仮面ライダートジノカブト   作:幻在

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天の道を行き、総てを司る男

刀使―――

 

霊験あらたかなる『御刀(おかたな)』を率いて、古より人々に災いをもたらす異形の存在たる『荒魂』の討伐を使命とする、国より正式に認められた『神薙ぎの巫女』たちの事である。

少女たちは、日々出現する荒魂を討っては払い、そして人々を守り続けてきた。

 

これは、そんな刀使として戦う、六人の少女の物語――――

 

 

 

 

 

 

この物語は、そんな彼女たちの物語に、ある一つの技術が組み込まれた、同じ世界線のように見えて、違う世界での物語――――

 

 

 

 

少女たちと共に戦う、『仮面ライダー』と呼ばれた男たちの戦いの物語でもある――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒然とする、会場にて。

衛藤可奈美と十条姫和は見た。

 

赤い、カブトムシのような装甲を身に纏った、一人の男を姿を。

 

「・・・・その名をしかと脳裏に刻め」

男は、片手をあげて、天を指さす。

「俺は、天の道を行き、(すべ)てを司る男――――」

その仕草に、可奈美は酷い既視感を覚えて、

 

「仮面ライダーカブトだ」

 

その男を見上げた―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は、二十四時間前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

一人の男が、プラスチックパックの中に入ったオムソバを食べていた。

「うん・・・・このソース・・・市販のもののはずなのにこの美味しさ・・・良い腕をしているな」

焼きそばに対してなにやら評価をしている様子で、じっくりとオムソバを味わっていた。

そんな男の後頭部を、ハリセンの一発が突き刺さる。

「ぬぐ!?」

「何一人で先に飯食ってんだお前は!?勝手にどっかに行くなんて何考えているんだ!?」

男を叩いた者、それはスーツを着た男だった。

しかし、叩かれた方は動じていない様子で立ち上がると、片手を天に向かって掲げた。

「おばあちゃんが行っていた、腹が減っては、いざという時に力が出ないと。だからこうして飯を食べているんだ」

「まーたそれか。まあ確かに腹が減ると動けなくなるのは分かるけどよ・・・だからといって先に食うな。せめて俺の所に持ってこいや」

「何故お前の所にもっていかなければならないんだ?」

「てっめ・・・これでも俺たちはチームだろ!?」

「ああ、そうだったな」

「そうだったなって、お前はどうしていつもいつもそんな軽いノリなんだァ!!!」

怒りが頂点に達して襲い掛かるスーツの男。だが、それを軽々と躱し、食べ終わったオムソバのプラスチックパックを捨てる。

「まあいい。そろそろいくぞ」

「ちっくしょ・・・分かったよ。お前の勘は当たるからな」

「ああ・・・・」

男は、天を見上げる。

「明日、必ず何か起こる・・・・俺はその為に準備し続けたんだ」

「おい、俺たちだろうが」

「そうだったな、赤城」

スーツの男『赤城(あかぎ)(あらた)』に、そう言い返す男。

 

 

彼の名は『天道(てんどう)(つかさ)』――――いずれ、この一年の物語に終止符を打つ者の一人である。

 

 

 

 

そしてもう一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうちゃーく!!」

鎌倉駅にて、そう両手を挙げてはしゃぐ紅白の制服を着込む一人の少女がいた。

「もう可奈美ちゃんったら」

その後ろからも、同じ制服を着た少女が出てくる。

まず、はしゃいでいる少女の名は『衛藤可奈美』。美濃関学院中等部二年であり、明日行われる『御前試合』の代表の一人である。

そして、もう一人の少女は可奈美と同じく二年であり、同じ代表の『柳瀬舞衣』という。

二人とも、相当な実力者であり、優秀な刀使である。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、おっきい!」

御前試合の行われる、折神家本家の大門を前にして、そう呟く可奈美。

「これが折神家・・・御刀の管理を、国から一任されている・・・」

折神家は、古きより荒魂と戦っている刀使の名家であり、その活躍が認められて、国からもその功績が認められている、刀使であるなら知らぬ者はいないという程大きな家である。

そんな家の前に立てば、誰もが一度は感動するだろう。

その最中、可奈美はふと、折神家の塀を睨みつけるように見る少女を見つけた。

黒髪の長い髪を持った、一人の少女を。

その制服の色は、暗い緑。

「あれは、確か平常学館の・・・」

舞衣がそのように呟く。それは実際その通りであり、その少女が身に纏っているのは、平常学館の制服である。そして、こんな日に来ているという事は、おそらく彼女も、可奈美達と同じ、代表なのだろうか。

唐突にその少女が歩き始める。

そこで、舞衣は背後から足音が聞こえてくるのに気付いた。振り向けば、そちらからは、白いコートを纏い、カウボーイハットのような帽子を被った青年が悠然を歩いてきていた。

(あの人は・・・?)

「あ、えっとこんにちは。貴方も明日の試合に・・・」

一方で、可奈美はその少女に話しかけるも、なぜか悉く無視されており、少女はそのまま可奈美達の横を通り抜ける。それと同時に、青年もそのさらに向こうから通り過ぎていこうとする。

その時、唐突に可奈美と少女の持つ御刀が、何か、リィィィン―――と共鳴するかのように鳴いた。

「「ッ!?」」

それに、二人の少女は驚き、慌てて自らの御刀に手をかける。

その様子に、通り過ぎようとしていた青年も足を止めて振り返る。

しばし、静寂がその場を支配する。だが、すぐに黒髪の少女は姿勢を正して、そのまま立ち去って行った。

それの後に、青年も去っていく。

その場に取り残されたのは、可奈美と舞衣の二人だけ。

「どうしたの?」

可奈美の行動に疑問を持つ舞衣であったが、当の本人も分からないのだから、言ってもしょうがない。

 

 

 

 

 

やがて、可奈美達がその場を離れる頃、先ほどの青年が、その後ろから見守っていた。

「・・・大きくなったな、可奈美」

帽子を外して、懐かしそうに、そう呟いた。

 

 

 

 

その翌日――――

「おおー、ここが御前試合の会場か」

「そんなに興奮するな。本来なら俺たちはここには入れないんだぞ」

六角の会場を見下ろし、赤城は興奮した様子で隣の天道にそう言う。

「ここに本当に姫和の奴が出るんかね・・・」

「ああ、俺の情報は外れない」

「本当に自身たっぷりに言うよなお前・・・」

「事実だからな」

きっぱり言う天道に苦笑を返す赤城。

その時、アナウンスが入る。

『平常学館、十条姫和』

「お、姫和だ」

「あれがお前の・・・」

「おう、自慢の妹分だ」

「ほう・・・お手並み拝見といこうか」

黒髪を背中の半ばまで伸ばし、鋭い眼光を見せる少女、平常学館中等部三年『十条姫和』。

彼女の試合は、速攻の一言に尽きた。

「速いな」

「へっへーん、なにせ俺の妹分だからな」

「ああ、『クロックアップ』にも対抗できるんじゃないか?」

「アイツならやりかねん・・・・」

何を想像したのか、身震いする赤城。

『美濃関学院、衛藤可奈美』

「お、次はお前の所だぞ」

「さて、あの日からどれほど強くなったのか、見させてもらおうか」

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼らは、様々な刀使の戦いを見送った。

巨大な御刀を持つ刀使、凄まじい斬撃を繰り出す刀使、きてれつな戦い方をする刀使などなど、それぞれが個性的な戦い方を見せてくれる。

だが、やはりというべきか最終的には、突出した強さを持つ衛藤可奈美と十条姫和が決勝に上がり、彼らは、予想通りの結果に、着々と、その準備を整えていた。

 

 

 

そして、迎えた決勝戦。

 

 

 

 

 

 

 

奥の檀上に、一人の女が、親衛隊を引き連れて現れる。

厳格な雰囲気を醸し出し、一切乱れぬ歩幅で歩み出てくるのは、二十年前に起きた相模湾岸大災害にて、出現した大荒魂を打ち倒し、英雄と呼ばれ、未だ当時の姿を保つ、折神家現当主『折神(おりがみ)(ゆかり)』である。その容貌は二十年前と変わらず、といったところだった。

今なお最強である彼女は、まさしく全ての刀使の頂点に君臨するべき存在だろう。

彼女の出現によって、会場は一気に静寂に包まれる。

その折神紫が、檀上の椅子に座る。

そして、その目の前のシルクの上に立つ二人の少女が、審判の号令の元に、己が刀を抜き放つ。

可奈美が抜いたのは、刀身が一般のものに比べてやや短い、『千鳥』と呼ばれる刀。

一方姫和が抜いたのは、穂先が両刃となっている特殊な小烏丸造りと呼ばれる構造をした刀『小烏丸』を抜く。

双方、構える。そして、審判のさらなる合図によって、二人の体は、この世界から隔絶される。

『写シ』と呼ばれる、刀使が自らの身を守るための術。仮令、その状態で重大なダメージを受けても、本来の体には一切痛みは無く、決して死ぬことはない。

そして、二人は、互いにむかって、それぞれの構えを取る。

可奈美は、どんな攻撃がこようとも対応するべく、刀を地面に向けて構える受けの構え。

一方姫和は、柄を顔に近付け、切っ先を相手に向け、突きを主とする攻めの構え。

双方、真逆の構えに場の空気は一気に張り詰める。

この場にいる者たちが、今か今かと、試合の開始を待つ。

 

 

 

その最中で、二人の男は、ある事を待ち構えていた。

 

 

 

 

審判が、開始の合図を出す。その次の瞬間―――

 

 

 

 

姫和の姿が消え、次に現れた時には、紫と刃を交えていた。

 

 

 

 

「何・・・!?」

「呼び動作もなしに三段階迅移を行うとは・・・それが、お前の『一の太刀』か」

「馬鹿な・・・・ぐあ!?」

直後、背後から、彼女の親衛隊の第一席である獅童真希の一撃が突き刺さり、写シが解かれてしまう。

「くあ・・・・」

さらに、先ほどの超高速の迅移によって、体力を大幅に消費、したためか、額に汗を滲ませて、膝をつく。

そのまま、真希の御刀が振り下ろされ、姫和に振り落とされる―――その直前、いつの間にかその場にやってきていた可奈美が真希の斬撃を千鳥をもって受け止めていた。

「なにッ!?」

「迅移!!」

可奈美が姫和にそう言い、それに頷くように、二人同時に迅移を行使、一気にその場から抜ける。

(このまま・・・!!)

このままいけば、逃げ切れる。可奈美の中には、そんな確信があった――――

 

だが、突如として目の前に、全身を褐色の装甲で身に纏った人物が立ちふさがった。

 

その姿は、どこかバッタに似ている。

 

「ここは通さん」

「くっ!」

声からして男。

可奈美は姫和に目配せすると、まず第一斬撃をそのまま目の前男に振り下ろす。

その一撃は横に躱されるも、すぐさま横から姫和の突きが迫る。しかしそれすら躱され、さらに第三撃、可奈美の振り下ろしが褐色装甲の男に向かって振り下ろされる。

だが、

「クロックアップ」

 

『CLOCK UP』

 

「ッ!?」

急激にゾッと背筋が凍るような感覚を覚えた可奈美は、攻撃を中止して、すぐさま姫和の前にその身を投げ出した。

そしてその直後―――可奈美の腹に、男の右拳が突き刺さっていた。

「がっ・・・!?」

「ぐっ・・・!?」

とてつもない衝撃。写シを張っていても伝わってくる激痛。

かつてない情報の衝撃が可奈美の脳髄を叩き、地面を転がす。

それと同時に、可奈美の写シさえも解除されてしまう。

「ぐ・・・げほっ・・・ごほっ・・・」

「ッ・・・おい・・・!」

腹の衝撃に耐え切れず、咳き込む可奈美。それを見て、思わず声をかける姫和。

(そんな・・・事が・・・!?)

体は反応できなかった。だが、可奈美の目は確かにとらえた。

 

男である筈の相手の体が、まるで迅移を使っているが如き速さで、その腰のバッタ型の機械のレバーらしき部分を操作して、可奈美ですら反応できない速度でパンチを放ったという事実を。

 

(ありえない・・・刀使でもない・・・・ましてや、御刀無しで、あんな動き・・・)

訳が分からず、腹の痛みに必死で耐える可奈美。

気付けば、褐色装甲の男が、可奈美たちに近付いてきている。

(まずい、逃げないと・・・でも・・・・!!)

動けない。先ほどのパンチのダメージがまだ残っていて、動く事が出来ない。

一方の姫和は、先ほどの迅移によって体力を消耗している。だから、仮令、可奈美を連れていくとしても、その為の体力がすでにない。

まさに、万事休す。

(ダメだ・・・私は・・・まだ・・・・やらなければならない事が・・・!!)

(ダメだ・・・こんな所で・・・捕まる訳には・・・絶対に・・・そんな・・・!!)

敵が近づく。ふと気づくと、別の場所から、同じような、緑色の装甲を身に纏った男が歩み寄ってきていた。

 

二人、いる。

 

その事実を知るだけでも、かなりの衝撃が二人を襲う。

(う・・そだ・・・やだ・・・いやだ・・・!!こんな所で・・・終わりたくない!)

(まだ・・・まだ、何も・・・してないのに・・・こんな所で・・・!!)

まだ、動けない。その間にも二人の男は迫ってくる。

「可奈美ちゃん!」

その様子から、観客席から舞衣が悲鳴のように可奈美の名を呼び、思わずその身を乗り出そうとする。

だが、その肩を唐突に誰かに掴まれる。

「え・・・」

振り返れば、そこには、スーツを着込んだ、謎の青年が微笑みながら立っていた。

「安心しろ。あいつらは助かる」

その言葉に青年は、騒動が起きている場所へと視線を移した。

それにつられて、舞衣も振り返ると、その瞬間、更なる乱入者がその姿を見せた。

 

 

 

 

 

「そろそろか」

その様子を、天道は遠目から見ていて、頃合いを見て手を天に向かって掲げた。

その時、どこからともなく、赤いカブトムシのような機械が飛来し、その手に収まる。

「変身」

そして、腰のベルトにそのカブトムシを―――『カブトゼクター』を装着する。

 

『HENSHIN』

 

そんな機械音声が響いたかと思うとそのベルトを中心に、天道の姿が変貌する。

その姿はさながらさなぎ。重厚な体型で、完全な重装甲。いかにも力強そうな姿へと変わる。

その姿へ変わると、天道は懐から『カブトクナイガン』を引き抜き、その銃口をバッタ男と可奈美たちの間に向け、発砲した。

火花が飛び散り、それに驚いたバッタ男は飛びすさり、一方の可奈美たちは思わず顔を庇う。

「くっ!?何者だ!?」

突然のことに動揺を隠せないバッタ男。

「俺か?」

その問いに天道は、腰のカブトゼクターの角『ゼクターホーン』を持ち上げる。すると、全身の装甲が、まるで分解前と言わんばかりに持ち上がる。

そして、天道は次に、その角を反対側へ倒す。

「キャストオフ」

 

『CAST OFF』

 

次の瞬間、装甲が弾け飛び、周囲一帯に飛び散る。

その速度は尋常ではなく、周囲の地面が抉れ、観客席にめり込み、そして破砕する。

これだけでかなりの大惨事だ。

 

『CHANGE BEETLE

 

その最中で、赤い装甲を身にまとった天道は、可奈美たちの前に立った。

「その名をしかと脳裏に刻め」

右拳の人差し指を天へと向け、名乗り出る。

「俺は、天の道を行き、全てを司る者・・・」

その姿は、あまりにも誇らしく、

 

「仮面ライダーカブトだ」

 

そして、あまりにも洗練されていた。

「仮面・・・ライダー・・・だと?貴様、それをどこで手に入れた?」

褐色色の装甲の男がドスを利かせて問いかけてくる。

「答える義理はない」

「そうか・・・ならここで散れ」

男が地面を蹴る。

そのままボクシングの構えで天道に殴りかかる。

しかし、その一撃目はかわし、続く二撃目も交わしたところで、アッパーが鋭い仰角から迫る。だが、それすら顔の位置を下げるだけでかわし、そのカウンターで男の脇腹に蹴りを入れる。

「ぐう!?」

思わぬ反撃数歩後ずさる男。

「今は時間がない。ここは引かせてもらうぞ」

「ッ!?待て!」

男が止めようとするが、それよりも早く天道が腰のボタンをタップ。

「クロックアップ」

 

『CLOCK UP』

 

電子音と共に、天道の姿が搔き消える。

それとほぼ同時に倒れていた可奈美たちの姿も消える。

「逃したか・・・!」

騒然とする会場の中、褐色の装甲を纏った男は悔しそうにそう呟く。

「瞬」

そこへ、緑色の装甲を纏った男が歩み寄る。

「ッ!兄貴、ごめん。取り逃がしちまった・・・」

「いや、いい。紫様から見逃せとのお達しがあった。気にするな」

「はあ・・・?」

その時、折神紫は、空を見上げていた。

「千鳥と小烏丸、まだ幼い二羽の鳥・・・そして、仮面ライダーカブトか・・・」

意味深げに、そう呟く紫。

「よしよし、上手くいったな」

その一方、赤城もまた、己が目的を持って動き出す。

 

 

それぞれの思惑が交錯する。

 

物語は動き始める。

 




次回『二人の距離』




天道(てんどう)(つかさ) 二十二歳
モデル『天道総司』

天道総司→天道司→天道司


赤城(あかぎ)(あらた) 二十二歳
モデル『加賀美新』

加賀美新→かがみあらた→ああいあらた→あかぎあらた→赤城新
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