仮面ライダートジノカブト   作:幻在

6 / 18
とじともで局長殿が出ちゃいました。
そして性能スゴスギィ・・・


デッド・オア・アライブ

月明かりの照らす夜。

「雨、上がったみたいだね」

「この月明かりなら動けるだろう」

「うん。姫和ちゃんの雨の方はどうかな?」

そう可奈美が呟いてみる先には、

「ひっぐ・・・えぐ・・・」

何故か泣いている姫和の姿があった。

「おい、まだ泣いているのか・・・」

「うるさいっ!うえぇええ・・・・!」

何度も涙を拭っているうちに目や目元がかなり腫れている。そうとう泣き腫らしたのが目に見えてわかる。

「相当嬉しかったんだよ」

「そうか・・・」

可奈美の言葉に天道は頷きつつ、他の誰かいないか外に出てみる天道。

「・・・」

周囲を見渡し、そして可奈美達の方を見る。そこから、可奈美が姫和の手を取って連れ出している様子が見え、その様子に思わず笑みが零れてしまう。

「どこにいるのかと思ったら・・・こんな所で仲良く雨宿りしてたんデスカ・・・」

その時、森の方から聞き覚えのある、何やら恨み言を呟くような声が聞こえてきた。

見れば、そこには雨でびしょ濡れになったエレン、薫、風間、山矢の四人がいた。

それを見て思わず構える二人(姫和は泣いていて気付いていません)。

「くっそ傘で防ぎきれなかった・・・」

「傘もっててびしょ濡れになるとは間抜けなのかお前たちは」

「やかましいわ!」

天道の言葉に反論しつつ、懐に手を入れる四人。一体なにが来るのかと警戒していると――――

 

「オメデトウゴザイマース!」

「ねー!」

「お前ら合格~」

「いよっ、謀反者ども!」

「歓迎しよう」

 

「「・・・は?」」

何故か、クラッカーの破裂音と、祝福が降って来た。

「大成功デース!」

「・・・あれ?これしけってるじゃねえか!」

「ハッハッハッハ!サプライズ大成功だぜぇ!」

ハイテンションではしゃぐエレンと山矢に、クラッカーがしけっていた事に思わずそのクラッカーを地面に叩きつける薫。

「・・・・ふざけているのか?」

「すまない。エレンがどうしてもと言ったんだ・・・それはそうと何故十条は泣いているんだ?」

「それについては今は聞かないでくれ。それで、どういう意味だ?歓迎というのは?」

天道が眼を鋭くして聞く。ちなみに姫和は未だ感情が抜けないのか、まるで別人のようにその場に縮こまっていた。

「ああ。お前たちの目的地は石廊崎。これで間違いないか?」

「何故、それを知っている・・・?」

「知っているさ。俺たちが、お前たちにその目的地を示した本人のもとで動いているからな」

「・・・!」

その言葉に、天道及び可奈美(姫和は聞いてません)は衝撃を受ける。

「なんだと・・・」

「ええっと、エレンさんと薫ちゃんと、雄介?さんと修?さんは・・・」

「おい!オレとエレンは同い年だ!」

「ああごめんなさい」

「ああ、ワタシもエレンちゃんが良いデース!」

「うん。エレンちゃん、薫ちゃん」

「くそ、定着しちまった・・・」

「いいじゃねえか、薫ちゃん?」

「よし、テメエは殺す」

「なぜだ!?」

エレンと薫は散らばってしまった紙吹雪などを回収していた。

「お前たちは舞草の試験に合格した。だからこうして祝福しているのだ」

「舞草・・・?」

「日本刀源流の地とも言われる、あの舞草の事か・・・」

「折神紫率いる変革派に抗い、刀使と御刀のあるべき姿を取り戻す組織としては、ナイスなネーミングでショウ?」

「折神家に抵抗する組織・・・じゃあ姫和ちゃんと一緒って事?」

ちなみに姫和はまだ泣いていて聞いてません。

「YES!」

「折神紫を討つという目的は同じだ」

「やったね姫和ちゃん」

姫和は泣いていて聞いてません。

「舞草か・・・ファインマンというのはお前たちの上司なのか?」

「あのアバターは似合ってないから、いつもやめろと言ってマスネ」

「なるほどな・・・大体理解した」

「理解が早くて助かる」

「ただ一つはっきりさせておきたい事がある・・・そこの荒魂はなんだ。その御刀から察するに、妖怪ねねと判断させてもらうがいいか?」

「それで間違いない。ねねは俺のペットだ」

「暴走する可能性は?」

天道の鋭い視線が、ねねとその傍らの薫に突き刺さる。

「ない」

そして薫は断言する。しばし、天道と薫が無言で対峙する。

「・・・・なら良い」

少しして、天道が肩の力を抜いた。

その隙をついて、可奈美がねねに駆け寄り、その頬をつついてみる。

「うわぁ!お義兄ちゃん、この子可愛いよ!」

どうやら可奈美はねねをいたく気に入ったようだ。

「理解してくれて感謝する」

「何、俺もその手の噂は聞いていた。ペットと言うんだ。暴走する危険性はないだろう」

「そうか、助かる・・・」

「ねねー!」

ふと、ねねが可奈美の胸に飛び込む。

「わ、くすぐったいよー!」

その行動に思わず笑ってしまう可奈美。

「ほら見て、姫和ちゃん、この子可愛いよ?」

姫和は泣いていて聞いてません。

ふとねねが姫和の方を見る。そのまま、姫和のある特定部分を(姫和は気付いていません)じぃっと見て(姫和は気付いていません)、ぷいっと顔をそむけた(しつこいようですが、姫和は泣いていて気付いていません)。

「ええ!?どうしたの!?」

「ねねはビックなバストが大好きなんデース!」

「そして、将来胸がでかくなる可能性のある女を嗅ぎ分ける」

「そうなのか・・・・」

しばし、可奈美にじゃれつくねねを見る。そして次に可奈美を見て、

「可奈美の将来は安泰という事か」

「え?」

顎に手をあてて、そう一人勝手に納得する天道。

「そ、そうかな・・・?」

それを聞いた可奈美は顔を赤くして嬉しそうにはにかむ。

「なあ」

「なんだ?」

「絶対あれ何か勘違いしてるよな?」

「言ってやるな」

風間と山矢がそう囁き合った直後、ねねが薫の頭から飛び降り、可奈美の方―――否、森の方に向かって威嚇するように唸る。

「え?どうしたの?」

「どうした?ねね?」

その行動に思わず首を傾げる一同だったが、

「・・・ん?ゼクターが・・・」

その時、どこからともなく飛んできたカブトゼクターが天道の手のうちに収まり、そのカブトゼクターからは、嫌な音が響いていた。

 

その音は―――荒魂が近くにいるという警告音。

 

「せいっ!」

「はうあ!?」

ここで天道は姫和の額を鋭く叩く。

「な、なにをするんだぁ・・・」

「泣いている場合じゃないぞ!囲まれている!」

その言葉に、一同は警戒度を上げる。

「確かにそうだな」

「ああ、俺たちのゼクターもだ」

どこからともなく飛んできたドレイクゼクターとザビーゼクターも、カブトゼクターと同じように嫌な音を響かせていた。

「こちらには何の反応もありまセンね。一応、管理局から支給された最新型なのデスが」

エレンがのぞき込むのはスマホに搭載されたスペクトラムファインダー。荒魂の出現を知らせてくれる最新型の装置である。

「ぐすっ・・・確かに囲まれているな」

どうにか泣き止み、姫和も自らのもつアナログのスペクトラム計を取り出してそう呟く。

その中のノロが、四方八方にその体を伸ばしていた。

「ねねー!」

「おい!ねね!」

「カオルダメデス!」

「おいお前ら!!」

「来るよ!」

薫が森の奥に消えた瞬間、大量の蝶型の荒魂が、意思をもった煙のように襲い掛かる。

「「「変身!」」」

 

『HENSHIN』

 

それに対応するように、ライダー三人が変身する。

天道はベルトにカブトゼクターを装着し、山矢はブレスにザビーゼクターを装着し、風間は掲げたドレイクグリップにドレイクゼクターを装着させ、その身に重装甲を纏う。

その直後に、周囲を大量の荒魂に囲まれる。

「すごい数!?どうなってるの!?」

「分からん!小型だがこれだけ多いと・・・」

姫和が何かを言い終える前に、荒魂の一団が襲い掛かり、それを躱す。

「とりあえず、後のオハナシはここを突破してからデス!ユウスケ!シュウ!テンテン!」

「分かった!天道!キャストオフだ!」

「ああ・・・おい待て古波蔵、テンテンとは俺の事か!?」

「気にすんな!アイツは誰にでもそうなんだ!キャストオフ!」

エレンの名前に突っ込みつつ、天道はカブトゼクターのゼクターホーンを反対に倒す。それと同様に、ドレイクたちもそれぞれの操作を行う。

 

『CAST OFF』

 

次の瞬間、三人の重装甲が弾け飛び、いくらかの荒魂を吹き飛ばす。

そして、その下から、最速の戦士がその姿を現す。

 

『CHANGE BEETLE

 

『CHANGE DRAGONFLY

 

『CHANGE WASP

 

その直後、荒魂の大群が彼らを襲う。

「く、ここは一度散開した方がいいな・・・天道!お前は衛藤たちを守れ!」

「言われなくてもそうする」

「山矢、付いて来い!」

「言われずとも!」

そうして、彼らは複数に分かれて逃げるのだった。

 

 

 

 

 

 

そうして数分逃げた所で。

「あの荒魂はもう来ないようだな」

カブトはそう呟いて、背後を警戒していた。

「さっきまで泣いていて聞いてなかったな、アイツらなんだったんだ・・・?」

「姫和ちゃん・・・」

未だ目元が赤い姫和はそう呟き、可奈美は呆れ気味に苦笑する。

「妙だな」

「え?何が?」

「荒魂が追撃をやめるなど、そんな事あり得るのか・・・?」

「確かにな・・・」

天道の言葉に、姫和は頷く。

「なんだか、私達ここまで追い立てられたようにも感じるね・・・」

「荒魂が?なんのためにだ?」

「それは分からないけど・・・・」

「薫と同じ、荒魂を使役する者が他にもいたのだろう。少なくとも、奴らの差し金ではない事は確かだ」

「分かるのか?」

姫和の質問に、カブトは自分のスマホを見せてみる。

「言いそびれたが赤城から連絡があった。どうやらここを嗅ぎつけられたらしい」

「赤城義兄さんが・・・!連絡できるのか!?」

ここぞとばかりに姫和が喰いつく。

「ああ。だが、それは後にしろ」

カブトはスマホを仕舞い、逃げてきた方とは反対の方向へ視線を向ける。

「流石夜見。いい仕事をする」

その方向から、影が三つやってくる。

「ええ。お陰で苦も無く反逆者を捕まえる事が出来ます」

「まさかあれほど多くの荒魂を使役出来るとは、恐れ入るよ」

「お前たちは・・・!?」

「親衛隊だな」

そう、折神紫親衛隊の獅童真希、此花寿々花、そして見知らぬ男がいた。

「少しおいたが過ぎたようだな、後輩」

「貴方のお友達のように、手加減はしませんわよ」

鋭い眼光で睨んでくる真希と寿々花。

「待ってください!姫和ちゃんの話を聞いてください!折神家は・・・」

可奈美が説得にかかるが、それを遮るように真希たちは御刀を抜く。

「折神紫親衛隊第一席、獅童真希」

「同じく第二席、此花寿々花・・・行きますわよ!」

寿々花が迅移をもってしかける。

その刃は可奈美を狙い、それに対応するように可奈美はその一撃をいなし下がる。

「可奈美!」

「おっと、待ちたまえよ」

「ッ!?」

カブトが思わず行こうとするが、それを一人の男が止める。

「カブトゼクター・・・八年前に突然逃げ出したプロトタイプの改良版ゼクター・・・それをどうして君が持っているのかは謎だが、全てのゼクターはゼクトの管理下になくてはならない」

「お前・・・ゼクト社の人間か・・・!?」

「その通りだ。来るが良い」

その男の声に呼応するかのように、どこからともなくゼクターが飛来し、それが男の手の内に収まる。

その形状は、どことなくカマキリに似ている。

それと同時に、男は二本の曲刀らしき剣を取り出した。

「サソードと同じタイプか」

「その通りだ。が、あの旧型と一緒にしてほしくはないかな」

そう言って、男はそのゼクターを、二本ある剣のうち、片方の柄に護拳のように装着する。

「変身」

 

『HENSHIN』

 

その瞬間、男の体が緑色の装甲に覆われる。

 

『CHANGE MANTIS

 

「ゼクト社戦闘班、マンティスゼクター適合者、真島克巳・・・さあ、行かせてもらうよ!」

真島克巳・・・仮面ライダーマンティスが勝負を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で。

 

「まさかゼクター適合者を出してくるとはな」

「でも予想の範疇だろ?」

ドレイクとザビーの目の前に、二人の男が立っていた。

「ドレイクゼクターとザビーゼクター・・・四年前に奪われたゼクターで間違いないな」

「なら、とっとと奪っていきましょうや。例のカブトゼクターも回収しなければならないわけですし」

「奴が仕損じるとは思えんが、用心するに越した事はない」

赤マントの男、大和銀騎と銀マントの男、織田秀信が左腕の袖を捲し上げ、そこからザビーと同じブレスレットを表す。

「あれは・・・」

「最新型の『カブティックゼクター』か!?」

「ご名答だ」

どこからともなく飛来してきた二体のカブト型のゼクターが飛来し、それがそれぞれ二人の手に収まる。

「「変身」」

そして二人はブレスレットに、大和は茶色のゼクターを、織田は銀色のゼクターを、それぞれのブレスレットに装着し、九十度回転させた。

 

『HENSHIN』

 

その音と共に、二人の姿は装甲に覆われ、大和はケンタウロスオオカブトを模した茶色の装甲を、一方の織田はヘラクレスオオカブトを模した装甲を、それぞれ身に纏った。

 

『CHANGE BEETLE

 

『CHANGE BEETLE

 

纏われた装甲の複眼の奥から、敵の鋭い視線が突き刺さる。

「こりゃあ、ちょいと気張らないとやばそうだぜ?」

「分かっている」

若干の冷や汗を流しつつ、ドレイクとザビーはそれぞれ構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、お前はいつも面倒ごとを起こしてくれるな!」

ねねを追いかけて、仲間とはぐれてしまった事に舌打ちをしたい気分である薫。

その彼女に向かって、無数の荒魂が一斉に襲い掛かる。

「キェエェエッ!!!」

近付かれる前に祢々切丸を抜刀、というよりは鞘を砕いて刀身をむき出しにさせ、荒魂の大群に叩きつける。

だが、それでも仕留められたのはほんの一部、まだ荒魂は大量に残っている。

「チッ!仕方ないな・・・」

大軍を迎え撃つべく、御刀を構え、振り下ろそうとする薫。だが、どういう訳か何かに突っかかったかのように振り下ろせない。

見上げてみれば、御刀に荒魂が群がっており、それらが薫の御刀を封じていたのだ。

「ああくそ!鬱陶しい!!」

それを力技で振り払い、さらに横薙ぎ、木ごと荒魂を薙ぎ払う。

だがそれでも荒魂はいて、仕留め切れない。

「しつこいな!」

さらに薙ぎ払う。その度に周囲の木が断ち切られて倒れていく。

ある程度斬った後、荒魂の大群はその数を減らして、一旦引いていく。

「ちょっとは見えやすくなったか・・・うわ!?」

少し下がろうとして、たった今さっき自分が斬った木に足を取られて転ぶ薫。その隙を狙って荒魂の大群が迫る。

「くっ!」

すぐさま対応する薫だが、斬ったのは大軍の内の一つ、もう一つの大群が薫に叩きつけられる。

「次から次へと・・・・!」

これでは切りがない。そう思っている矢先に、集合した荒魂の大群がさらに薫に襲い掛かる。

「ッ!?しまっ・・・」

その荒魂の大群が薫に直撃する―――目をつむる暇もなく、荒魂が薫に襲い掛かる、その直前、

 

ねねが薫を庇い、大軍の攻撃を受ける。

 

「―――ねね!」

すぐ後ろは崖。ねねは、その崖に投げだされる。

それを見た薫は、迷うことなく、その身を崖から投げ出した――――

 

 

 

 

 

一方、別の場所では。

傷だらけの右腕。しかし、皐月夜見はそれを意に介さず、目を閉じていた。

(思った以上にやられました・・・)

「補充しないと・・・」

そう呟いて、夜見は傷だらけの右腕を前に突き出す。そこへ自らの御刀『水神切兼光』で、自らの傷だらけの右腕に、さらなる傷をつける。

そして、ほう、と息を吐いて、傷口から血が流れる―――かと思いきや血が流れる事はなく、代わりに出たのは『目』。それも不気味なほどにぎょろぎょろとした目だった。

それが数を増やし、やがて、耐え切れないと言わんばかりに、()()()()()()()()()()

「行きなさい。あの方の為に」

表情無き様子は、まさしく、人形のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって鎌倉、鎌府女学院にて。

とある一室に、沙耶香と神木は待機していた。

ここまで一切の会話は無く、沙耶香の頬の傷は、結局手当できていなかった。

その事が無性に情けない神木は、組んでいた腕を掴む手に、力を込めてしまう。

一方の沙耶香は、ただその場に座っているだけ。椅子に腰を掛け、ただ席に座るだけだった。

そんな中だった。扉が開き、一人の少女が入ってくる。

「えっと・・・糸見、沙耶香ちゃん・・・と、神木剣さん・・・」

美濃関特有の紅白の制服を着た彼女を、沙耶香と神木は知っていた。

「ちょっと、良いですか?」

美濃関代表の、柳瀬舞衣だった。

 

 

 

 

「可奈美ちゃんと司さんは本当に無事なのね!良かったぁ」

沙耶香と神木から、天道たちの事を聞いた舞衣は心底嬉しそうに両手を合わせてそう言った。

だが、すぐに申し訳なさそうに弁明する。

「あ、ごめんね。沙耶香ちゃんや剣さんの前では言う事じゃなかったよね・・・」

「いや、気にしないでいいよ。実力で負けたんだし」

「勝てなかったことは、事実だもの」

舞衣の言葉に、なんでもないと言い返す二人。

「・・・沙耶香ちゃんは鎌府、だよね?自分の部屋には帰らないの?」

その質問に、沙耶香は、

「この部屋から出るなと命令を受けてる」

「え?高津学長に?」

首肯。その反応に、舞衣は言葉を詰まらせる。

剣の表情は、どこか辛そうで、何か、よからぬ理由でもあるのだろうか。

そこでふと、舞衣は、沙耶香の頬に、一筋の傷がある事に気付く。

「あれ?ほっぺた、怪我してるね」

「ああ、救急箱が見つからなくて・・・・」

「そうなんですか・・・あ、ちょっと待ってね」

神木の言葉に、舞衣は何かを思い出したかのようにポケットに手を入れる。

そうして取り出したのは、花柄の絆創膏。

それを、舞衣は沙耶香の頬の傷に貼る。

「子供っぽくてごめんね。上の妹が、これ好きだから」

「ううん、気にしない」

「ありがとう柳瀬さん」

「いえ」

相も変わらず無表情な沙耶香。その様子に、舞衣は顔をしばし曇らせ、また何かを思いついたようにポケットに手を入れる。

「そうだ、これ良かったら。手を出して」

そうして取り出したものを、手を差し出した沙耶香の手に置く。

それは、クッキーの入った袋。舞衣は作ったものだ。

それを沙耶香はしばし見つめる。

「少し落ち着こうとしたら、作り過ぎちゃって。沙耶香ちゃんは、甘いもの好き?」

「・・・・・うん」

「良かった。じゃあ、食べてくれると嬉しいな」

舞衣は笑顔でそういう。

「・・・嬉しい?」

「なんだか悪いな。こっちはお返しできるものが何も・・・」

「気にしないでください。私が作りたくて作ってしまったものですので」

なんだか、年下の筈なのに頭があがらなくなる剣。

「じゃあ、見つかると怒られちゃうし、そろそろ行くね」

そんな中で、舞衣は立ち上がし、部屋を出ていく。

その最中、

「あ、そうだ。また可奈美ちゃんと勝負してあげてね。遠慮なんかいらないから!」

その言葉を最後に、舞衣は手を振って去っていった。

閉じられたドア、頬に貼られた絆創膏、そして、手の中のクッキー。

また二人きりになった部屋で、変わった事は、確かにあった。

たった一人の訪問者。

クッキーの一つをかじった沙耶香の顔には、笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今頃、結芽の奴は紫様に喧嘩ふっかけてんだろうなぁ・・・」

瞬が缶コーヒーを片手にそう呟いた。

「よっぽど退屈なのだろう。無理もない」

「あの戦闘狂め・・・」

「戦闘狂でも、ゼクター適合者と互角に戦えるほどの実力を持つ人材だ。多少の無茶も許されるんだろう」

「そりゃそうだけどよ・・・」

想の言い分に、何やら物申したい様子の瞬。

「・・・・結芽の体の事か?」

「・・・・」

想の指摘に、瞬は何も言えない。

「無理もない。あれは現代の技術では治療不可能の病だ。()()()()()()()()()、生き長らえられない体なんだ」

「だけど・・・それでどうして親から・・・・!」

瞬の拳に、力が入る。

その瞬の肩に、想は手を置く。

「どうあがいても、俺たちにはどうする事も出来ない」

「・・・」

「ただ、ゼクトが今開発している新たなゼクターを使えば、あるいは・・・」

「新たなゼクター・・・?兄貴、それって・・・」

瞬がさらに聞こうとしたが、それを想が遮る。

「今は聞くな。だが、これだけは言っておく。結芽の運命を変えたいなら動け」

それだけを言って、想は去っていく。

その後ろ姿を、瞬はただ黙って見るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月夜照らす世闇の中で、カブトとマンティスの一騎打ちは熾烈を極めていた。

クロックアップによる、加速した時間の中、二刀のマンティスボウードがカブトを襲う。しかし、その二撃を紙一重で躱した所でカブトはクナイガンで反撃。横薙ぎの一撃は下がられる事で躱され、しかしカブトの蹴りが追撃として繰り出され、マンティスの腹を打つ。

「ぐっ!?この・・・!」

振るわれる二刀の剣。それをクナイで上手くいなし、距離を取るカブト。

「無駄だ!」

だが、マンティスは二刀のマンティスボウードの柄を合わせ、捻る。すると二刀の剣は弓矢となり、その弓には、エネルギー体の矢が番えられ、三発同時に放たれる。

それは加速した時間の中でも同じだけの速度で飛んでいき、それすらもカブトは紙一重で躱す。

そこでカブトは踏み出し、マンティスに迫る。マンティスは反撃に弓を振るう。仮令弓状になったとしても、刃は健在だ。

振り下ろされる弓と薙がれるクナイ。その双方が衝突、火花を散らす。

衝撃で後ろに下がったカブト。その時点で、クロックアップは終わる。

 

『CLOCK OVER』

 

加速した時間が元に戻る。

「なかなかやるね、君。折神家に反逆するだけの事はあるよ」

「お前は小物に見えるがな」

「そう言ってられるのは今のうちさ」

カブトの背後では可奈美と姫和が親衛隊の二人と剣を交えている。

剣戟の音からして、可奈美たちが劣勢だという事がうかがえる。

「さて、まだまだ行くよっ!」

マンティスが弓を射る。放たれた光矢はカブトの両膝とクナイをもつ右手を的確に狙い、それをカブトは左に飛んで回避。それを追撃するようにさらなる光矢が飛来する。

時計回りに逃げるカブト。

「ほらほら!逃げてるだけじゃやられるだけだよ!」

逃げ回るカブトを狙うマンティス。

しかし、カブトは突如として地面に左手を突き刺した。

その行為に首をかしげるマンティス。しかし次の瞬間、恐ろしいパワーによって地面が持ち上がり、巨大な土塊なってカブトの左手に持ち上げられる。

「カブトムシって自分の体重の二十倍のものを持ち上げられるって聞いたけど、まさかそれを実行するなんてねえ!?」

振り被られた土塊はすさまじい速度でマンティスに飛んでいき、マンティスはそれを弓をもって両断する。

二つに割れた土塊が、背後の可奈美達の方へ向かっていく。

それぞれ、真希、可奈美に迫る。

「何っ!?」

「うわあ!?」

突如として飛んできた土塊を驚愕のままに躱す。

「ちょっとお義兄ちゃん!」

「何をしているんだ!?」

「こっちを気にしてる場合か」

とんでもない事をしでかすカブトに思わず怒鳴ってしまう可奈美と姫和。

「ごめんよ獅童さん、邪魔しちゃって」

「全くだ。だが、あのカブトとか言う奴、よほど機転が利くみたいだね」

一方のマンティスは真希の元に戻っていた。真希はどうやらカブトの事を評価しているらしい。

「味方が苦戦しているとみて、すぐさま地面を抉って土塊を投げてきた・・・見た目以上の怪力を持っているようですわね」

「まあそうでもしないと装着者が荒魂との戦闘についていけないからね」

マンティスが弓を向ける。

「さて、僕が後方で支援するかそれとも個別にやるか、どっちが良い?」

「そんなもの、各個撃破に決まっている!」

先に駈け出した真希に続くように寿々花も行く。その様子にやれやれと息をつくも、元から彼女たちと同意見のように走り出す。

「クロックアップ」

 

『CLOCK UP』

 

カブトが加速する。

それに応じるように、マンティスも加速する。

思考が加速し、それ以外の全ての動きがスローとなった世界で、カブトとマンティスがぶつかる。

錯綜する弓とクナイ。本人たちからすれば、それは長い時間の中で行われる駆け引きとにた戦闘だが、それ以外の者にとっては、速過ぎて何が起きているのか理解できない。

 

この場にいる一人を除いて。

 

「そこっ!」

「ぬぐあ!?」

動体視力がずば抜けている可奈美の刃がマンティスをとらえる。

 

『CLOCK OVER』

 

それと同時にクロックアップが終わり、マンティスは地面を転がる。

(馬鹿な!?クロックアップを見切ったのか!?)

クロックアップは刀使の迅移で言えば最大で四段階以上に相当するスピードを誇る。さらにそれをデメリット無しに長時間(とは言っても実際には数秒の事)使用可能だ。

そんな高速で動く相手の動きを、この少女は見切り、ましてや剣で斬りかかり直撃させた。

「貴方の相手はわたくしですわよ!」

「ッ!?待て!」

そこへ寿々花が可奈美をとらえ押し進む。その最中で寿々花の視線がマンティスに突き刺さる。

 

お前は自分の相手に集中しろと言っているかのように。

 

(あの少女は正直言って危険だが、仕方がない)

今はカブトの相手に専念しよう。

そう思い、マンティスはカブトに向かって攻撃を繰り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

放たれた銃弾はいともたやすく躱され、されどその進行をザビーが阻む。

ヘラクスが振るうカブトクナイガンの刃がザビーに叩き込まれそうになるが、軽いバックステップで回避、そこへドレイクの銃撃が叩き込まれるも躱され、そこへケタロスの銃撃が反撃として叩き込まれる。

どうにか躱したが、その直後に、ザビーにヘラクスの蹴りが叩き込まれる。

「うぐあ!?」

「山矢!」

「くっそこいつらつえぇ!?」

腹を抑えて、そう言うザビー。

「ふん、そうでなければゼクトの戦闘員は務まらないんでね!」

「ッ!?」

ヘラクスがザビーに接近、それを阻止しようとドレイクが銃口を向けるが、

「お前の相手は俺だ」

「ッ!?」

ケタロスの拳がドレイクの顔面に炸裂する。

「ぐぅ!?」

そのまま吹き飛ばされ地面を転がる。

「風間ぁ!?」

「心配するな。お前は自分の心配だけしていろ」

どうにか起き上がるも、ケタロスの追撃がドレイクを襲う。

拳、拳、拳、蹴り、拳、五連打がドレイクを襲い、それをどうにか防いで最後の一撃は脇をくぐって避け、その背中に銃撃を放つ。しかしケタロスが横に移動した事で躱され、反撃の蹴りが飛ぶ。

その蹴りを体を逸らしてどうにか躱すも、背中が木に当たる。

「ッ・・・」

木にもたれかかるようにドレイクはケタロスに銃口を向ける。

その間、ザビーはヘラクスと殴り合っていた。

だが、戦闘経験の差なのかザビーが押されていた。

「くっそこのやろ・・・!」

「どうしたどうしたハチ野郎、その程度かよっ!」

ヘラクスのアックスがザビーの胸を打つ。装甲と刃に火花が散り、少なくない痛みが走る。

「づっ!?」

そのまま木にもたれかかるように胸を抑える。

「終わりだ」

ヘラクスが手首のヘラクスゼクターを百八十度回転させる。

「ライダービート」

 

『RIDER BEET

 

ゼクター内で生成・貯蔵されたタキオン粒子を解放し、チャージアップし、その手の中の斧に伝達する。

その一方で、ケタロスも百八十度回転させる。。

「ライダービート」

 

『RIDER BEET

 

タキオン粒子が右肩のショルダーアーマーに収束する。

「ッ!?」

「やべっ」

次の瞬間、凄まじい衝撃がその場に炸裂した。




次回『山狩りとライダーキックと通りすがりの刀使』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。