この素晴らしいオラリオに祝福を!   作:金木桂

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 めぐみんが出せました。満足。


6話 爆裂少女にファミリアを!

 

 

 ダンジョン一階層。

 地上から一番近い位置にあり、ある種登竜門みたいな立ち位置にある。

 出現するモンスターもコボルトとゴブリンだけの初心者御用達エリアだ。ソロで潜る以上群れとの遭遇に気を付ける必要はあるが、それさえあれば基本的に問題ないだろう。

 

「せいっ!」

 

 ギルドから借りた直剣を振るう。

 背後からの一撃、刃は一体で彷徨いていたゴブリンの背中を深く抉ってそのまま倒れ伏せた。

 そして、細かく散り散りになったかと思えば霧のように消え、魔石がコトンと落ちる。

 

 ……スニーキングキルには慣れたけど、この質量保存の法則を無視した現象にはいくらやっても慣れないな。

 本日何十回目かの魔石を拾って、ポーチに仕舞う。

 

 有り体に言って、俺は悠々とこの一階層のモンスターを狩っていた。

 喧嘩なんてしたことない俺がここまでやれているのはエリスの加護のおかげだろう。まだ1度も戦闘で苦労したことはないし、控えめに言って順調だった。何ならこのまま三階層くらいまで降り立って問題ないかなあとは思っちゃうくらいに。

 

「まあミラーさんに一階層で止めとけって言われたもんな。帰るか」

 

 曰く、ダンジョン潜り始めて最初の一週間くらいは下に行くなとのことだった。

 ミラーさんは俺がスキル持ち魔法持ちということを知らないけど、ただ怒らせると怖そうだしな。

 

 ……あ、でも最後にもっかい実験しておくか。

 そう思い至り、適当なはぐれコボルトを探すとゴクリと唾を飲み込んで、口を開く。

 

 

「スティィィール!!」

 

 

 ────────────。

 ──────。

 ───コボルトと目が合った。こんにちわ。

 

「くっそおぉぉぉ!」

 

 魔法、使えねえじゃねえか!

 俺の期待感返せ!返せよマジで!

 

 やけっぱちにコボルトへと俺は駆け出した。

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

「あの、カズマさん……申し訳無いですけど、助けて下さい」

 

 魔石を売り払い、なけなしの3000ヴァリスを稼ぎ出した俺は1ミリも困ってなさそうな相貌のミラーさんに呼び止められた。

 見てみれば、ミラーさんは背伸びした魔法使い見習いみたいな服装をした少女に絡まれていた。

 

「お願いです…………お金がないんです………ダンジョンに潜らせて下さい…………」

「ですから、ファミリアに属していただかないと安全上の規約から許可できません」

 

 と、ぐぅ〜〜、と誰かの腹の虫の音。

 音源は明らかに目の前で懇願する少女のものだった。

 

「そこを何とか……!もう私3日は何も食べてないんです……!」

「ですので、まずはファミリアに加入していただいてですね」

「もう10件は打診しましたけど全部駄目でした……!ちょっとで良いんです!ゴブリン五体くらい倒して今日の分のお金稼いだらまたファミリア探すので!」

「と言われましても……」

 

 チラッ、チラッ、とミラーさんの視線が俺に向けられる。基本無表情で発言も真面目の癖に動作だけは意外とユニークだなこの人。

 

 まあこの少女に思うとこがないといえば嘘になる。

 俺もファミリア断られまくったし、エリスのおかげで金があったからどうにかなっただけだ。……何かここに来てからずっとエリスの恩恵におんぶに抱っこになってる気はするけどそれはそれとして。

 

「なあ、ファミリア探してるんならウチに入るか?」

「……あの、ナンパは求めてないのであっち行ってもらって良いですか?」

「な、ナンパじゃねえし!そんなちんちくりんな身体の子どもに誰がナンパするか!」

「し、失礼ですね!受付の人、何なんですかこの人!」

「冒険者のカズマさんです。現在レベル1で私の担当冒険者です」

「いやそういう事を聞いた訳じゃないんですけど!」

 

 魔女みたいなツンツンした帽子を被った少女は、再びぐぅ〜、と音色を奏でた。

 

「取り敢えず奢ってやるから、飯食いに行くか?」

 

 

 

 

 

 既に馴染んでしまった俺の泊まっている居酒屋に来ると、少女は人の金だと思ってどんどんメニューを頼むんでガツガツと食らい始めた。

 思っていたより、図太い。

 見た目は信じられないくらい整った、そこそこ売れてそうな清楚系アイドルみたいな容姿のくせして滅茶苦茶図々しい。

 呆れた目で見ていると、一息ついたようにフォークを皿に置いた。

 

「ふぅ、ありがとうございます。久しぶりの食事で食べすぎてしまいました」

「まあいいけどさ……えと、名前は?」

 

 少女は立ち上がると、マントをバサリと翻して。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

「…………馬鹿にしてるのか?」

「ち、違うわい!」

 

 心外とばかりにめぐみんは俺の言葉を否定した。

 というかめぐみんってなんだ。

 

「えーーーっと、じゃあめぐみん。ウチのファミリアに入らないか?」

「……私は誉れ高いアークウィザード、安くないですよ?」

「やっぱ止めとくか、うん」

「冗談です、冗談ですから置いて行かないでください!是非入れてください!私役に立ちますよ!」

 

 俺はその場を去ろうとするとめぐみんは必死に縋りついてきた。よし、勧誘には成功したみたいだ。

 魔法使い、要するに後衛。

 俺もソロで潜るのは不安だったし、丁度遠距離から攻撃したりサポートしてくれる仲間は欲しかったところだ。

 

「なら、話も纏まったことだし主神のところ行くか」

「ファミリアの拠点ですね、これからどんなところに住むのかワクワクします」

「まあ……それは着いてからのお楽しみってことで」

 

 

 と、不安がるめぐみんを引き連れてやって来たのはアクアの住む厩舎。

 今日も変わらずの臭いだ。近づくとめぐみんは少し顔を顰めた。

 

「ここ……馬小屋ですよね」

「そうとも言う。おーいアクア!」

「馬主かなんかなのでしょうか……」

 

 めぐみんは中へ進む俺の後を追いながら呟いた。

 どちらかと言うと馬主じゃなくて飼われる側なんだけどなこの女神。

 中に入ると、ゴロンとソファで寛ぐ日曜日のサラリーマンみたいに藁の上で立て肘をしながら寝転がったアクアがいた。威厳もクソもないなコイツ。

 

「ん〜カズマ?なになに、今日の成果の報告?」

「それは後でな。それよりこのファミリアに入りたい人がいるんだ。で、めぐみん。これがアクア、ウチの駄女……じゃなくて主神だ」

「今言いかけたわよね?駄女神って言いかけたわよね?」

「さ、めぐみん。自己紹介してくれ」

 

 アクアの言葉を無視して俺はめぐみんに促す。

 少し緊張しているのか、ぎこちないながら同じようにマントを翻した。

 

「わ、我が名はめぐみん!爆裂魔法を担いし世界最高峰のアークウィザード!」

 

 さっきより微妙に盛ってる気がするんだが。

 白けた顔になってる俺とは対象的にアクアは、もしかして、と目を見開いた。

 

「赤目……もしかしてあなた紅魔族?」

「ええ、その通り」

 

 どうやらアクアはこの子のことを知っているみたいだ。

 

「アクア、紅魔族ってのはなんだ?」

「ええとね、紅魔族は生まれつき高い知性と魔力を持った種族よ。大抵魔法使いのエキスパートになれる能力を持ってるわ、名前は変だけど」

「名前が変とは失礼じゃないですか。私から言わせればあなた達の名前の方がおかしいんですよ」

「因みに家族の名前は?」

「母はゆいゆい、父はひょいざぶろー!」

「…………………うん、アクア。この子は仲間にしてもいいんじゃないか?将来有望そうだし」

「おい。何か両親の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」

 

 俺はめぐみんを視界から外してアクアを見る。

 

「そうね。私もこのファミリアに人が増えるのは大歓迎よ!さあさあめぐみん、ファルナを刻むから服を脱いで」

「は、はぁ。分かりました」

「あとカズマは早く出てって!」

「わ、分かったよ」

 

 唾を飛ばすような剣幕でアクアに言われ、俺は畜舎の外に出る。そんな警戒しなくても俺は子どもに興味無いって、とか言っても無駄そう雰囲気だった。アイツ本当に俺がロリコンだと思ってるのだろうか、一回聞いとく必要があるな。

 

 ともかく、これで漸くパーティーが出来たわけだ。

 年甲斐も無く俺はワクワクしながら畜舎の外にロープで繋がれた馬をヨシヨシと撫でるのであった。

 

 

 

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