鎮守府出入り業者の俺   作:土管侍

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GWですね。まぁ私にはあまり関係ありませんが……


探し物はなんですか

 翌日、俺は再び戦艦寮に居た。入念に掃除して巣も塞いだお陰か、アリの姿は確認出来ない。同行している長門と陸奥にも報告した。

 

「大丈夫みたいですね。視察の方が終わってからもし余裕があればですが、床下の状況も確認された方が良いかも知れません。目に付いてないだけで他にも入って来ている可能性があります」

 

「ありがとう、これで無事にその時を迎えられそうだ」

 

「1日で片付けちゃうなんて流石は本職ね」

 

 美女に感謝されるのはむず痒いです。これが1回だけの訪問ならまだしも、ここに出入りしている事で顔を合わせる機会が増えると思うと、本当はだらしない自分が居る事を知られるのが少し怖くなります。

 

「請求書の方は提督さん宛てにお送りしますので、必要でしたらご確認下さい。ではこれで失礼致します」

 

 2人と別れて戦艦寮を後にした。そう言えば空母寮のネズミがどうなったか気になったので、そっちへ寄り道をする。

 

 

空母寮

 

「ごめんください」

 

「あら、ご無沙汰しております」

 

 入り口から出て来た赤城さんに遭遇した。彼女はご無沙汰と言うが、俺は町中で休日を過ごしているであろう姿を何度か見掛けている。その多くは車中からなので問題ないが、徒歩だった場合は視界に入らないようそそくさと逃げていた。

 

 だって外で会ったら何か気まずいじゃないっスか……

 

 それにこんな美女が俺に話し掛けているような光景を知り合いにでも見られたら、面倒な事が起きそうだし……

 

「罠の様子を見に来たんですが、お邪魔して宜しいでしょうか」

 

「ええ、どうぞ。炊事場に誰か居ても気にされなくて結構ですから」

 

 そう言われると気にしてしまいそうだが、取りあえずお邪魔した。炊事場には幸い誰も居ないが、空き巣か何かと間違われるのは嫌なので折畳み式の安全柵を設置する。これは商店街の金物屋に作って貰った物で、「害虫駆除作業中」と印字されていた。何をしているか一目瞭然である。

 

「さてと、罠の様子はどうかな」

 

 あちこちの隙間に設置したネズミ捕りや粘着シートを確認する。死体は見つけられなかったのでブラックライトを取り出し、炊事場全体を照らして見た、

 

「……どうやら追い出せたっぽいな」

 

 足跡も一切確認出来ない。この炊事場におけるネズミの活動は終息したようだ。油断は出来ないが、大きく前進した事は間違いないだろう。

 

「他の場所に移動して営巣されないようにしないとな。その調査はまた今度にしますかね」

 

「なぁ兄ちゃん、ちょっと入ってもいいかな。冷蔵庫に用があってさぁ」

 

 入り口から特徴的な髪型をした艦娘が覗き込んでいた。巫女のような服装も目を引く。

 

「ああ、もう大丈夫ですよ。片付けますね」

 

 外に出て安全柵を回収する。彼女はまだ見た事のない艦娘だった。

 

「悪いねぇ兄ちゃん。あたしは隼鷹ってんだ。ネズミ退治ご苦労さん」

 

「後藤田です。そう言えば以前、ゴミ捨て場の方でネズミを見られたとか」

 

「ああ、あっちは最近見ないねぇ。どっか鞍替えしちまったんじゃないかな。ま、こっちは嬉しい限りだけどね。それじゃ失礼」

 

 何か分からないが、ちょっと酒臭かった。こんな時間から大層な事でございますね。

 

 空母寮を引き払うと、今度は駆逐艦寮が頭に浮かんだ。定期駆除は先々週に行ったものの、Gのしぶとさはネズミに匹敵するので確認しておいた方がいいだろう。って訳で駆逐艦寮を目指したものの……

 

「……トイレに行きたいなぁ」

 

 はて、男性用トイレは何所だったか。朝は出なかったので今ごろにお通じが来たようだ。

 

「えーと確か、司令部棟にあった筈」

 

 ちょっと寄り道して無事に用を足した。今度こそ駆逐艦寮へ向かう。

 

 

駆逐艦寮

 

「こんちはー」

 

 誰も居ないのか返事が無い。そう思った瞬間に管理人室のドアが開き、大正時代のような袴姿にブーツと言う出で立ちの美少女が現れた。

 

「何の御用でしょうか。ここは原則として、関係者以外で殿方の出入りはご遠慮させて頂いておりますが」

 

 どうやら彼女も艦娘のようだが随分と礼儀正しい。まるで大昔の時代そのものから抜け出して来たような印象を受ける。

 

「後藤田プロテクトクリーンと申します。本鎮守府におきまして害虫駆除を請け負っている業者です。先々週に定期駆除を行っているのですが、別件で来ましたのでついでに状況確認をとお邪魔した次第です」

 

「ご丁寧にありがとうございます。神風型駆逐艦、春風と申します。あなたが後藤田様なのですね」

 

 様……何かムズムズする。

 

「お初にお目にかかります。以後お見知りおき下さい」

 

「司令官様からお話は伺っております。どうぞ中へ」

 

 一つ一つの所作に気品を感じてしまう。一般人には接しがたいお方ですわい。

 

「確認だけですので、ご同行は必要ありません。用が済みましたらお声掛けします」

 

「はい。よろしくお願い致します」

 

 これはさっさと退散した方が良さそうだ。って訳で、各所に仕掛けた罠や毒餌を確認して回る。20分ほどで全ての確認が終わり、1階へと戻って来た。

 

「終わりました。まだ色々と早かったようですね。近い内に再度寄らせて頂きます」

 

「ありがとうございました。お気を付けてお帰り下さい」

 

「では失礼致します」

 

 無事に駆逐艦寮から出られた。何だか息苦しい時間でしたね……

 

「さて、今日はこの辺で帰りますか」

 

 駐車場へ向けて歩く。店のワゴンを前にして、右手をポケットへ突っ込んだ。

 

「…………あれ?」

 

 いやいや、そんなまさか。こっちのポケットでしょう。

 

「……おやぁ?」

 

 うーん、こっちかな?

 

「……待て待て」

 

 持っている物を全てアスファルトの上に出した。さすがにここで作業着は脱げないが、どうやら目の前にある物が全部らしい。

 

「…………車の鍵がない」

 

 ポケットに入っていた筈の鍵が何所にもない。いつもの行動で絶対に右のポケットへ入れるようにしていたのに何故……

 

「マジかおい……」

 

 この広大な鎮守府の敷地内で落としたと言うのか。だが今日は戦艦寮・空母寮・駆逐艦寮しか回っていないから、その何所にはあるだろう。しかし1人で探すのは相応に苦労する筈だ。腹も減って来ているから何か食べてからやりたい所だが、残念な事に財布も車の中でした。

 

「……ここってロードサービス呼べるんかなぁ」

 

 取りあえずでもどうにかしないといけないが、こういう時って意外と頭が回らないモンなんですよね。

 

「わっ!」

 

「だぁ!?」

 

 急に後ろから驚かされて変な声が出た。振り返るとそこには……

 

「スキありぜよ、後藤田はん」

 

 満面の笑みを浮かべる白露嬢がそこに居ました。しかし今は「びっくりしたなぁ」とか言える状況ではない。

 

「……あぁ」

 

「いやさっきの驚きからその反応はどうよ」

 

「ちょっとそれ所じゃないんですわ」

 

「どうかした?」

 

「車の鍵を落としたみたいでして」

 

「え、マジ? 探すの手伝おうか?」

 

「是非ともお願いしたく」

 

「ちょっと待ってて。そろそろ何人か帰って来るからさ、人手集めとくよ」

 

 そう言うと彼女は走り去って行った。10分ちょっとが経過し、よく見知った駆逐艦集団がワラワラとやって来る。

 

「車の鍵落としたっぽい?」

 

「今日は何所を回りましたか?」

 

 ゆうしぐコンビは何時も可愛いですね。

 

「えーと、戦艦寮で仕事して、空母寮と駆逐艦寮に立ち寄ったぐらいなんだけど」

 

「じゃあ私と深雪で戦艦寮を探って来ますね」

 

「オッケィ任しときな。深雪様が見つけ出してやるぜ」

 

 吹雪&深雪ペアが戦艦寮へ向かった。

 

「僕たちは空母寮を見て来ます。行こう、夕立」

 

「ぽーい」

 

 時雨&夕立は空母寮へ向かう。

 

「黒潮、不知火、私たちは駆逐艦寮に戻って入念に探すわよ」

 

「必ず探し出します。ご安心を」

 

「どっかにはあるやろやなぁ。まぁ任しとき」

 

 陽炎と黒潮、不知火は駆逐艦寮へ戻って行った。

 

「忘れ物か落し物で届けられてないか見て来ますね」

 

「他の寮で拾われてないか確認して来ます」

 

 白雪は忘れ物・落し物コーナーへ、綾波以下数名は軽巡寮や重巡寮で拾われてないか確認に向かった。

 

「道端に落ちてないか隈なく探すわよ。ここに来るまでの何所かに落ちてる可能性もあるからね」

 

 他の子たちは白露を筆頭にあちこちへ散った。ここまで大捜索して貰うのも気が引けてしまう。

 

「悪いね、大勢呼んで貰って」

 

「手数が多いのは駆逐艦の特権だからね。すぐ見つかるよ」

 

 しかし、予想に反して車の鍵は見つからなかった。何所へ行ってしまったと言うのだろう。

 

「やばいなぁ、このままじゃお袋にどやされちまう」

 

 もう1度、今日の行動を思い出して見る事にした。まず戦艦寮に行って状況の確認。その後は何所にも立ち寄らず空母寮へ。次は駆逐艦寮……

 

「……まさか」

 

「思い出した?」

 

「……うん。多分、皆が入れない所だ」

 

 頭に「?」が浮かぶ彼女たちをここで待たせ、俺は1人で可能性が最も高い場所へ向かった。そう、俺は駆逐艦寮へ向かう前に、司令部棟の男性用トイレに立ち寄ったのだった。

 

 

司令部棟 男性用トイレ

 

「……あった」

 

 トイレットペーパーホルダーの上って、物が置けるタイプもあるじゃないですか。俺はそこに、落としたら拙いと思ってポケットティッシュなんかと一緒に置いたまま出て来てしまったようです。

 

「良かった~」

 

 鍵を両手で包んで、無事に見つけられた嬉しさを表現していると、誰かに声を掛けられた。

 

「あの、そういう宗派の方だったんですか?」

 

 振り返るとそこには、正門で何時も警備している人が立っていた。いえ違うんです。決してトイレを崇拝している訳ではなくてですね……

 

「いやあの鍵をですね置き忘れて出てしまいまして」

 

「ああなるほど。自分もよく小銭入れとか置いたまま出てしまいますからね。ここ男性が少ないですから、こういう場所はどうしても発見率が低いのでご注意下さい」

 

「以後十分に注意致します」

 

 取りあえず鍵は見つかったので問題無しだ。これで家に帰れる。

 

 駐車場まで戻ると、皆はまだ待ってくれていた。

 

「お騒がせしました。鍵はこの通り、無事に発見しました」

 

 全員が安堵する。白露嬢が「何所にあったの」攻撃を繰り出して来るが、何となく察した綾波と時雨が宥めている隙に車へ乗り込み、鎮守府を後にした。

 

(広樹です。また暫くして鎮守府に行った時、しつこく聴かれたのでトイレに置き忘れたと話したら、大笑いされたとです。ちくせう)




次回、少しですが初めて世界観を掘り下げるお話となります。
ちょっとだけ湿っぽくなりますがご了承下さい。
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