鎮守府出入り業者の俺   作:土管侍

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番外編 鎮守府公式チャンネル 深夜の鎮守府

第十七鎮守府 正門警備所付近 深夜1時頃

 

「しらっちでーす」

 

「やっほーかげろんでーす」

 

「こんばんは、フブです」

 

「シキミンだよー」(敷波・出るのは4回目 カー〇おじさんのお面)

 

「あ~、ホクジョウさんで~す」(北上・今日で2回目 ちい〇わ・栗ま〇じゅうのお面)

 

「しぐしぐです」(仮面ラ〇ダーのお面)

 

 暗い中、懐中電灯を持った状態で定例の自己紹介が一通り終了。白露が一歩前に出る。

 

「今日はなんと、初となる生配信です」

 

「みんな見てるー?」

 

 陽炎の問い掛けに閲覧者たちのコメントが帰って来る。ソフトが自動的にコメントを読み上げた。

 

『見てるー』『ホクジョウさん2度目か』

『シキミンシキミン』『フブの声眠そう』『しぐしぐが出てるだと!?』

 

「ではゲストをお呼びします。どうぞ」

 

 陽炎がそう言うと、画面外から新たに演者が登場。

 

「はいどうも、G田です」(リアルタイムボイチェンを装着 相変わらず地蔵さんの被り物)

 

『G田さんktkr』『よっしゃG田さん見れた』

『今日は当たり回やな』

 

「えー、俺はここに居ていいんですかね」

 

「提督と警備の責任者に許可は頂いてます」

 

 陽炎がそう言うと、カメラが正門の警備所を向く。暗くてよく分からないが手を振っているのが責任者の人だ。

 

「あの方が責任者です」

 

『フリーダムだなこの鎮守府』

『緩々やん』

 

「因みに今日の映像は提督にやって頂いております」

 

「どうも皆さん、第十七鎮守府の提督です」

 

『マジで!?』『やべぇwwww』

『提督がカメラってwww』

 

 コメントが一気に増えた所で企画の説明が始まる。立案者はやはり白露だった。

 

「本日はですね、肝試しに近い事をしたいと思います」

 

「別にここ、墓地の上に建てられたとかそんな場所じゃないけどね~」

 

「そういう噂もないし」

 

 北上と敷波が少し否定的に言う。まぁこれは仕込みだが事実でもある。

 

「でも不気味だなって思う所はあるじゃん? 皆がそういう風に思ってる所を見て回ろうかなってのが今回の企画です。じゃあ事前に書いて貰ったボードを出します」

 

 ここで時雨がキャスター付きの台(手製)を押して来た。寝かせていたボードを持って見えるように立たせると、提督はそこにズームする。画面外で左手を振って映像が定まった事を伝え、白露が読み上げ始めた。

 

「えーと、食堂裏がシキミンとしぐしぐ。某施設裏の雑木林、フブと私。敷地内のとあるベンチ、かげろん。南の倉庫、ホクジョウさん。以上の4か所を回りたいと思います」

 

 因みに食堂裏以外の3か所は全て一般人が見学の際に歩いてもいい区画にあった。食堂裏は若干グレーだが、行く前に全員でしっかり「一般の方は立ち入れません」と報せる事でOKとなる。

 

 広樹に関しては提督が自ら今回のために許可を出したと口頭で伝える予定だ。

 

「ではまず、食堂裏を目指しましょう。みんな行くよー」

 

 白露の先導で歩き出す。後頭部は身バレになる恐れがあるので、提督がさり気なく最前列に出た。ここで吹雪が大欠伸した声がカメラに入る。

 

『今の誰?』『フブ?』

 

「眠い?」

 

「だってこんな時間普段なら寝てるもん」

 

 陽炎の問い掛けにダルそうに答える吹雪であった。

 

『眠そうなフブかわいい』

『健康的でいい事だ』

 

 何かしら喋りながら食堂に到着。こんな時間なので当然だが真っ暗。非常口のランプぐらいしか明かりはない。

 

「暗くなると不気味だね。あんま近寄りたくない」

 

「何も出ないだろうけど何か出そうって思っちゃうね」

 

 ここを書いた敷波と時雨は少し怖いらしい。ここでカメラが振り返り、全員を映像に収めた状態になった。

 

「ちょっとお報せがあります」

 

 提督がそう告げる。

 

『お? 何だ?』

『お報せ?』

 

「はーい。今から行く所は、一般の方は立ち入れない場所ですのでご了承下さーい」

 

「「「「「ご了承下さーい」」」」」

 

 白露がお報せのために用意した文章を読み上げる。他の5人も最後にそう言って締めた。続いて広樹について提督から。

 

「G田さんについては今回のために許可を出しましたのでその辺についてもご了承下さい」

 

「弾薬庫とかにでも行くのかと思って冷や冷やしましたねぇ」

 

『おk』『www』

『翌日、G田さんは姿を晦ました。知り過ぎたのだ』

 

 ここで先頭が提督から広樹にチェンジ。地蔵マスクは完全な被り物なので後頭部も分からないから安心だ。

 

「仕事で1回来たっきりですねここは。夜になると嫌な感じします」

 

「えぇ~マジで行くの~?」

 

「う……シキミン先に行っていいよ」

 

「ちょ、裏切んなし!」

 

『怖がってるしぐしぐ可愛い』『シキミンシキミン』

『G田さんマジで何の業者なん?』

『ボイラーとかじゃね? 自衛隊の駐屯地に泊まりとかあるみたいだぞ』

 

 たまに起きる広樹の職種予想大会。出演した回のコメント欄ではいつもの事だった。作業服には店のロゴ等が入っている訳ではないのでそこから職種を推測するのは難しく、コメント欄をチェックしている提督もまだ正解が書き込まれていないのは確認していた。

 

 しかし今回は生配信。その手のコメントが増えてしまうのを防止するために、提督も予め考えてた事を言う。

 

「G田さんの業種は身バレに繋がる恐れがありますので何とぞ詮索はお止め下さい」

 

『止すんだ皆、消されるぞ』『そして誰もいなくなった』

『まぁ、皆いいやつだったよ。提督さんの言う通りにしていればよかったものを。おや、こんな時間に(ry』

 

 数分とせず食堂裏に到着。木々がそれなりにあるので鬱蒼としている。灯りは懐中電灯以外にない。

 

「ねぇもういいじゃん、次行こうよ」

 

「あんまり長く居たくないです」

 

「そう? 別に何ともないと思うけど」

 

「あ~、まぁ不気味っちゃ不気味かもね~」

 

 陽炎と北上にとっては特に問題ないようだ。時間配分もあるので次の目的地に移動する。

 

『自分の家の裏でも夜中は不気味だよな。そういう感じに思えた』

『ホクジョウさんから漂う強者感がすごい』

『かげろん本当は怖いの我慢してる説』

 

「きゃ~怖くてかげろん歩けな~い」

 

『あ、うん、無茶ぶりしてすんません』

 

「えーと、今のコメントはチョコメロンさんね。明日お迎えに行くから覚悟しといて下さいねー」

 

 放送は各自のスマホでも見られるので、陽炎は自分をノせたのが誰かを探し出していた。

 

『オワタ』『あぁ、達者でな』

『イヤダ! シニタクナーイ! シニタクナーイ!』

 

 時折こうして茶番なやり取りをしつつ次の目的地に到着。某施設裏と言ったがこれは重巡寮裏の雑木林だ。詳細を特定されないための措置である。

 

「うぇ、昼間も不気味だけど夜だと数割増し」

 

 白露が懐中電灯で雑木林を照らす。昼間でも向こう側が見えないほどの密度だが、夜だと尚更に存在感が強まる。

 

「……うん」

 

 吹雪はもう眠くて仕方ないらしい。反応が薄かった。

 

「辛かったら先に戻っていいよ。何かもう立ったまま寝そうだし」

 

「いい。レギュラーだから頑張る」

 

 敷波が戻るように促すも吹雪はそう言った。真面目成分の強い吹雪としては立ち上げメンバーの1人である事に責任を持ちたいのだろう。

 

『フブ、我慢しなくていいのよ?』

『ちょっと鎮守府宛に布団を発送して来るぜ』

『おやおや、フブは健気でかわいいですね』

『某卿は深淵にお帰り下さい』

 

「わ~、フブ人気者~」

 

「もういいんで次行きましょうよ~」

 

 北上が茶化すも何やかんやここは吹雪が掻っ攫ってしまったので次に移動する。

 

 

 少し、いや、それなりに歩いた。街灯が照らし出す1つのベンチをカメラが捉える。ちょっとばかり草臥れた感じなのが哀愁を誘っていた。

 

「あー、このベンチさぁ、夜に通り掛かった時に隣の木製の電柱が人に見えてさ、誰か座ってるんじゃないかって錯覚したのよねぇ」

 

「何か雰囲気は凄いあるね。電柱もそうだけどベンチも木だからかな」

 

 陽炎と時雨が少し近付き懐中電灯で照らした。陽炎の言う通り木製の電柱がパッと見で人に見えなくもない。

 

「ん~。みんなちょっと下がってさ、あそこが片目の隅に来るぐらいの角度になってみ?」

 

 北上が急に何かを言い出す。取りあえず言われた通り、両目どちらかの隅にベンチと電柱が来る角度になってみた。何だと言うのだろうか。

 

『ホクジョウさん霊能者説?』

『俺も画面越しだけど片目の隅になる角度やってみる』

 

「あれさ~、何だっけ。アメリカの凄く身長高くて手足の長いお化け」

 

『もしかしスレンダーマン?』

『スレンダーマン?』

 

「あぁそれそれ。何かそれっぽいのが居るように見えない?」

 

 言われて見ればそれっぽく感じるようにも思える。木製の電柱に街灯がぶら下がっているのが主な要因かも知れない。

 

『見えなくもない』

『っぽいかも』

『俺には分からん』

 

「そっかー、みんなは?」

 

「スレンダーマンって何ですか?」

 

「誰か居るようには見えるけどそのお化けが分からないです」

 

「よく分かんない」

 

 時・吹・敷がそう言った。他のみんなも人っぽいのが居るようには見えるがスレンダーマンが分からないので何とも、な感じらしい。

 

「いい事思い付いた。G田さんちょっとあのベンチに座ってみて」

 

「何じゃい急に」

 

「いいからいいから」

 

 白露が急に変な事を言い出した。促されるままベンチに腰掛ける広樹。

 

「そこで項垂れてみて」

 

 上半身を前に倒して項垂れる。作業服を着て地蔵マスクを被った謎の人物が街灯に照らされるベンチで項垂れていると言う不可思議な映像が出来上がった。

 

『何だこれwww』

『画面が面白いwww』

『G田さんの正体は鎮守府に潜む怪異だった!?』

 

「首だけこっちに向けてみて」

 

 姿勢はそのままで地蔵マスクだけがカメラの方を向いた。

 

『怖っwww』

『やべぇ、収容違反だ』

『目が合うと襲ってくるタイプの死神w』

 

 夜中だからゲラゲラ笑えないが全員静かに笑っていた。撮れ高にはなったようなので次に向かう。

 

「何やらすんじゃもう」

 

「ごめんごめん」

 

『さすがG田さんやでぇ』

『これでもうかげろんはあそこを怖がる事もないな』

 

「それとこれとは別問題でーす」

 

 

 最後の場所に到着。北上が書いた倉庫の近くまで来た。

 

「ここで最後になります」

 

 この辺は倉庫地帯だ。白露のアナウンスで到着を告げる。

 

「どの倉庫ですか?」

 

「ん~……あの3つめ」

 

 陽炎が聞くと、北上は十字路の角から数えて3つめを指差した。そこまで歩く。

 

「ここだね~。あそこに窓があるっしょ?」

 

 上の方にある窓を全員が見る。カメラもそこを映し出した。

 

「夕方だったかなぁ。ここを通った時にさ、あそこに誰か居たように見えたんだよねぇ」

 

「でもあの窓って採光用で足場とかないですよね」

 

 白露が衝撃的な事を口走った。

 

『昔そこで首を吊った人とか』

『いやシキミンがその手の噂は無いって言ってたじゃん』

 

 敷地内の何所に誰がどんな感情を持っていたとしても、その手の噂が無いのは本当である。この鎮守府自体がそこそこ新しいので当然と言えば当然だ。

 

「う~ん、見間違いか勘違いだと思うんだけどさぁ、2~3回くらいそんな事があってねぇ」

 

「因みに他の所でそういうのを感じた事はありますか?」

 

「無いんだよねぇ。だからどうも不気味でさ~」

 

 時雨によって気味の悪い事実も発覚した。少しずつ嫌な空気が漂い始める。

 

『ようやく本格的なホラーっぽい感じになったな』

『家に居るけど何か寒気して来た』

『怖E』

 

「ちょっと窓の辺りを照らしてみよっか」

 

 白露が窓の所へ懐中電灯の光を向ける。特に何も見えはしない。

 

「今日は何もないみたいだね~、それならそれでいいんだけど」

 

「G田さんちょっとあそこに」

 

「無理」

 

『www』

『即答www』

 

 これで全てを回ったので企画は終了、正門まで戻って解散を宣言。白・陽・吹の順番で喋った。

 

「今日の生配信はこれで以上となります。ご視聴ありがとうございましたー」

 

「動画版は2週間以内にアップロード予定です。よろしくお願いしまーす」

 

「……ありがとうございました」

 

『フブお休みー』

『もう声が限界っぽいwww』

『動画版待ってるで』

 

「こんな時間に集まっていただきありがとうございました」

「みんなお休みー」

「良い子は早く寝ようね~」

 

『またねーしぐしぐ』

『シキミンシキミン』

『おやすみー』

 

「お疲れ様でしたー」

 

『G田さん乙』

『次はいつ出るですか』

 

「さぁ今年はもう出ないかも知れませんね」

 

「ではこの辺で失礼させて頂きます。ありがとうございました」

 

 最後に提督が締めて配信を終了。時刻は深夜2時付近だ。それぞれ寮に戻り始める。広樹は仮眠室を借りていたのでそこへ行き、提督は直帰した。

 

 アップロードされた動画版はチャンネルとして初の1万回再生を記録。特に広樹がベンチに座ってる例のシーンはリプレイ回数が多い所になり、コメント欄もそこそこ盛り上がりを見せた。

 

 因みに北上の言う倉庫のシーンは、何名か「視える」とのコメントが書き込まれたが真実は定かではない。




閑話 あるんだかないんだか分からない設定集4

第十七鎮守府
近海警備・船舶護衛・他鎮守府支援・艦載機妖精の訓練が主任務だが自前の艦載機隊もある。鎮守府の設置以前も以後も近海では深海棲艦が出現した事はなく、所属艦娘は練度の維持と技量向上を目的とする他鎮守府への出張が定期的に義務付けられている。設置直後で戦力が整っていない鎮守府や、場合によっては激戦区に行く事もあるため、状況次第では帰って来ると少し性格が変わっている艦娘もチラホラ居る。その内に元へ戻るので刺激しないのが大事。基本的に女所帯のため男性用トイレが少なく、場所を把握しておかないと万一の時に窮地へ陥る。
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