鎮守府出入り業者の俺   作:土管侍

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何回かに1度、続きを挟みます。
ご了承願います。


ハクビシンを探せ1

 ハチアブロックZの効果が出たのか2号棟正面から残りのアブが居なくなる。この商品は所々に切れ目が入っているから途中で折ってしまえばそれ以上は燃えないので最初の切れ目で折った。燃えている所はしっかり消火します。

 

 20分ぐらいは休んだので頭を切り替える。見たくない現実に目を向ける時間ですよ……

 

「えーと……話が変わって申し訳ないんですが、ここ最近で何か野生動物を見ませんでしたか」

 

「どうしたの急に」

 

 そりゃ如何な明るさを持つ白露嬢もそう思うでしょう。話が180度近く変わったんだから。

 

「ハクビシンの死骸があった。恐らくそいつのせいでアブが増えたんだと思う。ハエも同じぐらい集ってたし」

 

「飼育されてる動画を見た事があります。果物を美味しそうに食べてるのがとっても可愛いんですよね」

 

「大和よ、あれと野生は違うぞ」

 

「実際はかなり凶暴だって本で見ました」

 

 これでオコジョとテンまで出て来たらコンプリートだな。いやこの辺には……居ない筈。多分。居ないよね?

 

「あの、終わりました?」

 

「まだ見張りが必要でしたら続けますが」

 

 1号棟の方から親潮&不知火の登場。後ろには更に江風と海風、時雨に磯波も見えた。

 

「見張りはもう大丈夫。ありがとうございます。急で申し訳ないけど最近で野生動物を見ませんでしたか」

 

「えーと……鳥以外は特に見ませんでした」

 

「私もです。何でしたら今からでもその辺に分け入りますが」

 

 急に目付きが険しくなる不知火ちゃん。やめて。変なの居たら対処せざるを得なくなるから。

 

「前にも言ったけどもしカバキコマチグモなんかが居たら仕事が増えるから却下でお願いします。1号棟は今日どれぐらい居るかな」

 

「出入口の方で秋月、初霜、若葉、朧、萩風、野分が見張りをしています。もう1時間ほどすれば何人か帰って来ます」

 

「何か情報があれば聞きたいね、悪いけど頼める?」

 

「承知しました」

 

「アブの作業は解散します。ご協力ありがとうございました」

 

「本物は見た事ないですけどテンの画像を見たんです。とっても可愛いですよね~」

 

「大和よ……何度も言うが野生動物の見た目と性格は必ずしも比例せんぞ」

 

 武蔵さんは色々と知っているご様子。大和さんは見た目が可愛い動物に目が無い模様。前に確か移動動物園でウサギを撫でたんだったか?

 

 解散に伴って縞模様の衣類は全部回収、と思ったけど今後を考え1号棟及び2号棟へ作って貰ったヤツを3着ずつ残す事にしよう。またアブが出た時の対抗手段になる。

 

 そして1号棟に今居るメンバーから情報を得ようとするも収穫は無し。

 

 

鎮守府正門・警備所

 

 当番の人たちに聞き込みです。夜間の巡回中に見ている可能性は高い。

 

「最近は見ませんね。アナグマも近付かなくなりましたし」

 

「タヌキもあれ以降は見ていません。森の奥へ引っ込んだみたいです」

 

 そりゃ一航戦の気に当てられたら如何な野生動物と言えど身の危険を感じるでしょう……

 

「もしあればご連絡下さい。提督さん経由でも直接でもいいので」

 

「それより……何のための恰好ですか?」

 

「何所かに発注したように見えますね」

 

 しまった。俺だけ脱いでなかった。

 

「アブが出たってので呼ばれまして。この模様がアブの目を晦ます効果があるらしくて作って貰ったんです。意外に役立ちましたよ」

 

 提督さんは数分前に外出した上に今日は夜まで戻らないそうなのでそっちへの聞き込みは保留。取りあえず執務室に顔だけ出してこの件を伝えておこう。

 

 

 って訳で司令部棟へ到着。執務室に行くと……

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れ様」

 

 わぁ、大淀さんに加賀様が揃っておられる。そしてもう1人、未だ見知らぬ艦娘も。何と言うかキチっとした恰好です。

 

「……もう顔見知りかしら」

 

 加賀様が俺とその艦娘を交互に見ながらそう言った。

 

「いえ、残念ながら」

 

「私もです」

 

 俺が知らない艦娘はあと何人ぐらい残ってるのか。少ないのか自分で思っているより多いのか。

 

「秘書艦の研修に入った妙高よ。詳しくは自分で」

 

「妙高型重巡洋艦1番艦の妙高改二と申します。以前に、那智がお会いしているかと」

 

 なち、那智……確か、凄く長いサイドテールの人が居た気がする。あれは恐らくムカデの件で初めて重巡洋寮に行った時の筈。多分。もう遠い昔に思えて仕方ない。

 

「害虫害獣駆除をしている後藤田です。記憶が正しければかなり前に1度だけ」

 

「那智は1つ下の妹になります。4人姉妹なのであと2人居るんですけど、機会があればご挨拶させますね」

 

 そんなこんなで妙高さんを交えてハクビシンの件を伝える。当然だが3人もここ最近で特に何かは見掛けていなかった。とするとあの死骸は比較的新しい存在なのだろうか。

 

「屋根裏とかに棲み付くらしいわね。また厄介なのが現れたものだわ」

 

「これは野放しに出来ない存在ですね。こちらで各寮に通達を出す用意をします」

 

「ええ。妙高は事務棟や他の所へ連絡をお願い」

 

「承知しました」

 

 4人目の秘書艦になるであろう妙高さんの動きは素早かった。そう言えば鹿島さんは不在っぽい。

 

「今日は3人だけですか」

 

「鹿島なら提督のお供で外出よ。何かご不満かしら」

 

「いえ何も」

 

 余計な一言だったか? もう変な事は言いませんです、はい。

 

「それでですね、一応は提督さんとも直接お話をしたいんですが近々のスケジュールなんかは」

 

「明後日なら空いています。出掛ける予定はありませんので午前でも午後でも」

 

 メモ帳を開いた大淀さんがそう答えた。

 

「じゃあ午前でお願い出来れば。11時からとかで」

 

「伝えておきますね」

 

 これでまた食堂で飯が食えるぜ。なーんて不純な動機もあったりする。

 

「今日はこれで失礼します。詳細な時間は後ほどで」

 

 お暇しました。駆逐艦寮へ戻りハチアブバスターズを死骸にかけてハエとアブを散らしたら空の段ボールを被せる。そしてチラシの束を借りて上から重しにした。処理の方法を一旦調べないといけないが今日はちょっと時間が厳しい。どうせ明後日も来るからその時にやろう。

 

 ハイエースに乗り込んでエンジンを掛ける。すると……

 

「オウオウゲンキソウジャネェカ」

 

「マタメンドウカケテワルイナ」

 

 うへぇ、このタイミングか……

 

「もう帰りますんで」

 

「ツメタイコトイウナヨ」

 

「オハナシシヨウゼ」

 

「ちょっとだけな~」

 

 エアコンを微妙に効かせて姿の見えない妖精さんとお喋り。相変わらず声は電子音に近い。

 

「そろそろいいですかね」

 

「キヲツケテカエレ」

 

「マタナ」

 

 待てよ。もしかすると情報が得られるかも?

 

「もし何か知っていればでいいんだけど野生動物を見なかったかな」

 

「ニンゲンガワケイッテナイトコロニハイロイロイルゾ」

 

「トオクカラナキゴエガキコエテクルトキモアルナァ」

 

「色々って何だよそれ」

 

「シラナイホウガシアワセナコトモアルンダゼ」

 

「コッチモシラベテミルワ」

 

「程々にお願いします」

 

 あんまり期待はしないでおこう。妖精の物差しと人間の物差しが同じと考えるのは短絡的な気がする。今日はこれにて失礼。

 

 帰ってから明後日の件で連絡があった。要望通り11時から会えるそうなので先乗りしてハクビシンの死骸を処理してしまいます。その旨もお伝えする。

 

「えーと……市の環境課に何か載ってたような」

 

 HPを開いて確認。当市では燃えるゴミとして処理して良いそうだ。なら用意する物は大してない。ありがたやありがたや。

 

 

時間は流れて2号棟横・午前10時半

 

「それでは回収してしまいますね」

 

「よろしくお願いします」

 

 例の縞模様(作って貰った方)を着ている大淀さんが可愛い。俺は自作したヤツだ。

 

「いつでもいいぜ」

 

「こちらの準備は万全です」

 

 1号棟から深雪。2号棟から夕雲が参戦。どちらも作って貰ったのを着込んでいる。右手には殺虫剤。

 

「開けまーす」

 

 重しのチラシ束を退かし段ボールを持ち上げる。まだ生き残っているのが飛び出して来るも左程の数じゃない。左右から噴霧される殺虫剤で全機撃墜だ。持って来た新聞紙で包みゴミ袋を広げて回収も手早く終了。こいつは俺の方でゴミに出す。

 

「はい、お疲れ様でした」

 

「何だもう終わりかぁ」

 

「ちょっとあっけない感じでしたね」

 

「一昨日に大体は遠ざけたからそんなに居ないとは思ってたよ。ご協力感謝します」

 

 ハイエースにゴミ袋(死骸入り)を積み込んで消臭スプレーを自分にかけたら次は司令部棟へ。大淀さんは回収の見届け役だ。

 

「拙い質問だったら答えなくていいんですけど、あの執務室で4人同時に秘書艦が仕事をする事になるんですか?」

 

「スペース的な問題もありますから2人になると思います。恐らく当番制かと」

 

 秘書艦用の机は2つしかないし3つ目を置くなら手狭になりそうだ。この感じだとその内に駆逐艦も誰か秘書艦をする事になりそうな気がする。となれば誰だ? 吹雪ちゃんが一番可能性は高そうだが綾敷コンビも手堅いイメージ。白露型なら時雨嬢か。色々と話が速くて助かる存在になってくれそうだ。

 

 当たり障りのない世間話をしながら執務室へ。中には提督さんと鹿島さん。それに研修中の妙高さん。

 

「お疲れ様です」

 

「お疲れ様です。どうぞ」

 

 ソファーに腰掛ける。今日はハクビシンの件でお願いもあるのだった。

 

「2号棟でハクビシンの死骸があったそうですね」

 

「ええ。自分も初めて見ました」

 

「お茶とコーヒー、どちらにされますか?」

 

「あー、お茶でお願い出来れば」

 

「こっちも同じで」

 

 鹿島さんが聞いて来た。相変わらず綺麗で可愛い。

 

「既に各寮や他の施設に警戒の通達は出していますが、他に何か」

 

「2号棟をリフォームする際の報告書か何かあったりしますか。機密に触れるような部分以外で確認出来ると嬉しいんですが」

 

「報告書ですか……大淀」

 

「お待ち下さい」

 

 大淀さんが言われた通り何かの、それなりに分厚い書類を持ち出して来た。辞書の半分ぐたいはありそうだ。

 

「リフォーム業者と清掃業者の報告書を纏めた物になります。既に検閲が済んでいる物です」

 

 検閲。あまり聞き慣れない言葉だけどここが鎮守府と考えれば妥当か。

 

「拝見します」

 

 一先ず最初のページを捲った。項目順になっているのがとても有難い。

 

「……屋内状況所見」

 

 最初は外見、半分ぐらいで屋内の状況に関する項目だった。そこまで一気にページを持ち上げた。パラパラと見ていく。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 近くに置かれたお茶を一口だけ啜る。いい味でした。多分。

 

「……炊事場で動物の糞を確認。茶色の細長い棒状。床に穴あり」

 

 これか。あの炊事場はぶっちゃけ怖くてちゃんと見てなかったけど恐らく出入りしていたんだろう。俺の作業とその後のリフォームやら何やらで遠ざかっていたのがまた戻って来た可能性がある。

 

「多分ですけど2号棟もとい、旧棟を寝場所にしていた個体が存在したみたいです。色々騒がしくなったので一時的に離れたのが戻って来たようですね」

 

「にしても死骸で見つかったのは腑に落ちませんね」

 

 確かにそうだ。よくよく考えれば死骸には大きな傷と食われたようながあった。ハクビシン自体もあんまり大きくはない。幼獣と成獣の中間だろうか。

 

「調べないと分かりませんが、他に天敵となる存在が居る可能性もあります。因みにですけどフェンスの向こうを調べるのは出来ますか」

 

「付き添いが必要になりますので事前連絡さえ頂ければ。ただ、日程は摺り合わせが必要となります」

 

「承知しました。こちらのスケジュールを確認してまたご連絡します」

 

 今日はこれでお終い。時間は11時30分。食堂で昼を食うにはいい時間帯だ。もう提督候補生の人たちも居ないから遠慮する事もない。常識の範囲内でね。

 

「大淀、見送りを」

 

「はい」

 

 執務室から出た。もしかして昼に誘うチャンス? しかし仮に承諾されたとしても話を続けられる気がしない。

 

「食堂に行こうと思うんですけど今日の日替わりとか分かります?」

 

「今日はAがチキン南蛮、Bは確か冷やしたぬきそば、Cがお刺身の定食だったかと」

 

 うーん、選び難い。あっさりと冷やしたぬきもありか。

 

「分かりました、Bにしようと思います」

 

「私もBにする予定でした。連絡の方は今日中ですか?」

 

「そうですね。夕方までには」

 

「はい。では」

 

「お疲れ様でした」

 

 失礼する。そんな勇気は出せませんでした。いつぞやに見た夢と現実は違います。




回収の時間を9時半から10時半に修正し忘れてました。
申し訳ありません。
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