浦の星が共学化した世界で僕はどう生きるか   作:ナマスの書斎

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千歌達が高校2年に進級した4月、浦の星女学院が共学化した。それでも男子生徒は数人しか来なかった。そんな最中、千歌はスクールアイドル活動を始めようとするが…
そして東京から沼津に引っ越してきた稜然は…



2話 蜜柑色の出逢い

4月。

 

それは始まりの時期である。

 

新たな出会いや新たな変化。

 

挙げればきりがない。

 

それは、静岡県沼津市の内浦でも言える事だ。

 

1人の少年と9人の少女達の出会いが始まろうとしていた…

 

ー4月1日 夕方 静岡県沼津市内浦ー

 

「…田舎だな」

 

疲れ混じりに呟いた。

 

俺の名前は浅岸稜然。親の仕事の関係で本日より静岡県民になった。

沼津駅から東海バスに揺られて凡そ30分…沼津市街地を離れるに連れて海が近づいてきた。

 

「…」

 

俺は呼吸をするのを忘れていた。道路の隣には海が水平線を描きながら佇んでいた。それは、夕方ということも相俟ってより一層魅力的に思えた。

 

「ここか…」

 

目的の場所へ着いた。ってかバスの料金って一律じゃないのな…ちょっと焦って運転手のおっちゃんに迷惑をかけちまった…

 

バス停には「三津」と表記されている。その名を冠した浜辺がすぐ側にあり、俺は思わずその砂浜に足を運んでいた。

 

長旅で疲れた俺は砂浜の横にある桟橋に腰掛けることにした。数時間前まで雨が降っていたのだろうか、桟橋が少し濡れていた。

 

「ここでやっていけるのかね…」

 

不安と淡い期待が入り混じった心境を吐露した。

 

疲れと不安に全身を支配されているとふと後ろから

 

「ダメー‼️」

 

と女の声がした。この事を脳が認識した瞬間、上半身が羽交い締めにされた。

 

「は!?…ちょっ何だよ!」

 

突然の事に理解が追い付かない中、精一杯の抵抗を見せる俺。

 

「早まらないで!悩みがあるならわたしに話して!きっと解決するからぁ‼️」

 

…はい?

 

えっと…もしかして俺、自殺しようとしてる風に見えた⁇ それを止めようとこの女(声でしか判断できてないが)は羽交い締めして来てるってこと⁇

 

「いや死なないから!ただ座ってただけだから!」と俺は誤解を解こうと反論するが

 

「嘘じゃん!だって後ろ姿とかひそーかんが半端ないもん!」と女は言う。

 

おいおいマジかよそんなに悲壮感溢れてるのかよ…

 

「いや、出てねーし死なねーから!」と腕を振り解こうと抵抗する。

 

それが間違いだった。

 

「うわっ‼️」と女は声を出した。俺の突然の動きに対応出来ず、女は脊髄反射で身体を動かしてしまった。

 

数秒後、三津浜に2人分の水しぶきが巻き起こった。

 

 

 

「あはは…ごめんね…?」

 

蜜柑色の髪を海水で濡らした少女は申し訳なさそうに自身の非を詫びてきた。

 

見たところ俺と同い年くらいだろうか。海水を吸った厚手のセーラー服の上着をタオルで包んでる女を見てそう思った。

 

「いや…俺も急に暴れて悪かった」

 

元は向こうの盛大な勘違いだったが、海に落ちたのは完全に俺の所為だ。

 

「君も…海の音を聴きに来たの?」

 

「…は?」

 

蜜柑色の髪の女の素っ頓狂な質問に思わず反応が遅れてしまった。

 

「ううん、なんでもないや」

 

こっちのことだから、と話題を終わらせてしまった。

 

そーいえば と話を振ってくる蜜柑色の女

 

「私の家旅館やってるの!その…お詫びにお風呂入ってかないかな…?」

 

なるほど旅館の娘なのか。確かに服は海水まみれ、このまま帰るのは流石にキツい…

 

「でも俺金持ってないんだが大丈夫か?」

 

その質問が大丈夫じゃねーよ!!と脳内でセルフツッコミ。

実を言うとここにくる時に財布の金をバス代に使い果たしてしまっていた。完全に東京育ちなのが仇になっているまでもある。

 

ところがその女は

「お金のことなら気にしないで!!それに私たちもう友達でしょ?」と目を見つめながら言ってきやがった。

 

「お、おう…」

思わずたじろぐ俺。コミュ障は目を合わせられるのに弱いのだ。ポケ○ンだったら一撃必殺なまでもある。

 

「じゃあ…お言葉に甘えて」

相手の好意を無駄にする理由はないしな。ここはお邪魔させて頂くことにしよう。

 

「ほんとぉ!?じゃあ案内するねっ!」

俺の返答を受けて一気に上機嫌になった女は軽快にスキップを決めながら歩き始めた。

 

今にも日が沈もうとしている海に背を向け女の家に向かって歩を進める俺たち。

 

すると、何か思い出したかのように二歩前を歩いていた女が振り返った。

 

「そういえばまだ自己紹介してなかったね…」と照れながら言う女。

 

「浦の星女学…じゃなかった!浦の星学院高校2年生の高海千歌です!よろしくね!!」と屈託のない人懐っこそうな笑顔で名乗った。

 

高海千歌ね…よし覚えたぞ …あれ?

 

「浦の星学院高校…マジで?」

 

「そうだよ!今年から共学になっちゃったけど大好きな学校なんだ〜」俺の反応に怪訝そうな表情を浮かべつつもすぐに笑顔に戻る高海。

 

「…俺は浅岸稜然。高校は…君と同じだよ」

 

「えー!!」

 

蜜柑色の女の驚きとも喜びとも捉えられる声が紅い空に木霊した。

 

 

 

 




およそ3ヶ月振りの投稿になります。
一応補足しておくと今はアニメ一期一話と二話の間らへんです。
時系列が分かりづらいかと思われますが今後もお付き合い頂けると幸いでございます。
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