無数の荒魂の集団によって、崖から落ちた薫とねね。しかし、彼女と一匹は、どうにか崖から生えていた木に捕まる事で事無きを得ていた。正確には、ねねがその木に噛みついており、その尻尾を薫が掴んでいるだけなのだが。
「くそ、オレとした事が・・・」
見上げたねねの体には、いくつもの傷があった。先ほどの荒魂の大群の所為だろう。
だが、それでもねねは木に必死に噛みつき、薫を落とさせないとばかりに踏ん張っていた。
「ねね・・・」
その様子に、薫は昔の事を思い出す。
それは、まだ彼女が幼く、ねねの事はまだただの荒魂として嫌っていた時の事。
幼馴染である山矢がねねと楽しくしている事が面白くなくて、だからねねに対する嫌がらせもたくさんしたと思う。だが、そんなある日、薫は森の奥で迷子になって、暗くなってしまい、途方に暮れた事がある。
その時は、山矢はいなくて、かわりにねねがその薫の後についていっていた。だが、その最中で小さな荒魂を見つけ、自分は刀使だという慢心の元に追いかけて、崖から落ちてしまった。
そのおかげで体中擦り傷だらけになり、さらには道に迷うはで本当に心細かった。
だが、その時助けてくれたのがねねだった。
あれだけ酷い事をしたのに、ねねは、薫に対する態度を変えず、常に傍に寄り添い続けた。
結局の所、薫はねねの尻尾を掴んで、ねねの先導するままに家に帰る事が出来た訳だが、正直、その時は本当に嬉しかった。心細かった。
「そうだったな」
薫は、必死に木にしがみつくねねを見上げて、そう呟いた。
「お前は、昔から・・・・でも」
壁に祢々切丸の柄を突き立て、昇り始める薫。
その最中に木にしがみついていたねねを回収、そのまま崖を登り切る。
そして、森の方をにらみつけて。
「正直、舞草なんてエレンに付き合ってるだけだが・・・オレも少し、本気だす」
祢々切丸をかついで、薫はそう呟いた。
戦況は劣勢。相手は豪剣で知られる獅童真希。写しの腕は飛ばされ、フェイントのつもりで撃った斬撃は防がれ、
「それはもう見た!」
足を斬り落とされて地面に倒される。
「姫和ちゃん!」
「余所見をしてる余裕があって?」
「ッ!」
思わず姫和の方を見る可奈美だったが、そこへ寿々花の斬撃が飛ぶ。その連撃を、可奈美は必至に受け止め防いでいた。
一旦離脱する為に迅移による後退をする。が、寿々花はそれに合わせて迅移を行使、可奈美の死角から刃を振るう。
「くっ!?」
(私の迅移に合わせて迅移を発動してきてる。まるで・・・)
「いつ迅移を発動させるのか分かってるみたい、ていう顔ですわね!」
寿々花が踏み込み、振り下ろした剣を可奈美が防ぎ逸らす。
その一方で、カブトはクナイを薙ぎ払うもそれをマンティスの左の剣に防がれ、反撃に右の剣が振り下ろされる。それを下がって躱すも、追撃の連撃がカブトを襲う。
「ほらほらどうした!?その程度か!?」
「・・・・」
襲い掛かる斬撃の嵐。されどカブトは冷静にその嵐をいなしていた。
戦況は、劣勢。
対して、敵は強敵。楽な戦いになるとは思っていない。
しかし、可奈美は姫和の戦いを見ながら戦っていた。
どうにか写シを張りなおし、真希と対峙する姫和。
「二度目か。あと何度張れるんだ?それとも、これで最後か?」
「黙れ・・・私は、ここで終わる訳にはいかないんだ!」
迅移によって真希の背後に回るも、真希はすぐさま振り返って手を添えた刃で姫和の首を刈りに行く。
どうにかかわした所を下段からの斜め切り上げが迫る。態勢を崩しながら横に飛び、その斬撃を回避する。
「流石は小烏。よく躱す」
ほくそ笑む真希。それに対して息をあげる姫和。
これが獅童真希。凄まじい豪剣である。
さらに斬りかかる真希の猛攻をしのぐ。
「姫和ちゃん!」
「貴方の相手は、わたくしですわよ!」
斬りかかる寿々花の一撃を躱し、可奈美はそれでもなお姫和の方を見る。
「親衛隊を、此花寿々花を舐めていますの!?」
さらなる追撃を仕掛ける寿々花に対して、可奈美はなおも姫和の方をみつつ猛攻を防ぐ。
その一方で、カブトも二人の方を見ながら戦っていた。
「君、ちょっと僕を舐めすぎじゃないかな!?」
マンティスの右の振り下ろしを逸らす。されどカブトには届かず、クナイによって逸らされる。
「避けてるだけじゃあ僕には勝てないよ!」
「――――おばあちゃんが言っていた」
降りかかるマンティスの猛攻。しかしカブトはそれらを冷静に受け流していた。
(何故、当たらない・・・!?)
「俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する」
「何を、馬鹿な事を!!」
苛立ちが剣筋を鈍らせる。
(なんだ・・・こんな時に、私の心配か?)
真希の連撃を受け流しつつ、姫和はそう心の中で呟く。
(私よりも自分の心配をしてろ!)
そう怒鳴るも、その余裕がない。その間にも可奈美はどんどん寿々花に押し込まれて行っている。
カブトはカブトで、まるで攻撃に転じようとしないでマンティスの攻撃を受けていた。
そう、まるでわざとそうするように――――
(いや、あいつが・・・あいつらがただ心配するだけ・・・?)
何かが引っかかる。
(いや、そんなわけが無い)
望んだ時、運命は絶えず味方する――――
「僕を前に考え事とは余裕だね!」
真希の剣が叩きつけられる。状況は劣勢一方。姫和と可奈美の立ち位置は、岩の上という高さを除いて背中合わせ。
「わたくしをみなさい!」
可奈美は待つ。その時を、
「いい加減倒れたらどうかなぁ!?」
カブトは待つ。その瞬間を、
そして、その時はやってくる。
(そういう、事か!)
姫和が、剣を押し込み、真希に距離を取らせる。
「おぉぉおおおぉぉおお!!」
そして、姫和が絶叫をあげて真希に突撃を仕掛ける。まるで、合図を送るかのように―――
「――――!!」
カブトが動く。マンティスの振り下ろす右の手首をつかむと、そのまま引っ張り状態をつんのめさせる。
「な・・・・!?」
そして間髪入れずに地面から踵を上げた足先を蹴り飛ばす。するとマンティスの体は投げられ、体が反転した状態になる。
そして――――
その間に、姫和は真希に突進、
「馬鹿正直に真正面からとは・・・もういい、終わらせる」
真希がとったのは
その一方、可奈美は姫和の行動に目を向ける。
「いい加減にしなさい!」
これに激昂した寿々花の一撃が入り、可奈美は宙へと投げ出される。
「姫和ちゃん!」
だが、これこそが可奈美の狙い。
『ONE』
身を捻った可奈美は刀を振りかぶり、そのまま真希に向かって投擲。
『TWO』
投げられた刀は真っ直ぐ飛んでいき、姫和の後頭部に直撃するかと思いきや姫和が迅移を使用してかがみ、一方姫和が壁となって刀の接近に気付けなかった真希は驚愕に目を向き、刺突の為に構えた刀を防御にまわす羽目になる。
『THREE』
「ライダーキック」
「がら空きだ」
ゼクターホーンを倒す。
『RIDER KICK』
カブトゼクターからそのような電子音性が響き、増幅されたタキオン粒子が、カブトの左足に収束。
全てを分子から破壊する蹴りがマンティスに迫り、
姫和の必殺の
「ハアッ!!」
「はぁぁああ!!」
貫かれた真希の写しは剥がされ、一方でマンティスはカブトのライダーキックをもろに喰らう。
「ぐぁぁあ!?」
吹き飛ばされたマンティスは木々を薙ぎ倒し、一方の真希は背中の壁にもたれかかってずり落ち座る。
「姫和ちゃん!司お義兄ちゃん!逃げるよ!」
「分かっている!」
「ああ」
『CLOCK UP』
そして、彼らは逃げる。
もはや追いかけるのは難しいだろう。
「してやられましたわね」
「・・・・れた」
「・・・真希さん?」
「僕が・・・斬られた・・・?」
真希の眉間に皺が寄り、その表情に、怒りが映る。
「紫様の刃たる・・この僕が・・・!?」
その一方で、
「ぐ・・・うぐぅ・・・」
ライダーキックをまともに受けたマンティスこと、変身を解除された真島が、吹き飛ばされた先で倒れ伏し、うめき声をあげていた。
「ま・・・さか・・・初めから、あのつもりで・・・・」
身に纏っていた装甲によって、どうにかタキオン粒子の伝導は防げたものの、ダメージは大きい。
前線後退の与儀は無いだろう。
「いや・・・」
ふと、そこで真島は考え直す。
(その気になれば、奴はいつでも僕を倒せた・・・・)
最後の最後まで、自分は奴に敗北し続けていたと、そう思ってしまった。
寿々花からの連絡を受け、夜見は頷く。
「分かりました此花さん。すぐに増援を送ります」
そう連絡を受けた夜見は、携帯を仕舞い、左腕を掲げる。そしてまた躊躇いもなしに左腕を傷つける。
そこからまた荒魂が溢れ出し、空へと舞い踊る。
「まさか、その方法であの荒魂どもを作り出していたとはな・・・」
ふと、森の奥から、影が一つ出てくる。
それは、青いトンボを模した装甲を身に纏った、仮面の男。
「ドレイク・・・・」
風間雄介こと、仮面ライダードレイク。
ドレイクは銃口を夜見に向ける。
さらに、
「人間が荒魂を作った。いや、産んだ・・・お前確か親衛隊の奴だな」
巨大な御刀『祢々切丸』を担いだ少女、益子薫だ。
「悪趣味が過ぎるぞ折神家」
「親衛隊第三席皐月夜見。なるほど、貴方がたは舞草の人間のようですね」
「知るか」
夜見の言葉に、薫はばっさりと切り捨てた。
「ただ、オレのペットがお前のペットに世話になったみたいだ。その借りを返すだけだ」
巨大な御刀を地面に叩きつけて、薫はそう呟く。
「俺はお前という脅威を排除する。覚悟しろ」
銃を向け、ドレイクも臨戦態勢に入る。
その周囲を、無数の荒魂が飛び回る。
「そうですか。どうぞご随意に」
それに対して、抑揚のない声で夜見はそう応じる。
「私はただ、壊すだけです」
次の瞬間、写シを張った夜見が荒魂の大群を彼らに向かわせる。
薫が写シを張る。その間にドレイクの銃撃が寸分の狂いもなく荒魂の大群を狙い撃っていく。
「行け、薫!」
「言われなくても!」
地面を踏み砕いて突貫する薫。ドレイクは薫に群がる荒魂たちを撃ち落としていく。
「雄介、少しはオレにもやらせろ!」
薫が祢々切丸を振るう。巨大な刀剣から放たれる破壊力抜群の一撃は、荒魂の集団を一気に吹き飛ばしていく。
「きえぇえええッ!!!」
群がる荒魂。
「鬱陶しい!!」
それを、薫は全てを薙ぎ払っていく。
数が、目に見えて減っていく。
それに対して夜見はすぐさま左腕に傷をつけ補充。まるで輪になるように斬り、そこからさらに大量の荒魂を生み出していく。それらは集まり、巨大な塊をなり、接近してくる薫に襲い掛かろうとする。
「ライダーシューティング・・・!」
それに対してドレイクがドレイクゼクターの羽を折りたたみ、尾のヒッチスロットルを引っ張る。
『RIDER SHOOTING』
その電子音と共に、タキオン粒子の光弾が放たれる。放たれた光弾は真っ直ぐに収束した荒魂の大群に突き刺さり、一気に吹き飛ばす。
その中を、薫が突っ切り、御刀を振り上げる。
「キエェェェェェエエェエエエエエッッッ!!!」
そして、渾身の一撃が振り下ろされ、夜見を真っ二つに叩き斬り、それと同時に背後に岩すら断割する。
そして、あとに残ったのは写シが剥がされた夜見と、刀を振り下ろす薫、そして、割られた岩のみだった。
「・・・他の三人は、こうはいきませんよ」
相も変わらず抑揚のない声で、夜見はそう言う。
「オレの知ったことか」
だが、薫はそう吐き捨て、御刀を担ぐ。
夜見は、迅移を使って、その場から逃げた。
それを見届けた薫は、まるで力尽きるかのように仰向けに倒れた。
「ねねー!」
「薫!」
それを見たねねとドレイクはすぐさま駆け寄る。ちなみにドレイクは変身を解除して風間に戻っている。
「ねね・・・?」
「大丈夫か?」
「・・・・・疲れた」
いかにも眠たそうな表情でそう告げる薫に、思わず風間は呆けてしまう。
「ひと眠りしたら・・・えれん・・・探し・・・に・・・・」
すぐに大きないびきを立てて眠り始める薫。
その様子に、風間は呆れるように溜息をつく。
「まあ、疲れたのはこちらも同じか」
あの時、ヘラクスとケタロスの大技を、どうにかこちらの大技で迎撃、が、防ぎきれずに吹き飛ばされてしまったが、幸いに吹っ飛ばされた先は崖であり、その下は川。であるならば、ドレイクの固有能力である『水中活動能力』を生かし、そのまま川を使って逃走に成功。だがこのまま逃げる訳にもいかず、風間は荒魂を使役している者の撃退、一方の山矢はエレンの掩護へと向かったのだ。
それで、途中で合流した薫と共に、今夜見を倒したのだ。
「だが、天道たちを探さなければならないのは事実・・・」
風間はドレイクゼクターを放つ。
「頼む、天道たちを探してくれ」
それにうなずくように、ドレイクゼクターはどこかへ飛んでいく。
「さて・・・」
しばらく、休むことにしよう。風間は、そう思った。
夜が、明ける―――。
朝霧が立ち込める中、機動隊が拠点を構えている地点に、一人、近寄る者がいた。
「誰だ!?そこで止まれ!」
機動隊の隊員が銃口をその人影に向けた。
立ち止まった人影が、両手をあげて、余裕たっぷりな笑顔でこう言った。
「ワタシ、通りすがりの刀使デース」
エレンは、そう笑顔で言った。
次回『Nの暴走/折神家の人体実験』
この世界におけるゼクトの立ち位置。
原作との相違点は、世間に知れ渡っている事、武器会社であること。
この世界にはワームはいないが代わりに荒魂がいるため、機動隊の武装を開発する事に力を入れている。
ゼクターは、その中の一つであり、
御刀の材料である珠鋼ではなく、基本的にそれよりも希少価値が低く、珠鋼よりも扱いやすい金属であるヒヒイロカネを主に扱っている。
ライダーシステムもこれによってつくられている。ただし、ゼクターの外装などは珠鋼によってつくられている。
『マスクドライダーシステム』
全身をヒヒイロカネの装甲で覆い、刀使並みに荒魂との戦闘を可能にするシステム。
タキオン粒子のみならず、ノロを装甲内に張り巡らされている『キャプラリーチューブ』内で循環する事で神性を帯びさせる事で、荒魂や刀使の写シに有効打を与えられるように出来ている。ライダーの武装も基本的にノロを併用している。
クロックアップやライダーキックなどの仕組みは原作と同じ。
クロックアップに関しては、時間が止まるほどの移動が可能という事で、刀使の迅移の四段階目ぐらいの速度が発揮できるという事にしている。
ただし、タキオン粒子を使用する際、ノロも多少使用しているので、刀使の迅移とは厳密には同じ。
ゼクターは、本編で語った通り、荒魂。ただし、ねねやタギツヒメのような高度な知能だとかは備えておらず、ただ衝動や本能と言った単純な行動しか起こすことが出来ない。
ただし、動物並みのかわいらしい行動もする事はあるので、愛着もあったりする。
食事は基本不要。