ホームセンターにて
店内をあちこち歩いて回る。だが今は明確に「これが欲しい」とは言えない状態だった。
「……何か違うなぁ」
もし自分の中で立ち上がっている仮説の通りだった場合、どうやって連中を倒すかを考えてた。決戦兵器のような物がないかを求めてホームセンターに来ている。
「お、広樹ちゃん。何かお探し?」
「自分でもイメージ仕切れてない何かを探してます」
「深いねぇまた。もしあれだったら声掛けてね」
「あざす」
店長? いや副店長? 部門長だったか? 取りあえず子供の頃から顔は知ってるけど詳細は知らないおじさんだ。
いや待て、そもそもここの店員だったっけ? 昔はスーツ着てたような記憶が……
「……お?」
農業用品のコーナーに来た。そこで見つけたある器具が目に飛び込む。
(使えそうだな……値段は)
6桁か。経費だとちょっと厳しいな。でも恐らく1回しか使わないってのを考えると……
「すんません、ちょっと」
「はいはい、お目当ての物は」
「こいつってレンタルとかやってます?」
俺が指を差した商品を見たおじさんは顔をしかめる。
「何だい、農業でも始めるの」
「いや家業で使いたいんですよ。何所かレンタルやってる会社ありませんかね」
「レンタルねぇ……こっちとしては1つでも買ってくれると有難いんだけどさぁ」
「いや多分、1回しか使わないんですよ」
「あー……ちょっと調べるね」
悪いような気もするがこっちも裕福ではない。遊ばせておくような場所もないし。
「やってるとこ2~3社ぐらいあるな。連絡する?」
「それはこっちでやります。どうも」
メモったのを受け取って退散。と思ったら紙を引っ込められた。
「……何スか」
「5-56ぐらいでいいから買ってって欲しーなー」
「あーはいはい、分かりましたよ」
一番小さいのを買ったら若干不満そうな顔だがまぁいい。紙を受け取って店を出た。
その後、書いてあった会社に電話して色々と話を聞く。料金に関してを相談しその中で平均的な所に決めた。変に安いと危ないし。
数日後、鎮守府にて……
ついに3階を調べる。それともう1つ、この前に設置した物の確認だ。設置したのは炊事場の方へ延びる廊下の奥。なぜドローンが執拗に狙われるのかを個人的に解明したい。
「……どれどれ」
正面に階段を見据えながら、炊事場の方を覗き込む。狩猟で使っている小さな双眼鏡で様子を窺った。
(何となく予想してたけどやっぱりか?)
設置した物は高さ2m50cmと170cm、そして100cmのベニヤ板だ。垂直に立つよう下の方はあれこれ加工してある。その3つを廊下奥に空いている穴(正確な位置は不明)の近くに置いた結果、最も高い方に何かこう、群がったような痕跡が見えた。残り2つは殆ど無傷である。
ドローンはいつも2mくらいの高さでこの中を飛んでいた。連中の移動形態は様々だが、主に高い所、ドローンより上からの襲撃が多いように感じる。キャプチャーしてある映像を見せて貰った事でその考えに至った。
「自分たちが居る位置と同じぐらいの高さにある物へ何かしらの反応を示す……と言う事は」
炊事場、2階フリースペース、3階の部屋に2m50cm程度の高さを持つ物を置いておけば連中を釘付けに出来るかも知れない。これは防火扉の工事にも使えそうだ。
「それをするには2階と3階の部屋を閉めないとな」
前回の撤収時に窓は閉めてある。施錠まではしていないけど……
今日は人手があまり用意出来ないので中を探るのは俺だけ。外で見張りに立つのが6名だ。
炊事場側監視組 白雪&磯波
「中に入らないのであれば……」
「み、見張るだけなら」
って事で参加。吹雪は雲隠れした模様。
会議スペース側監視組 朧&潮
「1回ぐらい入って見ようかな」
「危ないからダメ!」
旧棟裏側監視組 Z1&Z3
「ここ、使えるようになるんだね」
「得体の知れない何かが居るって噂、本当だったらしいわ」
そしていつもの場所でドローンを操る夕張さん。は残念ながら今日は居ない。スケジュールが合わなかった。その代わりに望月&初雪がやってくれる。
「今日は見張るだけでいいん?」
「うん、建屋の外から監視をお願いします。屋内には入れなくても大丈夫だから」
「今日は眠くない。任して」
「前の時にそうであって欲しかったわ……」
調査開始。炊事場の出入口は閉めてあるからこれはいい。階段を足早に上がって2階フリースペースのドアを閉める。前回の時に入った他の部屋は撤収時に閉めたからそのまま。続いて3階へ向かう。
「……こえぇなぁ」
人類未開の地ではないが俺にとってはそれと同じぐらいの魔境だ。出会い頭に遭遇しない事を祈る。
「今、何所?」
初雪の声だ。見付けたらしい。
「3階に行く階段の途中」
「そっちから見て右の端っこに居る。階段に向かって移動してる。一旦戻って」
「OK」
2階へ戻った。初雪曰く、3階の例の部屋に入って2階フリースペースに下りたそうだ。この隙に3階を探らねば。
「まず右側」
こっちは2階と同じく仕切りで作られた部屋が2つ。1つは元から閉まっていたけどもう1つは開いていた。中に入ると糞があったのでここは出入りがあるのだろう。閉めておく。
「まだ2階に居る?」
「あ、白雪です。今は炊事場に降りて来ています」
「分裂してたりしないかな」
「会議スペース、こっちは居ませんね」
「裏側も居ないよ」
「了解、他に居たら早めに報告頼みます」
さて連中の本拠地を見に行こうか。ゆっくり且つ急ぎ足で例の部屋に入った。独特な臭いがする上に糞だらけだ。カーテンも変色している。念のためマスクをしよう。
「卵の殻が多いな……ひでぇ」
ふと、部屋の隅に何かの汚れた段ボールが積んであるのが見えた。恐る恐る近付く。
「……読めない」
字がすっかり霞んで読めなくなっている。中は空だが色々と酷い事になっていた。段ボールには食い破られたような痕跡もあるので連中の食料と化しているらしい。
「……あの辺はカビが生えてるな」
天井を見ると雨漏りの跡があった。連中の大好きな湿気もこれで確保されてしまっているようだ。部屋の写真も何枚か撮っておく。
(待てよ、防火扉の工事を考えるとまだここは閉めない方がいい?)
今ここを閉めると連中は1階のみが上階への自由な移動が出来る場所となる。工事の時に1階で居座られると作業が進まない可能性があった。ならば前日までフリーな状態の方がいいだろうか?
(どっちにしろ釘付けにするならまた木を切ってアレを作らないといけないし……今日はこのままでいいかも)
と言う訳で撤収。皆には事情を説明した。工事の日程はまだらしいのでこの間にアレを量産しておく。
その後、工事の日程が決まったそうだ。俺はその日の早朝に鎮守府へ行きアレの設置をする。
工事当日
「くれぐれも怪我はしないようにお願いします」
「任せなって。ようやくお目見え出来るな」
「お勧めしないよ。一応、警告はしたからね」
いつだかにやる気を見せてくれた江風が参戦。隣には付き添いの時雨。中には入らない。前回の件を踏まえて危険だとは言ったがそれでも江風は参加を希望したのでお見送りだそうだ。果たして連中を見た時にどんな反応をする事やら。
「これを運べばいいんですねー?」
「はい。これが地図です」
1枚に全ての場所を記した地図を渡す。今日は鬼怒が参加していた。他には陽炎と前々から探索に混ぜて欲しいと言っていた不知火。その不知火に触発されたらしい磯風。それと……
「はーい、村雨も頑張りまーす」
「以下同文だけど警告はしたからね」
時雨嬢の顔は暗い。そして変だな。前に会った時と村雨嬢の容姿が大きく異なる。普通のセーラー服っぽかったのも様変わりしていた。
「……もしかして改二になった?」
「なりましたー。どうですか? いいでしょ?」
黒は女を美しく見せると聞くがこれは何かこう……どうしてそんなに一部を強調したようにピッタリと張り付いたデザインなんでしょうね。ダメでしょ。もっと防御力の高い恰好をしなきゃ。
「上から何かもう1枚着た方がいいんじゃないかな」
「えー、そんなおじさん見たいなこと言うんですかー?」
「本当のおじさんならもっと違う感じのことを言うと思うね。取りあえず怪我に注意して下さい」
これに俺を含めた計7人でアレを運ぶ。まずは1階から。
「不知火、参ります」
「磯風、参る」
何でそんなに凄まじい眼光なんでしょうね……
「力み過ぎて躓くんじゃないわよ、アンタたち」
陽炎は流石の落ち着き具合。やはり頼りになる存在だ。
「よっしゃ、いつでもいいぜ」
「はいはーい」
「みんな行くよー」
「江風、気を付けてね」
アレは2m50cmの物を18個作った。各部屋に3つと各階の廊下奥に3つずつ置く計算である。廊下奥は陽動を兼ねた物で、工事中にもしも襲撃されたら俺が引き付けて2階か3階の廊下奥まで誘き出し、アレに擦り付ける予定だ。1階奥への設置は難なく終了。炊事場も同様に終了。階段を前にする。
「聞こえますか、今から2階に行きます」
「あ、はい。承知しました」
「落ち着いてね瑞穂」
「頑張ります」
ドローン班。夕張さん&瑞穂さん。瑞穂さんはかなり久しぶりだ。何かよく分からないけど艦載機を扱う練習の一環? だかで参戦。
「えーと……今は3階に居るみたいです」
「いつもの部屋に居ますねー」
「分かりました」
2階へこっそり移動を開始。階段を上がり切った所に3階へ置くアレを集積して2階に置く用の方を抱える。フリースペースを覗き込むが当然、姿は見えない。
「今の内に廊下奥へお願いします」
「不知火、磯風、行くよ」
「はい」
「心得た」
アレを抱えた鬼怒・不知火・磯風がフリースペース側の廊下奥へ小走りで向かう。俺は引き戸を開けて残りの陽炎・村雨・江風と共にフリースペースへ侵入した。
「どの辺に置けばいい?」
「なるべく出入口から遠ざけたいから窓側に等間隔で」
「了解だぜ」
「お任せお任せ」
これは旧棟正面からの見やすさも考慮してある。建屋の裏側からではどうしても見難い。
「こっち終わりましたー」
「次に行きましょう」
「そろそろ姿を拝んでもいい頃だろうか」
「俺は出来れば遭遇したくないね」
フリースペースの窓が閉まってる事を確認してここは密室にする。続いて3階だが……
「ずっと部屋に居ます。動きがありません」
いつも居る所から動かないと瑞穂さんより報告。
「誘き出すかい?」
「階段を通る可能性を考慮してこれらも下に運びたいな。何かあったら拙いし」
「そっちの部屋、元から閉まってる所あったんですよね?」
「ええ」
「じゃあそこでやり過ごしましょう。だったらもう1度下に運ぶ必要もないです」
「なるほど……それでいきますか」
鬼怒の提案を実行。陽動は陽炎・江風・磯風となる。
「炊事場で騒いで誘き出して欲しい。上には来ないで外に逃げていいから」
「りょうかーい」
「ワクワクするねぇ」
「任せろ」
3人が1階に下りた。残りは元から閉まっていた痕跡のない部屋で待機。炊事場に到着した3人はあれこれ物音を立てて連中が動くか試す。
「あ、動き出しました。2階のフリースペースにどんどん増えて行きます」
「1階に集まったら3階へ行きますね」
連中はそのまま炊事場まで移動。この隙に3階へ上がり、廊下奥への設置を終わらせる。続いて本拠地にも。
「マスクして下さい。中は結構酷いから卒倒しないように」
「そんなにですか?」
「例え何が潜んでいようとも尻込みはしません」
引き戸を開けて中に踏み込む。見たくない光景が広がった。
「等間隔で窓の近くにお願いします」
「うひー! おっそろしい!」
「こ、これしきのことで」
1つ、2つと設置完了。あれ、3つ目は? と思って振り返ると出入り口の所で棒立ちになっている村雨嬢。如何された。
「…………やです」
「……それ貰う。階段見張っててね」
「はい」
木を貰い受けて設置完了。廊下に出た。
「今は何所に居ます?」
「フリースペースに増えていきます」
「分かりました」
窓が閉まっているのは確認済みなのでここも締め切る。これで2階と3階は密室になった。素早く1階に降りて外に出ると……
「ダメねこれ」
「寝かせてくる」
江風はフリーズした模様。磯風に肩を担がれていった。
「だから言ったのに」
「……3階の部屋って見た?」
担がれていく江風を見送る時雨にそっと近付く村雨。
「2階までしか見てないよ」
「……そうなんだ」
「……な、何かありました?」
「3階の部屋が結構な有り様なんだけどね。入りたくないって言い出しちゃって」
「ごめんなさい」
「いいよいいよ。俺だって本当は入りたくないし」
「あれは仕方ないってー」
「この私でも一瞬だけ気が遠くなりました」
9時に集合して1時間は掛からなかったか。まぁ設置も無事に終わった。あとは業者の方々を待つ。
10時頃。旧棟の前に4トンやら2トンのトラックが数台やって来た。提督さんも交えて工事の説明が入り、炊事場と階段方向への防火扉設置工事が始まる。2階は裏側からドローンで監視。炊事場方向は俺が工事する所より前に出て警戒した。駆逐艦組は全員午後からのスケジュールがあるので解散。残った鬼怒さんにはお手伝い頂く。
「……何をされてるんですか?」
「えーと……ちょっと色々ありまして」
工事の人に話し掛けられる。それもそうか。普通は何してるんだって思うでしょうね。
数時間後、無事に襲撃もなく工事は終了。これで1階の会議スペース側は2階と3階から独立した。業者さんたちを見送ったら俺は残って会議スペース上部の穴を埋める作業を開始。諸々、準備を整えていこう。
次回は近々で投稿します。