404小隊(チビ)は現実へと現れる【完結】   作:畑渚

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バイト先が日に二度も停電したので初投稿です。

そして、お気に入り登録に評価、いつもあざす。投稿ペースはまた加速させるつもり。


第十二話 俺の勝ち(プルプル)

 突然、本当に突然だった。

 

 意図せずして、早朝に、スマホから大音量で流れ始めた。

 

「ん〜どうしたのお兄ちゃん……」

 

「9ちゃん起きちゃったか。まだ朝早いし寝てていいよ」

 

「う……ん。そうする」

 

 9が再び寝付いたのを見て、俺はスマホの画面を見る。

 そこには、大雨の緊急速報を伝える通知が届いていた。

 

 幸い、近くに大きな川はない。よほどでない限り、被害がこっちに及ぶことはないはずだ。

 

「……災害用の持ち出しバッグ、どこにしまったかな」

 

 誰も起こさないようそっと起き上がって、玄関先までいく。

 たしか靴箱の中に……

 

「あったあった」

 

 リュックを取り出して中身を見る。非常食と固形燃料や断熱シート、それから携帯トイレがそれぞれ一人分しか入っていない。

 

 まだ布団で眠る4人の方を見る。

 

 今度買い足しておくか……

 

 寝直そうかと戻ると、ギュッとシャツの端を掴まれる。

 どうやら416が無意識に掴んだみたいだ。父親がいなくて寂しかったりするのかな?

 

 無理に引き剥がすこともないだろう。そのまま再び眠りについた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 トントントン

 

 規則的な音で目が覚める。416が料理をする音だ。毎朝聞くお陰でこのリズムが心地よくなってしまった。

 

「おはよう、416ちゃん」

 

「おはよう、お兄さん。もうすぐできるわ」

 

「わかった。手伝おう」

 

 よっこいせと起き上がるが、まだ45と9とG11は寝息をたてている。G11はともかく、45と9が俺よりも長く寝ているのは珍しいかもしれない。

 

「手伝ってくれるんじゃないの?」

 

「ああ、すぐいくよ」

 

 と思ったが……45と9が俺の足を掴んでいる。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、それが……動けないんだ」

 

「それ、起きてるわ」

 

 いや、まさか……

 

 と思って少し足を動かす。すると、足を掴む力が強まった。これは確実に起きてるな……?

 

「45ちゃんに9ちゃん、離してくれないかい?」

 

 2人は何も言わず、俺の足を掴む手を強める。

 

「いや、起きてるね!2人とも!」

 

「バレた!45姉!」

 

「うん、9!」

 

「うわっバカヤメロォ!」

 

 そんなに引っ張られるとバランスがぁ!倒れるわけには、倒れるわけにはいかない!

 

「うごごごごご」

 

 全腹筋背筋をつかってバランスを保つ。倒れるわけには……まだ眠っているG11の上に倒れるわけには……

 

「残念、私も起きてるよ」

 

 もう、耐えたよね……。もう倒れていいよね……。

 なあG11……首元を引っ張るのは卑怯だよ。

 

 俺が布団に倒れ込むのに、それほど時間はかからなかった。いや、首元に抱きつくな!45と9も腰を掴むな!

 

「416!」

 

「いまだよ!」

 

 45と9がそう言うと、背中に衝撃がくる。

 よつん這いで正面にはG11がいる。45と9は腰に抱きついてきてるし、どうやら416が背中に乗っかってるみたいだ。

 

「いくよ9!」

 

「わかったよ45姉!」

 

「君ら俺の動きを封じて何をする気?いや、待て、45ちゃんに9ちゃん、横腹はヤメ、ヤメロォォォ!」

 

 この後笑い疲れるまでくすぐられ続けた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「暇だね~」

 

「そうだね~」

 

 雨が振り続いていて、部屋の中もジメジメしている。でも……風上の方は晴れているから、そのときに買い物でも行こう。

 

「ねえお兄さん」

 

 背後から突然416が話しかけてきた。話しかけてくるのは珍しい。

 

「ん?どうしたんだい416ちゃん」

 

「なにか嫌な予感がするの」

 

「嫌な……予感?」

 

「そう、なにか良くないことが――」

 

 416の声は大きな音にかき消された。ズドーンと言う音は空気を震わせる。その後も何度か鳴り続ける。

 

「か、雷か。随分と近いなぁ」

 

 窓の方を見れば、キレイに稲妻が見えた。

 

「えっと、その」

 

「ん?416ちゃんもしかして雷は苦手?」

 

 416の手は俺の服の裾をギュッと握っている。

 

「そ、そういうわけじゃな――」

 

 416の言葉は途中で止まった。窓の外が光ったからだろう。少し遅れて大きな音が響き渡る。

 

「ひ、ヒィッ!」

 

 いや、怖いんだね。いいよいいよ、お兄さんに任せなさい。ああでも服の後ろが伸びそうだ。まあ部屋着だから構わないけれどね。

 

 再びズドーンと近くに落ちる。これは停電の可能性も考慮しておく必要がありそうだ。

 

「お、お兄さん……」

 

「45ちゃん?」

 

「か、かみなり、ズドーンって……」

 

 45もうさぎのぬいぐるみを抱きしめながら416の反対側……つまりは俺の正面から突撃してくる。まいったな、最近身動きが封じられがちだ。あぐらをかいているから、すぐに動けなかった。

 

 ピカっと外が光り、すぐに音が聞こえる。どこからか消防車のサイレンすら聞こえてくる。

 

「……どうしたの9ちゃん?」

 

「お兄ちゃんってさ……」

 

 またピカっと外が光る。

 

「実は雷苦手?」

 

 直後、ズドーンと音がする。

 

「ままま、まさかそんなわけないじゃないか」

 

「でも落ちる度に身体がビクってなってるよ?」

 

「そんなわけ……っ!」

 

 また落ちた。ああ、たしかに苦手だよ!でも雷の怖さというより、爆音が苦手なんだよ!

 

「そういう9ちゃんは楽しそうだね」

 

「えっ?楽しいじゃんいつもと違ってさ!」

 

 9は目をキラキラさせながら窓に張り付いている。元気だな……これが若さか。

 

「これが若さかって顔してるよ」

 

「G11ちゃん……は平気そうだね」

 

「さすがに怖がるような年齢じゃないよ。それにコレくらいの音、慣れてるし」

 

 そう言いながら、G11は大きくあくびをした。

 

「何もできなさそうだし、私は寝るね」

 

 G11はおもむろに近づいてくると、俺の膝を枕にして寝息を立て始めた。いや、動けへん。さらに動けなくなったやん。

 

「ずるーい!じゃあ私は逆側!」

 

 そういって9は逆側の膝を枕にして寝転がった。うぉん、俺はまるでフルアーマー404だ。なんてくだらないことを考えるくらいしかできなかった。

 

 さあ俺の足に限界がくるのと停電と、どっちが先か勝負しようじゃないか。

 

 

 ピカッズドォォォォン!

 

 

 部屋の照明が消える。勝負は案外と早く決着がついたのだった。

 


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