404小隊(チビ)は現実へと現れる【完結】   作:畑渚

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今は12月、もはや冬
の、はずでしたが!
遅延や連載休止があったため(小説内では)夏休みを続行します!


第十六話 あと数本手があったらなぁ

 辺りが暗くなり始めたころ、俺たちは公園をあとにしていた。

 

「見てみてお兄ちゃん!水族館だ!」

 

 9が45の手を引っ張りながら、入り口に向かおうとする。待て待て、早まるな。まだチケットを買ってない。

 

「大人二人子供三人お願いします」

 

「はい、どうぞ」

 

 金を支払ってチケットを受け取ると、416と手をつないだG11にチケットを二枚渡した。

 

「ごめんG11ちゃん、416ちゃんは任せた!」

 

「……わかった、なにかあったら連絡する」

 

 あれ……?電話番号すら教えた覚えはないんだが……G11のスマホには俺のL|NEが映っている。まあ細かいことはいいや。

 

 俺は入り口で係員に止められてる二人の茶髪コンビに、急いで駆け寄っていった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 「わぁ……綺麗……」

 

 暗い水族館内で子どもたちはてんわやんわ動く。何度分身したいと思ったことか……

 

 45はまだいい。問題は9のほうだ。目を離した隙にすぐにどこかに行っている。そんな9でも、足を止めるのがいくつかあった。

 

 薄暗い空間を、水槽の中を照らす光が照らす。ゆっくりと流れる水槽内を、クラゲが漂っていた。45のペースに合わせてようやく追いつくと、9はその水槽の前でかじりつくように眺めていた。

 

「あっ45姉!見てみて!」

 

「なに?」

 

「自分で光るクラゲだって!ほら!」

 

 先程の水槽の隣に、小さな水槽がある。どうやら珍しいくらげがいるようだった。俺は二人の様子を眺めながら、大きな水槽の向かい側にある椅子に座る。程よい暗さ、静かなBGM、絶妙な空調……

 

「お兄さん?」

 

「……、はっ!」

 

 やばい居眠りしかけてた。見れば45が心配そうに顔を覗き込んできていた。

 

「9ちゃんは?」

 

「9なら先にいっちゃった」

 

「そうか……」

 

 迷子にならないといいんだが……、9なら大丈夫かな。

 

「ほら、お兄さん。早く行こう?」

 

「ああ、わかったよ45ちゃん」

 

 珍しくも45がせかして、腕を引っ張ってくる。この先はたしか……パンフレットを見れば、珊瑚礁のコーナーだった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 珊瑚礁のコーナーは、とても広くつくられていた。45はその一つ一つの水槽を、丁寧に見て回る。

 

「……45ちゃん?」

 

 そんな中でも、最もとどまった時間が多かったのはカクレクマノミの水槽だった。

 

「クマノミが好きなの?」

 

「うん……なんか、ほっとする」

 

 安心する場所を求めてるってことなんだろうか。たしかに実家には十数日も帰っていないわけだし、軽いホームシックになっているのかもしれない。おばさんに連絡をいれておいたほうがいいかもしれないな。

 

「……、お兄さん?」

 

「ああ……、そういえばそろそろペンギンのショーがあるね、行こうか」

 

「うん……」

 

 45と手をつないで、9を探す。少し行ったところで、亀とにらめっこをしていた。ペンギンを見に行こうというと、9は目をキラキラさせながら俺の手を引き始める。

 

「っと……ちょっとまってふたりとも」

 

「ん?」

 

「どうかしたの?」

 

「いや、416ちゃんとG11ちゃんにも連絡をしておかないとね」

 

 メッセージアプリを立ち上げると、ペンギンのショーを見にいくことを伝える。すぐに既読がついて、すでに場所をとっていると返ってきた。

 

「もう行ってるみたいだ。よし、行こうか」

 

 二人に引っ張られるようにして、ペンギンのいるフロアへと向かった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 ショーが終わりペンギンが寝床に戻っていくまで、ちびっこ3人は終始興奮していた。G11ですら、眠たそうな顔をしてはいるものの、目はしっかりとテクテク歩くペンギンを凝視していた。

 

「すごかったね!すごくかわいかったね!」

 

「一番、はじっこの岩に乗ってた子が、こうキョロキョロって」

 

「そのあと係員さんから逃げたりして――」

 

 その後も三人は興奮して話しっぱなしだった。ペンギンのかわいさにまさに夢中といったところか。

 

「お兄さんも楽しめた?」

 

「G11ちゃん……、もちろんさ」

 

「なら良かった。ちょっと疲れてそうだったから」

 

 ペンギンのフロア近くの水槽を眺めていると、G11が隣に寄ってきた。

 

「G11ちゃんはどうだい?」

 

「ん?ちょっと眠いかな」

 

「いや、そうじゃなくて。今日は楽しかった?」

 

「何言ってるのお兄さん」

 

 G11はにへらぁと笑った。

 

「お楽しみはこれからでしょ?」

 

「えっ?」

 

「イルカショーもまだだし、その前にある大水槽でのショーも面白そうだよ?」

 

「へえ、意外だな」

 

「……、それってどういう意味?」

 

 すこしムスッとした顔をしたG11にあわてて弁明する。

 

「ごめんごめん、普段はいつも眠たそうにしてるからさ。こういったことにも興味がなかったらどうしようってずっと考えてたよ」

 

「そりゃ私だって女の子だし、こういう雰囲気のあるところは嫌いじゃないというかなんというか」

 

「ん?どういうことだい?」

 

「……、な、なんでもない。それよりほら、次のショーの場所取りしてくるから!」

 

 やけに慌てて向かっていったなぁ。ラブコメとかだったらきっとG11は顔を真っ赤にしてるんだろうけど、まあそんなことはないか。

 

 それに、416ちゃんの世話まで放棄していきやがった……。俺の手は二本しかないんだぞ……?ああ、ほら。取り合いが始まった……。

 


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