404小隊(チビ)は現実へと現れる【完結】   作:畑渚

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残念ながら水着回はコロナウイルスの影響で次回へ延期となりました(ウイルス無関係)


第22話 我慢も身体に毒

「G11ちゃん、今どこだい?」

 

 ようやくお金を下ろしてから、電話をしてみる。どうやら水着売り場の近くにまだいるようだった。

 

「わかった、もう少ししたら向かうからそこにいてくれる?」

 

 返事を得てから、ため息をつく。

 

 

 今、俺のズボンは小人に掴まれていた。

 

 

「あの……、どうしたんだい?」

 

「お兄ちゃんだれ?」

 

 こっちが聞きたい。この少女、突然掴んできて離そうとしない。もちろん無理やり振り払うこともできるだろうが、それで泣かれたらどうしようもない。

 

「お母さんかお父さんは?」

 

「いな~い」

 

 デリケートな問題が発生した。なんでこんな地雷級の幼女から捕まってしまったんだ俺は。

 

 頭の中では、子供たち3人に振り回せるG11の幻影が助けを求めてきていた。

 

「よし、じゃあここに詳しいお姉さんがいるところにいこっか」

 

「ヤダ」

 

 うーーーーん?どうしろというのだろうか。迷子センターに押し付けようにも、この幼女はその場から動こうとしない。

 

「お兄ちゃん困ってるの?」

 

 そうだね君で困ってるよ。なんて言えない。

 

「私が助けになってあげる!」

 

 それはありがたい。じゃあぜひ迷子センターに行ってもらいたい。

 

 残念ながら今日は混雑してる。俺に暇があればこの子の保護者をみつけてもいいんだけども、難航しそうだ。

 それに、皆を待たせている。残念ながら暇もない。

 

「お兄ちゃんはさ、好きな人いる?」

 

「どうしたの唐突だね」

 

「いいから答えて!」

 

 好きな人……、好きというのがよくわからないけれど、いわゆる恋人候補ってことなのだろうか。

 

「いないならウチのおねえのお嫁さんにしてあげる!」

 

「うん、言うならばお婿さんだね。僕は男だよ」

 

「そんなこといいから!」

 

「いないと思うよ」

 

「よかった!早くおねえに会わせないと!」

 

 大変な家庭なんだろうなぁ。父も母もおらず、こんな小さい妹と姉だけ。懐に入ってるお金が自分のものだったら思わず渡してたくらいだ。

 

「おねえ!」

 

「もー!どこ行ってたの!」

 

 幼女が大声でそう呼ぶと、通路の奥からズンズンと速歩きで誰かが迫ってくる。

 

「おねえ!見つけた!」

 

「なにを?」

 

「お嫁さん!」

 

 口を開けて固まったまま、その女性は俺の方に視線を向ける。いや、そんな目で見ないでくれ。

 

「あれ、どこかで会ったことあるっけ?」

 

「ん?」

 

 女性がじーっと見てくるもんだから、思わず視線をズラした。

 

「わかんないや。それで、あたいの可愛い妹に何の用?」

 

「それはこっちのセリフなんですがね。まあお姉さんが見つかったみたいで良かったです」

 

「そうみたい……だね。迷惑かけてごめんね?」

 

「いえ、元気でいいじゃないですか」

 

「変なこと口走ったりしなかった?」

 

「うん……まあ大丈夫でした」

 

「ねえねえおねえ」

 

「もう、お嫁さんなんていうから驚いたじゃん」

 

「だって」

 

「だってもあさってもありません」

 

「むーっ!」

 

「ほら、行くよ!」

 

 ごめんねとペコペコしながら、女性は幼女を引きずっていった。まるで嵐のような姉妹だった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「あ、お兄さん」

 

「G11ちゃん、ごめん待たせたかな」

 

「うんにゃ、みんなまだ遊んでるし」

 

 子供たちは皆、おもちゃ売り場のぬいぐるみコーナーにかじりついていた。なんというか安定してわかりやすくて助かる。

 

「よし、そろそろ15時か」

 

 そう言ってみると、おそろしい勢いで3人ともこちらに振り向く。特に45なんかは、溢れんばかりの期待に満ちた目をしている。

 

「入り口付近にあったパンケーキ、食べにいく?」

 

 返事はここで語るまでもないだろう。

 

 

 数分後、頼んだパンケーキの大きさにあたふたしながらも夢中で頬張る子供3人プラスαをながめつつ、俺はコーヒーを啜るのだった。

 

「お兄さんはパンケーキよかったの?」

 

「ああ、まあ気になりはしたけど……」

 

 最初こそは勢いよく食べていた3人だったが、先程からあまり進んでいない。やはり子供からしたらここのパンケーキは大きかったようだった。

 

「なるほどね」

 

「G11ちゃんは良かったの?」

 

 G11ならきっと食べるだろうと思っていたんだが。甘いものも好きなほうだったはずだし。

 

「わ、私は今日はいいよ」

 

 そういいながらも、G11はチラリと水着のはいった袋を見た。なるほど、まあ女の子だし気にするのも仕方ないか。

 

「お兄ちゃん……」

 

「ん?9ちゃんどうした?」

 

「ごめん。お腹いっぱい……」

 

「ああ、いいよ。残りは俺がもらおうかな」

 

「ありがとう!」

 

 9から皿を受け取ると、45と416も恥ずかしそうにこちらを見る。

 

「二人もかい?」

 

「うん……」

 

「ごめんなさい」

 

「次からは食べる量を考えて注文するんだよ?」

 

 コクリと頷いたのを見て、二人からも皿をもらう。

 

「しっかし、3皿かー。少し多いかなぁ」

 

 少しわざとらしく隣を見れば、じっと皿の上のパンケーキを見ているG11がいる。

 

「G11ちゃん」

 

「あっうん何?」

 

「俺だけじゃ少し多いから手伝ってくれないか?」

 

「えっ」

 

「俺も食べ過ぎると晩ごはんが入らなくなるからさ、頼むよ」

 

「うん、しょうがいないなぁ~」

 

 そういいながらも、G11は満面の笑みでパンケーキを頬張るのであった。


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