鎮守府出入り業者の俺   作:土管侍

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番外編 お出かけ

某県某所

第17鎮守府 執務室

 

「それでは、第一陣として君たちを送り出す。迷惑を掛けるような行為は絶対に認められない。加え、何かあれば協力は惜しまない姿勢を貫いて欲しい。以上だ。楽しんで来てくれ」

 

 場違いな場所に場違いな格好の女性が6人居た。白い軍服を着た男性に敬礼をすると、彼はそれに対して答礼を行った。6人はゾロゾロとその場から立ち去り、敷地の外へと向かう。

 

「では、スケジュールを再確認します」

 

 6人の中でも幾分かフォーマルよりな格好をしているのは、纏め役の加賀だ。彼女を筆頭に、赤城から飛龍と蒼龍、翔鶴と瑞鶴の5人がそれぞれ私服姿で付き従っている。

 

「まず、最寄のバス停からバスに乗ってアーケード前で降ります。その後は事前に作成したスケジュールの中で動き続け、夜になる前に同じバス停から乗って鎮守府へ戻ります。異論はないわね?」

 

「加賀さん、哨戒任務じゃないんだからもう少し気楽に行きましょうよ」

 

「そうそう。司令もああ言ってたんだから、楽しまなくちゃ」

 

 ラフな格好の飛龍と蒼龍がニコニコしながら言った。しかし、加賀は表情を崩さない。

 

「私たちは記念すべき第一陣に選ばれました。それはつまり、ここの顔として赴く事です。私たちの言動次第で、次に行く子たちが受け入れられないような事態は避けねばなりません」

 

「加賀さーん、それもいいんだけど赤城さん何とかしてよ」

 

 瑞鶴が指差す先には、満面の笑みを浮かべて地域情報誌を眺めたまま、棒立ちになっている赤城の姿があった。翔鶴が必死に呼びかけて現実へ引き戻そうとするも、全く聴こえていないらしい。

 

「赤城さん!赤城さん!まだ鎮守府を出てもいないのにトリップしないで下さい!」

 

 加賀が足を進め、赤城の手から情報誌を取り上げた。同時に目の色が戻る。

 

「…………あれ、私は何を」

 

「赤城さん、行きますよ」

 

「あ、はい」

 

「……翔鶴、フォローは頼むわね」

 

「はい!お任せ下さい!」

 

 こうして6人はバスに乗り込み、町へ向かったのだった。最初の目的地は赤城たっての希望こと黒川食堂だ。アーケード前からはちょっと離れているが、歩いて10分かそこらの距離である。

 

 

アーケード前

 

 そこそこ発展した地方都市独特の街並みが広がっている。バスから降りた6人は、初めて訪れた中心部を前にそれぞれ目を輝かせた。

 

「ねぇ飛龍、あの角の居酒屋とか結構狙い目っぽいよ」

 

「あっちの洋食屋も美味しそう~」

 

「ニ航戦、それは次の機会にね」

 

「加賀さんだってあそこの本屋さんに行きたそうな目してるくせに」

 

「黙りなさい五航戦の妹の方」

 

「赤城さん赤城さん、あのショーウィンドウの服屋さん素敵ですね」

 

「ええ、そうね」

 

 翔鶴の声に答えつつ、内心は自分の欲望の事しか考えてない赤城だった。そんなこんなで6人は、早めの昼食を取るため移動を始めた。

 

 

黒川食堂

 

 突如として現れた謎の美女6人に、同じく早めの昼飯をと入店していたサラリーマンたちは困惑した。こんな揚げ物メインの店には似つかわしくない集団である。それに構わず60代の女将はにこやかに受け入れた。

 

「はい、いらっしゃい。もしかして鎮守府の皆さんかな?」

 

「お邪魔致します。本日の纏め役をしております、加賀と申します」

 

「あらあらご丁寧に。こっちのテーブルにどうぞ」

 

 事前に根回しをしているお陰でスムーズな入店となった。今日中に行く予定の店は全て連絡が行き渡っているので、比較的出入りし易くなっている。

 

 席に着いた6人はメニューをめくり、想像以上の品数に迷いつつも何とか選び抜いた。

 

「シーフードミックスフライ定食をお願いします」

 

「ビフカツ定食お願いします!ご飯大盛りで!」

 

「厚切りチキンステーキ定食、同じくご飯大盛り。あとお味噌汁を海鮮汁に変更で」

 

 加賀、蒼龍、飛龍ともに思い思いの注文だ。続いて五航戦の瑞鶴と翔鶴。

 

「メンチカツ定食で」

 

「えーと、そうね。サーモンフライの定食でお願いします」

 

 そして赤城……

 

「あのぉ、この数量限定の三元豚厚切りロースカツ定食はまだありますか?」

 

「今日はまだ注文されてないから大丈夫だよ。それでいいかな?」

 

「はい、お願いします」ニパー

 

 この店の看板メニューでもある定食を頼んだ赤城の極上の笑顔に対して、全員が苦笑いを浮かべた。それに対し、飯を掻っ込んでいたサラリーマンたちは赤城の笑顔に胸を射抜かれ、箸を進めるのも忘れて見入っている。

 

「おい、なんだあの娘ら。こんな小汚い所に集団で来るなんてどういう事だよ」

 

「知るか。それにしても全員レベル高いな」

 

「そこのお2人さん、明日から出禁にされたくなきゃ静かにね」

 

「あ、サーセン。単品でから揚げお願いします。それで勘弁を」

 

「こっちも白身フライ追加で」

 

「はい毎度」

 

 かなり図太く商売しているようだ。その後、運ばれて来た定食に6人は舌鼓を打ち、大満足の表情で会計を済ませた。

 

「ご馳走様でした。またお世話になると思います」

 

「今度はもっと大人数でおいでよ。待ってるからね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「「「「「ご馳走様でした~」」」」」

 

「ありがとうね」

 

 店を後にし、次の目的地へと向かう。ここからバス停まで戻り、アーケード街の中に入った。

 

「次は誰の要望かしら」

 

「「はーい」」

 

 飛龍と蒼龍が同時に返事をした。見た目だけなら大学生風の2人が行きたいと言っていたのは、アーケード街にある小物雑貨の店だ。

 

 

雑貨屋『わだつみ』

 

「こんにちはー」

 

「お邪魔しまーす」

 

 臆せず堂々と入るニ航戦。ある意味で最も肝が据わってるのはこの2人ではないだろうか。

 

「いらっしゃい。ゆっくり見てっておくれ」

 

 店主は80近いお婆さんだった。店内は観光地のお土産屋のような雰囲気だが、落ち着いていて居心地がいい。

 

「初めまして。纏め役の加賀と申します」

 

「こんな所に大人数でありがとうね。気に入るような物があればいいけれど」

 

 暫し、店内を散策する。飛龍と蒼龍は透明な水晶玉の置物に目を奪われていた。

 

「すっごい綺麗」

 

「部屋に飾っちゃう?」

 

 3つほど向こうの棚では翔鶴と瑞鶴が巾着を物色中。

 

「これ可愛いわね、こっちのもお洒落な模様で素敵」

 

「うーん、私はシンプルな無地の方が好きかなぁ」

 

 店の最も奥にある一画にて、赤城が小瓶を手に取っていた。

 

「赤城さん、それは?」

 

「香水みたい。いい香りね」

 

「赤城さんにはハッキリと分かる香りよりも、ほのかに漂う感じの方が似合うんじゃないかしら」

 

「でも私にはちょっと」

 

「こういうのはどう?」

 

 別の小瓶を取った加賀は、それを赤城に渡した。

 

「……結構いいかも」

 

「私も何か1つ買おうかしら」

 

 約1時間後、それぞれお買い上げして店を出たのであった。次の目的地は翔鶴希望の場所だ。

 

「瑞鶴は行きたい所ないの?」

 

 突拍子もなく訊ねる飛龍。

 

「私は町に来てみたかっただけだからねぇ。まぁ気に入った所があればまた来ようかな」

 

 本当は可愛いぬいぐるみが沢山あるお店に行きたかったのだが、このメンバーである事を考えてまた今度にする瑞鶴なのでした。ズイズイ

 

 

ブティック『Southern Cross』

 

 定食屋、雑貨屋と来たが、最もハードルの高そうな店に着いてしまった一同。

 

「……翔鶴」

 

「はい?」

 

「かなりレベルの高そうなお店だけど」

 

「大丈夫ですよ。加賀さんもご一緒にどうですか?」

 

 因みに他の4人は店の雰囲気に圧倒され「ちょっと」と言う事で隣の本屋に逃げた。加賀の服装が幾分かフォーマルより、翔鶴がシンプルながらも大人っぽいスタイルなので、場違い感はないと思える。

 

「……仕方ないわね」

 

「じゃあ行きましょう♪」

 

 連れ立って店に入る。まず出迎えたのは、長身で着こなしも抜群なイケおじ店主だった。

 

「いらっしゃいませ。鎮守府の皆さんですね。ようこそおいで下さいました」

 

「初めまして。飛翔の翔に鶴と書いて、翔鶴と申します。こちら、纏め役の加賀さんです。字は加賀国(かがのくに)の加賀と書きます」

 

「ご丁寧にありがとうございます、店長の本多です。向こうに居るのは妻です。ご要望があればどちらにでも遠慮なくお声掛け下さい」

 

 スラっとしたスキニーを穿いた細身の美人妻が手を振っていた。旦那に負けずお洒落である。

 

「本日は皆さんがいらっしゃる間だけ貸切にしてありますのでごゆっくりお楽しみを。そう言えば6人とお聴きしておりましたが、他の皆さんはどうされましたか?」

 

 その質問で2人は苦笑いになった。隣の本屋から4人を連行し、問答無用で店に押し込む。

 

「「「「お、お邪魔します」」」」

 

 縮こまった4人が合流した所で、店の入り口には『貸切』の看板がぶら下がった。約2時間後、それぞれが2~3着を購入して店を後にする。

 

「またのご利用をお待ちしております」

 

「ありがとうございました。また来ますね」

 

「お気をつけてお帰り下さい」

 

 店から『貸切』の看板が取り払われた。同時に数名の客が店へと入っていく。

 

「人気店なんですね。また来ましょうね加賀さん」

 

「私は暫くいいかしら……」

 

 殆ど翔鶴の独壇場だった。仕舞いには店主の妻と一緒に全員のコーディネートを始め、自分そっちのけで店員のような状態になっていた。

 

「結構な額だったね」

 

「でもまぁ、いい買い物だったじゃん」

 

 二航戦はご満悦。瑞鶴は苦笑いだが、新しい領域に踏み込んだ気分でいっぱいだった。

 

「買っちゃいましたねぇ、着る機会があるかどうか」

 

「白いワンピース、似合ってたわよ。赤城さん」

 

「赤城さん、私が選んだカーディガン普段使い出来ると思うので、着て下さいね」

 

 何だか微笑ましい光景である。そして6人は、最後の目的地へ辿り着いた。

 

 

喫茶店『銀河』

 

 ここは加賀の要望だった。美味しいコーヒーが飲めるらしく、ケーキも頂けちゃうお店だ。

 

「いらっしゃい。テーブルへどうぞ」

 

「いらっしゃいませー」

 

 おじさん2人が出迎える。どうやら兄弟らしい。

 

「兄ちゃん、お冷6つ」

 

「はいよー」

 

 独特な雰囲気だ。6人はテーブルに着き、メニューを捲る。さっきのブティックで気疲れしたのか、甘い物を体が求めていた。ケーキも食べたい所である。

 

「お決まりですか」

 

 真っ先に頼んだのは元気が残ってる飛龍と蒼龍。

 

「アイス抹茶ラテとホワイトケーキのセットで」

 

「カフェオレにチーズケーキお願いします」

 

 続いて加賀。

 

「オリジナルブレンドコーヒー、それとおからクッキーを」

 

 渋いチョイスだ。そして翔鶴に瑞鶴。

 

「アイスカプチーノとブラックチョコケーキのセットでお願いします」

 

「ん~、ココアとスイートポテトセット」

 

 最後は赤城…

 

「アイスコーヒーとスペシャルバナナパフェをお願いします」ニンマリ

 

 さすがです。

 

「はいはい、少々お時間頂きますねー」

 

 フロアが弟でカウンターが兄のようだ。待っている間に加賀が挨拶を済ませる。

 

「第17鎮守府から参りました。纏め役の加賀と申します」

 

「ああ、会長から聴いています。あんまり気にしないでゆっくりしてって下さい」

 

「飲みモンだけ先に頼むわー」

 

「はーい。どうぞお席へ」

 

 テーブルへ戻ると同時に、それぞれが注文した飲み物が並んだ。程なくして食べ物も到着する。

 

「チーズケーキおいしー」

 

「一口ちょうだい一口」

 

「いい香りね、心が安らぎます」

 

「ビターで美味しいわ、このケーキ」

 

「あ~、ココアとスイートポテトで口の中がとろける」

 

「おいひい~」

 

 一息着いた感じだ。時刻は既に夕方。そろそろ帰る頃合である。

 

「じゃあそろそろ帰りましょう。忘れ物のないように」

 

 会計を済ませてバス停を目指す。学校帰りの学生や、定時上がりのサラリーマンたちがチラホラと目立ち始めるバスへ乗り込んだ。

 

「あー、いい1日だったね蒼龍」

 

「ねー」

 

 今度は夜の町へ呑みに来たいと思うニ航戦であった。

 

「瑞鶴、次は大人っぽく纏めてみましょう。また行こうね」

 

「ん~、ま、また今度ね」

 

 着せ替え人形は御免だけど新しい自分を発見してみたい気はする瑞鶴。そして次こそはぬいぐるみの店に行くと決心した。

 

「ちょっと眠くなって来ました」

 

「我慢して赤城さん。夜に寝れなくなるわ」

 

 バスは町の中心を抜けて郊外へ。山を越えて鎮守府へ到着した。バスから降りた6人は提督に報告を済ませて寮へと戻る。こうして最初のお出かけは無事に幕を下ろしたのだった。




6人の私服について補足します

赤城:19年呉コラボ時の服装
加賀:三越コラボ(イヤーマフとマフラーはなし)
飛龍:同じく三越コラボ
蒼龍:例の秋グラ
翔鶴&瑞鶴:JALコラボ

オリジナルの服装なんて考えつかなかったんや
季節感無視してるけど仕方ないね
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