主張の激しいジンジャーの匂いが鼻から突き抜けていく。
この目の前の親子丼も絶品。とろっとろの卵が鶏肉に絡みつき、未だ私にすら教えてくれない味付けによって、クドくなく舌に残る。この絶妙な味加減は店長しかできない。
一介のバイトである私にここまで美味しいまかないを出してくれるのも、この店長の人の良さがあってこそだ。ありがたい。
「帰り道は大丈夫かい?」
「はい、慣れてますから」
こう見えて逃げ足には自信がある。やばい人にあったら速攻で逃げる、を徹底してるから大丈夫だ。抵抗はしちゃいけない。
「ごちそうさまでした」
手をあわせてふぅと一息をつく。アルコールも入ってで少し気分もいい。
「お粗末様でした。それじゃあ気をつけて帰るんだよ?」
「はい、店長。お疲れさまでした!」
トートバッグを持って店を出る。もう日付は変わっている。道を照らすのは街灯と、それから時折家庭から漏れ出ている光くらいだ。
スマホを確認すると、いくつかの通知とともに、あるゲームの通知が入ってる。
ドールズフロントライン
何かの広告で見て、可愛い女の子につられてホイホイインストールしてしまったゲームだ。内容を見てその世界観とのギャップ差で完全にドハマリしてしまって、いまや唯一しているソシャゲになっていたりする。
特にこれといって推しているキャラがいるわけでもない。でもそれは好きなキャラがいないわけじゃなく、みんなを平等に愛してるってスタンスをとっているだけなんだよね。
さっと後方支援だけ出して、スマホをしまう。夜道の歩きスマホは危ないからね。さて、今日はもう家に帰ろう。
淡く照らされた道を、私は歩き始めた。
=*=*=*=*=
家の近くに来た時だった。珍しくこの時間だと言うのに話し声が聞こえる。声は二人分、女性みたいだ。
「ちょっと、こんなところでつぶれないでよ〜」
「あなただって酔っ払ってるでしょ〜?」
その2人はどうやらお酒を飲んでいるようだった。なんだか面白そうだな。
そっと近づいて、曲がり角に体を隠して聞き耳をたてる。
「……ふわぁ、ねむい〜」
銀髪の子がそういって地べたに座り込んでしまった。
「ちょっと……、立ちなさいよぅ〜」
茶髪の子が手を引っ張るが、その力は弱々しい。
「うっ……」
あっ銀髪の子がうずくまって……?
「吐きそう」
「バカ!こんなところでやめてよね!」
「うっ……うっ……」
どうやら飲みすぎて吐きそうらしい。急性アルコール中毒?だとまずいかもしれない。
「だ、大丈夫ですか?」
幸いスポドリなら持ってる。もうぬるくなってるけれど、酔っぱらいにはちょうどいいでしょ。
「これ、飲めますか……?」
「口移しして~ん~」
そういって銀髪の子は口を尖らせる。
「大丈夫みたいですね」
すっと離れようとするけど、銀髪の子が腰に抱きついてくる。に、逃げられない……?
「だいじょう……b……うっ」
アニメだったらキラキラのエフェクトがでるんだろなーと思いながら真っ黒な空を見上げる。
ああ、これバイトの服装なんだけどなぁ。明日の夜もバイトなんだけどなぁ。
「その……相方がごめんなさいね?」
茶髪の子が心配そうに、そして申し訳なさそうに近づいてくる。
「気にしないです、家近いんで。それよりそっちは大丈夫ですか?」
「ん?」
見たとろこ……ここらへんの人でも無さそうだ。茶髪の子のスマホには、ここら一体の地図が表示されている。こんな何もない住宅街で地図をみるなんてよそ者ですっていってるのと同じだから気をつけたほうがいいと思うなぁ。
「私の家近いので、シャワーだけでも浴びていきますか?」
「いいの?それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。ほら、行くわよ」
「んー?うっ」
「ああこら!吐かないで!」
再びキラキラのエフェクトが流れたのは言うまでもないかな。無事?に茶髪の子の服も汚れて、全員で私の家に向かうことになった。片付けておいてよかった……。
しかし……ずいぶんとクオリティの高いコスプレだなぁ。なんもない街中でやってるのはすこし複雑な気分だけど。
=*=*=*=*=
チュンチュン
こういう朝に限って、すずめの鳴く声がしっかりと耳に入る。
「あら?起きたの?」
「おはよう?」
2人が両側から耳元で囁いてくる。
「昨夜は……、楽しかったわ」
「まさかあんなことをする人だなんてね。私もつい熱くなっちゃった」
ついつい虚無顔を浮かべる。
2人がグイグイと身体を押し付けてくる。私の腕に、その豊満で柔らかいものが直接押し付けられる。そう、直接だ。
今、私は、狭いベッドで2人の美女に挟まれてる。その2人の美女は裸だし、私も裸だ。
「何が……あったんだっけ……?」
「あら?わすれちゃったの?」
「ふふふっ、あんなに可愛かったのに」
本当に昨夜の記憶がない。本当に覚えてない。だからFAL似の茶髪の子と、57似の銀髪の子に挟まれて裸で寝ている理由がわからない。
「……あの、そもそもお二方はどなたですか?」
「あら?」
「わすれちゃったの?」
クスクスという笑い声が、両側から聞こえる。少し背筋がゾクリとした……。
「私はFALよ」
「私はFive-seven。仲良くしましょう、渚ちゃん?」
随分とロールプレイにも気合が入った人たちだなぁ……なんて思いながら、私は起き上がる。
部屋の中は、まるで酔っ払いの酒盛りが行われたかのように、酒瓶とおつまみのゴミが散乱していた……。
せっかくの日曜日だというのに、まずは部屋の掃除からしなきゃいけないみたい。
「もう少しゆっくりしましょうよ~」
「ヒャン!」
57が腰に抱きついてきて、なにかが背筋に流れた気がする。驚いてつい甲高い声が漏れてしまった。
本当に……酔いつぶれて寝ただけだよね……?