鎮守府出入り業者の俺   作:土管侍

78 / 86
草刈りの打ち合わせ

 駆逐艦寮1号棟及び2号棟周辺の草刈りが行われると時雨嬢よりDMが入る。万一に備え見張ってて欲しいそうだ。まぁ見張るだけは気が引けるので俺も参加させて貰う事にする。あの辺はマムシが出た事もあるから一応は注意が必要だ。

 

 後日。打ち合わせがあるそうなので鎮守府に出向いた。場所は1号棟。かなり前に怪談話へ混ざった時の部屋だ。因みにあの部屋は正面から入って右側の方にある。

 

「お疲れさんでーす」

 

「お疲れー」

 

「お疲れ様でーす」

 

 久々にほっぺがムニムニしている綾敷姉妹に遭遇。停電で帰るのが危ないからと一晩世話になった時も確かこんな感じだった気がする。

 

「もしかしてだけど男って俺だけ?」

 

「んー、武田さんも来るよ。司令官にはもう許可貰ってるし」

 

「自主的な行事ですけど、結構な大人数でやりますから詳細の把握に」

 

「なるほどね」

 

 今になって思うがあの時、見た目女子中学生(一部は例外)が集合している所に男1人だったってのは倫理的な如何なものかと。いや今からの2人でも如何なものかと?

 

「お疲れ様です。ご協力感謝します」

 

「お世話になっております。見てるだけなのも悪いですからね」

 

 武田さんご登場。部屋に入ると怪談話をした時は隅の方に畳まれていた長テーブルが並んでいた。因みにこの部屋は畳なので座布団に座ります。何かこう、地域の集まりで公民館にでも来たような感覚になる。

 

「何所に座ればいい?」

 

「あっち。武田さんと一緒のテーブル」

 

 1対多数で向かい合う長テーブルに対して、1つだけ真横にされた長テーブルがあった。傍観者的な位置に思えるけど駆逐艦の中に混ざってってのも変な話か。

 

「当日のスケジュールとお茶をお持ちしますね」

 

「まだ10分ぐらいあるからのんびりしてて」

 

「すんません」

 

 綾波嬢が持って来てくれたスケジュールを軽く眺めながらお茶を啜る。その間、各1番艦と2番艦がぞろぞろと部屋に入って来た。中には時折り、3番艦の姿も見える。主に吹雪型と綾波型が動き回っていた。今日来るのは姉妹全員じゃないっぽい。とかなんとか思っていると……

 

「おっはよー」

 

「おはようございます。今日はありがとうございます」

 

 他の娘たちに配るであろうスケジュール表を抱えた白露&時雨が登場。

 

「いや全然。普段手伝って貰ってるからこっちも出来る事はしないとさ」

 

「また蛇出て来たら何とかしてね」

 

「何が出てもいいようにはする予定です」

 

 次第に部屋の人口密度が上がっていく。かなり久しぶりの神風型も登場した。

 

「久しぶりね。2号棟の件はありがとう」

 

 どちらと言えば長女に見えなくもない次女こと朝風さん。

 

「ご無沙汰致しております」

 

 相変わらず春風さんの方は非常に礼儀正しい。でもそんな深々とお辞儀しなくても。

 

「2号棟ってもうあの大群は出ないわよね?」

 

「出ないですね。ただ油断はしない事です」

 

 長女は微妙な顔付きになるけど真実だ。あのレベルってのは2度とないだろうだけど、季節性の侵入はあり得る。普段からの防除が大切って訳です。さて人数的にそろそろ打ち止めかな?

 

「では草刈りの打ち合わせを始めます。当日のスケジュールをご覧下さい」

 

 仕切るのは吹雪ちゃんらしい。何か中学校染みて来た。

 

「1号棟は私たちと綾波型、暁型。暁型は諸般の関係で午前だけの参加です。入れ替わりで午後から初春型が混じります」

 

「2号棟ですがこちらは白露型、朝潮型、陽炎型。そして夕雲型の4名です。朝潮型も暁型同様の関係で午前のみ参加となります」

 

 サポートが白雪ちゃん。放課後の委員会ですねこれは。あと夕雲型が増えた模様。

 

「神風型と睦月型は作業日前後のスケジュールが固まっていませんので、参加不参加はまだ未定です。秋月型及びZ1型は長期出張中のため不在です。島風型については出張の帰路が本日に間に合わなかったので、後日に内容を伝えます」

 

 下の方に参加・不参加・未定の欄がある。一応は参加の方に島風型の名前があった。まだ知らない駆逐艦が居るのか。

 

「工程的には午前と午後に分けて草刈りを行います。時期的な問題で様々な昆虫、野生動物に遭遇する可能性がありますので、判断が出来ない場合は後藤田さんまでお願いします。もし何かあればどうぞ」

 

 吹雪ちゃんからパスを貰う。少しだけ喋らせて頂きましょう。

 

「お疲れ様です。当日は手伝わせて頂きます。最も高い遭遇の可能性として蛇の類が考えられますので、見つけたらまず距離を取って下さい。続いてマダニですね。これには特に注意をお願いします。あとはカバキコマチグモと言うのが居まして、あまり知られていませんが在来種のクモで最強の毒を持っています。ただ持っている毒が極少量故に国内での死亡例はありませんので厄介度を含んだ危険性としてはマダニ、蛇、カバキコマチグモですかね。恐らく気温は高くなるでしょうが長袖長ズボンを徹底すれば多くの事を防げますから、その辺はよろしくお願いします」

 

 全く聞いた事のない固有名詞が出て来たせいか静まり返ってしまった。別に怖がらせるつもりはなかったが何か複雑な気持ちになって来る。

 

「……後で色々と写真を持って来ますのでよく目を通しておいて下さい。自分からは以上です」

 

 また資料作りが忙しくなりそうだ。季節性の注意喚起で敷地や寮の掲示板に貼るのも作らないと。

 

「武田さんも何かあれば」

 

「では一言。使用する道具類や消耗品は管理部を通して事前の申請をお願いします。返却時の洗浄もお忘れなく。以上です」

 

 普段はあまり感じないけどこういう部分は"組織"だなぁと思う。まぁそうなんですがね。

 

 

 その後は当日の具体的な動きの説明や質疑応答が続く。時間的には1時間ちょっとで終わった。しかし解散したからと言って直ぐには帰れないのだった。

 

「ねーねー、さっきのどんなクモ?」

 

「全然知らないにゃしぃ」

 

「勉強不足で申し訳ありません。ご教授頂けると助かります」

 

 白露・睦月・朝潮と言う珍しい組み合わせが目の前にやって来た。

 

「はい、自分の携帯端末を出して下さい。そんでググりましょう」

 

 ぶっちゃけ実物は見た事がない。自分も携帯を出して"カバキコマチグモ"を検索する。見た目も結構凶悪な感じだ。一目でやばそうだと分かる。

 

「……何これ、タランチュラ?」

 

「顔は近い感じするけどね」

 

「体長10mmぐらいしかないの? 小さすぎない?」

 

「イネ科の植物に住むのですか」

 

「うん。田んぼとかで農作業してて咬まれる確率が高いらしいね。ただ葉っぱを丸めて巣を作るからそこで見分けられるかも知れない」

 

 写真だけじゃなくてそういう情報もあった方が良さそうだ。ふと気付くとあちこちで自ら検索している娘たちが目に入る。半分くらいは渋い顔付きになっていた。

 

「因みにこれは事前に追っ払えたりするものですか?」

 

 武田さんも調べたようだ。それについては難しい一面がある。

 

「徘徊性のクモですから難しいですね。居るか居ないかも詳しく調べないと分かりません。なので肌を露出しない事が最大の防御になります」

 

 前の時はこのクモについて話さなかったなぁ。手慣れた娘が多い状況だったのもあり、見た事ないのが居れば言って来るだろうとの考えもあった。今回は姉妹の1名以外はほぼ絡みのない暁型と例の夕雲型も居るから耳に挟んでおいて欲しいと思ったのもあって説明したけど。

 

「俺も植物はそこまで詳しくないからどれがイネ科と聞かれると答えられないかな。取りあえず見た事ないものには触らないのを徹底して貰えれば」

 

 微妙に納得したようなしてないような白露嬢の視線を感じながら今日は解散。作業予定日は暫く先。なので今は資料とポスター作りに集中だ。

 

 と意気込んでいたらまた連絡が入る。今度は提督さんからだった。人数が人数なので駆逐艦だけじゃなく他の艦種も何人か参加する事になったらしい。例のクモを誰かが話したらしく、その件もあって都合が良い日に集まれたら、との事。資料を纏める時間が欲しいので休み明けにお願いした。

 

 

休み明け・鎮守府

 

 今回は入った事のない建物で打ち合わせとなる。建物の名前は言われなかったので深くは聞かないでおきましょう。中に入って最初にあるドアから提督さんと一緒に部屋へ。まだ誰も居なかった。幾つかの長テーブルと椅子、ホワイトボードが置かれてある。

 

「適当にかけて下さい。今、呼んで来ますから」

 

 提督さんはそう言い残して部屋を出て行ってしまった。適当にか。どうしよう。

 

「……取りあえず」

 

 先頭にあるテーブルの隅っこ。壁側の椅子に座った。何かあれば、とか言われたら前に出やすい。持って来た資料は20人分まで作ってあるがさて何人来るのだろうか。

 

 

 待つ事、5分ばかり。提督さんを先頭にゾロゾロとご登場だ。

 

「休み明けに来て貰って済まないな」

 

「待たせたわね」

 

 長門型。

 

「ご無沙汰してます」

 

「お疲れ様でーす」

 

 続いて千歳型。

 

「あ~、おつ~」

 

「暫くだクマ」

 

 球磨&北上。

 

「どうもー」

 

「入ります」

 

 夕張に由良。

 

「失礼しまーす」

 

「失礼致します」

 

 速吸と見た事のない艦娘が1人。合計10人。

 

「えー、まず、神威は面識がないな?」

 

「はい、そうですね」

 

「こちらが後藤田さんだ。挨拶を」

 

 またこれはなーかなかに際どい恰好じゃ御座いませんこと?

 

「給油艦の神威と申します。先日こちらに着任致しました。現在、速吸さんの下でご指導頂いております」

 

「後藤田です。よろしくお願いします」

 

 何か、両サイドからはみ出てるように見えるけど、気にしないでおきましょう。打ち合わせスタートです。

 

「駆逐艦寮の草刈りが円滑に運ぶよう、このメンバーでサポートを行う。時期的に色々と出て来るだろうから、それに関しても対応が必要だ。因みに現在2号棟になっている建物の裏ではマムシが出た事があるので十分に注意して欲しい。考えられる出来事については……よろしいですか?」

 

「分かりました。では僭越ながら」

 

 立ち上がって資料を配る。遭遇する可能性がある蛇類と虫の画像を張り付けたものだ。説明はあくまで簡単に。潜んでいそうな場所、もし咬まれた場合の症状を羅列してある。

 

「1枚目は蛇類になります。マムシ、ヤマカガシ、シマヘビ、アオダイショウです。シマヘビは毒を持っていませんが、気性が荒いので不意に遭遇した際は注意が必要です。アオダイショウも基本的に無害ですが刺激すると反撃して来ますから気を付けて下さい」

 

「シマヘビ見た事あるかも……倉庫同士の隙間に入っていったのこれかなぁ」

 

「いつの話だクマ?」

 

「2週間ぐらい前……のはず」

 

 北上は遠い目をしながら記憶を掘り起こしていた。見ようによってはだらけているようにも見える。

 

「水辺に多く生息してますが何所にでも居るので、コイツだったとしても不思議はありませんね。続いて虫です。ここからはちょっと情報量が増えます」

 

 蛇の時はそうでもなかったが、マダニとカバキコマチグモの事を話すとゆっくり部屋の空気が沈んでいくのが分かる。駆逐艦寮の打ち合わせでは言わなかった、他に居るかも知れない虫まで説明が終わる。

 

「……草刈りやめた方がいいんじゃないの?」

 

「生え放題になって色んなのが隠れ潜むよりマシだクマ」

 

「長袖着てれば問題ないでしょ」

 

「お腹もちゃんと隠してね」

 

 今は慣れたけど、夕張さんのお腹は最初の頃かなり目のやり場に困ったもんですわ。

 

 お腹と言えば長門型のお2人は何かこう、目上の人的な印象が強くてそういう風に思えなかったっスね。

 

「クモの見た目、結構凶悪な感じね」

 

「毒の強さ日本一なんだ。こわ~」

 

 言うほど恐怖心は抱いてないように見える千歳&千代田。

 

「後で個別に質問は受け付けます。自分からは以上です」

 

 気持ちは分かるけど次の議題が控えていた。進行させなければならない。

 

「続いて当日の休憩や昼食に関してだがーー」

 

 再び提督さん主導で打ち合わせが進む。さて当日は何か起きるか否か。平和に終わってくれればそれでいいけど油断は出来ません。




なぜか春風を次女のようにしてしまってましたので修正しました。
その他、何点か修正しております。ご了承下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。