鎮守府出入り業者の俺   作:土管侍

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草刈り 午後の部

 お昼です。打ち合わせで集まった1号棟の部屋で弁当の配布があります。

 

 弁当は人数が人数だからシンプルな物で決定。1つは野菜の蒸し炒め弁当。詳しくは知らないけど野菜が水っぽくならない調理法だとか。もう1つがアジフライ。最後のは巻かないオムライスである。俺はアジフライにした。

 

 打ち合わせをした部屋に来てみるとそこそこの行列。配っているのは夕張・由良・速吸の3人。神威はドリンクを仕切っているらしい。

 

「野菜炒めこっちねー」

 

「アジフライここ~」

 

「オムライスはこの列よ」

 

 千代田・北上・陸奥が何所が何の列なのか分かる看板を持っていた。誘導されるままに並ぶ。

 

「お、旦那もアジフライかい?」

 

 列に並んだ所で話し掛けられた。振り向くとそこには谷風&浦風。

 

「尻尾の根元の所が好きでね」

 

「分かる分かるっ」

 

「ウチもあれ好きじゃねぇ」

 

 ふと思い出す。改二じゃない特殊な改装を受けた話を。

 

「何か、特殊な改装したんだっけ?」

 

「浜風たちから聞いたなら話が早いってもんさ。谷風丁改だよ」

 

「浦風丁改じゃ。よろしゅう」

 

 丁改がどんな改装なのかは聞いても分からないから掘り下げはしない。そもそも改二すら何がどうなるのか分からないし……

 

「次、後藤田さんですね」

 

「お疲れ様です」

 

 ここは由良さんが配っている模様。何かちょっと、ドキドキします。

 

「どうぞ。落とさないで下さい」

 

「ありがとうございます」

 

 流れで次はドリンクのコーナーへ。

 

「どれにしますか?」

 

 あるのは水・麦茶・スポドリ。

 

「麦茶でお願いします」

 

 大き目の紙コップを受け取った。さて何所で食べたものか。

 

「一緒にどうだい」

 

 全員受け取り終わった暁型のご登場。ヴぇ……響嬢に声を掛けられた。

 

「嫌じゃなければ」

 

「問題ないさ」(野菜炒め)

 

「食べよ食べよ」(アジフライ)

 

「お腹空いたのです」(オムライス)

 

「こういう時はオシャレなランチよね」(オムライス)

 

 何でそうなのかは聞かないでおこう。手近なテーブルを囲んで食べ始める。

 

「いい味だ。落ち着く」

 

 野菜炒め食ってそんなセリフが出るのはどれだけの年を重ねればいいのか……

 

「電、ほっぺにご飯粒が付いてるわ」

 

「え、ど、どこですか」

 

「ここよ」

 

 米粒を取ってあげる微笑ましい光景。そう言えば暁ちゃんが長女って事しか知らない気がする。

 

「暁。凄い事になっているね」

 

「え?」

 

 口の周りがケチャップだらけである。まるで末っ子のような食べ方で長女。長女? 長女って何だっけ……

 

「拭いてあげよう」

 

「いいわよ、自分で出来るし」

 

「着ている物の袖口を使っちゃいけないって、一般常識の筈だよ」

 

「う……」

 

 正に右手の袖口で拭こうとした瞬間だった。大人しく響に拭かれるのを待つ。

 

「あ、ありがと」

 

「自分のペースで食べればいい。誰も急かさないさ」

 

 改二になると精神的にも成長するのだろうか? と思わせられる光景でした。

 

 

 昼食終了。午前で抜ける組はそれぞれの準備に向かった。入れ替わりで初春型がやって来る。

 

「随分と派手な色じゃな」

 

「撮影するから身バレ防止で」

 

「映り込んでも分からぬようにか」

 

「万一があるからね」

 

 初めて会った時は何かこう、絡みにくい感じだったけども今は慣れたかも知れません。旧棟のお陰?

 

「24時間、草刈りでも大丈夫だ」

 

「変な事言わないで……」

 

 ドヤ顔で謎の発言をする……若葉、さんでしたっけ? 隣の初霜さんは呆れ気味。

 

「子日、頑張るからね。いっぱい刈っちゃうよ」

 

 姉妹の中で1番独特な見た目をしてらっしゃるように思える。そして心なしか発言が怖く聞こえる。気のせいだろうか。

 

「来たよー」

 

 耳通りの言い声と共に旋毛風のような何かが入って来た。一瞬だけ目を閉じてまた開けた先には、奇抜過ぎる恰好の艦娘が居ました。見えちゃいけない物の半分以上が見えております。

 

「ちょっと島風! 着替えてから来なさいってあれほど!」

 

「えー、こっちの方が速いってば」

 

 天津風が咎めるも意に介していない。

 

「島風ちゃん、違う所で着替えましょ」

 

「今日は悪いが速さが全てではない。怪我をしないための着替えでもあるんだ」

 

「そうなのー?」

 

 一旦、長門型の2人に連れられて部屋を出て行った。戻って来ると皆と同じ格好だけど何か不服そうである。

 

「……島風型?」

 

「左様。姉妹艦はおらぬ。まぁ、天津風が少し繋がりを持っているがのぅ」

 

「そう言えばまだ会っていなかったな。島風、今日の作業を手伝って貰っている後藤田さんだ」

 

 長門様に手を引かれその子は前に出て来た。

 

「あ、色々と聞いてまーす。島風型駆逐艦の島風です。とっても速いのが自慢です」

 

「後藤田です。害虫害獣駆除の業者です」

 

「よろしくー」

 

 軽い感じ。何が速いのかはよく分からない。どうも掴み所が見えない印象。

 

「では午後の作業を開始しよう」

 

 午後の部スタート。2号棟は正面から始めて裏を残すのみ。1号棟も遠からずと言った状況だが、そもそも1号棟の裏が2号棟である関係上、実は2号棟の方が作業量は多いのだった。

 

 

「よっこいせっと」

 

 また地面に座り込む。しかしあれだ、飯食ったけど体力は完全に回復仕切らないもんだ。足腰や手首は自然と午前中の痛みをまた復活させて来る。

 

「あだだ」

 

 開始5分で右手が黄色信号を送って来た。年は取りたくないもんです。

 

「いっくよー」

 

 少し離れた所でカマを持った島風が素早い動きで草を刈り始める。通常の3倍っぽいスピードに見える。

 

「島風、刈った草をその辺に撒き散らしちゃダメだクマ」

 

「一緒にやろうぜ島風」

 

「ゴミ袋はこれだ。ある程度溜まったら入れていくといい」

 

 嵐と磯風が一緒になって作業開始。どうにも突っ走る癖のある娘なのだろうか?

 

「サボりはっけーん」

 

「いーえサボってなど」

 

「でも手が止まってたっしょ」

 

「痛いんですよもう」

 

 白露嬢が絡んで来た。何気に話すのは朝ぶり。

 

「そう言えば綾波型の皆はスケジュール変わった?」

 

「あー、ちょっと急に出張が決まっちゃってね。それで抜ける事になったよ」

 

 最初の打ち合わせでは綾波型一同も参加の予定だったが気付くと面子に居ない。やはりスケジュールに変更があったようだ。

 

「昨日は敷波ちゃん居たけど今日は誰も居ないなぁと思ってたらやっぱりか」

 

「夜になってからみんな移動したかな。何日か帰って来ないらしいけど」

 

「……拙い質問だったら答えなくていいけど最長でどれぐらいここを空ける時があんの」

 

「んー…………ごめん」

 

「へい、すんません」

 

 踏み込み過ぎた。その後も適当に話しながら草を刈る。右手は限界寸前。試しに左手でカマを使って見ると意外に出来た。これでだましだましやるか。

 

「……ん?」

 

 今何か、ポツっと顔に……

 

「通り雨だクマ。中断して休むクマ」

 

「みんなー、どっちでもいいから雨宿りに入ってー」

 

 大した事ないんじゃないか、と思っていたら急激に雨脚が強まって来た。2号棟が近いのでこっちに退避する。

 

「うひゃー凄い雨」

 

「正に土砂降りですね」

 

 陽炎や不知火を始めとする2号棟組が集合。数名は1号棟に行ったようだ。

 

「こいつは10分やそこらじゃ止みそうにないな」

 

「止むまで休めばいいクマ。休憩休憩」

 

 何となく気付いたけど根っ子の部分は妹さんと似通っているらしい。ONOFFの違いだろうか。

 

「雨音凄いっぽーい」

 

「どんぐらい降るんだこれ」

 

「えーっと……雨雲レーダーは30分後なら晴れの予想かな」

 

 はしゃぐ夕立。辟易する涼風。携帯で天気を見る時雨。同様に陸奥や何名かが天気を調べ出す。いくら更新しても30分後なのは変わらない。

 

「確かに30分後なら晴れるみたいね。焦っても仕方ないわ。休みましょ」

 

 テーブルとセットになった椅子に腰掛けて雨が止むのを待つ。窓から見える1号棟がどうしても学校を思わせる見た目なせいか打ち合わせの時とは違って不思議とノスタルジーな気分。雨音が聞こえるのも影響しているらしい。

 

 静かな時間が流れて20分ちょっと。雨の音が弱まって来た。

 

「そろそろ晴れそうやね」

 

「ええ、隙間から青空も見えますね」

 

 外を見ていた黒潮と親潮がそう言った。急速に雨が上がっていく。

 

「再開するクマー」

 

「もうひと踏ん張りじゃ、良いな」

 

「別に雨の中だろうと構わんのだが」

 

「何がお主をそうさせるのか不思議で仕方ないのぅ……」

 

 妙な発言をする若葉に初春は眉間へ皺を寄せる。何はともあれ作業再開。

 

「うわー、水びたし」

 

「これ集めるのはちょっと手間だね」

 

「かさが増えるからこのままゴミ袋は重くなるなぁ」

 

 白露&時雨と刈って一ヶ所に集めておいた草が雨で濡れていた。水を吸った草は重くなるのだ。

 

「軍手が役に立たなくなったクマ」

 

「ゴム手袋の方がいいかしら」

 

 陸奥さんの言う通り確かにこれはゴム手袋が良さそうである。濡れた草を軍手で掴めば水が染みて来て不快になってしまうだけだ。やる気も削がれる。

 

「じゃあ貰って来ますね。神威さん、一緒に行きましょう」

 

「はい」

 

 由良と神威がゴム手袋を貰いに行った。手持ち無沙汰になるが取りあえず控えめに草刈りをしていく。しかし十数秒とせず軍手が濡れてどうにもならない。

 

「戻って来るまで中断でいいクマ。ついでに1号棟の様子を見て来るクマ」

 

「あっちもゴム手袋にするならもっと必要ね。私も行きます」

 

 サボりをチェックするのも兼ねて様子見に向かう球磨。それと状況次第で更にゴム手袋が必要なら貰いに行くため千歳も1号棟へ。

 

「……ただの通り雨だと思ってたけど意外に影響出たね」

 

「もーっと降れば今日はお終いになるっぽい?」

 

「後日再開だから何の解決にもならないよ」

 

 ワンチャン解散の可能性を見出した夕立に時雨が釘を刺す。

 

 

 大体10分程度が過ぎた頃にゴム手袋が到着した。1号棟もこっちに切り替えたそうだ。これで再開出来る。

 

「草だけじゃなくて地面も濡れてるから気を付けてね」

 

「濡れた軍手はこっちの袋に集めるクマ」

 

「使い終わったゴム手袋はここにね」

 

 球磨がマジックで「軍」と書いたゴミ袋に濡れてしまった軍手が集まっていく。もう1つは千歳が「ゴ」と書いたゴミ袋だ。

 

「んー、座れないのが辛い」

 

 さっきまで地べたに座っていたけど今はそれが出来ない。しゃがんでえっちらおっちらやっているとまたもや島風が滑るような動きで草を刈っていった。どうなってんでしょうね……

 

「みんなおっそーい」

 

「何でそんなゲームのダッシュ移動みたいな事が出来んのよ」

 

「えー? 簡単だよ」

 

 疲労の色が濃い秋雲先生が突っ込むも島風は「何がそんなに大変なのか分からない」と言った表情である。

 

「こうやってこうすれば」

 

 またよく分からない高速移動で草を刈り始めた。もはや面白いまである。

 

「ごめん、突っ込んだアタシが悪かった」

 

「島風、さっきも刈った草を撒き散らすなって言ったクマ」

 

「はーい」

 

 聞き分けはいい……のだろうか。まぁ、あんまり気にしても仕方ない。お仕事お仕事。

 

 

 2時間ばかり休憩と再開を繰り返した。1号棟が終わってしまったのでこっちに応援が来る。お陰で2号棟も無事終了。

 

「終わったねぇ」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「この草の山はどうする?」

 

「乾かした方が捨てやすくなるから数日置いておくといいよ」

 

 雨で濡れた草の山を白露嬢が指差す。ゴミ袋に入れると水が下に溜まって重くなるので取りあえず何ヶ所かに分けて集めた。この方が乾くのも早いと思う。

 

「特に危険な生き物も出なくて幸いだったな。毎度済まない」

 

「いえいえ。何事もなくてよかったです」

 

 長門様を筆頭とするサポートメンバーとは挨拶を済ませた。白露嬢がGoproを取り出して草の山を撮り始めたので退散する。ハイエースを動かして報告のため司令部棟へ。

 

 

司令部棟

 

「と言う訳で無事に終わりました。もしかすると潜んでいた何かしらが出て来る可能性もありますので数日間はご注意願います」

 

「よく周知しておきます。ありがとうございました」

 

「近々で季節性の害虫出現に関する注意喚起のポスターを張りに来ますので、その際にまた様子見をします」

 

「分かりました。日時はまたご連絡下さい」

 

 これにて本日は終了。ポスターの作成を急がなければ。

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