仮面ライダートジノカブト   作:幻在

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皐月夜見が高津雪那を守るのは何故か

折神紫が異形としての姿を現す数分前。

 

折神家の境内にて、コーカサスがその場にいる者たちに、紫の行為の暴露した時だ。

出現した荒魂の対応に追われる中、沙耶香とサソードは舞衣を踏みつけるコーカサスと対峙していた。

「舞衣から離れろ・・・!」

「であるならば力付くでやってみなさい」

「なら!」

サソードが突っ込み、そのあとに沙耶香が続く。すでに沙耶香のS装備の稼働時間は限界を超えてパージされている。

サソードの横薙ぎを放とうとするも、それよりも早く繰り出した右足で振るわれる直前の肘に攻撃を当てて威力を殺し、タイミングをずらす。

「あぁあ!?」

その時、軸足には舞衣が踏みつけられているためにコーカサスの全体重が舞衣にかかり、さらに衝撃すら伝わってしまう。

「っ!?」

それにサソードは思わず攻撃の手を止める。

そこでコーカサスが飛び上がり、続く軸足により蹴りでサソードを蹴り飛ばす。

「ぐぅ!?」

舞衣から離れたところを沙耶香が回収するために迅移で突っ走る。が、その沙耶香に向かってコーカサスは踵落としを繰り出し、地面に叩きつける。

「くぅ・・・!?」

「その程度の実力では、私には敵いませんよ」

「沙耶香ちゃん・・・!」

地面に叩きつけられた沙耶香。コーカサスは今度は沙耶香を足蹴にする。

「沙耶香ァ!」

サソードがサソードヤイバーを掲げてコーカサスに斬りかかるも、その一撃を今度は素手で受け止められる。

「な・・・!?」

「ですから、貴方程度の実力では、私には敵わないと、そう言ってるでしょう!」

コーカサスの拳がサソードの顔面を狙い撃ち、怯んだところで、腹、胸、最後に胴を蹴り飛ばす。

「ぐあ!?」

「貴方は動きに激しい緩急をつけることで、残像を生み出すことが得意のようですが、私には通用しません。爪先の向きによって残像が現れる場所など用意に予測できます」

「そんな事が・・・!?」

サソードの体技、それをいともたやすく見破られた。その事に、サソードは動揺を隠せない。

「そろそろ、貴方たちを始末させてもらいます」

コーカサスがそう呟き、地面に倒れるサソードに近付く。

その時、どこからともなくコーカサスに向かって銃撃が降り注ぐ。

「「「!?」」」

その銃撃を正面から喰らうコーカサスだが、纏っていた装甲のおかげで大事を防ぐ。

「・・・何故邪魔をするんです?」

一瞬、ドレイクからの援護かと思ったが違った。コーカサスを銃撃したのは、なんとケタロスだったのだ。

「貴様・・・折神紫が何をしようとしていたのか知っていたのか?」

「ええ。ああ、そうでした。貴方たちには聞かされていないんでしたね」

コーカサスが嘲笑うようにケタロスにそう言った。

「・・・俺は今まで、日本の治安維持のためにゼクトに尽くしてきた・・・」

ケタロスがガンモードにしたクナイガンからグリップ部分を引き抜いて、クナイモードに切り替える。

「だが、今の惨状は一体なんだ?折神紫を守ることがこの国の平和につながるのではなかったのか?折神紫に敵対する勢力を潰せば平穏は訪れるのではなかったのか?」

クナイを逆手にもって、怒りを孕んだ声でケタロスは言い放つ。

「俺の目的は、日本の平和。それを乱すものは全て潰す・・・そう、それがたとえ、今まで尽くしてきたゼクトだとしてもなァ!」

ケタロスがコーカサスに斬りかかる。

「ふん」

振るわれたクナイの一撃を、腕を抑える事で防ぎ、その腹に反対の拳を打ち込む。それによろめいたケタロスに追撃。圧倒的実力差があるのか、ケタロスがどんどん押されていく。

「ッ!?隊長!?」

目の前の荒魂を駆除したところでヘラクスがケタロスがやられている事に気付く。

だが、荒魂が次々と出てくるために、助けに入る事が出来ない。

それほどまでに、コーカサスの力が圧倒的なのだ。

「くぅ・・・」

どうにか立ち上がる舞衣だが、体に残るダメージが意外に大きい。

だが、それよりも気になることが、未だうめき声をあげて蹲っているダークカブトの事だ。

「だ、大丈夫ですか・・・?」

よろよろとダークカブトに近寄る舞衣。だが、ある程度近付いた瞬間、ダークカブトが舞衣に飛び掛かった。

「うがぁぁぁああぁああ!!」

「きゃ!?」

突然の事に反応できず、御刀を取り落としてしまう。

ダークカブトはそのまま舞衣の上に覆いかぶさり、その首を片手で締め上げる。

「かっ・・・はっ・・・!」

「舞衣!」

「柳瀬さん!」

突然のダークカブトの行動、舞衣の危機を感じ取った沙耶香とサソードが助けに入ろうと飛び出そうとするが、コーカサスから受けたダメージがまだ残っているのか、うまく走ることはおろか、立つこともままならない。

「がぁぁぁああ・・・!!!」

呻き声のような咆哮を挙げて、ダークカブトが舞衣の首をさらに締め上げる。そのまま行けば、舞衣の首が折られてしまうほど、強く、強く締め上げる。

「舞衣・・・!」

沙耶香が、舞衣の名を呼ぶ。

しかし、その間にもダークカブトは首を絞める力を挙げていく。

このままでは、舞衣は死んでしまう。

「あぁぁぁぁああああぁぁぁああぁあああ!!!」

おおよそ、人のものとは思えない叫びが、ダークカブトから発せられる。完全な暴走状態。まともな人間の思考が残っているのは思えない。そして、人間を襲うようなその習性は、あまりにも荒魂に似ていた。

ダークカブトが、舞衣の首の骨が折れるほどの力を、入れる。

 

その手前で。

 

「・・・・だい・・・じょう・・・ぶ・・・」

舞衣が、苦し紛れにそう呟いた。そして、片手を、仮面に覆われた頬に添えた。

「こわく・・・ない・・・よ・・・こわく・・・ない・・・・だから・・・・そんな・・・に・・・くるしむ・・・こと・・・ない・・・から・・・」

小さく、紡がれた声。首を絞められ、意識が朦朧としているはずなのに、舞衣は、ダークカブトに向かって、そう囁いた。

それに、ダークカブトは―――舞衣の首からその手を離した。

「う・・・が・・・・あ・・・・」

「う・・・ゲホッ、ゴホッ!」

突然、気道が確保されたからか激しくせき込む舞衣。

一方のダークカブトは、まるで狼狽えるかのように舞衣から離れ、そして次に頭を抑える。

「う・・・がぁあ・・・あ・・・!!!」

何かが、目の前の少女を殺せと強要してくる。人間を襲え。人を憎め。決して許すな。そんな命令のような強制力のある言葉が、次から次へと脳内を駆け巡る。

だが、ダークカブトはそれを必死に抑えつける。

(黙れ・・・僕は・・・絶対に・・・この子を殺したりはない・・・・!!)

それでもなお、深淵から聞こえてくるかのような声はダークカブトを蝕む。

このままでは、また意識を塗り潰されて彼女を襲ってしまう。

そうならないために、ノロに侵食されている自分にできる事、それは――――

「ぐあ!?」

ケタロスがコーカサスに殴り飛ばされて地面に倒れる。

「残念だよ大和。君のような優秀なライダーがいなくなる事は心苦しい。だが、ゼクトの命令は絶対。ここで散り給え」

コーカサスが自身のコーカサスゼクターに手を伸ばす。

「ハア!」

「ぬお!?」

だが、そこでダークカブトが妨害に入る。それに驚いたコーカサスはすかさず距離をとる。

「ハア・・・ハア・・・ぐぅ!?」

頭を抑えて、膝をつくダークカブト。

「おい、貴様・・・」

「くぅ・・・・僕が、隙を作るから、その隙にあの紫と黄色のライダーで止めを頼む」

「何・・・・?」

ケタロスが聞き返す前に立ち上がったダークカブトはコーカサスに向かって駆け出す。

「らぁッ!」

「チッ!しつこいですよ!」

「悪いけど、結構諦めが悪い方でね!」

居合の如き素早い拳打でコーカサスを牽制しつつ、ダークカブトはコーカサスを追い詰めていく。

だが、

「確かに貴方は強い。しかし、あの時のような鋭さはすでに失われている!」

「ぐぅ!?」

足を横から蹴られて、膝をつくダークカブト。

「ああ!」

舞衣が思わず助けに行こうとする。

「来るな!」

「ッ・・・!?」

だが、それをダークカブトは怒鳴って止める。それを聞いた舞衣は思わず竦みあがって止まってしまう。

それほどまでに、ダークカブトの叫びが大きく、そして凄まじい気迫があったから。

「愛と共に、散り給え」

カブティックゼクターを九十度回転させる。

「ライダーキック」

 

『RIDER BEET

 

ゼクター内で増幅されたタキオン粒子が装甲を駆け巡り、コーカサスのカブトホーンを駆け巡り、右足に収束する。

「あ・・・」

舞衣が、声を漏らす。何故なら、その時、ダークカブトが舞衣の方を見た気がしたからだ。

次の瞬間、立ち上がって反撃を狙ったダークカブトの腹に、コーカサスのミドルキックが炸裂する。

「がぁぁあぁあああ!?」

絶叫、そして、ダークカブトの体が宙を舞う。凄まじい勢いで飛んで行ったダークカブトは、塀の壁を砕き貫いて、その奥に消えていく。

「ああ・・・!!」

舞衣が、力が抜けるように膝から崩れ落ちる。

「ッッッ・・・くそぉぉぉお!!!」

そして、サソードが絶叫して、その手の中にあるサソードヤイバーに装着されたサソードゼクターの尾『ゼクターニードル』を押し込む。

「ライダースラッシュッ!!」

 

『RIDER SLASH

 

チャージアップされたエネルギーがポイズンブラッドなる物質と混合、光子を発生。その光子を纏った刃と共に、サソードは蹴りを放ったばかりのコーカサスに一気に接近する。

「無駄です」

だが、コーカサスの対応が速い。すぐに態勢を立て直したコーカサスはサソードのライダースラッシュを真正面から迎え撃つ。

だが――――

 

突如として四方に巨大な光弾が出現し、それらが一気にコーカサスに殺到する。

 

「なッ!?ぐあぁぁぁあああ!?」

その四発全てを喰らったコーカサス。

 

『CLOCK OVER』

 

『RIDER SHOOTING

 

クロックアップの終了の直後に、そのような音声が四連続で聞こえてきた。

ドレイクだ。

ドレイクが加速した空間で四方から連続で決め技のライダーシューティングを放ったのだ。

そして、そのライダーシューティングを喰らったコーカサスへ、サソードのライダースラッシュが叩き込まれる。

「ハアァ!!」

「ぐはぁあ!?」

胴薙ぎ一閃。ポイズンブラッドが血飛沫のように飛び散り、コーカサスの胴に叩き込まれる。

それを喰らってよろめいたコーカサス。

「喰らいやがれ!」

「終わりだ」

 

『RIDER STING

 

『RIDER BEET

 

今度はザビーの左拳での強烈なアッパーとケタロスの右手に握られたゼクトクナイガンによる切り上げが直撃し、上空へぶっ飛ばされる。

「ばか・・・な・・・」

「お前の敗因は、たった一つだぜ。黒崎」

気付けば、すぐ近くをキックホッパーが飛んできていた。

「お前は彼らを怒らせた・・・ライダーキック」

 

『RIDER KICK

 

ゼクターレバーを操作して、増幅されたタキオン粒子と共に、そのまま飛び蹴りをコーカサスに喰らわせる。そして、直撃と同時にアンカージャッキによる威力の増強によって、一気に地面に叩き落される。

「ぐあぁぁぁあああ!?」

大きな土煙を挙げて、コーカサスが落ちる。

そのあとに、キックホッパーが着地。振り返れば、そこには、黄金のライダーの姿はなく、ボロボロの白いスーツを血に染めた男が転がっているだけだった。

その男からは、もはや生は感じない。

「死んだか」

そう淡々と呟いて、キックホッパーは視線をすぐさま男から外して、戦闘の間に真希がどこかに行ったので、追いかけていった。

そして、舞衣は、

「・・・」

ダークカブトが吹っ飛ばされていった壁の穴を、ただ茫然と見つめていた。

「舞衣」

そんな舞衣に、沙耶香がためらいがちに声をかける。

「・・・・行こう」

「・・・・うん」

ふらふらと立ち上がる舞衣に、沙耶香は心配そうな眼差しを向ける。

「柳瀬さん・・・」

「神木剣」

「ッ!?」

ケタロスに声をかけられて、思わず距離をとって武器を向けるサソード。

「よせ。もうお前たちと戦う気はない」

「その言葉を信じる根拠はあるのか・・・!?」

「ここから先に行けば、折神紫がいるはずだ。黒崎・・・あのライダーがここまで来たというのなら突破して戦闘しているはずだ。この様な事態になったとなれば、おそらく折神紫になんらかの変化が起きているはずだ。であるなら急いだ方がいいだろう」

ケタロスの言い分はその通りだ。が、ここで彼らが自分たちを本当に見逃してくれるのだろうか。

「行って来いよ!」

「お前・・・」

ヘラクスがアックスをふるって荒魂を屠っていく。

「荒魂はこっちで処理しておくからよ!お前らはさっさと親玉とやらをやって来い!」

「行くぞ神木。ここは奴らに任せるぞ」

「・・・わかりました」

ドレイクの言葉にうなずき、サソードは行こうと踵を返す。

 

その時、サソードの強化された聴覚が、ある声を拾った。

 

「!?」

その声にサソードは思わず立ち止まって振り返った。

「剣?どうしたの・・・?」

「・・・ごめん沙耶香。ちょっと行くところが出来た」

サソードがサソードヤイバーをホルダーに固定して走り出す。

「は!?おい!神木!」

「ごめんみんな!今すぐ行かないといけない気がするんだ!」

サソードはそのまま塀と飛び越えてどこかに行ってしまう。

「剣・・・」

「ユウスケ、ワタシたちは親衛隊を追います。ユウスケたちは折神紫の方へ行ってくだサイ」

「わかった。お前たちも気をつけろ」

エレンと薫が、迅移でどこかへと向かう。

「糸見、柳瀬、行くぞ」

「わかった」

「・・・分かりました」

沙耶香は、神木の事が気になるものの、先に進むことを選び、舞衣も力なく応じるもすぐに追いかけていく。

その中で、沙耶香はサソードの向かった方向を見て、

「・・・・気を付けて、剣・・・」

そう最後に言い残して、沙耶香は祭殿へ向かう。

 

 

 

 

そして今に至る。

 

「なるほどな・・・」

どうにか立ち上がった天道がそう呟く。

「姫和、大丈夫か?」

「あ、ああ・・・」

どうにか気絶から回復した姫和を抱え、赤城も立ち上がる。

そして、彼らは目の前の異形に――――タギツヒメと対峙する。

「私、初めて怖い・・・」

「私もだよ」

「ほんと馬鹿みたいな化け物だなオイ」

「だが、こいつさえ倒せば、あとは全て終わる」

ドレイクが銃口をタギツヒメに向ける。

「やるぞ」

その一方で、天道も赤城もその手にカブトゼクター、ガタックゼクターを携える。

そして、互いにアイコンタクトを取って、ゼクターをベルトに装着する。

「「変身」」

 

『HENSHIN』

 

すかさず、ゼクターホーンを反対側へ倒し、マスクドフォームからライダーフォームへさらに変身する。

 

『CHANGE BEETLE

 

『CHANGE STAG BEETLE

 

その横に、姫和と可奈美が立つ。

最後の決戦が、始まる――――

 

 

 

 

その一方で、

機動隊本部にて、真希は一人、ある場所へ向かっていた。

「確かめなければ・・・」

そうしたたどりついたのは、巨大な空間――――を、覗ける鉄格子の前だった。

その巨大な空間を、真希は知っていた。

「馬鹿な・・・あれだけあったノロが・・・」

ここは、ノロの貯蔵庫。全国各地で集めたノロを全て、この貯蔵庫に保管していた。二十年間貯め続けられたノロが貯蔵されているのだ。

ほんの数時間前までは。

「事態が飲み込めマシタカ?」

ふと、背後から声が聞こえて、振り返ってみれば、そこには壁に背をもたれさせているエレンの姿があった。

「なんだここは?」

ついで、薫とねねもいた。

「折神家が回収していたノロの貯蔵庫デス。ほんの数時間前まで、二十年間分のノロがここに保管されていまシタ」

「その全部が結合し、化け物が生まれたわけか」

薫の言葉はその通りであり、事実この貯蔵庫からはノロの一切が消えていた。

「波長に合わせて電流を流せば、ノロはスペクトラム化しない・・・少量で各地に奉納するより、安全に管理できる・・・」

「残念デスガ、それは嘘デス。タギツヒメの支配下にあるノロは、大人しい振りをしていただけデス」

「二十年間もの間、日本は奴に騙され、せっせとノロを集めていたわけだ」

薫から、糾弾の言葉が告げられる。

「責任とれよ」

それに対して、真希は、

「毎年毎年、荒魂による被害はなくならない・・・穢れの具現化である荒魂は駆除しても駆除しても闇から染み出してくる・・・対抗するには同等の力が必要だ」

鉄格子を掴んだ手に力が入る。

「事実、折神家の管理が始まってから荒魂による事故は激減した・・・!殉職する刀使の数も・・・」

何かを恐れるかのように、真希は、そう絞り出すように言った。

「それが荒魂を受け入れた理由デシタか・・・」

「全部この日のための芝居だろーが。要はビビってんだろ」

薫が、真希を糾弾する。

「お前のような怖がりがいるから荒魂は穢れなんて言われて忌み嫌われるんだ」

「・・・」

事実、ねねは荒魂としての穢れを有していない。益子家が、何百年とかけて、その穢れを払った結果が、この小さな荒魂なのだ。

だから、決して荒魂は穢れなどではない。

「行きましょう、真希さん」

そこへ、寿々花がやってくる。

その後ろには、変身を解除した影車想の姿もあった。

「寿々花・・・想さん・・・」

その姿を認めた真希。だが、すぐに視線を逸らす。

「いや・・・今の僕たちは消耗が激しい。これでは紫さ・・・大荒魂との戦いでは足手纏いに・・・」

次の瞬間、乾いた破裂音がその場に響いた。

 

寿々花が、真希の頬を引っ叩いたのだ。

 

「・・・・!?」

一瞬、何が起きたのか理解できない真希。

「荒魂から国民を守る・・・わたくしたちが本来、行ってきた職務です。わたくしたちにはわたくしたちがやるべき事がありますわ・・・!」

寿々花の叱咤。それが、頬を張られて混乱している真希の頭にすっと入っていく。

「真希」

そして、想も、真希の前に立ち、その頭にぐっと手を置いた。

「例え、裏切られたとしても、それでも俺は戦い続ける。俺が守りたいもの為に」

ホッパーゼクターをその手に持って、想はそう告げる。

悲しみに暮れる弟も、親衛隊と過ごした日常の思い出も、全てを守りたい。その為に。

「・・・そうだ、親衛隊の、重要な任務の一つ・・・」

ふと、真希がそう呟いて、右手で頭の上におかれた想の手を、左手で寿々花の右手を手にとり、憑き物が落ちたかのような表情で、真希は顔をあげる。

「ありがとう、寿々花、想さん。おかげで目が覚めた」

「え・・・あ・・・」

その真希にたじろいでしまう寿々花。が、想はそうでもなく。

「それでこそ真希だ」

「こ、子供扱いしないでくれ・・・」

なんのためらいもなしにもう片方の手で真希の頭をなでる。

と、その時だった。

「ねね!」

ねねが突如として天井に向かって叫び、次の瞬間には、天井が破れ、そこから何かが落ちてくる。

「だぁぁああ!!!くっそなんだこいつ普通にクロックアップに対抗してんじゃねえよ!」←ザビー

「敵にそんな事いってなんになる!?」←ドレイク

「騒ぐな集中できない!!」←姫和

「本当にガードかったいな!」←ガタック

「その上力も速さもあります!皆さん、あまり出過ぎないでください!」←舞衣

「わかった」←沙耶香

「司さん後ろ!」←可奈美

「任せる」←カブト

可奈美、舞衣、沙耶香、姫和、カブト、ガタック、ドレイク、ザビー、そして異形と化した折神紫だった。

落下によって紫―――タギツヒメから距離をとる一同。

「あれは紫様・・・いや」

「荒魂だな。あれほどの荒魂とは・・・」

真希と想がそう呟いている間に、薫が鉄格子を破る。

そのまま二人はその場に躍り出る。

「・・・」

「ここは奴らに任せて、俺たちは外の荒魂をやるぞ」

「・・・・分かりました」

「行きますわよ!」

折神紫を彼らに任せ、真希たちは外へと走る。

 

そして、戦いは熾烈を極める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外、近くの林の中で―――

「来るな・・・!」

雪那は、襲い掛かる荒魂にそこらにあった木の枝を投げつける。しかし、御刀やライダーの武装でなければ傷一つつかない荒魂に、それはもはや無駄といえる行為だ。

だが、そうでもしないと、彼女の心は耐えきれなかった。

沙耶香に見放され、紫に見放され、結果、彼女は独りきり。

「来るな、来るな来るな!荒魂如きが、私を誰だと思っているのよ・・・!」

もはや御刀を持たない彼女では、荒魂を倒す手段は持ち合わせてなどいない。

木を投げようが、石ころを投げようが、それに比例するかのように、荒魂は集まってくる。

とてもではないが、彼女がこの場を切り抜ける事は、不可能に近い。

「う・・・うう・・・・」

とうとう、彼女の心に限界が訪れる。

「どうして・・・誰もいないの・・・・・沙耶香・・・紫様・・・!」

もう彼女には何もない。憧れの人も、その為に育て上げた少女も、何も。

「あんなにも尽くした!あんなにも愛した!それなのになぜ・・・!」

涙が次から次へと流れ出てくる。止めようと思っても止まらない。

今までの努力全てが、水疱に帰した。その結果。

 

当然と言えば、当然の結果なのだろう。

 

彼女の行動はあまりにも人道に反した。たった一人のために、自分以外の全てを毛嫌い、たった一人の少女を道具として扱った。

人としてあるまじき行為。因果応報。今の彼女には、それが相応しい。

彼女に、救いなどあるはずがない。

それでも、彼女は思わずにはいられなかった。

「私を一人にしないで・・・!」

だが、そこでとうとう荒魂が痺れを切らして襲い掛かる。

「ガァアアア!!」

「ひっ・・!」

もはや、雪那を守ってくれる存在はいない。

このまま荒魂の牙に討たれる。そう、思ったとき、

 

突如として目の前の荒魂の首と思わしき場所が跳ねる。

 

それだけでは飽き足らず、その荒魂の体をその手に持つ刃で刻み、バラバラにする。

その手にある刃、それは、雪那の見覚えのあるものだった。

「水神切兼光・・・」

その御刀を持つ者は、一人しかいない。

「・・・・夜見」

皐月夜見。本来なら、医務室で安静にしている筈の少女だ。

だが、その姿はあまりにも人間と呼ぶには醜かった。

右目からは別の異形の目が突き抜け、右腕は人の形を保っていなかった。

体の半分をノロにしたかのような醜き姿。もはや、ノロを過剰に投与したとかそんなレベルの話ではない。

これはもはや、荒魂だ。

「ち、近づくな!出来損ないのモルモット風情が!捨てられた私を嘲笑いにきたか!?」

その目は虚ろそのもの。もはや、何も映していないようにも見える。だが―――

 

 

御刀に、選ばれなかった。

 

剣の才はあっても、御刀に選ばれなかったのなら、刀使として意味はなかった。

周りの皆が御刀を授けられて、自分一人だけ、御刀に選ばれず、ただ一人だけ、後ろ指を指され、笑われた。

だが、その選ばれなかった自分に、彼女は、雪那は声をかけてくれた。

『力を欲するのなら授けましょう』

その言葉を、夜見は、きっと忘れない。

『大丈夫、貴方には力を受けるに相応しい資質があるのだから』

 

 

 

その言葉が、救いだった。だから。

 

 

 

(この身を、賭してでも・・・私は・・・!!)

さらなるノロを投与、とっくに限界値を超えた夜見の体に、さらにノロが追加されて、その力はさらに増大する。

だが、彼女は一向に構わない。

何故なら、自分を救ってくれたのは、他でもない彼女なのだから。だから、

「アァァァァァアァァアアア!!!!」

絶叫が迸る。襲い掛かる荒魂の集団を、薙ぎ払い、斬り捨てまくる。我武者羅に、ただ彼女を守りたいがために、彼女は、その為だけに、戦ってきたのだから――――!!

 

やがて、彼女の目に映る限りの荒魂は、全て夜見が斬り捨てた。

その後ろ姿を、雪那はただ茫然と見上げていた。

「・・・何故」

夜見が振り返って、雪那に歩み寄る。

「なぜ、他の誰でもなく、私のところへ・・・・」

彼女の前に座り、夜見は―――――

 

初めて、荒魂を倒せた。それが、悪魔の力であろうとも、自分は、その力に救われた。そして、その力を与えてくれた彼女に、感謝しかなかった。

どれだけ、酷い人間だろうと、自分にとって、彼女は―――

 

 

「―――ただいま、もどりました・・・高津学長」

それは、いつ言ったのか覚えてない程、懐かしい言葉。

「・・・・――――」

その言葉は、しっかりと雪那に届いた。

その言葉を聞いた雪那の口から、自然と、その言葉が出てきた。

「―――お勤めご苦労様でした・・・夜見」

いつか、言ってくれた、労いの言葉。

その一言のために、あのころは、頑張れた。精一杯、お勤めをやることが出来た。

その言葉が、あったから――――

ふっと、体から力が抜ける。

「夜見・・・!」

倒れる夜見の体を、雪那は思わず抱き留める。

体力が限界を迎えたのだ。

そして、タイミングの悪いことに、さらなる荒魂が、すでに二人の周りを囲んでいた。

「グルァァァアァアア!!!」

「!?」

そしてすでに、そのうちの一体が、夜見と雪那に襲い掛かっていた。

それを見た雪那の行動は――――

「夜見!」

 

夜見の上に、覆いかぶさる事だった。

 

今までの、彼女の行動からは考えられない行為だ。

(しまった・・・)

そして、夜見は抱きしめられる腕の中で、ふと、呑気にもそう思ってしまった。

自分が守るはずだったのに、これでは、守られているじゃないか。なんて情けない。

自分は、彼女を、守らなければならないのに。

そう思うと、夜見は、すぐに雪那を押しのけようと腕に力を込めた。その直前、

 

『RIDER SLASH

 

その様な電子音声の直後に、横薙ぎ一閃が迸った。その一閃は、襲い掛かってきた荒魂だけでなく、その周囲にいた荒魂を、その近くにあった木ごと薙ぎ払い、全て斬り飛ばした。

あとに残ったのは切り倒された木と、ノロへと戻った荒魂の残骸だけだった。

そして、その中心に立つのは、一人の、紫色の仮面ライダー。

「大丈夫ですか!?雪那さん!夜見!」

サソードこと、神木剣だった。

「剣・・・」

「すぐにこの場を移動しましょう。安全のところまで・・・ってその前に治療室か、夜見結構酷い怪我だし・・・」

さらなる物音、そこから、今度はクマぐらいの荒魂が出現する。

「くそ!全部斬れなかったか」

サソードが悪態を吐く。そのままその荒魂を倒そうとホルダーからサソードヤイバーを引き抜こうとする。

「わ、私の事は良い。それよりも、早く夜見を・・・」

そこで雪那が止める。

「何を言ってるんだ!俺は貴方も夜見も助けるつもりで来たんですよ!」

「なぜ・・・私は、貴方に酷い仕打ちをしたのよ・・・!?それなのに・・・何故・・・」

「その言葉だけでも十分です」

サソードが、ヤイバーを構えて、雪那にそう言った。

「貴方は、俺の恩人です。貴方に出会えていなければ、サソードゼクターに選ばれる事もなかったし、何より、あの地獄から抜け出すことも出来なかった。それに、沙耶香にも会う事が出来なかった・・・・たとえ、貴方がどれほど酷い人間だろうと、貴方は、俺にとっては掛け替えのない恩人なんです。その恩人を守って、何か悪い事がありますか?」

荒魂が襲い掛かる。しかし、その胴にヤイバーを突き立て、そのまま頭部に向かって斬り裂く。

「それと、さっき、貴方が夜見をかばったの、少し見直しました」

「つる・・・ぎ・・・」

それ以上、言葉が出てこなかった。

サソードは、手ごろなロープを取り出すと、それを使って、雪那を背負い結びで背中に固定、一方の夜見を、左手に抱えて、サソードヤイバーを右手に持って、立ち上がる。

「夜見、もう少しの辛抱、それまでに死ぬんじゃないぞ」

「・・・まったく・・・」

彼と出会ったのはいつの頃だったか。

確か、ありきたりな出会い方だったような気がする。

角を曲がろうとしたところで、ぶつかり合ってしまったのだったか。

その時、言われた言葉は――――

「おせっかいな方々ですね」

「行くよ。雪那さんもしっかりつかまっててください」

「ええ・・・」

サソードは走り出して、夜見は、その揺れの中で、静かに思い出す。

 

『うわ!?ごめん!前見てなかった・・・どうわ!?』

落とした書類に足を滑らせて転んだ彼。その姿が、あまりにも無様だったのをよく覚えてる。

『いったた・・・今日はほんとついてないな・・・って、君、その制服って親衛隊?』

その質問に、素直に答えてしまったのは何故だっただろうか。

ただ、彼がとても、面白い人に思えたから。

『俺の名前は神木剣。君の名前を教えてくれるかな?』

 

 

その出会いを、忘れない。二人の、恩人との出会いを。

 

 

 

 

 

 

 




次回『兄妹と禍神と二十年』
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