背中で寝てしまっていた416ちゃんも、イルカのショーが始まる前には起きて、全員で見ることができた。
いつものように、9ちゃんははしゃぎながら、45ちゃんは黙ったまま食い入るように、416ちゃんは冷静そうで興味津々にイルカのショーを見ていた。
終わったのは、すっかり日暮れの時刻。海辺にある水族館が、夕焼けで赤く染まっていた。
「ねえお兄ちゃん見て!記念パネルだって!」
よくある写真スポットである。場所の名前と日付、それから顔をはめるパネルとがポツンと置かれている。
「写真撮ろ!ね?」
9ちゃんの一言で写真を撮ることにした。写真を撮ってくれそうな親切な人を探しつつ、俺はスマホをスリープモードから解除する。
「っと……マジか」
「どうしたんですか、お兄さん」
「いや、充電切れだ」
もう随分と酷使してきたから、寿命なのかもしれないな。とりあえずG11ちゃんので撮ってもらってから、後で送ってもらおう。
「お兄ちゃん!撮ってくれるって〜!」
「わかった。今行く」
スマホをポケットにしまって、パネルの方へと行く。顔をいれる穴には、身長の問題で俺と、それから本人の熱い要望で9ちゃんがつくことにした。
「行きますよー。はい、チーズ」
パシャリとカメラの音がする。夕日の位置のせいで俺だけ変な写りになったが、これはこれで面白いのでヨシとする。
「じゃあ、帰ろっか」
「うん!」
元気なのは9ちゃんくらいで、あとは少し眠そうな顔をしていた。無理もない。朝からこれだけ動いて、美味しいものをたらふく食べたんだ。帰りは少し遠くからタクシーで帰ろうと思いつつ、電車の時間を調べようとしてスマホを取り出す。
「お兄さん?」
「あ、そうだった」
416ちゃんに変な目で見られながらスマホをしまう。
「G11ちゃん、電車の時間調べてくれないかな。俺のスマホは今はただの文鎮だからさ」
「う……うん。えっと……ここをこうやって……えっと」
「違う、貸して」
「ああ416ちゃん」
「ここをこう……そしてこう。ほら」
「ありがとう。お兄さん、えっと次は3分後」
「うんうん、なるほどな」
3分後、3分後かぁ……。駅まで歩いて行って3分……
「無理だね。さらに次で」
「次はそのさらに15分後」
「ちなみにその次は?」
「夜までだいたい15分間隔であるみたい」
「よし、じゃあのんびりして行ってもいいな。せっかくだし、お土産なんかどうだい?」
「えっいいの!」
「まあ、なかなかここまで来ないからね」
「やったぁ!45姉!早く選ぼ!」
「9、もう引っ張らないで。ついて行くから」
「ああもう……待ってよ二人とも〜」
二人を追いかけてG11ちゃんが行ってしまい、その場にぽつんと416ちゃんと残されてしまった。
「416ちゃんは行かなくていいのかい?」
「私はもう……これがあるから」
そう言って見せてくれたのは、416ちゃんのスマホに映る先程の写真だ。
「いつのまに送ってもらったの……?」
「さっき、お姉さんのスマホを借りた時」
とんでもない早技である。
しかしせっかく皆がお土産を選んでいるんだし、このままではもったいない。
「じゃあ、家に帰ってから皆で食べるお菓子を買わないか?」
「……うん、わかったわ」
子供なんだからもう少し我儘を言ってもいいのにと思いながら、俺はその後の買い物中に416ちゃんが目を奪われていたスノードームをカゴに入れた。
=*=*=*=*=
「ただいま〜!」
「ふう、ようやく帰ってこれたな」
地味に時間がかかるので、夜中に帰ってきたとはいえ仮眠はバッチリである。
「お兄ちゃん!ゲームしよ、ゲーム!」
「まあ待て待て。まずは風呂に入ってからにしよう」
仮眠は取ったと言えど、目に見えない所に疲労は溜まっているものだ。十中八九寝落ちするだろう。というか俺でも怪しい。
「あっ私、着替えとってくる」
「私も」
G11ちゃんと416ちゃんはそれぞれの部屋に帰っていく。
「じゃあ先にお風呂はいってくるね。行こ、45姉!」
「うん。あ、お兄さんは入ってきちゃダメだよ?」
「入らねえよ」
三人も入ったら湯船が溢れるわ。
「冗談だよ」
「言われなくてもわかっとるわい!」
クスクスと笑いやがって。45ちゃんの今後の成長が心配である。
さて、無事風呂に行った二人のことは置いておいて、とりあえず遠出の後片付けをしよう。おっとそういえばスマホの充電が切れているんだった。
俺は布団脇の充電コードを引っ張ってきてつなぐ。画面がつくまでは少し時間がかかりそうだ。
ああ、魔力に抗えない。この少しの時間だけでも横になりたいという欲が抑えきれようか。いや、抑えきれるわけがない!
寝転がった俺の意識が途切れるまで、それほど時間はかからなかった。
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