404小隊(チビ)は現実へと現れる【完結】   作:畑渚

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いろいろと大変な時期なので少しでも癒やしを……


第21話 こりゃ長引きそうだ

 ショッピングモールは、今日もやたらと人が集まっていた。夏休みのためか、特に子連れの客が多い。

 

 そして、そんな子連れの客の一組が、俺たちである。

 

「お兄ちゃん!あっちの店いこ!」

 

「お兄さん、あそこのパンケーキ……」

 

「今日の晩ごはんの食材……」

 

「わかったわかった!順番に回ろう?」

 

 いつもどおり9と45に手をひかれて、服の裾を416に掴まれている。

 

「……、G11ちゃん?」

 

 そういえば先程からG11の声を聞いていない気がする。きょろきょろとあたりを見回せば、ベンチに座り込んでいた。

 

「G11ちゃんはどこか行きたい店はある?」

 

「……」

 

 しかしG11は何も答えない。不思議に思っていると、9が走っていってうつむいている顔を覗き込んだ。

 

「お兄ちゃんダメみたい、完全に寝てる」

 

「G11ちゃん!起きてくれ!ここで寝ないで!?」

 

「ふぇっ?あっおはよう」

 

「おはようって……まったく、ほら行くよ」

 

「うん……ごめん」

 

 差し出した右手を、G11は控えめに握り返してくる。

 

「あー、お姉ちゃん私の場所~!」

 

「あっ9ちゃんごめんねすぐにどくから」

 

「えへへ、いいよ。そのかわりお姉ちゃんの右手は私のね!」

 

 そう言って9はG11の右手を掴む。つまりは4列横隊になったということだ。

 

「いや、横に幅を取りすぎだよ」

 

 つないでいた手を離して、G11の後ろにつく。しばらく俺とつないでいた左手を握ったり開いたりを繰り返した後、すこしムスっとした顔でこっちに振り向く。

 

「お兄さん、私も買いたいものがあるの」

 

「G11ちゃん?」

 

「来てくれるよね?」

 

「……、ハイ」

 

 なんとなく無言の圧力を感じて、そう答えてしまった。でもまだおやつの時間には時間があるし、食材の買い出しも荷物になるから最後でいいだろう。

 

「それでG11ちゃん、買いたいものって?」

 

「あれ」

 

 そういって指差した方向をたどる。

 

「あれって……あのバッグの店かい?」

 

「ううん、その隣」

 

「文房具屋か~」

 

「逆」

 

「……、まじで?」

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「お兄ちゃんこれどう?」

 

「ああうん、似合ってるよ」

 

「お兄さん……私にはどれがいいかな……」

 

「45ちゃんはそうだね、これとかどうかな」

 

「お兄さん、私これに決めた」

 

「416ちゃん?もう少し待ってね」

 

 気まずい。すごく気まずい。いつもどおり子供に囲まれているのはもう慣れたことなのだけれども、今の状況はすごくよろしくない。

 

 横を通り過ぎていった女子高生が、チラチラとこっちをみながらコソコソと話をしている。まあそうだろう。そんな子供を持つような年齢にも見えない男が、女児用の水着売り場にいるのだ。まだ子どもたちがしょっちゅう話しかけてくれるから助かっているけれど、もはや通報ものではと思い始めてる自分がいる。

 

「あのお兄さん」

 

「ああ良かったG11ちゃん!」

 

 この場を預けて退散しようと声の方向へ振り返る。

 振り返った俺は、そのままフリーズした。

 

「あーえっと……に、似合う?」

 

 服の上から、少し大胆な水着をあわせたG11がそこには立っていた。さすがに恥ずかしいのか、頬を赤らめている。

 

「あの……お兄さん?」

 

「はっ!ごめんごめん、似合ってると思うよ」

 

「じゃ、じゃあこれにする……」

 

 そのままレジに直行するG11を見送りつつも、子供たちの水着をかごにいれる。なんとか間に合った。

 

「ああ、これもお願いします」

 

 G11がお金を出すまえにかごを差し出して、会計をもつ。

 

「そんな、私の分は私が払うのに」

 

「これも必要経費でしょ。感謝は俺じゃなくて叔母さんや416ちゃんのお父さんにね」

 

 支払いを済ませて、袋詰めを待っている間に残金を確認する。さすがに足りなくなってきた。別行動をしてお金を引き出しにいったほうがいいかもしれない。

 

「お兄ちゃん!私が持つ!」

 

「そうかい?じゃあお願い」

 

 元気に立候補する9に袋を任せて、まだ申し訳無さそうにしているG11に多めにお金を渡す。

 

「まだいろいろ入用だと思うから先に買い物しててくれるかい?」

 

「えっ……?お兄さんは?」

 

「ちょっとお金をおろしてくるだけだよ」

 

「わ、わかった。任せて……」

 

 なんだか不安だ。そう思って416の方を見ると、やれやれと首を振りながら45と9の手を握った。

 

「416ちゃんも、任せたよ」

 

「お兄さん、早くもどってきてね」

 

「うん、すぐにね」

 

 そう言って皆が別の店に向かうのを見送る。確かここの一階にATMコーナーがあったはずである。階段を下ってしばらく歩く。

 

「げっ、まじか……」

 

 今日に限って、人だかりができている。そういえばと今日が休日であることを思い出す。子連れからご老人まで、多種多様な人がATMに列をなしていた。

 

「さすがに時間がかかりそうだ……」

 

 俺はG11に連絡をとってから、その列に並ぶ。しかし全然進まない。長引きそうだとスマホを眺めていると、天気予報が流れてくる。

 

「しばらくは晴れか……。いい川遊び日和になりそうだ」

 

 熱中症対策もしっかりしていかないといけないだろう。俺は買い物リストに、いくつか対策用品を加えてからスマホを閉じた。

 

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