バイクでしばらく移動して、静岡県伊豆半島の端、石廊崎付近までやってきた可奈美、姫和、天道の三人。
「ここでしばらく休もう」
「ふあーつっかれたぁ」
バイクから降りて、伸びをする可奈美。
一方の天道は、赤城に連絡する為に携帯を取り出し、電話をかけていた。
「姫和ちゃんはどうだった?」
「・・・・」
「姫和ちゃん?」
どういう訳か答えない姫和。
だが、返答の代わりに、何かを話し出す。
「可奈美」
「何?」
「お前にはいろいろと助けられた。礼を言う。だがやはりここで別れよう」
「いやだから、私も姫和ちゃんと一緒に行くって・・・」
可奈美が、そう反論しかける。だが、姫和は険しい表情をもって止める。
「この先は、無理だ。一緒にはいけない」
「・・・どうして?」
「昨夜の件で分かった。お前の剣は守る剣、対して私の剣は斬る剣だ。全くの別物だ。この先の戦いにおいては斬る剣しか必要ない」
「そんなの勝手に決めないで。姫和ちゃんがそう決めつけてるだけだよ」
姫和の言い様に、むっとして反論する可奈美。
天道には何も言わずに、先に歩き出す姫和。その後を、天道に言おうかと思ったが、それよりも姫和についていく事を選んだ可奈美。
「可奈美、お前は実際に人を斬った事はあるか?」
「え・・・?」
「あるいは、荒魂化した人を」
「ない・・・けど・・・」
姫和の質問に、淀んだ言い方をする可奈美。
「近年、人が荒魂化する事象はほとんどない。だが少し前、それこど私の母の代には、そういうのは日常茶飯事だった」
険しい顔で、続ける姫和。
「荒魂化した人はもはや人ではない。稀に、記憶を保持したまま言葉を話す個体もいるが、荒魂は荒魂だ。御刀で斬って祓う。
その言葉に、可奈美は思わず俯いてしまう。
「・・・分かってるよ」
絞り出すように、そう答える。
「これから私がすることは荒魂退治だ。だが限りなく人斬りに近い」
静かに、しかし重みのある言葉で、姫和は可奈美に言い聞かせる。
「私は折神紫を斬る。そしてそれを阻むものも同じだ。その動機も私怨に近いものだ。だがお前には斬れない」
姫和は断言する。
「だからここで別れるんだ」
歩き出す姫和。
「待って・・・ッ!?」
そんな姫和を引き留めようとした瞬間、姫和が振り向きざまに御刀を抜刀。可奈美に向かって振り下ろしてくる。それに対して、可奈美も応じて御刀を抜き、受け止める。しかし、不意打ちであっても鋭い一撃が直撃し、御刀を御刀によって抑えつけられ、さらに衝撃で腕が痺れる。
「・・・・ぬるいな」
「ッ・・・」
姫和の辛辣な言葉が突き刺さる。
御刀を納めて、姫和は背を向けて歩き出す。ふと、立ち止まったかと思うと、可奈美に告げた。
「お前は戻れ。戻って荒魂から人々を守れ」
それだけを告げて、姫和は、可奈美を置いて去っていく。
一方の可奈美は、御刀を持ったまま、その場に立ち尽くしていた。
鎌府女学院の学長室にて。
「所轄に保護されるなんてどういうつもり?」
「もうしわけ・・・ありません・・・」
「すみませんでした」
雪那の叱責に、沙耶香と神木はそう謝罪する。
「どうやら貴方を過大をしていたようね。お前もだ剣。ゼクターに選ばれておきながら、まさか性能で劣るカブトゼクターに敗北するなど。恥を知れ」
「ッ・・・はい・・・」
雪那の辛辣な言葉に、神木は辛そうにうつむく。
その様子に、沙耶香は剣を心配そうに見上げる。
だが、
「沙耶香」
雪那が声をかけたかと思うと、腰の妙法村正がかすめ取られ、気付けば雪那の手の中にあり、その刃が沙耶香の頬に押し当てられていた。
「沙耶香ッ・・・!」
「動くな」
思わず動きそうになった神木を雪那が一喝する。一方の沙耶香は微動だにせずにその場に立ちすくんでいた。表情も、相も変わらず。
「御前試合の結果などに興味はありません。任務成功率百パーセントが貴方の存在価値。少し過保護に育てすぎたかしら?」
脅すような低い声音。突きつけられる冷たい刃。しかしそれらを向けられても、沙耶香は微動だにせず、心音も変わらず。剣は歯を食いしばって耐える。
そんな中で、突然、扉が叩かれる。
「入れ」
御刀を納めてから、そう言う雪那。
すると扉が開けられ、入ってきたのは、色素が抜けた髪をした、親衛隊第三席の『皐月夜見』だった。
「何の用だ?」
「紫様がお連れするようにと」
「紫様が・・・・?」
その名前を聞いて、思わずたじろぐ雪那。
「・・・分かった。すぐに行く」
それに従い、雪那は夜見についていった。
「・・・沙耶香」
「・・・ごめんなさい、剣。私の所為で、貴方が怒られてしまって・・・」
沙耶香は、申し訳なさそうに、そう謝る。
「そんな・・・沙耶香が誤る事じゃない。そんな事より、その傷を手当しないと・・・」
「でも、救急箱、ない・・・・」
この学長室に、救急箱なんてなかった。
「そうだった・・・」
頭を押さえてその事を嘆く剣。
そんな神木の様子を他所に、沙耶香は、頬の傷に触れる。
ぴりっとした痛みが、傷口から伝わってきた。
「ああ・・・分かった。それじゃあ、引き続きよろしく頼む。じゃあ」
通話を切って、一息ついた天道は、スマホを持つ手を額に押し当てる。
(糸見と神木はどうやら無事に戻れたようだな。可奈美は喜びそうなことだが、これが吉と出るか凶と出るか・・・)
「いいや、俺は天の道を行き、全てを司る男だ。俺の望みは、その時に必ず叶う」
「ずいぶんな自身だな」
突然、どこからともなく声が聞こえてきた。
見れば、そこには二人の男がいた。一人はスーツを着た男。もう一人はスタジャンを着た茶髪の男。
「仮面ライダーカブト。その正体は、七年前に行方不明になっていた天道司とは、驚いたな」
「なんだお前たちは?」
天道は、一刻も早く可奈美たちの元へと急ぎたかった。いつの間にかどこかに行っていて、探そうと思っていた矢先にこれだ。どうにかしてすぐに行かなければ。
「こちらが一方的に名前を知っていては確かに不便だな。俺の名前は風間雄介」
「山矢修だ。よろしくな」
腰に手を当てて、名乗る風間と、手をひらひらと振る山矢。
いずれにしろ、油断ならない相手なのは変わらない。
「急いでいるんだ。CMの勧誘とかなら悪いが他を当たってくれ」
「残念だが俺たちはスカウトではない」
風間が、スーツの下から、何かのグリップのようなものを取り出した。
一方の山矢も、左手首にあるブレスレットを露出させる。
「お前をとらえに来た。神妙にお縄につけ」
どこからともなく、何かが飛んでくる。
「これは―――」
ゼクターだ。それも、トンボとハチの二体。
「ドレイクゼクター」
「ザビーゼクター」
二人がそう呼びかけ、風間がグリップを真上にかざし、山矢がハチ型のゼクター、『ザビーゼクター』を捕まえる。
そして、トンボ型のゼクター『ドレイクゼクター』が、風間の持つ『ドレイクグリップ』に装着され、一方の山矢はザビーゼクターをライダーブレスにセットする。
「「変身」」
『HENSHIN』
次の瞬間、二人の姿が装甲に包まれていき、やがて重装甲の戦へと変貌する。風間は、青い、ヤゴのような姿に、一方の山矢は黄色の蜂の巣のような姿をした姿になった。
「仮面ライダーか」
「俺たちはマスクドライダーって呼んでるがな。ただま、お前風に言うと、俺は仮面ライダーザビー、そんでコイツが、仮面ライダードレイクっていった所かね」
「さっさとお前も変身しろ。死にたくなければな」
「言われなくてもそうする・・・やれやれ。面倒な事になった」
カブトゼクターをつかみ取り、そしてすぐさま腰のベルトにカブトゼクターを装着した。
「変身」
『HENSHIN』
たちまち天道の姿も蛹のような姿をした重装甲に身を包まれる。
だが、その次の瞬間、割とすぐ近くの場所で大きな音が響く。
「ッ!?」
「お、向こうも始めたか」
「どういう事だ・・・?」
「俺たちが二人だけできたと思うかよ?」
「まさか・・・・」
カブトが何かを言いかけた瞬間、その足元がはじけ飛ぶ。
ドレイクが、その手の銃を撃ったのだ。
「刀使がもう二人、あの二人の元へ向かった」
「そしてお前の相手は俺たちだ!」
ザビーが突貫する。
カブトにすぐさま接近したザビーは左のフックを繰り出す。
その顔面を狙った一撃を躱し、続く右のジャブを躱して、躱しに躱し続ける。
「ボクシングか・・・」
「どうしたどうしたァ!?その程度かァ!!」
「そんなわけないだろ」
放たれた右ストレート。その一撃をカブトは体を傾けて躱して懐に飛び込んでその腹にブローを打つ。
「ぐお!?」
思いっ切り下がったザビーを追撃する為にさらに接近しようとするが、しかしどこからともなく飛来した銃撃がカブトを襲う。
「ぐぅ!?」
銃撃を喰らい。思わず後退するカブト。
見れば、そこにはドレイクがこちらに向かって銃口を向けていた。
「そう簡単に倒せると思うな」
それを見て、カブトは改めて構えた。
「くっ!?」
蹴り飛ばされ、吹き飛ばされる可奈美。
可奈美も可奈美で、カブト同様に二人の刀使に襲われていた。
一方はブロンドの髪をなびかせる快活な少女『古波蔵エレン』。もう一方は、巨大な御刀を持って襲い掛かる『益子薫』。
エレンは体の一部を硬化させる金剛身を合わせたタイ捨流と体恤による戦法で、一方の薫は巨大な御刀と高段階の八幡力による強力な遠距離斬撃を繰り出してきており、エレンが追い詰め、薫が止めをさすという、隙の無い連携によって可奈美を追い詰めていた。
「どうしマシタ?その程度デスカ?」
エレンの挑発、しかし可奈美は乗らない。
だが、突如として耳に聞こえた自分たちのものとは違う金属音が聞こえてきた。
見れば、なんとカブトが押されて気味にこちらに転がり込んできていた。
「お義兄ちゃん!?」
「可奈美か」
背中合わせで相手を牽制する二人。
「え!?兄妹!?」
「落ち着け、おそらく衛藤が勝手に呼んでいるだけだ」
何故かザビーは驚いていてドレイクは呆れていた。
「OH?ご兄妹デシタカ?」
「風間の言葉を聞いてなかったのかお前は」
そしてなぜかこっちも勘違いしている様子だった。
「姫和はどうした?」
「それが・・・先に行っちゃって・・・」
「そうか・・・とにかく、今はこの場を切り抜けるぞ」
現状、二対四。数では圧倒的に不利だ。
だが、だからと言ってみすみす捕まる訳にはいかない。
しばしの膠着の後、エレンが動く。振り下ろしの一撃を可奈美は躱し、その切っ先をカブトはやや前進して躱す。
そして可奈美はエレンと入れ替わるように移動して――――
「お義兄ちゃん!」
「キャストオフ」
「What!?」
次の瞬間、カブトの装甲が弾け飛び、その飛びちった装甲がエレンに直撃し、吹き飛ばす。
そして、まだある装甲が、ザビーやドレイクにも殺到する。
「チッ!キャストオフ!」
「キャストオフ!」
それにすぐさま二人もキャストオフで対応する。
ドレイクはドレイクゼクターの尾の部分『ヒッチスロットル』を引っ張り、ザビーはザビーゼクターを百八十度回転させてキャストオフを敢行する。
『CHANGE BEETLE』
角が持ち上がり、固定される事で装甲の解除を完了するカブト。
『CHANGE DRAGONFLY』
まるでトンボの羽を模すかのようなマスクが露わになり、トンボを模すかのような左右非対称な装甲を露わにする。
『CHANGE WASP』
一方のザビーはまさしくハチのような姿へと変貌し、さらに身軽になったかのようにフットワークをする。
「よーし軽くなった。ここからが俺の本領発揮だぜ」
腰のクロックアップボタンに手を伸ばすザビーとドレイク。
次の瞬間、三人のライダーがクロックアップを開始する。
『CLOCK UP』
恐ろしい速度で、三人が錯綜する。
落ちる木の葉の動きが遅くなり、その最中でカブト、ザビー、ドレイクが高速を駆け抜ける。
(これ・・は・・・ッ!!)
その最中に、可奈美は実感する。
次元が違い過ぎる、と。
刀使でさえかなりの無茶をしなければできない連続迅移。それを、彼らはボタン一つで成し得てしまう。
その証拠に、カブトとザビーが、凄まじい速度で拳を交えていた。
その速さは、可奈美の目をもってしても、追うのがやっと。
その速度をどうやって見切っているのかはわからないが、とにかく、常人、さらには刀使ですら入れない領域で彼らは戦っていた。
その戦いを、可奈美はただ見ているだけしかできない。それほどまでに、次元が違いすぎる。
「余所見はいけまセンよ!」
「ッ!?しまった・・・!?」
その戦いに見とれていた可奈美は、背後から襲い掛かるエレンの存在に気付かなかった。その斬撃が、可奈美に向かって振り下ろされる。その時、
「ッ!?」
「ハアッ!!」
クロックアップにも引けを取らない速度で振るわれた刃が、エレンの御刀を打ち、腕を跳ね上げる。
その少女は――――
『CLOCK OVER』
時間流が元に戻る。その寸前、カブトがザビーを蹴り上げて、さらにもう片方の足で蹴り飛ばす。
「ぬぐお!?」
地面をごろごろと転がるザビー。
「・・・ッ強ぇ!?」
起き上がって、素直にそう言うザビー。
「おい修!大丈夫か!?」
「ああ、平気平気、なんの問題もなし、ちょっくら驚いただけだ」
そしてまたカブトに向かって構える。
「こいつ、一対一だと相当強ぇぞ」
「それだけじゃない。俺とお前との位置を常に把握してお前が死角になるように立ち回っている・・・ただ、俺が懸念しているのはもう一人の方・・・十条姫和の方だ」
ドレイクが、突如乱入してきた少女―――十条姫和を睨む。
「姫和ちゃん、どうして・・・!?」
「お前こそ、どうして逃げない!?」
「だって・・・やっぱり、姫和ちゃんを一人にはできないよ!」
その言葉に、姫和は思わず可奈美に視線を向ける。
その一方で、カブトのキャストオフによって吹き飛ばされたエレンが戻ってくる。
「いったたぁ、金剛身が間に合っていなければ危なかったデース」
「よく無事だったなお前」
「YES!さてと、これで四対三デース」
エレンが御刀『越前康継』を三人に向ける。
「可奈美、姫和、お前たちは迅移で消耗している・・・隙を見て逃げるぞ」
「分かった」
「・・・いいだろう」
三人が背中合わせで敵と対峙する。
「作戦会議は終わったかい?」
ザビーがそう聞いてくる。
「じゃあ、遠慮なくいかせてもらうぜェ!!」
鋭い踏み込みが来る。
「行けッ!!」
「「ッ!!」」
その超速の一撃を受け止め、カブトは叫ぶ。
そして可奈美と姫和はエレンと薫に向かって走り出す。
「そう簡単に抜けさせると思うなよ」
「こっから先は行かせないデース!」
エレンが前に出る。
可奈美の上段斜め振り下ろしを躱し、そこへ姫和の追撃が来るも防がれ、防いだと思ったら迅移で離脱。そこへ、
「きぇえー」
なんともやる気のない声で絶対破壊の一撃が振り下ろされる。
アスファルトが砕け散り、その下の地面さえもえぐり取られる。
「この二人、息がぴったり過ぎる・・・!」
「く・・・!」
どうにか回避に成功した二人だが、流石に相手方の連携には劣るようで、突破は難しい。姫和が振り返ってみれば、そこではクナイを器用に、左右持ち換えながらザビーの攻撃をいなし反撃し、その最中でドレイクへの牽制の銃撃をしつつ、可奈美達に近づけさせないように戦っていた。
二対一、それも相手はカブトと同じ仮面ライダー。さらには連携が薫とエレンと同じくらいの連携でかかってきている。
これではあまりにも負担が大きすぎる。
「ならば・・・!」
姫和が駈け出す。それをエレンが迎え撃つ。だが、エレンの予想は外れ、姫和が行ったのは腹への体当たり。そのまま前に一気に駈け出し、木に叩きつける。
その間に、可奈美が薫を仕留めにかかる。
(初撃さえ回避すれば・・・!)
薫の御刀は無駄にでかい。それ故に威力も大きいが隙も大きい。それをエレンというパートナーをもって補っているのだ。
「ふん」
だが、薫はあの無茶苦茶な振り下ろしではなく御刀をブーメランのように投擲。
「ええ!?投げた!?」
これには流石の可奈美も驚いて頭を下げる。
そのまま薫の祢々切丸が飛んで行ってしまうのかと思った瞬間、突如として何もない空間から小さな小動物が現れたかと思ったら巨大な御刀をキャッチ、その小さな体で薫に投げ返した。
「え!?荒魂!?」
「そうだ、目が良いな」
「どういう事ぉ!?」
流石に混乱する。
その一方、エレンを引き離した姫和と言えば、
「試合では負けマシタけど、今回はどうでショウ?」
右甲段の構えをもって姫和と対峙するエレンが迅移で姫和に接近、そこで姫和は迎撃のために刀を振るうも、金剛身で硬化した左手に弾かれ、カウンターで放たれた蹴りが迫る。どうにかその一撃を迅移を使って躱す。
「こんな戦い方を・・・!?」
「試合でやると、怒られマスね~♪」
挑戦的な声音で、エレンはそう言った。
だが、その次の瞬間、二人の間で火花が散った。比喩ではない。金属同士の衝突によっておこる火花だ。
「「ッ!?」」
そちらに目を向ければ、肉眼ではとらえられない速度で二つの何かが高速でぶつかり合っていた。
その最中で、ドレイクがその様子をうかがっており、
『CLOCK OVER』
高速の時間が終わる。その瞬間、ドレイクが発砲。
「ッ!?」
それをどうにか飛んで躱し、そこをすかさずザビーの拳が打ち据える。
「ぐぅ!?」
どうにかクナイで防いだが、その代わり吹き飛ばされて木に叩きつけられる。
「天道!」
「オット、行かせまセンよ?」
「くっ」
助けに行こうとしたが、そこでエレンが間に入って妨害してくる。
しかし、その間にも木によりかかるカブトにザビーが迫る。
「そんじゃあ、止めと行くかねぇ」
ザビーが、手首のザビーゼクターのボタンを押す。
『RIDER STING』
その音声と共に、装甲内のタキオン粒子が駆け巡る。
そこへ可奈美が来る。
「―――ッ!」
その様子を見て息を呑む可奈美。だが、カブトが送った視線を受け、耐えるようにうなずく。
そしてすぐさま姫和の方を見て、姫和も視線を合わせる。
「覚悟ッ!」
「喰らえ俺の必殺技パート1!」
ザビーの拳が――針がカブトに迫る。避ける事は出来る。だが、避けた所で、背後でザビーと同じように必殺技を放とうとしているドレイクの姿が見える。避けた所でそこへドレイクの必殺技が炸裂するだろう。
であるならどうするべきか。
その一方、姫和へと迫るエレン。
『ONE』
そこへ可奈美が妨害に入り、エレンはその一撃を全身金剛身をもって防ごうとする。
『TWO』
だが、それはフェイクであり、可奈美は振り下ろさず後ろに飛ぶ。一方のエレンの金剛身は一瞬防げればいいというのかすぐさま解除される。
『THREE』
そこへ、姫和の突きがエレンの喉元に突き出され、ザビーのパンチはカブトの頭があった木に衝突、そこへザビーゼクターの針が突き刺さり、分子の領域で吹き飛ぶ。
一方のカブトはザビーの後ろへ抜けようと体を傾けてライダースティングを躱し、そのまま前に出ようとしていたが、
「ライダーシューティング」
『RIDER SHOOTING』
ドレイクゼクターの尻尾部分を引っ張り、タキオン粒子を収束させた砲弾をあらかじめ準備していたドレイクの砲撃がカブトに迫る。
だが――――
「ライダーキック」
『RIDER KICK』
カブトの放った回し蹴りがサッカーのシュートさながらにその砲弾を打ち据え、そして弾き飛ばした。
「何ッ!?」
流石にこれには驚くドレイク。弾かれた砲弾は、ドレイクに―――ではなく、そのすぐ横を通過し、ドレイクの背後にて炸裂した。
そして、振り返ったザビーの喉元にその刃を突きつけた。
「うげっ」
「・・・・」
「分かった。分かった降参だ」
両手をあげて負けを認めるザビー。
その一方でも、エレンの御刀を向けられている上に、可奈美までいるために、薫もうかつには動けない。
「今度の刺客は長船か。何故ここが分かった」
「ふふふ、それは秘密デース」
不敵に笑うエレン。だが、そんなときに姫和の足に、あの小さな荒魂が噛みつく。
「なんだ・・・荒魂・・・!?」
「あの子の言う事を聞くみたい」
「聞いたことがある。確か、刀使の家系に、大昔の荒魂を代々受け継いでいる一族がいる、と・・・・」
「あ、その通り。すごいなぁ、博識なんだなぁお前」
「・・・」
「うお」
ザビーの軽口に思わず刃を僅かに迫らせるカブト。
「荒魂を使役か・・・質問に答えろ。さもなくば・・・・」
「姫和ちゃん・・・」
「私は目的を果たす。それを邪魔をするものは誰であろうと・・・」
「ちょ、ちょっと待って下サイ」
そこでエレンが慌てたように声をあげる。
「なんだ?話す気にでもなったか?」
「えーっと・・・その、あと、五秒ほど」
「五秒・・・?」
次の瞬間、
空から何かが落ちてきた。
それをどうにか躱したカブト、可奈美、姫和は距離を取る。
「ごほっ、ごほっ・・・!」
「あれは・・・!?」
それは、ロケットのようなものだった。
何かを運ぶためのもののようだが・・・
「S装備・・・!?荒魂殲滅用の装備を持ち出してきたのか!?」
「なにッ!?」
カブトが驚く。そう、それはS装備射出用コンテナなのだ。
「S装備なんて、私、研修で一度しか着た事ないよ!?」
「私もだ・・・」
「俺のシステムはあれの発展形だが、実物を見るのは初めてだ・・・」
巻きあがっていた粉塵が消えかかる頃には、そこにはS装備を装備した薫とエレンの姿があった。
「ふっふっふ、お色直し完了デース」
「アーマード薫、見参・・・!」
なにやら乗り気な二人についで、その背後にはザビーとドレイクの姿もあった。
「へへっ、第二ラウンドとしゃれこもうか!」
「大義の為の犠牲となれ」
「・・・・いや犠牲にしちゃあかんでしょ?」
「ライダースティングを本気で叩き込もうとしていた奴に言われたくはない」
何やら言い争っているが、今はそんな事関係ない。
「これで形勢逆転デース」
不敵に笑うエレン。
「姫和ちゃん、司お義兄ちゃん」
「ああ」
「分かっている」
それぞれ構える可奈美、姫和、カブトの三人。
「行くよ・・・」
その声に、相手方も構える―――
「せーっの!!」
―――が、
『CLOCK UP』
そんな電子音と共に、三人の姿が忽然と消えた。いや、迅移やクロックアップを使っている形跡はあった。
「え?・・・え?・・・」
「おい、まさかあいつら・・・」
「逃げたな」
そう、逃げたのだ。
「おい!?主役メカの活躍シーンだろうがァ!」
そんな、薫の虚しい叫びが、森の中が木霊した。
「S装備の射出だと?」
想の言葉に、鎌府の生徒が頷く。
「なんの連絡もなかった筈ですけど・・・」
「映像を出せ」
想の言葉に、その生徒が応じる。
モニターに映し出されたのは、二つの影。拡大してみれば、それははっきりと見え、確かにS装備を射出する際に使用するコンテナだという事が分かった。
「確かに、射出用コンテナっぽいなぁ」
「誰が撃ったんだ・・・?」
いろはの言葉に、瞬が続けるように顎に手を当てる。
「折神家管轄外のS装備・・・か・・・」
「折神家と管理局以外であれを開発できる組織は、ゼクトを除いて他にいない」
「ありえるとすれば、例の『舞草』・・・ですわね」
寿々花の言葉に、一同は頷く。
「舞草が噂通りの特祭隊内部の造反分子ならありえなくもないな」
「じゃあ紫様は十条姫和とそいつらが接触するのを狙って泳がせているって事か?」
「だとすれば、ありえるな。ここで一気にカタを付ける方が良いだろう・・・ん?」
ふと、そこで夜見が作戦室に入ってくる。
「どうした?」
「獅童さん、此花さん、紫様より、我々親衛隊に出動命令が出ました」
その言葉に、一気にその場の空気が変わる。
「よっしゃあ!やっと俺たちの出番が来たって事だな!」
「いえ、想さんと瞬さんはここで待機してもらいます」
「ズコー、出番ないんかーい」
上げて落とすような展開にずっこける瞬。
「敵にはマスクドライダーシステムを保有している者がいる。俺たち無しでどうするつもりだ?」
「先ほど、ゼクト本社より派遣されたライダーが来られました」
「そうか・・・」
それを聞いて、想は顎に手を当てる。
(今動けるライダーは、確か新型を使う奴ら位だったような・・・)
記憶を探りつつ、想は、部屋を出ていく獅童たちを見送った。
雨が降る中、傘の下で薫、エレン、雄介、修の四人は森の中で立ち往生していた。
「んで、どうだったアイツらは?」
ふと、薫がそう聞いてくる。
「能力的には問題無しデス」
「天道の方もすさまじいものだった。よもやたった一人で俺たち二人を相手取るとは、恐れ入る」
「ユウスケがそう言うなら間違い無しデスネ。あとは・・・」
エレンはさらに言いつのろうとするが、他に言葉が見つからず、薫と修に投げる。
「カオルとシュウはどう思いマシタ?」
「そうだな・・・ただの向こう見ずじゃないっぽいな」
「それだけかよオイ・・・まあ、俺としてはアイツの拳から、何かを成したい思いが伝わって来たぜ」
サムズアップしつつ、修はそう言った。
その一方、件の四人からどうにか逃げ切った三人は、見つけた廃棄された建物にて身を隠れていた。
(この様子じゃ、バイクは廃棄するしかないか・・・・)
雨の様子を見つつ、天道はそう思い老ける。
そのまま天道は振り返り、床に座る可奈美と姫和のもとに戻る。
「どうだった?」
「奴らは見かけなかった。しばらくここにいても何の問題もないだろう」
その言葉に、可奈美と姫和はほっと胸をなでおろし、ついで可奈美は姫和に礼を言う。
「ありがとう助けてくれて」
しかし、姫和は答えない。
そんな中、少し考えた可奈美は、
「さっき、姫和ちゃんの剣を受けた時、思ったんだ。姫和ちゃんの剣は重たいって」
少しずつ、語っていく。
「人を斬るっていうなら、夕べの沙耶香ちゃんの方が上だし、威力だけで言ったら、あの大太刀の子の方が上だよ。でも、姫和ちゃんの剣が、一番重たい」
「・・・何が言いたい?」
その可奈美の言葉に疑問を持つ姫和。
「・・・姫和ちゃんの剣には意思が乗ってるんだって思った」
可奈美は、言い切る。
「目的を達成しようっていう強い意思。だから重たい」
その様子を、天道は黙って見る。
「あの時、御前試合の時、私は姫和ちゃんがどう攻めてくるか。それだけを考えてた。姫和ちゃんの事で頭がいっぱいだった」
忘れもしない、あの瞬間。姫和の剣を見た時から、胸の内にあった、あの衝動と似た、いや、そのものである思いを。その胸の高鳴りを。
それは、対峙した時にはさらに高まっていたことも、忘れない。
「でも、姫和ちゃんは私の事なんか見てなかったんだね」
だが、実際には姫和は自分の事を見ていなかった。ただ一つ、自分の目的だけを見据えていた。
「私、結構頭に来てたんだよね」
「頭に?」
思わず返してしまう姫和。
「うん。姫和ちゃんに無視された事」
そう、なぜか頬を綻ばせている可奈美。
だが、すぐにその表情は引っ込み、真剣な表情になる。
「それと、あのまま黙って見てたら、姫和ちゃんが殺されちゃう事」
「・・・!?」
その言葉に、姫和は思わず可奈美の方を見る。
「姫和ちゃんの言う通り、私には覚悟が無かった。何をするっていう意思も。でも、今なら言える」
可奈美は、確かな声音で言う。
「私の剣が守る剣なら、私は姫和ちゃんの目的と姫和ちゃんを守る」
それが、可奈美の答え。可奈美が、剣に乗せる意思。
「それは・・・結局人斬りの手助けをすることになるぞ」
「違うよ」
姫和の言葉を、可奈美は瞬次に否定する。
「姫和ちゃんは御当主さま・・・ううん、人に化けた荒魂を斬る。それ以外は私が斬らせない。それが私の覚悟だよ」
微笑んで、そう高らかに宣言する可奈美。
その様子に、天道は笑みを零す。
そして姫和は、その言葉を受けてしばし黙り込んだあと、口を開いた。
「・・・私が折神紫を倒す理由」
「え?」
「話したくなったら話せと言ったろう。今話す」
「う、うん」
自然と、背筋が伸びてしまう。
「可奈美、そして天道。お前たちは、二十年前の大荒魂の事件を知っているか?」
「相模湾岸大災厄?」
「ああ、当時俺は二歳だったが、御袋からよく聞かされた」
「確か、江ノ島に現れた史上最悪の大荒魂を、折神紫様と今の五箇伝の学長たちによる特務隊が討伐した・・・?」
「ああ、そして、その特務隊の中には、私の母もいた」
その言葉に、可奈美は思わず目を瞬かせる。
「記録には残されていない。当然だ。世に知れ渡っている事件の顛末は、何もかもが虚偽だからな」
「・・・どういう事?」
可奈美の質問に、姫和は、懐から一通の手紙を取り出した。
「全ての真実は、この手紙に書かれていた」
その手紙を見て、天道は自らの懐にある手紙のある場所に手を当てる。
「お前も見ただろう?英雄折神紫の正体は、討伐されたと伝えられる大荒魂そのものだ」
悲痛そうに、手紙を握りしめて、姫和は続ける。
「この国・・・いや、世界の存亡を脅かす程の災厄、忌むべき存在、純然たる穢れそのもの。それが奴だ。そして、数ある刀使の中で唯一奴を打ち滅ぼせる力を持っていたのが、私の母だ」
「姫和ちゃんの、お母さん・・・?」
それほど、力のある刀使だったのか。
「だが、完全には討ち滅ぼせず、奴は折神紫に成りすまして生き延びた。刀使の力を使い果たした母は、年々目に見えて弱っていった。そして去年、私が見守る中息を引き取った・・・・・その夜、私は誓った」
純然たる思いを言葉に乗せて、姫和は言う。
「母さんの命を奪って、それでも人の世に潜み続ける奴を、私は討つと・・・!!母さんがやり残した務めを、私が果たすと・・・!!」
雨がさらに強くなる。その中で、姫和はさらに語る。
「お前の言う重たさの半分は刀使として責務。だが半分は私怨だ。だから付き合う必要はない・・・」
「・・・・そうだね」
姫和の、拒絶の言葉にそう答えて、可奈美は、握りしめられた姫和の拳を両手で包み込む。
「・・・!」
「重たそうだから、半分私が持つよ」
可奈美のその言葉に、姫和の目元が熱くなる。
「俺は、あの日の為に準備をし続けてきた」
そして、天道も。
「俺の行く末は俺が決める。どれほどお前が拒絶しようとも俺は可奈美と共にお前を守る」
「天道・・・」
「次いで、お前を元気づける為に、一つ良い事を教えてやる」
「いい事・・・だと・・・?」
「ああ」
その天道の言葉に、姫和はここ一番の驚きを見せ、そして同時に―――
「―――お前の兄貴分、赤城新は生きている」
「・・・・・え」
雨が上がる頃。
石廊崎付近の道路の駐車場にて。
特別祭祀機動隊が、そこに拠点を構えていた。
その目的は、もちろん十条姫和、及び衛藤可奈美と、仮面ライダーカブトと名乗る男を捕まえる為だ。
その中には、寿々花、真希の結芽を除く親衛隊の姿もあった。
「丁度雨も止みましたわね」
寿々花が、そのような言葉を呟く。すると、機動隊の一人が二人に駆け寄ってくる。
「ゼクトからの協力者が到着しました」
「分かった」
真希が頷けば、その隊員の後ろから、三人のスーツと色違いの外套を羽織った男たちがやってくる。
「あれが、ゼクト社からの・・・」
「奥にいるのは、確か・・・」
三人が、真希たちの前に立つ。
「ゼクト社戦闘班班長の『
赤いマントの男『大和銀騎』
「同じく、班員の『
銀色のマントの『織田秀信』。
「同じく、班員の『
そして、焦げ茶色のマントの『真島克巳』
これで、こちらの戦力はそろった。
「さあ、山狩りだ」
戦いが、始まる。
次回『デッド・オア・アライブ』
キャラ紹介
モデル『大和鉄騎』
モデル『織田秀成』
モデル、無し(オリジナル)