仮面ライダートジノカブト   作:幻在

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二人の距離

御前試合会場から逃走して一秒以下にて、

 

『CLOCK OVER』

 

「あれ?」

気付けば可奈美はバイクの上に乗っていた。

「え!?なんで!?」

「少し縮まれ、動かしにくい」

そしてその後ろにはあの赤い装甲を纏った男―――カブトと名乗った男が乗っていた。

「あ、あの・・・」

「おい!?お前一体なんなんだ!?」

さらにその後ろでは、姫和がカブトに向かって文句を言っている。その状況に何が何だか分からないまま、ヘルメットを被らされる。

「行くぞ」

「わ!?」

「人の話を聞け・・・うわ!」

強制的にヘルメットを被せられ、そしてそのままバイクは発進する。

わけのわからないまま、最高速度でバイクは一気に走り出す。

「「うわぁぁぁあぁああ!?」」

絶叫とともに、バイクは道路を駆け抜ける。

それからしばらく、バイクに揺らされた後、どうにかバイクはある神社の前で止まった。

「ここまで来ればいいだろう」

カブトがそう呟く。そのすぐ後に、いつ縛ったのか姫和と彼を結んでいた紐が断ち切られる。

そして、姫和はすぐさま彼から飛び退き、御刀に手を掛けてカブトだけじゃなく可奈美をも睨んだ。

「一体なんのつもりだ・・・!」

「お前が折神紫を襲撃することは分かっていた」

「なんだと・・・!?」

カブトは、バイクから降りつつそう返す。

「どういう意味だ・・・!?」

「そのままの意味だ。降ろすぞ」

「あ、ありがとうございます」

可奈美をバイクから降ろし、エンジンを切る。その時、可奈美の体が一瞬ぐらつく。

どうやら、腹のダメージが残っているようだ。

「大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です」

どうにか笑顔を作ってそう返す可奈美。

その様子に、姫和はある疑問をぶつける。

「お前、何故あの時助けた?」

「え?」

「お前には関係ないはずだ。なのに何故・・・」

たしかに、あのまま傍観していれば、こんな風に追われる身になる事はなかった。なのに、どうして彼女は姫和を助けたのか。

「んー」

その問いに、可奈美は一度空を仰ぎ見てから、

「まだ決着がついていないからかな?」

「決着だと?」

「うん。だって私、姫和ちゃんと戦ってみたい。でも、姫和ちゃんにはやらなくちゃいけない事があるんだよね?だったら、それが終わってから、ちゃんと相手をしてもらおうって、そう思ったから、姫和ちゃんを助けたんだよ」

「分かっているのか?私と一緒にいるということは、折神家を敵に回すという事だぞ?刀使としてはもちろん、そうでなくとも一生追われる身になるんだぞ?」

「分かってる。でも、そうまでして、姫和ちゃんにはやらなくちゃいけない事があるんだよね?捕まっちゃうのはまずいってことでしょ?」

「それに、もうすでにお前たちは共犯扱いにされているだろう。どちらにしろ、しばらくは行動を共にするべきだ」

そこでカブトから口を挟まれる。

なので視線が一気にカブトに集まる。

「・・・前々から思っていたが、お前は誰だ?」

「ん?ああ、顔が分からん奴と行動を共にするのはいささか不安か」

カブトが、腰のベルトからカブトムシ型の機械『カブトゼクター』を外す。すると、彼を覆っていた装甲がまるで崩れるように消えていき、その素顔があらわになる。

「改めて、俺は天の道を行き、総てを司る男・・・天道司だ」

「なんだその自尊心たっぷりな自己紹介は・・・」

あまりにもぶっ飛んだ自己紹介に姫和が唖然としていると、隣の可奈美が口を開けたまま呆然としていることに気付く。

「・・・司お義兄ちゃん?」

「なんだ?知り合いか?」

さらに、可奈美の体が僅かばかりに震えているのが分かった。

その事に、姫和が首を傾げていると。

「久しぶりだな、可奈美。しばらく見ない間に随分と大きくなったな」

「つか・・・さ・・・おにいちゃ・・・!!」

耐えきれないと言わんばかりに可奈美は天道の胸に飛び込んだ。

「うおっ!?」

「うわぁあああん!!」

そして、大声で泣き出す。まるで子供のように。迷子になっていた子供が、やっと母親を見つけたかのように、泣きじゃくる。

「・・・」

その様子に、姫和は呆然とする以外なかった。

「本物だよね!?生きてるよね!?ちゃんとここにいるよね!?嘘じゃないよね!?」

「ああ・・・ここにいる。ちゃんと、ここにいる・・・」

腕の中で泣き叫ぶ可奈美を抱き締め、天道もまた、感動に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

検問にて、ある一台のトラックが調査されていた。

「よし、通っていいぞ」

検問員の合図で、運転手は労いの言葉と共にエンジンを掛け、発車する。

このトラックは八百屋関係のものであり、その荷台には様々な野菜が置かれている。

その中にあるキャベツの箱がもぞもぞと動いたかと思うと、その中から可奈美と姫和が出てくる。

「どうにかなったねー」

「ああ」

安堵の息を漏らす可奈美と、カーテンの隙間から高速に入った事を確認する姫和。

現在、二人は天道と別行動をしている。

その理由は検問。バイクで移動するのはいいのだが、問題はバイクでは彼女たちを隠せないという事だ。

だから、天道は彼女たちをこのトラックに乗せ、唯一顔が割れていない自分はそのままバイクに乗って検問を抜けるという算段だ。

幸い、カブトゼクターは自立した思考を持ち、移動も自由気まま、さらに彼が応えればすぐにジョウント移動というワープ移動で飛んできてくれる。

これほど便利なものは他にないだろう。

「本当にすごいなあ、司お義兄ちゃんは」

可奈美が、称賛する。

「・・・お前とあの天道とかいう男は一体どんな関係なんだ?」

どことなく聞いてみた。それを聞いた可奈美は、嬉しそうに顔を綻ばせて語り出す。

「司お義兄ちゃんは、子供のころ近所にいた人でね、よく、一緒に遊んでたんだ。なんでも出来て、なんでもやってのける。そんなすっごい人なんだよ。でも・・・」

途端に、可奈美の表情が切なくなる。

「お母さんが死んで、すぐ後に引っ越しちゃったんだけど、その後事故にあったって聞いて、それ以来、居場所が分からなくて・・・」

「行方不明だと・・・?」

「うん。それ以来、ずっと会ってなくて・・・だから嬉しいんだ。司お義兄ちゃんが生きててくれて・・・まあ、本当のお兄ちゃんの方は嫉妬しちゃうかもしれないけどね」

たはは、と笑う可奈美に、姫和はしばし見つめた後に視線を逸らす。

「なら、私の義理の兄とは違うんだな・・・」

「え?姫和ちゃんにもいるの?司お義兄ちゃんみたいな人」

「ああ・・・といっても、あまり出来の良いとはいえないがな。体力だけはあるんだが、頭はそれほどでもなくて、よく馬鹿にしていたと思う。だけど、誰よりも優しくて、誰よりも格好いい人だった・・・」

その言葉に、可奈美は、表情を変える。

「お前と一緒だ。その人も、母が死ぬ六年前、今からだと七年前に、交通事故で行方が分からなくなってしまった・・・」

「・・・そう・・・なんだ・・・」

膝を抱えて、顔をうずめる姫和に、可奈美は、そう返す事しかできなかった。

その最中で、バイクのエンジン音が聞こえた。

見れば、トラックの後ろから、赤いバイクを走らせてくる天道がいた。

「・・・」

そんな彼に可奈美は手を振り、そして天道も手を振り返す。

「・・・・大事にしろ」

「・・・・うん」

そんなやり取りが交わされ、彼女らは東へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうか。二人は無事なんだな」

『ああ、これからどうにかして逃げるつもりだ。お前も、用心しておけ』

「おう、そんじゃあな」

通話を切り、赤城は騒然とする会場見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の女性が、紫の執務室に入る。

片方は、美濃関学院学長の羽島江麻。もう一方はやや言葉遣いになまりがある平常学館学長の五条いろはである。

その二人の前に立つのは、先刻、姫和の超高速の弾丸迅移の突きを躱した紫本人である。その扉の方では、親衛隊第一席の獅童真希が控えている。

「久しいな」

「お久しぶりです、局長」

「お久しぶり、ほんと、紫ちゃんはあの時からお変わりなく」

「この度は、我が美濃関の生徒が御迷惑を」

と、江麻が頭を下げてそう謝罪するも、紫はそれを止める。

「定形の謝罪などは不要だ。潜伏先に心辺りは?」

「ごめんなさい。特には」

「同じく・・・」

当然、二人が彼女たちの居場所を知る由もない。

何故なら知らなかったのだから。ついでに言って、可奈美は完全にその場で思いつきその場で動いたのだ。計画性などある訳もなく、ただの衝動的行為である為に、江麻がそれを知る訳がない。

ふと、江麻は真希に向かってある事を聞いてきた。

「うちの柳瀬舞衣という生徒は?」

「柳瀬舞衣、岩倉早苗の両名は今回の件に無関係と判断し、拘束を解きました」

当然、同じ代表である二人が疑われてもおかしくはなく、先ほどまで拘束されていたのだが、どうやら解放されたようである。

「そう」

「では、質問を変えよう。平常学館学長、刀剣類管理局の届け出には、小烏丸は平常学館預かり、現在適合者なしとなっているが?」

「ご報告が遅れて申し訳ありません。小烏丸があの子を選んだんです」

「小烏丸?」

「衛藤可奈美は千鳥、十条姫和は小烏丸、それぞれの適合者だ」

「千鳥と・・・小烏丸ですか・・・」

江麻が、意味深げにそう呟く。

「もう一つ聞きたい事がある」

「なんでしょう?」

「衛藤可奈美、十条姫和の両名が逃走する際、手助けをした者がいた。ソイツは、どういう訳かゼクターを所持していた。そのゼクターは・・・・カブトゼクターだった」

「カブトゼクター!?」

「それは本当ですか!?」

その言葉に、二人は驚きを隠せなかった。その様子に、真希は首を傾げるだけ。

「あれは、二十年前に紛失した筈では・・・」

「ゼクト社に問い合わせてみた所、プロトタイプを元にした新しいカブトゼクターを作ったそうだ。だが、七年前にカブトゼクターともう一つのゼクターが突然脱走。行方が分からなくなったらしい」

「そうですか・・・では、その人は・・・」

紫は、鋭い視線で窓の外の空を見上げる。

「おそらくは・・・な・・・」

 

 

 

 

 

 

どうにか尋問から解放され、落ち込み気味に刀剣管理局から出る舞衣。

「可奈美ちゃん・・・」

スマホに映っているのは、親友の連絡先。だが、彼女は今現在、携帯を持っていないので、連絡する事は出来ない。

「はあ・・・」

「どうしたんだ?そんなに溜息ついて」

「え!?」

突然声をかけられて思わずスマホを隠す舞衣。

見れば、そこにはスーツ姿の男がこちらに微笑みながら歩いてきていた。

「あ、えっと・・・」

「ああ、突然知らない男に話しかけられても困るよな・・・まあいっか。お前、確かあの衛藤可奈美と同じ美濃関代表だったよな?名前は確か・・・柳瀬、舞衣だっけ?」

「ええ・・・そうですけど・・・」

随分と馴れ馴れしく話しかけてくるこの男に思わず警戒心を抱いてしまう舞衣。

「俺は赤城っていうんだけど、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「聞きたい事?」

「ずばり、衛藤可奈美と十条姫和の関係について」

そんな事を聞いてくる赤城と名乗る男。

「・・・すみません、何もしらないんです」

「だよな・・・悪いな。分からない事聞いちまって」

「いえ・・・あの、貴方は一体・・・?」

「ん?俺か?んー・・・悪い。それは企業秘密なんだ」

「そうですか・・・」

しゅん、とうなだれる舞衣。その様子に、赤城は頭を掻いて、しばし考え込むと、舞衣に近付いて、その耳元でささやく。

「俺の仲間が守ってるから心配すんな」

「え・・・!?」

それは一体どういう事なのか。そう聞く前に、赤城は去っていく。

「そんじゃ、俺これから行くところあるから!」

「あ、ちょっと!」

恐ろしい速度で走り去っていく赤城に置いて行かれ、結局聞きそびれる舞衣。

「・・・・あの人は一体・・・」

舞衣は、その答えを得られないまま、その場で立ち尽くす事になってしまった。

そして、その直後に可奈美から電話がかかってきた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の学長が出ていった所で、入れ替わるように二人の男が入ってくる。

「来たか」

その二人に、紫はそう問う。

影車(かげぐるま)(そう)、召集に応じ参上いたしました」

「同じく、影車(かげぐるま)(しゅん)

「確認させてもらう。あれは、四年前に、ゼクト社が襲撃された際に奪われたゼクターの一つか?」

紫の問いに答えたのは、二人の男の片方―――兄弟の兄の方である『影車想』が答える。

「奪われたゼクターは、『ドレイク』、『ザビー』の二体だけです。カブトゼクターは、そのさらに前、七年前に突如として飛んでいった二つのゼクターの内の一体かと思われます」

「決して、プロトタイプのものとは違うんだな?」

「断言しましょう」

想の言葉に、紫は頷く。

「そうか・・・」

「それと、一つご報告を」

「なんだ?」

「ゼクト社から、カブトゼクター確保の為に人員を送るとの報告がありました」

「そうか。いいだろう。真希」

「はっ」

「もし出動する事があれば、その時はゼクト社と連携して事に当たれ。いいな」

「分かりました」

「では、俺たちはこれで」

「ああ、ご苦労だった」

執務室を出る、想、瞬、そして真希の三人。

「すまないな、真希。あの逆賊たちを取り逃した」

「いえ、紫様のご命令もあったのです。仕方がありません」

想の謝罪にフォローを入れる真希。すると背後の瞬が口を挟む。

「兄貴、どうする?今すぐにでも出て捕まえた方がいいんじゃ・・・」

「瞬、お前はいつも焦り過ぎだ。それではいざという時に失敗するぞ」

「ごめん・・・兄貴・・・」

「全く・・・それだから結芽に舐められるんだぞ?」

「うぐ・・・」

ある少女の事を引き合いに出され、唸る瞬。

(さて、どう動く・・・カブトとやら)

想は、窓に映る空模様を眺め、そう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高速道路を降りたところで、三人はバイクに乗り換えて移動、途中、店にて姿を隠すためにフード付きのジャケットや御刀を隠すためのギターケースを購入、そのまま夜遅いという事で一目のつかなそうな宿屋に身を隠す事にした。

「そういえばお義兄ちゃん、さっきのカブトムシのおもちゃみたいなの。あれ、どこで手に入れたの?」

夕飯を食べつつ、そんな事を言い出す可奈美。

「カブトゼクターの事か?」

「そうそれ。それって一体なんなの?」

「そうだな」

天道が手をかざせば、どこからともなく、カブトゼクターが飛んで、天道の手に収まる。

そして、それを可奈美の前に突き出す。

可奈美はそれを丁重に受け取る。

「意思を持つ機械生命体・・・といった方が良いだろうが、正直に言うとソイツは荒魂だ」

「何!?」

天道の言葉に、姫和は思わず声を上げる。

「ゼクターには意志がある。当初は人工知能によって意思を持たせるつもりだったが挫折してしまい、代わりとしてノロをゼクター内でスペクトラム化させて荒魂化することで意思を持たせたらしい。そして、そのゼクターに認められたものだけが、あの姿、仮面ライダーになることが出来る」

「それじゃあ、お義兄ちゃんは、このカブトゼクターに認められたって事なんだね。流石!」

そういってカブトゼクターとじゃれる可奈美。

だが、そこで姫和は、カブトゼクターのボディにあるマークに気付く。

「まて、このマークは確か・・・ゼクト社のものじゃないか?」

「え!?」

ゼクト社とは、日本の関東に本社を構える、特別祭祀機動隊支援を目的とした武器会社であり、ゼクト社が開発した武器によって、機動隊の死者は限りなく少なくなっている実績を持つ大企業である。

「なるほどな。ゼクトが開発したものなら、こんな常軌を逸したものを作ることも造作もないか」

「まさかお義兄ちゃん、盗んだの?」

じとっと天道を見る可奈美。

だが、天道から返ってきた言葉は予想の斜め上をいっていた。

「飛んできた」

「「飛んできた?」」

「ああ、事故の時にな」

崖崩れにあって、乗っていた車ごと落ちた時のこと、いつのまにか装着されていたベルトに、あのカブトゼクターが自ら装着された事で、どうにか一人だけ一命を取り止めた。

ゼクターには、何か、不思議な力があるのだろうか。

「そうだったんだ・・・」

「俺ともう一人の協力者も同じような境遇だ」

「じゃあその人も仮面ライダーに?」

「ああ」

「そっか!会ってみたいなぁ」

楽しみなのかわくわくしている可奈美。

「呑気なものだな・・・」

そんな可奈美に姫和は呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

日も変わり、もうすぐ世が開ける頃。

可奈美たちが身を潜めていた宿屋に、舞衣が駆け込む。

昨日、可奈美から電話がかかり、その時に聞こえた防災放送を頼りに居場所を割り出し、こうして周囲の宿屋をしらみつぶしに探し回っていた所、やっとのことで場所を突き止めたのだが。

「可奈美ちゃん!」

すでに部屋はもぬけの殻、窓は全開で開いていて、おそらくそこから逃げたのだろう。

 

 

「意外に早かったな」

そう呟く姫和の隣で、可奈美は頬を気まずそうに掻いてあることを暴露する。

「ごめん、さっき電話しちゃって・・・」

「さっき防災放送があった。おそらくそれを元に探られたんだろう」

「お前・・・」

「うう・・・ごめん・・・・」

「まあいい。それよりも、ここを移動しよう。人の多い場所なら、返って目立たないだろう」

「そうだな・・・・」

天道の提案に、姫和も頷く――――

 

 

 

 

「だが・・・観光に来たわけじゃあないんだぞ!?」

しかしやってきたのは商店街。

確かに人は多いがここはどっちかっていうと買い物や交流をする場である。

「だって人が多い所ってここしか知らないもん。それに、私たちくらいの子や制服の子もいっぱいいるし、見つかりにくいんじゃない?」

「ま、外れてはいないだろう」

可奈美の言い様に不満そうではある姫和。

「・・・日曜か、どうりで人が多いわけだ」

そんな風に呟く姫和の手を、可奈美が手に取り、走り出す。

「そんな所に突っ立ってたら目立つよ。普通に楽しんだ方が良いって」

「・・・」

やはり不満そうな姫和。

「やれやれ。ずいぶんと行動力豊かになりやがって・・・ん」

ふと、そこで天道の携帯が鳴っている事に気付く。

「悪いお前ら、先に行ってくれ」

「分かった!」

「あ、おい!?」

彼女たちを見送り、天道は電話に出る。

「赤城か」

『よう天道。その様子だと、無事に逃げ切れたようだな』

「ああ、お前が柳瀬が出たと言ってくれたおかげでどうにか先手を打つことができた。助かった」

『いいって事よ。俺とお前の仲だろ?それで、そっちはどうなんだ?』

「東に向かって移動している。十条はまた折神家に仕掛けるだろうが・・・」

『その時は俺たちも出る、だろ?分かってるっての』

「それならいい。じゃあ、そろそろ切るぞ」

『おう。こっちの事は任せておけ』

それを最後に、天道は通話を切った。

 

 

 

 

 

 

赤城との通話を終え、天道は二人を探していると。

「ん?」

突如としてカブトゼクターが飛来、手を掲げた天道の手に収まる。

「・・・荒魂か」

カブトゼクターから、嫌な音が聞こえてくる。

これは、ゼクター全般が持っている、荒魂探知能力。

「急いで可奈美たちを見つけないと・・・」

周囲を探していると、向かいの道路に二人を見つける。

「いた」

天道は駈け出し、歩道橋を駆け抜ける。

ふと、声が聞こえた。

「捕まるのが嫌だからって、荒魂を放置するなら、それじゃあ姫和ちゃんのやっている事事態もおかしくなるよ!?」

それに思わず足を止める。

「可奈美・・・お前・・・」

見下ろす天道の視線の先で、二人の少女が対峙している。

そして、可奈美の言葉に、姫和は驚いていた。

「行こう!」

可奈美の言葉に、姫和は、頷いた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁあああ!?」

「荒魂だぁぁああ!!」

「逃げろぉ!!」

荒魂が出現している神社はまさに阿鼻叫喚と人々が逃げていた。

襲い掛かるのは、翼の生えた、飛翔する荒魂。

その現場に、天道たちは駆け付ける。

「特別祭祀機動隊です!荒魂から離れてください!」

来ていたジャケットを脱ぎ捨て、ギターケースから御刀を抜き放ち、そう促す可奈美。

「私がいくから追い込んで!」

「了解」

「分かった」

可奈美の言葉に、姫和と天道は頷き、天道は、腰のベルトに、カブトゼクターを装着する。

「変身」

 

『HENSHIN』

 

天道が、武骨な装甲に覆われ、重装に身を包む。

仮面ライダー・マスクドフォーム。パワー・防御に特化した形態である。

荒魂が地面に降り立つ。そこへ可奈美が迅移を使って接近して斬りかかるも、荒魂は空中へ飛んで躱す。

そこを、天道がカブトクナイガンで狙い撃ちにする。しかし、三発放った弾丸は躱され、荒魂が一気に急降下してくる。

「無駄だ」

だが、それらすべては天道の作戦。最後に撃った弾丸が、荒魂をとらえ撃ち落とす。

「おー!お義兄ちゃんすごい!」

「誘導して狙い撃ちにした。十条」

「言われなくても!」

落ちた所を姫和が斬りかかる。

だがすぐに起き上がった荒魂が反撃。しかし、そこは御前試合に出場するだけの実力者。その攻撃を躱し、荒魂に二撃入れる。

たまらず飛んで逃げようとする荒魂。

「可奈美!」

姫和が可奈美の名を呼ぶ。

「うん!」

その声に答え、可奈美は筋力を上昇させる技能『八幡力』を使って跳躍。荒魂が逃走する方向に飛び出て斬り捨てる。

「流石だな」

見事荒魂を仕留めた可奈美に勝算を送る一方、天道は、未だやまぬカブトゼクターの音に耳を傾けていた。

「気を付けろ、他にもいるぞ!」

「「ッ!?」」

警戒を促すために、そう叫んだ瞬間、林から、凄まじい速度で、虎型の荒魂が飛び出てくる。

だが、天道のお陰で警戒していた二人には躱すのは簡単だった。だが、

「速い!?」

予想以上に小回りが利くようで、すぐさま進行方向を変えては姫和に襲い掛かる。

「くっ!」

おそらく、姫和が一番弱いと判断したのか、あるいは披露していると悟ったのか、虎の荒魂は姫和を狙い撃ちにする。

爪の攻撃をどうにか防ぐも、流石に完全に回復しきっていないのはかなりのハンデのようだ。もう息があがっている。

「やれやれ、仕方がない」

天道がカブトゼクターのゼクターホーンを持ち上げる。すると、マスクドフォームの装甲『マスクドアーマー』が分解準備に入る。

「キャストオフ」

 

『CAST OFF』

 

そして、角を反対側に倒せば、装甲が弾け飛び、中から赤い装甲が姿を見せる。

 

『CHANGE BEETLE

 

角が持ち上がり、がっちりと装着される。

「クロックアップ」

 

『CLOCK UP』

 

腰の横にある『スラップスイッチ』を押すと、天道の視界に映る全ての景色の動きが急激に緩やかになる。タキオン粒子によって、自分以外の時間の流れが全て遅くなり、逆に自分は加速していく。

その、スローとなった世界で、天道は、動きが完全にスローとなった虎型の荒魂と姫和の間に入ると、カブトゼクターの三つの足のボタン『フルスロットル』を、彼から見て左から順番に押していく。

 

『ONE TWO THREE』

 

スリーカウントの後に、すぐさまゼクターホーンをフォームチェンジ時の待機状態に戻す。

「ライダーキック」

呟き、そしてゼクターホーンを戻す。

 

『RIDER KICK

 

カブトゼクターからの電子音と共に、ゼクター内で生成、増幅されたタキオン粒子がベルトにチャージアップ、それが一度頭部の角『カブトホーン』へと行きそこから一気に右足に収束。

そして、天道は荒魂に向かって上段回し蹴りを叩き込む。

足の甲にある『ライダーストンパー』から発せられた波導が荒魂の体を駆け巡り、

 

『CLOCK OVER』

 

時間の流れが元に戻る。

蹴りを食らった荒魂はすぐさま爆散、跡形も無く元のノロとなって飛び散る。

「な!?」

そして、そんな光景を目の前で見せつけられた姫和と可奈美は当然のように驚く。

「え・・え!?何が起きたの!?」

「クロックアップ。ライダーフォームになると使える機能で、アーマー内のタキオン粒子を加速させて、疑似的に刀使の迅移と同じことが出来るようになる・・・が、完成した所、迅移よりも遥かに速い速さと持続時間を持つようになってしまったんだが、これがなかなか使えてな」

「何言ってるのか分からないけど・・・とにかく、あっと言う間にお義兄ちゃんが全部片づけてくれたって事が分かったよ・・・」

とりあえず、考える事をやめた可奈美であった。

「そんな事より、ノロの回収はどうする?」

「別にそのままでもいいんじゃないのか?どうせこの事知った刀使がやってくる。それならすぐに動いた方がいい――――」

 

「それなら、私が要請します」

 

突如として声が聞こえ、姫和がすぐさま御刀に手をかけて、声がした方を見る。

そこにいたのは――――

「舞衣ちゃん・・・!?」

柳瀬舞衣だった。舞衣は、こちらに向かって御刀を向けて佇んでいた。

「美濃関の追手か・・・!?」

「待って姫和ちゃん!舞衣ちゃんは私の親友で・・・・」

「スペクトラムファインダーで来たのか・・・あの宿を見つけられてからそれほど時間がたっていないからこのあたりにいると思っていたが、どうやら、車を使って移動してきたようだな」

「ご名答です。どこのどなたか存じ上げませんが、荒魂の討伐に協力していただきありがとうございます。ですが、それとこれとは話は別です」

「待って舞衣ちゃん、この人は・・・」

「親友だというのなら、何故御刀を向けている?」

可奈美の言葉を遮り、姫和がそう問いかける。

「可奈美ちゃんは私の親友です。親友だから、可奈美ちゃんは私が助けます」

そう言って、舞衣が写シを張って臨戦態勢に入る。

それに応じるように姫和も写シを張る。

「ちょ、ちょっと二人とも、一度御刀を納めて!」

「向こうにその気はないようだ」

可奈美を制止を、姫和が斬り捨てる。

「舞衣ちゃん・・・!」

「聞いて可奈美ちゃん。羽島学長が約束してくれたの。私と一緒に戻れば、罪を軽くしてくれるよう全力で助けてくれるって」

「なるほどな・・・・」

舞衣の言葉に、天道は納得したかのように声を漏らす。

「可奈美、良い機会だ。お前はここで帰れ」

「そんな・・・姫和ちゃん・・・」

「でも、一つだけ条件があるの。十条さん、そして、そこの赤い装甲の貴方も一緒に、折神家に同行してもらいます」

舞衣が、そのように言い出す。

即ち、自首しろという事だ。そんな条件を、姫和が飲むはずがない。

「残念だがそれに協力できない」

「協力しなくていいです。私が力づくで捻じ伏せますから」

「やってみろ」

姫和のその言葉が合図とでもいうように、舞衣が迅移を使って姫和に斬り込む。

そこから、二人の剣戟が繰り広げられる。

「ああ・・・どうしよう・・・」

「お前はどうしたい?」

「え・・・?」

うろたえる可奈美に、天道が聞く。

「おばあちゃんが言っていた・・・人は一人では何もできない、何故なら人という字は、一人では成り立たないように出来ているからだ。可奈美、お前は、十条を・・・姫和を助けたいか?」

仮面の下から、天道が視線を向ける。

その問いに、可奈美は――――

姫和の剣が弾かれる。

「私は、この一年以上もの間、可奈美ちゃんの剣を受けてきました。十条さん、貴方の剣は、可奈美ちゃんの剣より真っ直ぐでいなしやすいです。それに昨日見た、太刀筋の鋭さが、ありません!!」

迅移による鋭い突きが、姫和を襲う。

だが、突如としてその横から別の刃が舞衣の刺突を弾き飛ばす。

可奈美だ。

「ごめんね姫和ちゃん、私も姫和ちゃんも、それに、司お義兄ちゃんもまだ捕まる訳にはいかないの」

「どうして・・・」

「まあ、そういう事だ」

可奈美の背後から、天道が進み出る。

「貴方は・・・・」

「天道司」

カブトゼクターを外せば、装甲が崩れるように外れていき、中から天道が現れる。

「!?」

「話を聞くんだ、柳瀬。可奈美、お前は一体何を見た?十条のあの迅移の瞬間、折神紫は、御刀も何も持っていなかった。だけど、彼女は御刀を持っていた。一体どこからそれを取り出した?そして、折神紫の背後には、一体、何がいたんだ?」

その問いかけに、可奈美は――――

「うん、一瞬だったし、見間違いだと思ったけど・・・でも、あれはやっぱり―――荒魂だった」

可奈美は思い出す。折神紫の髪の毛に混じるように見えた、あの、不気味な目を。

「荒魂・・・!?」

「やはりな」

「そんなはずは・・・あの人は、折神家の御当主様で・・・大荒魂討伐の大英雄で・・・」

「違う・・・!!」

舞衣の言葉を、姫和が真向から否定する。

「奴は・・・折神紫の姿をした、大荒魂だ!!」

憎むように、そう告げる姫和の言葉に、舞衣は、信じられないかのように声を震わせる。

「それじゃあ・・・折神家も・・・刀剣類管理局も・・・・五箇伝も・・・」

「荒魂が支配しているんだろうな」

天道の言葉に、舞衣は絶句するほかなかった。

「とにかく、私は姫和ちゃんを一人にはできない。だから、お願い、舞衣ちゃん!」

可奈美が、舞衣に必死に懇願する。

「・・・・本気なんだね」

しばしの間をおいて、舞衣が、そう問いかける。

それに、可奈美は頷きをもって答える。

それを見て、舞衣は、諦めたかのように微笑んだ。

「分かった」

そうして写シを解き、御刀を納める。

「舞衣ちゃん・・・」

「分かってるよ。いつも可奈美ちゃんがすることは、本気なんだって事を」

そう言って微笑む舞衣。

やがて、舞衣は可奈美に歩み寄ると、その手に、小さなビニールの包みを握らせる。

「忘れ物」

それは、舞衣が作ったクッキーだった。

「他の荷物は押収されちゃって、返してもらえなかったんだ」

それは当然だろう。何せ可奈美は今は逃亡犯。その荷物を、何かしらの証拠品として押収するのは当然の事だろう。

「・・・ありがとう」

その小さな気遣いに礼を述べ、可奈美も御刀を納める。それに続くように、姫和も御刀を納め、司はその手にあったカブトゼクターをどこかに飛ばす。

「じゃあ、行くね」

「うん、またね・・・あ、十条さん、天道さん」

そこで、舞衣が二人を呼び止める。

「可奈美ちゃんを、お願いします」

そう、頭を下げてお願いした。

「・・・・私は自分のすべきことをするだけだ」

姫和は、それにそう返し、

「当たり前だ。可奈美は俺の妹分だからな」

司は微笑みながらそう言った。

そのまま立ち去ろうとする三人だったが、ふと司が振り向いた。

「そうだ、柳瀬。本部に赤城という男がいるはずだ」

その言葉に、なぜか姫和が反応する。

「赤城・・・?」

「え、ええ、いますけど・・・」

「ソイツは俺の協力者だ。何かあれば、ソイツから俺に向かって連絡が入る。だから何か困ったときはソイツを頼れ、いいな」

「分かりました」

「そういう事だ。それじゃあ、お前はノロ回収班を呼べ。俺たちはもういく」

それをつげて、司は、可奈美達を連れて立ち去っていく。

その中で、可奈美は後ろ髪をひかれるような思いで、そして、姫和は、ある名前に意識を持ってかれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞衣と別れて、雨が降っていたので、雨宿りとして公園のドーム状の遊具の中に隠れる可奈美たち。

その中で、可奈美は舞衣から貰ったクッキーを一つずつ、感謝の気持ちを感じながら食べていた。

「・・・美味しいよ、舞衣ちゃん」

そう呟く可奈美の横で、姫和は、横で目を閉じて眠っている天道を見る。

(・・・赤城・・・確かにコイツはそう・・・)

「あれ?何か入ってる」

思考の海に落ちようとしていた意識が、可奈美の言葉で引き戻される。

それと同時に、天道も目を開けて、可奈美が袋から取り出した紙に注目した。

そこには、一言のメッセージと、どこかの電話番号が書かれていた。

 




次回『食べるという字は人が良くなると書く』



キャラ紹介
影車(かげぐるま)(そう) 二十四歳
モデル『矢車想』および『地獄兄弟』

矢車想・影山瞬→ 車想・影  →影車想

影車(しゅん) 二十二歳
モデル『影山瞬』および『地獄兄弟』

矢車想・影山瞬→ 車 ・影 瞬→影車瞬
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