仮面ライダートジノカブト   作:幻在

16 / 18
戦・闘・激・化

金属音が鳴り響く―――

エレンの蹴りが真希の顔面を狙うも腕によって阻まれ、その隙を薫が上段からの振り下ろしで追撃する。しかしそれるらも受け止められる。だが、押しているのは確かだ。

「このまま一気に・・・!」

「くっ!」

そこで、キックホッパーがサソードを蹴り飛ばして大きく引き離す。そのまま背を向けて背後からエレンたちを奇襲する。

「な!?」

踵落としがエレンの背を叩き、地面に叩きつける。

「エレン!ぐぅ!?」

すかさず直蹴りが薫の腹を打って吹き飛ばす。

「油断するな」

「すみません。助かりました、想さん」

「ふん・・・ッ!」

そこへサソードの打ち下ろしを足で防ぐキックホッパー。

「貴方の相手は俺だ」

「誰がお前の相手をすると言った?」

「何・・・!?」

キックホッパーがゼクターレバーを操作する。

 

『RIDER JUMP

 

「なッ!?うわぁああ!?」

いきなり強化された脚力で吹き飛ばされるサソード。その先には、寿々花と戦う沙耶香の姿が。

「沙耶香避けろぉ!」

「え!?」

突然飛んできたサソードに戸惑いを見せるもとりあえず避ける沙耶香。

「剣!?どうして・・・」

「そんな事より前!」

「はあ!」

「ッ!?」

寿々花の打ち下ろしを受け止める沙耶香。

その横から舞衣が斬りかかるも躱される。

「おい剣!お前なにやってんだ!」

「すみません!」

サソードがうまくキックホッパーを抑えきれていない。そのせいで刀使たちの戦いが劣勢に傾いている。

「無理もないな」

「なんだと!?」

ヘラクスの薙ぎ払いをかわすザビーだが、ヘラクスの言葉に思わず聞き返してしまう。

「想、あいつはな。俺たちライダーの中でもかなり上位に食い込む程の実力者だぜ?サソードも決して弱くないが・・・ありゃ、相手が悪かったな」

「ッ!」

次の瞬間、キックホッパーはサソードを蹴り飛ばしていた。

「ぐぁああ!?」

地面を転がるサソード。

「あれはもう決まりましたわね」

寿々花が、目の前の沙耶香と舞衣にそう言う。

「想さんは私たちの中でも結芽さんと大差無いほどの実力者。あの方が想さんに勝てる道理はありませんわ」

事実、寿々花は生身で戦う想の姿を見ている。ホッパーゼクターがなくても、御刀がなくても、彼は刀使に対して徒手空拳で戦え、そして勝てるほどの実力を持っている。

事実、寿々花は生身で真希と戦った彼が、真希に勝ったのを目の当たりにしたのだ。

だから、彼の勝利を確信している。

「貴方たちが、どれほどあの人を尊敬しているのかはどうでもいい」

だが、沙耶香はそんな寿々花に真正面から言い返す。

「だけどこれだけは言える」

切っ先を向けて、沙耶香は告げる。

「私は剣に一度も勝ったことはない」

その言葉と同時に、サソードが動く。

四つん這いの状態からの斬り上げを、紙一重で躱すキックホッパー。そこへカウンターを叩き込むためにシュートキックをサソードの顔面に向かって放つが、それを立ち上がりつつ躱すサソード。そして次の瞬間、キックホッパーの回し蹴りがサソードを打ち据える。その時―――

 

サソードの姿が、霞の如く消えた。

 

「なッ!?」

「ここだ」

声が聞こえたときには、サソードはすでにキックホッパーの背後にいて、

「ハアッ!!」

電光石火の如き斬撃が叩き込まれた。

「がはっ!?」

何が起きた?サソードは、一体、何をした?

「クロックアップ・・・!」

 

『CLOCK UP』

 

加速するキックホッパー。それと同時にサソードも加速する。

加速した時間の中、サソードとキックホッパーがぶつかる。

繰り出される蹴り。それらをサソードはサソードヤイバーをもって、防ぎきり、そして反撃の瞬間、加速したキックホッパーですら見えないほどの踏み込みでキックホッパーの懐に飛び込んだサソードはすれ違いざまにその胴に斬撃を薙ぎ払う。

「ぐあ!?」

 

『CLOCK OVER』

 

そこで、キックホッパーは理解する。

「見誤っていたのは俺の方か・・・・!」

サソードは、神木剣は長期決戦型。相手の攻撃を受け続け、見切り、そして反撃する事を得意とする。

実際は、初見殺しを喰らいやすいってだけなのだが、一度理解すれば、神木は本来の力を発揮する。

最初の一戦は負けても、その次は勝てる。

決闘には向かないタイプ。だが、ある程度見切ることが出来れば、神木は、本来の能力を発揮できる。

ここでキックホッパーは、サソードを改めて敵と認識。振るわれたサソードの斬撃を、蹴りで叩き落して反撃の後ろ回し蹴りを叩き込む。

「ぐぅ!?」

「オォオ!」

短い気合とともに、キックホッパーはサソードを攻め立てる。

 

 

その一方で、ドレイクとケタロスが激しくぶつかり合う。

「本来は近接戦を想定した作りではないのだが、よくここまで戦えるものだ」

「訓練したからな!」

「そうか」

拳と拳がぶつかり合う。ドレイクは銃を片手に、一方のケタロスはクナイを片手に持って戦う。

振り下ろされるクナイの一撃を銃で受け、蹴りを放って反撃する。

「お前たちは、折神紫が何をしようとしているのか、わかっているのか・・・!?」

「さあな。ただ俺に下された命令はただ一つ、お前たちのゼクターを回収する事だ」

「このままでは、日本が終わることになるんだぞ!」

「何・・・?」

組み合ったところでケタロスが聞き返す。

「どういう事だ?」

「何も聞いていないのか・・・!?」

バッと離れる二人。

「一体何の話をしている?」

「折神紫の事だ。お前たちは奴の正体がなんなのか知らないのか!?」

「折神紫が・・・それはどういう・・・」

突如、ドレイクの背後で轟音が響く。

振り返ってみれば、そこには、地面に倒れ、その上に真希が乗り、その真希の御刀『吠丸』の刃が押し込まれていた。

「エレンッ!」

思わず叫ぶドレイク。

「グゥ・・・アナタは、これだけの強さがありながら、何故荒魂を受け入れたのデスカ・・!?」

そのエレンの問いかけに、真希は静かに答える。

「・・・僕は自分が強いだなんて思った事は一度もないよ」

 

 

 

真希は、平城学館出身の刀使だ。その実力は、御前試合を二連覇するほどであり、周りからも絶賛されるほどだった。

だが―――

彼女の受け持つ隊では、常に厳しい出撃が相次いだ。

その度に、彼女以外の刀使は倒れ、真希はただ一人、先頭に立って戦った。

何度も、何度も、何度も、その刃を振って、振って、振り続けた。

だが、どれだけ荒魂を倒そうとも、敵はどんどん溢れ出てくる。

その度に、真希は実感した。

 

どんな光でも、やがては闇に呑まれてしまう。それは、この世の法則だと――――

 

だから真希は求めた。それは、希望だった。あの日、折神紫に敗北した日に、見たものは。

 

 

刃が押し込まれる。

「ガッ!?」

「膨大の闇に立ち向かい続ける・・・それには自らも闇ではいなくては・・・・」

それが、真希の導いた結論・・・・

「―――あなたたちならきっとお分かりになるでしょう?」

寿々花が、舞衣と沙耶香に問いかける。

「放っておいたら振り向きもせずに行ってしまう人・・・わたくしなどには、目もくれずに」

彼女の目が、赤銅色に輝く。

「ですから、わたくしはあの人には水をあけられたくはないのです」

地面を蹴って、彼女たちに襲い掛かる。

「その為ならばどんな手だって使いますわッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

迅移で、踏み込む。されどそれを折神紫は顔色一つ変えず、ましてやその場から一歩も動かずに、可奈美と姫和の連携を突き崩して見せる。

 

『CLOCK UP』

 

その合間をカブトとガタックがクロックアップで縫う。しかしそれすらも紫は対応して見せる。

S装備の打ち込みを片手で受け止め、ライダーの攻撃を片手でいなし、そこに仁王立ち、襲い掛かるもの全てに対応してみせる。

 

『CLOCK OVER』

 

「冗談だろ!?クロックアップをこんなに容易く対応するなんて!?」

「最強の刀使の名は伊達ではないという事か」

努めて冷静でいようとしているのだろうが、カブトも動揺を隠せていない。

「我が尖兵の鎧たるその装備・・・まずまずといったところか」

紫の口角がにやりと吊り上がる。

「楽しい・・・」

「何・・・!?」

「良い無聊(ぶりょう)の慰めになる」

なおも仁王立つ紫。

「母のやり残した務め。この私が果たす!」

姫和がそう叫ぶ。

「やってみろ」

「最後に聞く。お前は折神紫なのか?それとも、タギツヒメなのか?」

「話している余裕はあるのか?」

その言葉に、姫和はS装備の稼働時間を見る。

 

残り、二分二十秒――――

 

もうそれほど時間がない。

「可奈美、義兄さん、天道、全力で畳みかけるぞ!」

「うん!」

「おう!」

「・・・・ああ」

構える四人。

「我が『眼』は全てを見通す。お前たちの身体能力、秘めた力、思考・・・あらゆる可能性を見通し、そこから最良の一手を選択する・・・先ほどの問いに答えよう」

紫が―――否、その中の化け物が名乗りを上げる。

「我はタギツヒメ」

 

 

 

 

 

 

 

「ハァアアア!!」

横から薫が斬撃を振り下ろす。

「無駄な事を・・・」

 

それに対応するために、真希がエレンから御刀を引き抜こうとする。

「本当にそうでしょうカ?」

「何・・・?」

しかし、それよりも先に、エレンは全身に全力の金剛身を発動する。

するとどうだ?体が鋼のように硬くなった体から、御刀が抜けなくなる。

「な!?」

エレンの使える金剛身は最大の五段階。その強度はダイヤモンドすら凌ぐ。

「この、離せ!」

Just kidding(御冗談を)

「キエェェエエエエ!!!」

真希に薫の一撃が降り注ぐ。

その一方、

「ハァアア!」

寿々花の一撃を受け止める沙耶香。しかし一旦、腰をぐっと腰を落として、次の瞬間、寿々花の剣を真上に弾くように振り上げる。

そして、がら空きになった寿々花の胴に向かって、舞衣の居合切りが炸裂する。

「ぐぅ!?」

「わからないと言ったら嘘になります」

膝をつく寿々花に、舞衣は告げる。

「でも私は、私にできる事、きっと分かりましたから」

「真希、寿々花・・・!」

戦況が傾いてきている。その事に、キックホッパーは思わず二人の名を呼んでしまう。

だが、その次の瞬間、境内の壁が吹き飛ぶ。

『!?』

そこから現れたのは―――金と黒の影。

「あれは・・・!?」

「黒崎か・・!」

コーカサスとダークカブト。

二人のライダーが、この場に乱入してきたのだ。

「ぬぅうん!!」

コーカサスの蹴りがダークカブトを狙うが、それをかわして、ダークカブトはその脇腹に拳を叩き込もうとする。しかし地面に置いた足で飛んでその一撃をかわし、着地した瞬間ダークカブトに突進、ラリアットをかけるも躱し、ダークカブトは振り返ったコーカサスに拳を叩き込もうとする。しかし、その拳をコーカサスは受け止める。

「中々やりますね。しかし、どうにも貴方は満身創痍のようだ」

「ハア・・・ハア・・・」

事実、ダークカブトは、キックホッパーから喰らったライダーキックのダメージがまだ残っている。

「そんな体で、何故そこまでやるのです?」

「ハア・・・ハア・・・ここがどこなのか、僕は知らないし・・・一体今がいつなのかもわからない・・・相模湾岸の大荒魂がどうなったのかもわからない・・・でも、今やるべきことだけは、分かるんだ・・・!」

ダークカブトはコーカサスに言い放つ。

「今の僕のやるべきことは、お前を倒すことだ・・・!」

「ほざきなさい。どの道貴方に勝利などありえませんよ」

「そんなの・・・・ッづァ!?」

突然、ダークカブトが頭を抑えて数歩下がる。

「え・・・・!?」

突然のダークカブトの異変に、舞衣が気付き、困惑する。

「ぐあ・・・あぁ・・・!?」

「貴方も何度か経験している筈です。そのゼクターの装甲には珠鋼が使用されている。それを使用すれば精神状態は不安定になり、暴走状態に陥る。そして二十年前ハイパーゼクターを使う事によってその暴走のタガが外れてしまった。それが、一時的に貴方の自我を奪っていたのです。ですが安心してください。すぐに楽になりますからねぇ!」

コーカサスの蹴りが膝をつき、頭を抑えてうずくまるダークカブトの頭めがけて迫る。

「舞衣!?」

だが、その直前に、舞衣の斬撃がコーカサスを襲う。

「やぁ!」

「ぬぅ!?」

不意打ちのためか対応できず、蹴りを繰り出した足に直撃した刃はそのまま蹴りの機動を反らして直撃を回避、そのままコーカサスとダークカブトの間に入る。

「小娘・・・」

「この人はやらせません!」

直後、

 

『CLOCK UP』

 

コーカサスの姿が消えたかと思えば、舞衣は紙吹雪のように吹き飛び、続く追撃で地面に叩きつけられる。

「かはっ・・・」

「舞衣!」

思わず助けに入ろうとした沙耶香だったが、すぐさま加速したコーカサスによって弾き飛ばされてしまう。

 

『CLOCK OVER』

 

そしてクロックアップが終わるのと同時に、コーカサスは地面に倒れ伏す舞衣を踏みつける。

「刀使風情が、よくも私に歯向かおうと思いましたね。貴方程度の実力では、傷など一つもつけることなど敵わない。実力が足りてないくせに出しゃばらないでほしいですね」

「くあぁあ!?」

踏みつける足に力を込めるコーカサス。

その圧力に悲鳴をあげる舞衣。

舞衣は、叩きつけられた衝撃で写シが剥がされている状態だ。だから、身体へのダメージも、生身の体にダイレクトに通ってしまう。

「舞衣・・・」

「あのままでは、本当に死んで・・・!」

沙耶香だけでなく、寿々花も信じられないとでもいうような表情でコーカサスの行為を見ていた。

 

その時、突如として空から何かが降ってくる。

 

それは、黒い、雪のようなもの――――

「これは・・・」

「雪か?こんな時期に?・・・ってぼけてる場合じゃなさそうだな」

その危険性に、ケタロスとヘラクスが気付く。

ハラハラと降ってくるその黒い雪は、地面に付着すると、周囲に同じように落ちた黒い雪と結合、増加、()()()()()()()する。

巨大になったそれを、彼らは知っていた。

「荒魂だ!」

そう、黒い雪がそれぞれ、大きな荒魂へと変貌したのだ。

「くそっ!次から次へと!」

しかしそれにすぐさま対応できる彼らはまさしく流石と言えようか。

薫が大刀を振り回し、沙耶香が刃を振り下ろし、ドレイクが銃撃し、ザビーが殴り飛ばして、サソードが斬る。

ケタロスやヘラクス、キックホッパーもそれに続く。だが、寿々花と真希の動きがいささか鈍い。

「なんだ・・・これは・・・!?」

「折神紫に聞かされていないのか親衛隊!」

「何・・・!?」

その時、コーカサスが呟く。

「ついに始まりましたか」

「貴方は・・・何か知っているんですの!?」

荒魂を切り払いつつ、そう聞く寿々花に、コーカサスは律儀に答える。

「ええ。これは貴方たちの敬愛する折神紫がやろうとしていた事ですよ。隠世の扉を開き、二十年前の大災厄を再現する。それこそが、折神紫の目的ですよ」

「そんな・・・紫様・・・!!」

真希は、信じられないとでもいうようにそう呟く。その時、背後から一匹の荒魂が真希に襲い掛かる。その荒魂を、キックホッパーが蹴り飛ばす。

「ぼーっとするな真希!死にたいのか!」

「想さん・・・」

「考えるのはあとにしろ!今はこの場をどうやって切り抜けるのかを考えろ!」

「わ、分かりました・・・!」

荒魂に対応に追われる―――

 

 

 

 

 

折神紫との戦いは熾烈を極める。

「ハア!」

カブトの蹴りを受け止め、反撃の一手、されどそこへガタックの拳が飛ぶも最小限の動きで躱される。そのガタックの体を死角に可奈美が飛び込み刀を弾こうと試みるが防がれ、そこへ飛び込んできた姫和の一撃を受け止める。

そこから続く連携すらも彼女は見切り、どれほど鋭い攻撃を繰り出そうとも躱され、重い一撃をかまそうともしても悉くいなされる。

「ハア!」

突進、その過程で二段、三段へと加速。そうして不可視となった姫和の弾丸迅移が紫に迫るがそれを悉く見切った紫は、その胸に刃を突き立てる。

「うぐ!?」

「姫和!」

 

『CLOCK UP』

 

加速したガタックが倒れゆく姫和の体を抱き抱えて後退、それにカブトと可奈美も続く。

「姫和、大丈夫か?」

「ああ・・・だが、何故、奴は今の一撃を・・・・」

「奴はありとあらゆる可能性が見えると言っていた。おそらく未来視。奴は、数々の可能性の未来を見て、俺たちの動きに対応しているんじゃないのか?」

どうすればその一撃をいなせるか、どうやればその攻撃をかわせるか、そして、どう成せば敵を沈める事が出来るか、全てが見える。

「んだよそれは、チートじゃねえか」

「そうか、あの時私の一の太刀を受けられたのは・・・」

「そう、全て見えていた」

紫がそう告げる。

「殺す気ならば容易にできた。だがあえて解き放った。結果お前が全ての糸を手繰り寄せ、舞草どもは壊滅に至った。そして今、殺される為に舞い戻ってきた・・・」

「貴様ぁ・・・っ!?」

『バッテリー残量ゼロ。機能停止、強制パージします』

姫和が怒りのままに突っ込もうとするが、その直前でS装備が稼働限界を迎える。

それは可奈美も同じだった。

「S装備が・・・!」

「・・・・」

「くっ・・・」

それでも姫和は構わないとばかりに突っ込もうとする。だが、そこでカブトが手でせいしてきた。

「天道・・・?」

「俺に考えがある。そこで待っていろ」

カブトが単身で紫に突っ込む。それに対して紫は迎え撃つ構えをとる。

そして、カブトが右手にもったクナイガンを振りかぶって―――そこで止めた。

「「「ッ!?」」」

突然のカブトの静止に、それを見ていた全員が驚く。それは、紫も同じようで、その目を見開いていた。

カブトは、クナイを右の逆手に後ろに大きく振りかぶっており、左手はフルスロットルを押す手前で止めている。さらに、その態勢からなら、蹴りも放つ事も可能。

クナイによる薙ぎ払い、後ろ脚による蹴り、フルスロットルに左手を伸ばしているが、その気になればそこから拳を放つ事もできる。最低でも、三つ、攻撃が選べる。

だが、そこで止まった。それはなぜか。

そして、紫も攻撃しない。

構えを変えて、右手を真上に、左手を突き付けるかのような構えをとる。

そのまま、静止する両者。

(何をしているんだ・・・何故攻撃しない・・・?)

その天道の行動に、姫和は困惑する。

だが、可奈美は違った。

(可能性・・・見える・・・)

ふと、紫の目が光ったと思ったらカブトが左拳を突き出してきた。

それを紫は右の刃で打ち下ろして反撃の左を繰り出す。

その左を右のクナイで弾き飛ばす。そこでまた膠着。両者互いに動かない。

(そうか!)

そこで可奈美は気付いた。

それとほぼ同時に、カブトが動いて、それに紫が対応。カブトの繰り出す攻撃は全て叩き下ろされ、態勢を逆に崩し、止めの一撃をカブトに叩き込もうとする。しかし、そこで可奈美の横やりが入り、紫の斬撃を弾き飛ばす。

(やっぱり、今のは()()()()()!)

ここで、可奈美は紫の未来視『龍眼(りゅうがん)』のからくりに気付いた。そして、その弱点すらも見破った。

反撃に一撃をもらって写シを剥がされるも、可奈美は理解する。

 

防御に徹すれば、可能性は数えきれない程に増える。

 

攻撃するなら、意思が介入し、その可能性はある程度絞り込めてしまう。しかし、逆に向こうから攻撃するとなると、どのような攻撃をすればいいのかわからず、ありとあらゆる可能性が見えてしまい、処理しきれないのだ。

そして、向こうから攻撃する場合、どのように対応されるかなどわからない。だから可奈美の攻撃には反応できなかったのだ。

それが、龍眼の弱点。

「ハア!」

姫和が可奈美のカバーに入る。

どうにか紫を押し込もうと攻撃を繰り出すも、全ていなされる。

「可奈美、構えろ」

「うん!」

カブトがクナイガンをアックスモードに切り替える。

「赤城、十条のカバーに」

「言われなくてもわかってるっつの!」

刀を弾かれて、そこへ刃が叩き込まれる前に、ガタックがその一撃を左のマイナスカリバーで弾き飛ばす。

そこで、カブトが紫の背後からアックスを掲げてアバランチスラッシュを叩きつける。だが、その一撃は一歩下がるだけで躱され、その床が砕け散る。そのカブトに向かって、紫が、左手の剣を突き刺そうとする。

その刃が、カブトの首の付け根当たりに突き刺さる、その直前――――

「プットオン」

 

『PUT ON』

 

一瞬で装甲を装着して、その刃を防ぐ。それとほぼ同時に―――可奈美の刃が紫の肩を貫いた。

自分から攻撃する場合、その可能性は無限に広がる。

だから、その隙をついたのだ。カブトが囮となることで、可奈美が攻撃を届かせる可能性を視えなくするために。

そして、その目論見は成功した。

すぐさま下がる四人。

「・・・なるほど、この器ではこれ以上の演算は難しいようだ。だが・・・!?」

ふと、紫の右肩がぐずぐずと崩れ始める。

それを見た紫は、すぐさま可奈美の持つ千鳥を見る。

(千鳥・・・!)

紫は、すぐさま右腕を斬り落とす。

「千鳥と小烏丸・・・藤原美奈都と柊篝と同じく、現世に在らざるもの・・・」

そして写シを解除して、ダメージを無かったことにする。

「我と同質の存在・・・」

そして再び写シを張る。

「なぜその可能性が見えなかった・・・」

そこで、紫は――――否、

「そうか・・・紫・・・!」

突如として頭を抑える紫。そして、苦しそうにうめき声をあげる中、()()が叫ぶ。

「―――討てッ!」

「え!?」

「何・・!?」

彼女が――――()()()が叫ぶ。

「その御刀で、私を討て――――!」

次の瞬間、紫が悲鳴を挙げるとともに彼女の髪が逆立ち、その隙間から、ぎょろりとした目が覗いてくる。

それと同時に、可奈美と姫和に、なんとも言えぬ違和感が襲う。

「これは、あの時と同じ・・・!」

それらが形を成し、そして、異形を作り出す。

それは、まさしく、荒魂と大差ないほどの存在だった。

「・・・お前ら」

カブトが、呟く。

「気を引き締めろ」

その、紫の頭上に存在する異形の手には、紫の持つものと同じ御刀が握られていた。

そして次の瞬間、恐ろしい速度で異形の腕が振るわれた。

「キャストオフ!」

 

『CAST OFF』

『CHANGE BEETLE

 

カブトがすぐさま装甲を吹き飛ばし、第一陣を防ぐ。だがすぐさま第二陣が彼らを襲う。

「「クロックアップ!!」」

 

『CLOCK UP』

 

カブトとガタックは間一髪、刀使の迅移よりも遥かに速いクロックアップで躱す事が出来たが、姫和と可奈美はその攻撃をもろに喰らって吹き飛ばされる。

「ッ!?可奈美!」

「姫和・・・うおあ!?」

助けに行こうにも、異形の腕の速度が異常に速く、クロックアップした彼らにも迫る速度で振るわれるのでたまったものではない。

そして、その威力も凄まじい。

連続で変則的に振るわれる異形の斬撃を、カブトとガタックは必至に潜り抜ける。

だが、その最中で、異形の視線が、倒れ伏す姫和と可奈美だという事に気付いた。

「まずいっ・・・!」

すぐさま、フルスロットルを、カブトは急いで順番に押し、ガタックはとにかく連打する。

 

『ONE TWO THREE』

 

そしてゼクターホーンを一旦戻し、それとほぼ同時に異形がその腕を大きく振り上げる。

「「ライダーキックッ!!」」

 

『RIDER KICK

 

『RIDER KICK

 

ゼクター内で生成、増幅されたタキオン粒子が迸る。そして、加速した時間の中、異形の手が振り下ろされる。

それに対して、カブトは飛び上がって飛び蹴りを、ガタックは延髄蹴りを繰り出してその一撃を正面から迎え撃つ。

衝突、二つの衝撃。迸った衝撃波はその部屋に轟き、壁などにひびを入れて、強烈な風圧を巻き起こす。

ライダーキックを喰らった異形の腕は吹き飛ばされ、その一方、カブトとガタックは吹き飛ばされ、変身が解除されてしまう。

地面を転がり、倒れ伏す、天道と赤城。

「くっそ・・・バケモンかよ・・・」

「いや・・・文字通りの化け物だろうな・・・」

なおも異形は腕をまた生やして進撃してくる。

「やばい・・・!」

このままでは、次が来る。今、変身を解除されてしまった天道と赤城では対応できない。

そして、姫和と可奈美は、なおも気絶している。

今、可奈美は部屋の奥に叩きつけられて気絶している。その一方で、姫和は地面に倒れ伏している。

そして、その距離は、姫和が一番、異形に近い。

このままでは、姫和が殺される。

すぐに、助けに行かなければ、殺されてしまう。

だが、怪物は無慈悲にも、姫和を殺すべく、その刃を振り上げる。

「姫和ぃぃいいい!!」

赤城の絶叫とともに、刃が振り下ろされる。

 

 

その直前、異形の振り下ろした刃が全て弾き飛ばされる。

 

 

「「ッ!?」」

その姿を、天道と赤城は見た。

それは、沙耶香に舞衣、そしてザビーとドレイクだった。。

「お前ら・・・」

「遅れてすまねえ!ちょいと手間取っちまった!」

「あとは任せろ」

「た、助かったのか・・・」

ザビーとドレイクの言葉に、赤城は思わず安堵の息を漏らす。

その時、天道は見た。

舞衣の目尻が、濡れている事を――――




次回『皐月夜見は高津雪那を守るのは何故か』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。