仮面ライダートジノカブト   作:幻在

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THE・無課金はハードモード


前回までの仮面ライダートジノカブトは、

折神紫襲撃犯として逃亡する小鳥(衛藤可奈美)、小鴉(十条姫和)、ナルシスト(天道司『仮面ライダーカブト』)をひっとらえる為にどこぞの快投を追う刑事よろしく手錠(御刀)を引っさげた親衛隊、ヤンデレお嬢様(此花寿々花)とゴリラ(獅童真希)のと天道のもつカブトゼクターを回収するためにカマキリなのにそんな獰猛さを微塵も感じさせない優男(笑)(真島克己『仮面ライダーマンティス』)が襲ってきた。だが見事なコンビネーションによって撃退した三人はそのまま逃亡。
一方、小さな荒魂を使役していたメルヘン女(皐月夜見)をぶった切るために見るも巨大な大刀をかついた幼女(合法)(益子薫)とへたれボディーガード(風間雄介『仮面ライダードレイク』)は見事メルヘン女を撃退し、荒魂の増殖を阻止した。
そして夜が明け、朝霧の立ち込めるなか、機動隊の拠点に近付くのは一人の通りすがりなナイスボディーガールであった。

一同『なんだこのあらすじ紹介は!?』




なお、作者はこの後、隠世の彼方へ捨てられたとか。


Nの暴走/折神家の人体実験

「長船女学院高等部一年古波蔵エレン」

「御前試合に出場していたな」

機動隊拠点にて、エレンは両手を頭の後ろで組んで捕まっていた。そして現在進行形で真希と寿々花に尋問をされていた所だった。

「OH、お恥ずかしい、不甲斐ない結果デシタ」

だがエレンは余裕な態度を崩さない。

「見え透いたおとぼけですわね」

「あのー、そろそろ手をおろしていいデスカ?貴方たちと戦うなんて、これぽっちも思ってマセンから」

「ならその御刀、差しだしてもらう」

「携帯もですわ」

真希たちの指示により、エレンから越前康継と携帯であるスマホが没収されてしまう。

だが、それでもエレンは動揺した態度を見せない。どころかお気楽な様子で手を降ろして振っていた。

「ふう、手が痺れマシタ~」

「で?こんな所で何をしていた?」

「そんなもの、決まってんだろ?」

突如としてエレンの肩に腕が回る。

「ッ!?」

「十条たちの援護・・・じゃねえの?」

織田秀信だ。

(この人、いつワタシの後ろに・・・・!?)

思わず動揺をしてしまうエレンだが、すぐに持ち直し、

「い、いや~、試合の結果があれだったじゃないデスか。このまま帰ったら、学長に大目玉貰っちゃうカナ~って思って、紫サマ襲撃犯をとっつ構えて、手柄にしようと思ったんデスよ」

「反逆者を捕獲する為に、S装備まで引っ張り出してきたのか?」

織田が顔を近づけて、そう威圧しながら問いただす。

「S装備?なんの話デス?」

「昨夜、射出された所在不明のコンテナがあってな。逃亡犯のあいつらが用意出来るとは思えないから、お前に疑いがかかってんだよ」

織田の顔は、笑ってはいるが目が鷹の如く鋭い。まるで、エレンの瞳の奥にある真意を見極めんばかりの眼光だった。

その返答に、エレンは――――

 

ぐぅぅうう・・・

 

「おなかが空きマシた~」

エレンの腹の音だった。

「・・・・ま、お前にはまだまだ聞かなければならない事があるようだな。獅童、此花、任せた」

「言われなくとも、ですわ」

織田の言葉に寿々花が答え、織田はテントの方に向かった。が、真希たちの横を通った所で、織田は思い出したかのように声をあげた。

「あ、そうだ。真島の奴が戦線離脱だ。理由は・・・まあ分かるか」

その織田の言葉に、二人は何も言い返さない。

別に、マンティスこと真島克己が決して弱い訳じゃない。むしろ、彼女たちから見てもかなりの強者と判断できる。

だが、カブトはそれ以上の実力者だった。

無駄のない動き、攻撃の避け方と反撃の隙の無さ、状況を理解する観察眼、次の行動を決める判断力、何をとっても一流、下手をすれば、折神紫に迫るほどの強さを持っていた。

「改めて補充はくるだろうけど・・・まあ間に合うかどうかは期待するな。向こうのライダーの事は俺たち二人でどうにかするからよ」

「頼みます」

「あいよ」

そう手を振って、織田はテントの中へ行く。一方のエレンは隊員に連行されていく。

その最中、機動隊の車両から、何かが降ろされているのを、エレンは見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

「うっわぁ・・・」

その様子を、山矢は遠くから双眼鏡で見ていた。

「風間が来なくて正解だったな。アイツだったらここから狙撃しかねん」

冷や汗を流しつつ、山矢は監視を続ける。

「さぁて、上手くやってくれよぉエレン」

 

 

 

 

 

 

 

どうにか親衛隊から逃れ、石廊崎への道を進んでいた、可奈美、姫和、天道の三人。

「バイクは放棄だな」

盗んだものだがしょうがない。また別のを探すと決める天道。

「あ」

ふと、可奈美は道路標識を見つける。それは、石廊崎まであと六キロだという事を示すものだった。

「あと二キロか」

「エレンちゃんたち、無事に向かってるかな?」

「問題ないだろう。刀使の二人はともかく、仮面ライダーの二人がいるんだ。そう簡単にやられない筈だ」

「司お義兄ちゃん・・・うん、そうだね」

天道の言葉に、そう可奈美が頷いた直後、どこからか物音が聞こえ、そちらに目を向けると、何かが飛び出してくる。

ねねだ。

「う、わっと!ねねちゃん?」

「こいつがいるという事は・・・」

視線を向ければ、そこには薫と風間の二人がいた。

「薫ちゃん!と・・・」

「風間か」

「そう、風間さん!無事だったんだ」

「ああ、どうにかな」

「目的地まで案内する。付いて来い」

薫はそう言うなり、石廊崎に向かって歩き出す。

「薫ちゃん・・・?」

「ねね!」

「え?」

一方のねねは薫とは反対方向、先ほどまで可奈美達が歩いてきた方へ、可奈美の腕に尻尾を巻き付かせて引っ張り出す。だがその小さな体では可奈美を引っ張る事が出来ないようだ。

「どうした?」

「この子、私達をどこかに連れていきたいみたい」

「ねね!」

その時、薫の呼び声が届く。

それにねねは諦めるように溜息をついた。

「お前、もう二人はどうした?」

「エレンちゃんや、あの、黄色の仮面ライダーの人は・・・?」

その問いかけに、薫は――――

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・流石にやり過ぎなんじゃないのか?」

大和は、目の前の惨状に冷や汗を流していた。木々は薙ぎ倒され地面は抉れ、竜巻が過ぎ去った後のような惨状で、その中心には、一人の少女、獅童真希がいた。

「大和さん、何の用ですか?」

こちらに気付いた真希がややきつめの眼光で大和を見る。

「出動だ。南伊豆町の方で制服姿の女子生徒を発見したそうだ。その傍らには見知らぬ男もいたという。すぐに準備をしろとのお達しだ」

「分かった。行きましょう」

吼丸を納め、真希はさっさと行ってしまう。

「呼びに来たのは俺なんだが・・・」

その最中で、大和は、一瞬真希の瞳が赤銅色に輝いたのを見た。

(あれが折神家の実験の結果、か・・・・社長に報告せねばならんな)

そう心の中で呟きつつ、大和は真希の後を追った。

 

 

「一班二班は私に続け、三班はこの場で待機、報告をまて」

『はっ!』

「大和さんは僕たちと一緒に行動してもらいます」

「分かった」

「了解」

真希の指揮の元、すぐさま行動を起こす機動隊。

その様子を、一台の車両の中で拘束されているエレンは見ていた。

寿々花たちは結局エレンから明確な情報を得る事は出来なかったのだ。

だが利用価値はまだあるとしてここに拘束されているのだ。

その中で、エレンは親衛隊が出たことを確認する。

「では、ワタシもそろそろ行動開始と行きマスか」

「だな」

突如として声が聞こえ、エレンの両手に繋がれていた手錠が外される。

「よ、お待たせ」

「待っていマシタよ、シュウ」

山矢である。その手にはエレンの御刀、越前康継があった。

「OH!マイ、スイート康継!」

「十分感傷に浸ったらいくぞ、外の警備はあらかた片付けた」

山矢に先導され、エレンは車両を出る。

一方、いくつもあるテントのうち一つ、医療用のテントにて、夜見はとあるジュラルミンケースを手に持っていた。そのケースを開ければ、いくつものカプセルが入っており、夜見はそのうちの一つを取り出して、それを、注射のように頸筋に差し、中身を体内に注入する。

 

それは、ノロだ。

 

「ナルホド」

「薫の奴が御刀を抜いた理由はこれだな」

その様子を、テント内に設置された監視カメラのリアルタイム映像を見ていたエレンと山矢。

夜見が出ていったのを確認すると、二人はすぐさまその中に入り、エレンは警戒、山矢はケースの中を開ける。

だが、そこにはカプセルは一本も入っていなかった。

「ない・・・?」

「・・・ッ!」

山矢が呟くのとほぼ同時に、エレンは飛来してきた蝶型の荒魂を斬り捨てる。

「人が悪いな・・・いるならせめて声ぐらいかけろっての」

山矢は、すぐさまベッドから降りてその手にザビーゼクターをつかみ取る。その山矢の目の前には、このテントを出ていった筈の夜見だった。

「紫様に仇成す輩に、そのような配慮は求めません」

「ごもっともデスネ!」

山矢がしゃがみ、エレンは振り向きざまに拳を繰り出す。それを躱した夜見だが、

「それならこっちも遠慮はいりませんネ?」

エレンの手には、夜見が使っていたカプセルがあった。

「手先は器用なんデスよ~」

その拳を握れば、まるで消えたかのようにその手の上からカプセルが消える。

「参ります」

「変身ッ!」

 

『HENSHIN』

 

山矢の姿が黄色い重装甲に纏われる。そのまま戦闘が勃発、エレンと夜見が迅移を併用しつつ剣戟を繰り広げ、一方の山矢―――ザビーはその後を追って動揺して動けない機動隊たちを掻い潜っていく。

並走しながらの激しい剣戟。繰り出される斬撃を、二人は躱し防ぎ、されど一瞬の隙をついてエレンの蹴りが夜見に叩きつけられる。

それに対して踏み止まった夜見は手首を切って荒魂を放出、エレンを襲わせる。

それに対して、エレンは迎撃を敢行。御刀を振って大軍を切り払う。

(これでは切りがありまセン!やはり大本を絶つしか・・・)

「うおらッ!」

そこへザビーの拳が夜見に迫る。

そのパワー十分な一撃を夜見はどうにかかわすが、追撃してくるザビーは猛攻をしかける。

ザビーは今マスクドフォーム、スピードはあまりないが、それでも常人にとってはすさまじい程の速さを誇り、そして、パワーが凄まじい。

繰り出される軽いジャブの連続でも、当たればただでは済まない。

繰り出される拳の一撃を、夜見はどうにか防いでその隙に荒魂を集中、ザビーにまとわりつかせる。

「聞くかんなもん!」

だが、ザビーは力任せに拳を振りかぶって夜見に叩きつける。どうにか防いだ夜見だが、衝撃に耐え切れず、地面に腰を落とす。

「刀使がライダーに勝てると思うなよ」

ファイティングポーズをとって、そう見下ろすザビー。

「ナイスデスシュウ!流石デース!」

「おう」

褒めるエレンにサムズアップを返し、ザビーはなおも夜見への警戒を解かない。

だが、うつむく夜見は、何かを思い詰めるように虚空を見て、

「足りない・・・」

「ん?」

「もっと、もっと力を・・・!」

何故か写シを解いた夜見は立ち上がり、そして、その首筋にもう一本、ノロの入ったカプセルを刺し、体内に注入した。そして――――右目から角のようなものが突き出す。

(みにく)っ!?」

「角!?鬼デスか・・・!?」

「あの方のために・・・!」

斬りかかる夜見。

「エレン!隙ッ!」

「了解デス!」

その一撃をザビーが受け止める。マスクドフォームであるなら強度は問題ない。だが、威力は先ほどよりもあがっている。

「ぐっ・・・って負けるか!」

しかしパワーは格段にこちらが上、押し込んで前足を払い、隙を作りだす。そこへエレンが踏み込む。

「手加減は無しデスよッ!」

八幡力によって強化したエレンの右拳の一撃が夜見の()()()()()()()()()鳩尾へ叩き込まれる。

だが―――

「ッ!?」

(そんな、ワタシの必殺鳩尾砕きが・・・!?)

効いていない。まるで、動じておらず、振り下ろされた夜見の刃がエレンに叩きつけられて、写シが解除される。

「エレン!」

「これは厄介デスネ・・・」

 

 

 

 

 

 

「古波蔵が逃げた?」

車両内で、そう聞き返す真希に、車を運転していた真希がそう聞き返す。

「はい。現在、皐月隊員が追跡しているとの事です」

それに溜息をつく真希。

「いいのではありません?むしろ狐が向こうから尻尾をだしてくれたのですから」

「アイツの場合は『タヌキ』じゃねえの?」

「そうですわね」

「・・・・お前ら、いつからそんなに仲良くなったんだ?」

大和がそうジト目で二人を見る。

「別にそんなんじゃねーよ。ただ話が合うってだけだっての」

「そうですわ。それにたった一日程度の付き合いですのよ?そんなに仲良くなれると思いまして?」

「ううむ・・・そうか・・・」

うつむく大和。

(深読みするタイプなのか・・・?)

真希はそう思わずにはいられなかった。

「ま、一応聞くが大丈夫なんだよな?」

「ああ、夜見の事だ。そう簡単に逃がしはしないだろう」

 

 

 

その予想はその通りであり。

「ぐお!?」

弾き飛ばされるザビー、その背後には、もう写シが張れなくなったエレンの姿があった。

「シュウ、大丈夫デスか?」

「誰にもの言ってんだ。問題ねえっつの」

ボクシングの構えを解かずに、迫りくる夜見を迎え撃つ山矢。

だが、夜見の姿の変貌によって戦況が妖しくなってきたのは事実。

異形化した夜見は、荒魂を使って二人の視界を抑え、その隙に先にエレンを倒そうという行動に出ており、結果エレンの写シは全て剥がされてしまったのだ。お陰でかなり消耗している。

「もう写シは張れないようですね。それに、貴方もかなり消耗している・・・」

夜見の指摘は正しく、エレンを庇いながら戦っていた山矢の体力はかなり消耗されている。このまま消耗によって変身が解かれてもおかしくはない。

「くっ」

「では、お覚悟を・・・!」

振り下ろされる夜見の刃。それに対して、ザビーはマスクドフォームの防御力を信じてブロックに入る―――刃が衝突する直前、どこからか巨大な刃が突き出されて、その一撃が防がれる。

その巨大な刃は祢々切丸の刀身。そしてその持ち主は当然・・・

「薫!」

薫は力任せに夜見を吹き飛ばす。

「生きてるな、エレン、修」

「はいデス!」

「おせえわ!」

「よし、それじゃあ修、お前はそのままブロックの姿勢でいろ」

「え?なん――――」

次の瞬間、薫の巨大な御刀がバットの如くスイングされ、ザビーはエレンともども吹き飛ばされる。

「ホームランッ!」

「うおぁぁぁああ!?」

「ば、バカァァァ!!」

そのまま地面を転がりに転がり、仰向けになった所でザビーの変身が解除され、エレンは仰向けに倒れる。

そのエレンに、紅白の制服の少女が声をかける。

「あ、えーっと、エレンちゃん?修さん?大丈夫ですか?」

「か、カナミン!?どうしてこんな所にいるデスか・・・!?」

「ヒヨヨンもテンテンもいるよ。ほら」

見てみれば、薫の他に姫和にライダーフォームのカブトもいた。

「勘違いするな。私はただ、自分が戦うべき相手を選んでいるだけだ」

「やれやれ、赤城に聞いていた通りの頑固さだな」

「う、うるさい!」

カブトの言い様に顔を赤くして怒鳴る姫和。

「エレン!」

「あ、ユウスケ」

さらに、ライダーフォームのドレイクまでやってくる。

「本当に、親衛隊の人が荒魂を・・・」

(これが手紙にあった人体実験か・・・人とは、これほどまでにおぞましくなれるのか)

夜見の姿は、もはや人間と呼んでいいのかと疑うぐらいの異形に変貌してしまっている。

周囲には大量の荒魂、このままで本当に大丈夫なのかと疑うぐらいの容姿だ。

荒魂が襲い掛かる。

「可奈美!その金髪をつれて早く逃げろ!」

「分かった!」

「頼んだぞ!」

「うっしゃあ!いくぜぇ!」

 

『HENSHIN』

 

「キャストオフ!」

 

『CAST OFF』

 

山矢が再度変身してザビーとなり、ザビーゼクターを操作して装甲が吹き飛び、中から最速の戦士が現れる。

 

『CHANGE WASP

 

ドレイクとカブトが、それぞれの銃器で荒魂を迎撃する。

仕留め切れなかった分は姫和と薫、そしてザビーが倒し、さらにねねまでが戦いに参加。数は目に見えて減っていく。

その一方で、エレンは可奈美に聞いた。

「なんで来たんデスか?このまま行けば今頃は石廊崎に・・・・」

「うん、着いてたと思う。だけど薫ちゃんや雄介さんから聞いたんだ。あの人の事。昨日の荒魂も、あの人の仕業だったって」

「だからって」

「薫ちゃんや雄介さんはエレンちゃんが心配でたまらないって、ねねちゃんが教えてくれたんだ!」

「ねねが・・・?」

その言葉に、エレンは心打たれる思いになる。

その一方で、

(ペットだけでなく今度は相棒まで、お前には借りを作る一方だな)

薫は心の中でそう呟く。やがて夜見の放った荒魂はほとんど狩り尽くされ、残ったのは異形と化した夜見だけだった。

「終わりだ」

姫和が御刀を向ける。それに対して夜見は御刀を地面に突き刺す。降参か?否、違う。

「終わり?本当にそうでしょうか?」

そう言って、夜見が取り出したのは、その手に持てるだけのノロの入ったカプセル。その数、左右合わせて八本。

「ッ!?待て!それ以上投与すれば・・・!」

カブトの制止を振り切って、夜見は一気にノロの入ったカプセルを首筋に突き刺した。

 

 

 

 

その瞬間、周囲が暗くなる。

 

「なんだ・・・?」

「・・・ッ!?皆さん!あれを!」

大和の言葉に、寿々花がある方向に指を指す。そこから、煙のようなものが立ち上っていた。

「なんだあれ?」

「まさか・・・夜見・・・!?」

その声音には、まさしく動揺が孕んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

その異変は、当然可奈美達も気付いてる訳であり、

「え?何?何が起こるの?」

可奈美は状況が飲み込めず、その場に立ち止まってしまい、エレンは心配そうに後ろを見ていた。

その最中で、エレンの見ていた方向からカブトたちが走ってきていた。

「なんだよあれ!?あんなの反則だろ!?」

「流石に俺もあれは想定外だ!」

「つべこべ言わずに走れ!」

「可奈美!止まるな!」

だが、その声が届いた瞬間には、周囲は黒く染まっていき、木は枯れ、枯れ葉が枝から離れ、地面に落ちる前に塵となって消える。それに振り返った刀使とライダーたちは、迫りくる脅威を警戒する。

それは、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

角だと思われていたものには目が、目はさらに映ろに、深く暗い赤銅色に染まり、醸し出す雰囲気は妖のそれ。

今の夜見は、間違いなく人間の域を踏み外している。

その視線は彼らを彷徨い、やがて、一人に目を付け、一気に斬りかかる。

その標的は、薫。

「ぐっ!?」

尋常ではないパワーの一撃が振り下ろされる。

それは薫の八幡力をもってしても弾かれる程の威力だ。

「薫・・・ッ!?」

思わず助けに行こうとしたエレンは体力の消耗が激しく動けず、だがその間にも薫は追い詰められていく。

「薫!」

そこへザビーが割り込み、全力のストレートを御刀をもっている右の鎖骨を打ち据えようとするも、防がれ、弾かれる。だがすかさず左拳を繰り出して顔面を殴り飛ばそうとしてもそれを腕を掲げられる事で防がれ、鈍い音がしたのにも関わらず、夜見はなおも刃を振るい、その装甲に斬撃を叩きつける。

「ぐっ!?」

「チィッ!」

すかさずドレイクが銃撃をしようとするも、それよりも早く夜見の使役する荒魂の大群がドレイクに群がり銃撃を阻止、その為姫和が踏み込むもその斬撃はいともたやすく弾かれ逸らされ防がれて、振り下ろされた御刀を防いで上体をのけ反らせて耐える。

「姫和ちゃん!」

「来るな!」

思わず助けに入ろうとした可奈美を怒鳴って止める姫和。

「こいつは・・・もう・・・!」

歯を食いしばって、どうにか声を漏らす姫和の様子に、可奈美は口を出せないでいた。

その様子を、カブトは黙って見ていて・・・

「・・・可奈美」

「・・・!」

姫和が夜見によって吹き飛ばされ、地面に倒れ伏す。

「ぐぅ」

追撃してこようとする夜見。だが、それよりも先に、

「こっちだよ!」

可奈美の声が響き、そこには御刀を抜いて夜見と対峙する可奈美の姿があった。

「今度は私が相手だよ」

その背後では、なぜか変身を解除した天道の姿があった。

「あいつ、何やってんだ!?」

その行動に、ザビーは思わずそう声をあげてしまう。

 

 

 

 

 

 

「夜見の奴、制御不能な程のノロを・・・」

「あれが折神家の実験の結果か」

真希の横から、大和がそのように言う。

「・・・」

「言わなくていい。あの研究には我々ゼクトも手を貸している。それよりも、早く向かった方がいいだろう」

「ええ」

大和の言葉に、真希は頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

可奈美と夜見の御刀が衝突して衝撃波をまき散らす。

その間に、天道は変身ベルトすらも外す。

何度か剣を交えているうちに、可奈美が地面に散らばったノロの水たまりに足を取られて転ぶ。

「可奈美!」

それに姫和が思わず声をあげる。

だが、可奈美の目の前には夜見がいた。

その異形の目はぎょろぎょろと彷徨った後には可奈美をとらえていた。

「斬れ!可奈美!」

姫和が叫ぶ。

「そいつはもう、人間じゃない!」

今の夜見は異形の存在。とてもではないが、人と呼べるものではない。

「人間じゃない?馬鹿を言うな」

だが、この男は、

 

「あれは折神紫と同じ荒魂に支配されただけの()()()()()()

 

次の瞬間には天道は走り出していた。

夜見は、可奈美を抑え込んでその御刀を向けていた。

天道と夜見の間の距離がどんどん縮まっていく。そして、天道がある程度夜見に近付いた所で、夜見が起き上がって御刀を薙いでくる。だが、その一撃は天道の頭上を掠める。天道が身を低くしたのだ。

夜見に密着出来るほどの距離に近付いた天道は、自分のベルトを夜見につけ、さらにカブトゼクターすら装着する。そしてカブトゼクターのフルスロットルを順番に押す。

 

『THREE TWO ONE』

 

そして、ゼクターホーンを倒した。

 

『DISASSEMBLY AND ABSORPTION』

 

次の瞬間、夜見の体から炎の如く何かが溢れ出す。

「んな!?」

「何が起きているんだ!?」

突然の事態に理解が追い付かない一同だが、その渦中にいる三人といえば、夜見は苦しそうに呻き、可奈美もどうようで、天道は顔を腕でかばいつつ、その激流に耐えていた。

その、溢れ出した何かは、一つ残らず、塵の一つまでカブトゼクターに集まっていき、やがて、夜見は元の姿に戻り、周囲に散らばっていたノロすらも消えていた。

そして、全てのノロを吸収しおえたカブトゼクターはベルトから外れ、こてん、と地面に転がった。そのカブトゼクターを拾い上げつつ、倒れていく夜見を受け止める天道。

その夜見からは、かすかな息遣いが聞こえ、どうにか生きている事が確認できた。

その事を確認した天道は次にカブトゼクターを見た。そのカブトゼクターから、ジジッ、という、プラズマが迸るような音が聞こえてきた。

「しばらくは使えないな」

そう呟いて、天道はカブトゼクターを懐に仕舞い、そして今だ茫然としている一同を見た。

そんな彼らを一瞥しつつ、天道は彼らに言う。

「早く行くぞ、こうしてぐだぐだしている間にも、他の親衛隊やライダーも駆けつけてくるぞ」

「・・・・後で聞くからな。エレン」

「りょ、了解デース!」

風間に促されるままに、エレンは携帯を取り出してどこかへ連絡する。

「タクシー一台至急手配願いマース!」

 

 

 

 

 

 

 

夕日の光が海に跳ね返り、輝く中、ゴムボートが一つ、進んでいた。

「舞草の力をもってすれば、こういう事も容易いデース!」

「本当にこんなもので逃げ切れるものか。奴らの事だ。すぐに海軍に連絡して・・・」

「心配、ア御無用だぜ、十条。エレンが呼んだのは・・・」

「潜水艦、だろう?」

天道がきっぱりそう指摘した直後、海面が突如として盛り上がる。

だが、それは実際に海面が盛り上がっている訳ではなく、海底からやってきた巨大な存在によって海面が押し上げられただけだ。

海水が全て海に戻り、代わりに現れたのは、見るも巨大な潜水艦だった。

その圧巻さに、一同は声が出なかった。(天道は海底からの振動で何が来るか予想が出来ていたからさほど驚いていない)。

 

 

 

 

その様子は、当然、親衛隊やゼクト側のライダーにバレている訳であり、

「やれやれ、これは予想できませんでしたわ」

「潜水艦をもってる、というよりは、出してきたって事は、奴らはあの三人を確保する事にかなり本気だったという事だな」

「・・・・撤収だ」

もう追いかけるのは不可能だと判断したのか、真希はそう告げ、それに続くように寿々花、大和、織田と他機動隊の面々は踵を返して去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

本部に戻った真希たちは報告に向かい、一方、大和と織田は影車兄弟に会いに行っていた。

「ご無沙汰しております、大和隊長」

「ご無沙汰です」

「ここには馴染めたか?」

「弟はともかく、自分はまだ・・・」

「お前は固過ぎんだよ。もう少し肩抜け」

大和の言葉にそう謙遜の言葉を返す想に、織田がそう言ってのける。

それはともかく、瞬は二人にある事を切り出した。

「あの、隊長」

「なんだ?瞬」

()()()は、まだ・・・」

そうおずおずと聞く瞬に、大和は目を伏せる。

「すまない。まだ見つかっていない」

「そうですか・・・」

それを聞いて肩を落とす瞬の肩に手を置く想。

「今後、本社には調査してもらうつもりだ。お前は、自分の仕事に専念しろ。いいな」

「分かりました」

「よし、三日以内に真島に代わるライダーが配属される。今度のは俺も知らない奴だ」

「信頼できるんですか?」

「さあな。だが、信用は出来る程の実力者とは聞いている」

「隊長がそう言うのなら。では、俺たちはこれで。隊長たちも、ゆっくりと疲れをとってください」

「そうさせてもらおう」

そう言い合い、分かれる双方。

ただ、瞬は去っていく大和たちの方をじっと見ていた。

「瞬」

「あ、兄貴・・・」

「お前の心配事は分かる、が、今は反逆者をとらえる為の準備を万全にしておけ」

「分かった・・・」

やや暗い声でそう答え、瞬は想の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

鎌倉にて、一つの林の中で、一つの光が落ちる。

その光は、その森を小規模で吹き飛ばすも、夜な為に人影は無く、その音を聞いたものは、さして気にもしなかった。

だが、その光が作り出した穴に、一つ、黒い影があった。

「ぐ・・・ぅぁああ・・!!」

その影は、よろよろとその穴から這い上がり、何かを求めて彷徨い歩き始める。

「ゆか・・・り・・・・あか・・・・ね・・・・」

その影は、よろよろと、また闇の中へ消えていった。

 

 

 

 




次回『本・心・絶・叫』



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