404小隊(チビ)は現実へと現れる【完結】   作:畑渚

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第26話 泳ぐ寿司

 豪華な寿司と、それを入れる質素な器。自販機で買った緑茶に、青空の下。また特徴的な状況で俺たちは座り込んでいた。日陰の場所を確保できたからか、そこまで暑さも気にならない。

 

「おいしい~!」

 

 9ちゃんが頬を膨らませながら、お寿司を夢中になって食べている。他の3人も、口にこそでないが顔をほころばせながら箸を動かし続けている。

 

 カシュッ

 

 銀色に光る缶を、勢いよく開ける。辛口な喉越しが寿司を運ぶ手を助ける。旨い。回転寿司なんかでは考えられないくらいの暴力的な大きさのネタが、舌を蹂躙してくる。

 

「くーっ、たまらないね」

 

「お兄さん、随分と楽しそうだね」

 

「食べたいときに食べたいものを食べる。これ以上に楽しいことがあるかい?」

 

「こんなにテンションが高いお兄さん初めて見た……」

 

 G11ちゃんが何かつぶやくが、気にせずに次の寿司へと箸をのばす。意外と多めに買ったつもりだったが、あっという間に器を空にしてしまった。

 

「ねえお兄ちゃん」

 

「なんだい、9ちゃん」

 

「私、おかわりしたい」

 

「偶然だねぇ、俺もだ」

 

 くいくい、と服の裾を引っ張られる。その引っ張ってきた45ちゃんの方を見れば、どうやら彼女もまた、物足りなかったようだ。416ちゃんやG11ちゃんも同様。となればとる選択肢は一つだ。

 

「よし!じゃあもう一回、買いに行こうか!」

 

 そういって俺たちは、再び市場へと舞い戻った。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 第二陣を終えた俺たちは、膨れた腹をさすりながら近くの神社を観光してみることにした。食後の運動にはちょうどいい距離だった。

 

「えっと……お兄さん」

 

「ん?なんだい45ちゃん」

 

「これ……」

 

 そういって45ちゃんは、ウサギのポーチから単行本のようなものを取り出す。

 

「ああ、御朱印か。いいよ、行こうか」

 

 45ちゃんはコクリとうなずいて、それから俺の手を握って受付のほうへと引っ張っていく。45ちゃんがこうやって引っ張るなんて珍しい。

 

「あっ45姉!私も!」

 

 そういって空いているもう片方の手を9ちゃんが掴んでくる。またもや両手に姉妹を装備した俺は、犬に引きずられるソリのように引きずられかけながら受付へと向かうことになった。

 

「ねえお兄ちゃん、見てみて!」

 

 45ちゃんが受付の人に御朱印帳を渡している間、9ちゃんがすぐ側のお守りコーナーを指差す。

 

「これは……フグの形をしたお守り?珍しいね」

 

「なんだか有名なんだって。ねえ買ってもいい?」

 

「いいよ。どうせだから皆の分も買おうか」

 

 ちょうど5種類あるようだ。色と、それから効果も違うらしい。

 

「お兄ちゃん、おみくじもあるよ!」

 

「いいね、45ちゃんが帰ってきたら皆で引こうか」

 

 このあとむちゃくちゃおみくじを引いた。結果?そっと閉じて結んだとだけ……。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「このあと、どうしようか」

 

 昼の混雑を避けるために早めに到着したため、まだティータイムにも早いくらいだった。帰りの電車を調べていると、G11ちゃんが袖を引っ張ってくる。

 

「お兄さん、あそこ見て」

 

「ん?水族館か」

 

 どうやら、市場のすぐ側に水族館があるらしい。

 

「でも最近行っただろう?」

 

「でも水族館ごとに展示は違うし、何より……」

 

「気温が上がってきて暑いんだね……」

 

 G11ちゃんはコクリとうなずいた。

 

「どう?皆は水族館いきたい?」

 

「私は行きたい!」

 

「9が言うなら私も……」

 

「皆が行くなら」

 

 まあ大体想定通りの言葉だ。確かに日差しが辛くなってきたころだ。涼しいであろう水族館で時間を潰すのはいい案かもしれない。

 

「よし、じゃあ行ってみようか」

 

 いつも先に調べていくから、こうやって事前情報無しは初めてだ。なんとなくわくわくしてきた。

 

「楽しそうだねお兄ちゃん!」

 

「まあね。ほら、早く行こう!」

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 水族館の中は、案の定冷房が聞いていた。水音や壁の視覚効果も相まって、涼むには最適な空間である。

 

「っと、団体客もいるのか。はぐれないようにね」

 

「は~い!」

 

 近くの幼稚園か何かの団体客とかぶってしまったらしい。小さい子どもがたくさんいる。はぐれないように、45ちゃんと9ちゃんに、必ず2人で行動するように口を酸っぱく言い聞かせる。

 2人は仲良く手をつなぎながら、キョロキョロとしながら歩いていく。俺も少し後ろを歩きながら、張り巡らされた水槽に目を向ける。

 

 水族館一つ一つでコンセプトが違う。前に行ったところは自然を使用した展示がメインだったが、今回の水族館はいくつもの中規模な水槽で魅せるタイプだ。一つ一つの水槽に入っている魚が少ないので、じっくりと魚の種類が見やすい。

 

 だがしかし……立地上の問題が一つ。

 

「なあなあ、俺がおかしいのかな」

 

 たまたま隣にいた大学生くらいの男が、彼のとなりの友達に話しかけている。

 

「泳いでる魚、旨そうに見えるんだ」

 

 そう、市場のすぐ隣という性質上、俺たちの他にも寿司を食べたあとにここにきた客が多いのだ。先程まで口に運んでいた旨い魚が元気に泳いでいる姿を眺めるのは、すこし正気度が削れそうな状況な気がした。

 

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