仮面ライダートジノカブト   作:幻在

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食べるという字は人が良くなると書く

雨が降る夜の中、可奈美たちが荒魂と戦った場所にて、ノロ回収班による、ノロの回収が行われていた。

その中で、舞衣は雨に打たれながらも本部に連絡をしていた。

「衛藤可奈美、十条姫和、及び、仮面ライダーカブトと名乗る男を追跡中、渋谷区代々木神園町にて、荒魂に遭遇。これを、三名の協力を得て鎮圧。しかし、確保にはいたらず、三名を取り逃がしました。申し訳ございません」

『居場所を特定できただけでもお手柄よ。貴方は戻ってきて』

通話の相手は、羽島江麻。美濃関学院の学長である。

 

 

 

作戦本部にて。

『了解しました』

そのような返事が舞衣から返り、そして通話が終わる。

その事に、江麻は思わず息を吐く。

「私たち親衛隊に出撃許可が下りてさえいましたら・・・」

そこで、この部屋にいた親衛隊、獅童真希と此花寿々花のうち、寿々花がそのように言い出す。この部屋には他にも、影車兄弟もいる。

「事件発生から三十時間、現状のこの事件に関しては、箝口令が敷かれています。御前試合に参加していた刀使たちも調査してみましたが、共犯者は他にいなく、どうやら、三名のみの反攻と思われます」

真希の報告を聞いて、二人の学長は荷が重いのやら頭を抱えるような思いだった。

「あの子らに、一体いくつの罪状がつくのやらねえ・・・」

「傷害罪はありえるよな」

そこで瞬がそのように口をはさんでしまう。すかさず想のゲンコツが叩き落される。

「お前は黙ってろ」

「へぇい・・・」

その様子に、寿々花が溜息をつき、真希も呆れる。

が、その直後、突如として扉が勢いよく開け放たれる。

「何をしている親衛隊!?」

そしてこの怒声である。入ってきたのは赤いスーツを纏った女性。

鎌府女学院学長、高津雪那である。

「雪那」

「雪那ちゃん・・・」

「反逆者の潜伏先が判明しているなら、何故機動隊を派遣しない!?」

随分と高圧的な態度をとる雪那。

それに対して、真希が返事を返す。

「お言葉ですが鎌府学長。中等部の二人とはいえ、戦闘訓練を受けた刀使、しかも御刀を所持している上に、三人目の男はゼクターを所持しています。仮令、派遣したとしても、クロックアップで全滅させられるのが―――」

「ならば、そこにいる二人も連れて行けばいい!」

確かに、ゼクターを使用して変身するマスクドライダーシステムに対しては、同じものをぶつけるべきだろう。

だが、

「あいにくと、俺たちも親衛隊扱いでな。紫様の指示が無ければ動けないんだ」

想がそう説明するように、二人はゼクト社から折神家に当てられた存在であり、両名の了承によって影車兄弟は事実上、親衛隊扱いになっているのだ。

だから、紫の指示に従わなければならないのだ。

「我々は紫様の警護命令が出ているため、動けません」

真希の言葉に、雪那を舌打ちをする。

「三名の消失地点付近の防犯カメラを解析させろ」

そう言って、立ち去る雪那。

「雪那・・・」

そんな雪那に、江麻が心配そうにその名前を呟く。

「紫様に御刀を向けるなど・・・逆賊を育てた罪は重いぞ、両学長」

最後にそう言い捨てて、雪那は出ていく。

「昔は先輩先輩いうて可愛かったのに、いつからタメ口になったんやろねえ・・・」

「兄貴!なんなんだよあのババアは!」

ゲンコツが飛ぶ。

「あれでも五箇伝の一つを任される者だ。口を慎め」

「へい・・・」

その様子に、やはり親衛隊の二人は呆れるのだった。

 

 

 

 

 

雪那が出ていった先には、一人の少女と、男が立っていた。

一方は、御前試合に出ていた白髪の少女『糸見沙耶香』。そしてもう一人は、不思議な剣を腰に差した、ジャケット姿の男―――『神木(かみき)(つるぎ)』という男だ。

「沙耶香、剣、貴方方は東京に向かい、潜伏している逆賊どもを討ち取るのよ」

「はい」

「分かりました」

二人とも、無機質に答える。すると、雪那が沙耶香の頭を撫で、そして顔を近づけ囁く。

「試合で敗れはしても、私の評価は変わらないわ」

まるで、暗示をかけるかのような言葉が、沙耶香の耳に届く。

「貴方は鎌府が誇る最強の刀使、親衛隊のような試作品とは違うの」

その言葉を告げたのち、雪那は顔をあげると、沙耶香とは対照的な視線で神木を睨む。

「いいわね剣、お前はサソードゼクターに選ばれたから私が使ってやっているだけ。所詮は沙耶香の付属品に過ぎないわ。そこを見誤らないで頂戴」

「・・・分かりました」

その言葉を最後に、雪那は去っていく。

その後ろ姿を見届ける神木であったが、ふと視線を感じて正面を見ると、沙耶香が心配そうにこちらを見上げていた。

「・・・心配しないでくれよ。こういう扱いには慣れてるからさ」

「でも・・・剣も頑張ってるのに・・・」

辛そうにうつむく沙耶香。その小さな彼女の頭を、神木はそっと撫でる。

「きっと今回の任務を上手くやれたら褒めてもらえるさ。それと、俺の役目は君を守る事だから、そんなに気にすることでもないよ」

そう神木は言いながら、沙耶香に微笑んだ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある、デパートの中にて、天道、可奈美、姫和の三人は、ある人物を待っていた。

「本当にここで合っているのか?」

「うん・・・電話でここでって」

天道の質問に、可奈美がそう答える。

何故、二人がここにいるのか。その理由は、舞衣が渡したクッキーの袋の中に入っていたメッセージにあった。

『困ったらここに電話をして』

その言葉と共に、誰かの電話番号が書かれていた。その言葉に従い、公衆電話から電話をかけてみたところ、その相手にここで待ち合わせるように言われたのだ。

可奈美は、舞衣が渡したものだから、何か、罠である可能性はないと踏んでいた。

「もし、罠だったのなら、戦闘になる事もありえるぞ?」

姫和が、そのような事を口にする。

「・・・舞衣ちゃんがくれたものだから、きっと、罠じゃないとおもう」

だが、可奈美が、そのように言い返す。その言葉に、姫和も、それ以上何も言わなかった。

「・・・・ん」

それから少しして、天道が一つの気配を察知する。

「あ、いたいた」

声からして女性。いや、別に姿を隠している訳でもないから、女性なのは一目瞭然だ。

眼鏡をかけた、人の好さそうな人物だ。

その女性が、三人に歩み寄る。

「三人ともびしょ濡れじゃない。貴方が、姫和ちゃんで、貴方が可奈美ちゃんで・・・貴方が、仮面ライダーカブトくんね?」

((定着してる・・・))

あえて口に出さないが、その名前が定着している事にかなりの違和感を感じる二人。

そして本人は何故か嬉しそうだ。

「ああ、俺がそうだ」

「お義兄ちゃん・・・」

「私、恩田(おんだ)(るい)。よろしくね」

累と名乗った女性は、そう笑いかけるなり、手に持っていたビニールを押し付けてきた。

 

 

 

 

 

天道は、あえて名前を明かさず、累の動かす車についていった。

その最中で、天道は赤城と連絡を取っていた。

『そんじゃあその女の人についていってるってことか?』

「そういう事になる」

雨に打たれつつ、バイクを走らせる天道は、赤城にそのように返す。

『大丈夫なのかよ?』

「おそらく羽島学長が回してくれた人間だろう。念のために盗聴器を可奈美に仕込ませてもらったが、案の定だな」

会話は筒抜けである。

「そっちはどうだ?」

『鎌府んとこの学長が来やがった。まだ動く気はないだろうが、たぶん、明日には動くだろうな』

「そうか・・・柳瀬とは?」

『おう、さっき会ったぜ。お前が紹介してくれたおかげでスムーズに話が出来たぜ』

それを聞いてほっとする天道。どうやら、課題の一つを突破できたようだ。

「分かった。何かわかったら連絡してくれ」

『わかった。舞衣はまだここに残るみたいだから、これから二人で手分けして情報収集するつもりだ。そっちも気を付けろよ』

「誰に向かって言っている?問題ない」

それを最後に、通話を終了する。

それを確認した天道は、前方を走る車を見る。

(恩田累・・・美濃関の卒業生か・・・・)

そんな言葉を思い浮かべつつ、天道たちは、そのまま累の住むマンションへ向かった。

 

 

 

 

 

 

「おっきぃ・・・!」

「さあ、三人とも、入って入って」

累に促されるがままに、広い部屋に入る三人。

「わーい!失礼しまーす!」

見た所、累以外に人はいないようだ。一人暮らしだろうか。

「一人暮らしなんですか?」

「いいでしょ?広くて。ちょーっと職場からは遠いけどね」

どうやらそのようだ。

「美濃関出身という事は、貴方も・・・」

「ええ、元刀使だよ。もっとも、今はもう引退して、御刀も返納しちゃったけど」

「まさか、刀剣類管理局の・・・」

思わず姫和がギターケースの中の小烏丸に手を出しそうになるが、累がそれを否定する。

「違う違う、管理局や折神家とは一切関係ないから」

だが、姫和はどうにも信用できないようだ。

「であるなら、一体どんな仕事をしているんだ?」

「累さんの流派ってなんですか!?」

だが、この二人が質問した事は姫和が求めていたものとは全く違う事だった。

その様子に、累は思わず笑ってしまう。

「あっはは!その恰好じゃ寒いでしょ?先にお風呂入ってきて、着替えも用意しておくから、あと、食事もね」

そう言って、机の上にあるのは、ハンバーガーなどのジャンクフードだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂を済ませて、可奈美、姫和、天道、累の四人は、テレビを見ていた。

しかし、そのどれもを見ても、姫和が紫に刃を向けた事は報道されておらず、どうやら、箝口令が敷かれているようだ。

ただ、今現在、この部屋で唯一、姫和だけが御刀を抱えていた。どうやら累に対する警戒は解いていないようだ。

「警察による発表は無しか・・・」

「そうだねえ」

天道の呟きに、累がビールを飲みながら、そう同意する。

「貴方は、何をどこまで知ってるんですか?」

そんな累に、鋭い視線を向ける姫和。

「一応、大体の事は効いてるわ。まさかあの英雄折神紫様に御刀を向ける、なんてね」

冗談のように言っている累だが、事態は思った以上に深刻なのだ。

「ま、余計な詮索はしないけど。私、明日早いからもう寝るね。鍵のスペアは机の上に置いておくから、好きに使ってね」

「うえ、あ、ありがとうございます」

可奈美がやや驚き気味にそう返し、累は微笑んで自分の部屋に入っていく。

「あ、カブト君はソファでごめんね」

「別に構わない。十分に休めるなら、どこでもいい」

「そっか。それじゃ、おやすみ」

「おやすみなさい」

それを最後に、今度こそ累は自分の部屋に戻っていった。

「いいのかな、こんなに良くしてもらって」

そんな事を言う可奈美に、ふと姫和が顔を近づけて二人に囁く。

「可奈美、天道、ちょっといいか?」

 

 

 

 

「折神紫の背後にいたというものについて、話してくれ」

それは、舞衣と対峙した時に可奈美が言った言葉だ。

 

紫の背後に荒魂を見た。

 

その事を、姫和は聞きたいのだろう。

「あ、うん、えっと・・・」

そこから、可奈美は語り出す。

「一瞬だったから、よくわからなかったけど・・・姫和ちゃんを睨んでる感じに見えた」

「睨んでる?荒魂が?どんな形だった?」

「んー」

そう聞かれて悩む可奈美。

「睨んでいる、という事は、ソイツは目なのか?」

そこで天道が口を挟む。

「うん・・・なんというか、ぎょろっとしてた」

「目?見間違いではないんだな?」

「うん」

「何故言い切れる?」

「私だって刀使だから」

そのまま沈黙する三人。

「・・・可奈美、一瞬といったな?それは荒魂が消えたという事か?」

「消えた・・・というよりは、刀使が写シを張るときと似てて・・・隠世に潜った・・・みたいな。御当主様が御刀を取り出すときに見ちゃったって感じで・・・・」

あの時、紫は御刀をその手に持っていなかった。だが、姫和の剣を受けた時には、二刀の剣がその手にあった。

まるで、見えない空間から取り出したかのように。

「隠世から・・・取り出した・・・?」

「ゼクターと同じ感じか」

そこで、天道が口を挟んだ。

「同じ?」

「ゼクターのジョイント移動というものがあるだろう」

天道が手を掲げると、どこからともなくカブトゼクターが現れ、その手にのる。

「あれはこいつらが隠世に潜る事で可能としている。こことは違う、何者も干渉できない次元からこちらに移動して、そして、適合者の元へ飛んでくる」

「そんな凄い機能だったんだ・・・」

天道の説明に、可奈美は驚きを隠せず、姫和も同じだった。

「おそらく、その原理を利用して折神紫は隠世から二刀の御刀・・・大典太と鬼丸を取り出したんだろう。中身が荒魂なら不可能な事ではないだろう。実際に、俺たちはそれを見ているからな」

天道の言葉に、姫和は納得せざるを得ない。なぜなら、それを実際に見ているのだから。

「ねえ、皆にこの事を話しちゃだめかな?」

「ダメだ」

「ええ・・・」

「折神紫は刀剣類管理局や特別祭祀機動隊を完全に掌握している上に、あの折神家の当主でもある。話した所でもみ消される」

「そっか・・・」

流石に、そればかりはどうにもならない。それは可奈美も理解しているのだろう。

だが、ふと可奈美は姫和にある事を聞く。

「ねえ、姫和ちゃんはやっぱり御当主様に挑みに行くつもりなの?」

「ああ、折神紫ごと大荒魂を討伐する。それしかない。二度目はないと思っていたが・・・命がある以上、諦める訳にはいかない」

「無理だな」

姫和が、そう言い終えた時、ばっさりと切り捨てるような言葉が天道から発せられた。

「なんだと?」

「どれほど頑張ったとしても、お前では折神紫には勝てない。剣術という点でも折神紫に劣っている上に、人間では不可能な能力を持ち合わせている。いくらなんでも分が悪すぎる」

「だとしても、私は・・・」

「あの刺突(つき)を破られたのにか?悪いが、お前一人じゃ何もできない」

天道は、そう言うと、部屋を出ていこうとする。

だが、出ていこうとする前に、一度振り返って、最後に一言、姫和に告げた。

「おばあちゃんが言っていた。一人で抱え込まずに、誰かに半分だけでも背負ってもらえ。そうすれば、必ず成功する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソファの上で、天道は天井を見上げていた。

(十条姫和・・・責任感が強いのは良い事だが、それを抱え込み過ぎるのが問題だな)

そんな風に考えていた。

「・・・・」

可奈美の母親が死んで、その葬式の翌日に引っ越してしまって、そして事故にあって家族を失ってからの七年。

その日、このベルトとカブトゼクターを手に入れてから、ずっと、あの日の為に準備してきた。

格闘技やトレーニングを行い、どんな状況にも対応できるように体を作り上げてきた。

そして、あの時、その瞬間がやってきた。

天井に、天に向かって手を伸ばし、握りしめる。

「・・・・必ず、守るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

「皆、帰っちゃうんだ・・・」

一人、鎌倉に残る事にした舞衣は、他の皆がバスに乗って帰っていく所を見ていた。

「よ」

その後ろから、赤城が声をかける。

「あ、赤城さん」

「見送りか?」

「ええ、そんな所です・・・可奈美ちゃんたちは?」

「今、羽島学長が手配してくれた人の家で休んでるってよ」

「そうですか・・・・良かった・・・・」

昨日、天道から赤城を紹介され、可奈美たちの様子を聞く事が出来るようになって、早一晩。

「しばらくはそこで休むそうだ」

「分かりました」

「また何かあったら連絡するつもりだから、そっちも頼むぜ」

「分かりました。・・・あ」

ふと、そこで舞衣の視界に、小さな白髪の少女が目に入る。

「あれは・・・鎌府の・・・」

「鎌府の糸見沙耶香だな。一回戦で衛藤に負けた奴だっけか?」

「でも、隣にいる人は・・・」

その隣には、ジャケットを着た男が一人立っていて、その腰には何やら不思議な形の剣を携えていた。

二人は、そのまま車に乗り込むなり、どこかへ行ってしまう。

その様子を、二人して見送ってしまう。

と、そこへ。

「ヘイ!レディ・ヤナセ」

どこかはつらつな声を響かせる少女に声を掛けられる。

振り向いてみれば、そこには二人の少女と、二人の男がいた。少女たちの方は何故かどっかにバカンスに行くかのような恰好で、背後に控える二人も同じような恰好だ。

「長船の・・・」

「古波蔵エレンと益子薫だな・・・」

「OH!せっかく自己紹介しようと思っていまシタのに」

「う、すまん・・・」

「いいんデスヨ!それよりもアナタ、任務お疲れ様デシタ!お友達の事は心配でショウけど落ち込まないデ」

「あ、はい・・・」

「おいエレン、こいつらの紹介はどうするんだ?」

「おっと、これは失念していマシタ!」

「絶対忘れてただろお前・・・まあいい」

頭を抱えるのはいかにも真面目そうな男だ。

「俺は『風間(かざま)雄介(ゆうすけ)』。エレンのボディガードだ」

「刀使にボディガード?」

「特殊な事情があってな。そこは気にするな。それでコイツは・・・」

「『山矢(やまや)(しゅう)』だ。よろしくな」

一方は真面目そうだが、もう片方はそうでもないらしい。

「ああ、よろしく。俺は赤城新っていうんだ」

「よろしく頼む、赤城」

「ゴアイサツ出来て良かったデス。ワタシのご両親と貴方のパパは、お仕事のパートナーデスので」

「父と?」

「あ、そういや柳瀬って柳瀬グループの令嬢だったっけ?」

「ん?その口ぶり・・・お前は柳瀬嬢のボディガードではないのか?」

首を傾げる風間。

「いや違うって。俺と柳瀬は昨日知り合ったばかりだっつーの」

「そうなのか・・・いや、勘違いして悪かった」

「気にすんなよ」

そこで、ふと薫がエレンたちに声をかける。

「おい、エレン。早くしろ」

「あ、えっと、どこかへ?」

なんとなく聞いてみたつもりだったのだが、なぜかエレンが興奮して、

「ワタシたちやっと自由になりマシタ!これから湘南でバケーションデース!!」

「絶好の海日和だ」

「ねー!」

確かに、空はこれ間に無い程の晴天。海でバカンスをするのに、これを逃す手はないだろう。

だが、それでも、そんな事よりも、もっと気になる事があった。

それは、薫の頭の上にいる小さな生き物。どっからどう見ても、普通の生物とはかけ離れた外見。

一見、イタチやその辺りを想像したが、その、目のついた洗濯ばさみのような形をした尻尾から、普通の生物じゃない事が一目瞭然である。

 

これは――――荒魂だ。

 

「え!?それって荒魂じゃ・・・」

「なんでだ!?」

当然、驚く舞衣と赤城。

「俺のペットだ」

だが、薫は特にうろたえている様子もなく、他の者たちも警戒している様子もない。

どうやら、安全なようだ。

「ネネは、カオルの友達デース」

「許可はとってある。というか、益子の人間は御刀と一緒にコイツも継承するんだよ」

「ああ、そうなのか・・・」

とりあえず、山矢の説明で納得するべきなのだろう。だから舞衣も赤城も深くは追及しなかった。

だが、そこで、ねね、と呼ばれた小さな荒魂の視線が、なぜか舞衣に、それも特定の部分・・・もっと正確に言うなら、舞衣の実りに実ったたわわな胸に集中していた。

そして、どこかの変態のような恍惚とした表情になった途端、勢いよく薫の頭から飛び出す。

そのまま舞衣の胸に向かってダイブ――――せず空中で薫に尻尾を掴まれて阻止されてしまう。

「「?」」

一方の舞衣のみならず赤城は首を傾げたままだが。

「行くぞ」

そしてねねを引っ掴むなり、薫は踵を返して去って行ってしまう。

「ではまた会いまショウ!See you!マイマイ!アラタン!」

「はあ・・・まいまい?」

「お、おう・・・あらたん・・・だと?」

エレンの謎のあだ名に困惑する二人だが、そんな二人の肩に風間が手を置いて。

「気にするな」

「「アッハイ」」

「それじゃあ、また会おう」

「じゃあな~」

そうして、彼らは言ってしまう。

「・・・・なんだったんだ?」

「さあ・・・・?」

置いていかれた二人は、その様子に、ただ棒立ちになる他無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

累の家にて。

昨日、夜を過ごし、布団を片付けた部屋にて、姫和は御刀を正眼に構え、精神を統一していた。

彼女のもつ小烏丸から、かすかに鈴のなるような音が響いている。

「・・・よし、全開だ」

それは、三日前に使い切ってしまった、彼女の霊力の事だ。

体力は回復しても、御刀を率いてでの写シや迅移など使う為の霊力は回復していなかったのだ。

それを、昨晩をもって全て回復したのだ。

その事を確認して、姫和は御刀を納める。

その時、隣の部屋、リビングから何かが落ちるような音がした。金属質の軽い音―――アルミ缶の音だろうか。

それを聞いた姫和は敵の侵入と思ったのかすぐさま扉を開ける。するとそこには袋をもってテキパキとゴミをゴミ袋に入れていく天道とどういう訳かビール缶をばらけさせてしまっている可奈美がいた。

「・・・・何をしているんだ?」

「ああ、えっと・・・お世話になったから、せめて掃除ぐらいはと思ったんだけど・・・・」

聞いた可奈美の声が一気に涙声に変わっていく。その様子に、姫和は呆れる他なかった。

 

 

 

 

結局の所、だいたいの事は天道が済ませて、そのほかの皿洗いとかは姫和と可奈美が分担してやることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部にて。

「報告は以上です」

作戦本部室にて、舞衣は一人、事の事細かな報告を行っていた。

「時間の無駄でしたわね」

と、寿々花。

「何故すぐに追わなかった?」

と、高圧的に舞衣を責める雪那。

その圧力に、舞衣は思わず怖気づき、そのように怯えた様子で、その質問に答える。

「ノロの回収が先だと・・・は、判断したので・・・」

「ノロなど放置しろッ!!」

瞬間、雪那から鋭い怒号が響き、舞衣は思わず縮こまってしまう。

「あろうことか鎮圧など・・・貴様、まさか逃亡を幇助(ほうじょ)したのではあるまいな?」

「い、いえ、そんな事は・・・・」

泣きたそうになるのを必死に堪え、舞衣は否定の意思を示そうとするも、それ以上言葉が出てこない。

これ以上何か言えば、さらに何か怒鳴られると体がそう判断しているのかもしれない。

「・・・まあいい、後は我々鎌府が処理する」

「下がって良い」

辛辣な言葉を浴びせられて、すっかり参ってしまった舞衣は、その真希の言葉はかなりの救いだった。

「失礼します・・・・」

そう告げて、舞衣は一刻も早くこの部屋を出てていきたい衝動と共に、部屋を出ていった。

その様子を、江麻は心配そうに見ていた。

 

 

 

 

 

あの部屋を出てしばらくして、舞衣は立ち止まって自分の手を見た。

その手は、かすかに震えていた。

その震えに、舞衣はそれを隠すように手を握りしめる。

「柳瀬」

そんな彼女に、声をかける者がいた。

赤城だ。

「赤城さん・・・」

「報告はどうだった?」

「ええ、一応・・・終わりました・・・・」

どこか弱々しそうな彼女の声に、赤城は首を傾げる。

「柳瀬さん」

だが、そこへ新たな介入者が現れる。

「学長・・・」

「これは美濃関学長、お疲れ様です」

赤城は、江麻の姿を見るなり頭を下げる。

一応、ここの職員として紛れ込んでいるのだ。このぐらいの礼儀は弁えなければ。

そんな赤城に微笑みつつ、江麻は舞衣を見る。

一方の舞衣は、一度顔を逸らし、やがて何かを決意したかのように、江麻の方をむいて訴える。

「ことの重大さは理解しているつもりです。私はただ、可奈美ちゃんを信じているだけで・・・!!」

必死に、何かを願うかのように、江麻に言い寄る舞衣。

その様子に、江麻は驚いた様子であったが、やがて微笑むと、舞衣の耳に一つ耳打ちした。

「あの三人なら大丈夫よ」

「え・・・」

その言葉に、舞衣は一瞬なんのことだが分からなかったが、すぐに三人がある人の家に泊まっている事だと悟る。

江麻には悪いが、舞衣も舞衣で赤城から聞けることは聞いている。

ここは、赤城の正体については伏せるべきだろう。

江麻はすぐに歩き出す。その後ろを、舞衣は慌ててついていく。

その様子を見送る赤城であったが、ふと背後に気配を感じた。そして振り向くよりも先にその気配が話しかけてきた。

「ねえねえ、せっかく見つけられたのに逃げられちゃったのって本当?」

振り返れば、そこには、壁によりかかる小さな少女が一人。薄紫色の長髪に、見覚えのある制服。あれは、折神紫親衛隊の隊服だ。

「ッ!?親衛隊の―――」

舞衣が、その言葉を言い終える前に、相手が動く。

恐ろしい速度で抜刀された刀は、そのまま舞衣が反応できないまま、頸筋に突きつけられる―――その直前。

「うおっと!」

 

赤城が少女の御刀を()()()()()()

 

「「「!?」」」

飛び回し蹴りの要領で放たれた蹴りが、少女の刀を弾き飛ばし、下がらせる。

「いきなり御刀を向けるのはいささかやばいんじゃないか?燕結芽」

ネクタイを締めなおして、そう注意を促す赤城。

一方の、折神紫親衛隊第四席『燕結芽』は、弾かれた御刀を見て、やがてにひっと笑って、赤城を物色するように見る。

「おにーさん、強いね」

「まあこれでも鍛えてるからな」

「もう一回やったら同じこと出来るかな?」

「流石に二度目は勘弁してくれ」

流石に赤城も先ほどの一撃はまぐれに等しい。常人の目には留まらない程の、それこそ舞衣でさえ視認する事の出来ない速度で抜き放たれたあの一撃は、赤城の目には見えていた。だからといって対応できるといったらそうではなく、あれはとっさに体が動き、なおかつ運が良かったから弾き飛ばせたのだ。

二度目は、おそらくないだろう。

()()()()()()()()()()()()()話は変わってくるんだがな)

一触即発の空気。だが、その最中で、江麻が口を挟んだ。

「燕さん、御刀を納めなさい」

「はぁーい」

その言葉に結芽は素直に従い、さっと鞘に御刀を納めた。そして、三人の横を通って去っていく。

その最中、舞衣の隣を通ろうとしたとき、結芽は舞衣に告げた。

「おねーさんじゃ、そもそもあの三人に勝てないよ」

「ッ!?」

その言葉が、舞衣の胸に深く突き刺さる。

その反応を楽しんだのか、結芽はそのままさっさとその場を去っていった。

その最中で、

(あのおにーさんも、美濃関のおねーさんもすごいけど、あっちのカブトって人はもっと強い・・・)

「戦ってみたいなぁ」

その目は、何かを求めるかのように、ぎらぎらとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――おばあちゃんが言っていた。『食べる』という字は、人が良くなると書く、と」

凄まじい手際で料理を作っていく天道の横では、天道ほどではないが良い手際を見せる姫和。

「すごぉい。お義兄ちゃんはともかく、姫和ちゃんも料理上手なんだね」

「以前、よく、母親に作っていたんだ。最近は滅多にしないけどな」

「お母さんに・・・?」

「ああ・・・私の母も刀使だった・・・長患いの末に、去年、死んだがな」

「そっか・・・姫和ちゃんのお母さんも・・・」

虚しい沈黙がその場を支配する。

「ふん」

 

ボォウッ!!

 

「「うわぁああ!?」」

だが突如としてフライパンから炎が立ち上った。

「む、すまん」

どうやらフランベしていただけのようだ。

「おい、結構めんどうな工程を通していたと思うんだが、一体どうやったらこの短時間でそこまでやれる・・・!?」

「調味料や時間を置くものはあらかじめ作っておき、寝かせている間に他のものを作る。それで出来た調味料などをあれやこれやしてあれがこうでそれがこうで―――」

「分かった!わかったからもういいよお義兄ちゃん!!」

改めて、天道のハイスペックさを実感する可奈美と姫和だった。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、累が帰ってくる。

「ただいまぁ・・・って、おお!」

部屋の様子を見て、累は感嘆する。

それもそうだろう。今朝散らかっていた部屋が、帰ってみれば引っ越したばかりも同然の様子になっているのだから。

「お世話になったお礼として、私と姫和ちゃん、それと司お義兄ちゃんの三人で掃除しました」

そう可奈美が言って、二人へ視線を向けると、天道はさも当然と言わんばかりに胸を張り、対照的に姫和は恥ずかしそうに顔を逸らす。

「ありがとう!ん?なに?良い匂い!」

「今日の献立は姫和が作った鮭の焼き魚と大根の煮物に俺特製の味噌汁と回鍋肉だ」

「うわーお無駄に豪華」

「ごはんと一緒に食べるが良い」

やはり上から目線な言い草が目立つ天道。

そんなわけで夕飯を食べ始める一同。

「うん、美味しい!意外、姫和ちゃん女子力あるんだ」

「べ、別にこれくらい・・・」

「カブト君も、良い腕してるじゃない」

「当然だ。なぜなら俺は天の道を行き、全てを司る男だからな」

「変わらないなぁお義兄ちゃんは」

「自己主張が激しいだけじゃないのか・・・?」

変わらない天道の様子に、姫和はやはり慣れないようだ。

「あ、そうだ。三人にちょっと見てほしいものがあるの」

そんな事を言い出した累に、三人は目を瞬かせた。

 

 

 

 

 

 

 

「場所を特定しました」

作戦本部にて、職員の一人がそう声をあげる。

「部屋の持ち主は恩田累。元美濃関学院の刀使であり、十年前に御刀を返納。現在は八幡電子に勤務」

「八幡電子というと・・・」

「S装備開発に携わっている会社の一つだな」

真希の言葉につなげるように、想が答える。

「そこにアイツらがいるのか?」

「だろうな」

瞬の質問に、想が答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――了解、これより任務を開始します」

車の中で、沙耶香が御刀をもって、通話に答える。

「剣」

「分かってる」

どこからともなく、サソリ型のゼクター『サソードゼクター』が神木の手に収まる。

「変身」

そのサソードゼクターを、刀型の変身ツール『サソードヤイバー』に装着する。

 

『HENSHIN』

 

すると、神木の体が、武骨な装甲に覆われる。その装甲にあちこちに、無数のチューブが張り巡らされていて、かなりえげつない恰好となっている。

「・・・いこう」

「うん」

沙耶香と神木は、すぐさま指定された場所へ向かった。

 

 

 

 




次回『協力者&襲撃者』




キャラ紹介

神木(かみき)(つるぎ) 二十歳
モデル『神代剣』

神代剣→神木剣→神木剣


風間(かざま)雄介(ゆうすけ) 二十四歳
モデル『風間大介』

風間大介→風間雄介→風間雄介


山矢(やまや)(しゅう)
モデル『矢車想・影山瞬』

矢車想・影山瞬→矢 う・山 しゅ→山矢しゅう→山矢修

感想、出来ればお願いします。

次回は土曜日零時投稿の予定です。
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