おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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ついに前回をもってタグにハナダのお姉さんを付けました。




トレーナーたる者、ポケモンと心交わすことなど当然のこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拝啓。

 エリカへ。お元気でしょうか。わたしは元気です。まずは昨夜のことは本当に申し訳ないと思っております。いや、本当ですよ? 問題が片付いた後にちゃんと屋敷に帰ろうとしたんです。

 だけど、やっぱり野宿が一番だと思ってそのまま外で一夜を過ごしました。

 けして、わたしがエリカのことが苦手だからというわけではないことを改めて伝えたいと思います。本当です。本物のお嬢様に会えてとても光栄ですし、その所為もあって昨夜のわたしはとても緊張していたのです。だからちょっと挙動不審だったのです。今思い出しても、エリカの部屋でちょっと興奮していたわけではないのです。

 なのでお詫びというわけではありませんが、タマムシの問題を一つ潰したいと思っております。

 はい、そうです。わたしはいま、ロケット団の秘密研究所に潜入しているからです。

 

 

 

 追伸。あのイーブイはマサラタウンにいるオーキド博士に治療を頼みました。年は食っても頭はいいと思うので、きっとイーブイを治してくれると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外で一夜明けた朝。レッドはタマムシシティへと戻っていた。朝だけに人の通りは少なく、いてもポケモンと一緒に散歩、あるいはジョギングをしている人ぐらい。ただ偶然にも黒ずくめの男がいたので、そのまま裏路地へ連れ込んでお話したあと、男の情報から得たルートで地下にある秘密研究所へと侵入に成功した。

 地下は予想以上に広く、ゲームと違ってそれぞれの部署に分かれているためかなり複雑化している。それでもうまくいっているのは男の情報がかなり正確だったからだろう。目的はここの破壊であるが、それとは別に個人的に気になることがある。偶然にも男はここの研究部門の場所を把握していたおかげであった。さらに一定の団員、おそらく隊長クラスの人間しか入れない場所があると。

 

 

「さて、と。ここか」

 

 

 問題の研究所へと通じる扉の前にたどり着く。案の定扉にはカードキーが必要らしい。

 レッドは口笛を吹きながら右手の人差し指を出してカードキーを通す装置に指を当て、バチッっと電気を流してロックの解除を操作した。赤から青になり扉が開くのでとっとと中に入る。

 意外といけるもんだ。

 実のところショートさせて強引に入る予定だったが、意外にもそう意識すれば何とかなった。レッドは通路をひたすら歩き、ある区間に入ると壁がガラス張りになっているところに出る。そこに顔をのぞかせて中を見た。そこは実験場らしく、拘束されたイシツブテに機械のアームが伸びて何かを食べさせると、イシツブテは光に包まれゴローンに進化し、さらにもう一度食べさせるとゴローニャに進化した。進化したことで拘束具が壊れて暴れまわっている。

 強制的に進化せてかつ暴走状態、か。

 違う部屋から水ポケモンが現れハイドロポンプを食らってさすがのゴローニャも倒れた。それを見届けさらに歩みを進める。そしてこの施設の一番奥にたどり着く。運がいいことにここにはカードキーは必要なくそのまま入れる。そこには目的の一つであったポケモンがいた。

 

 

(……まさかまだここにいたのか、ミュウツー)

 

 

 カプセルにいられたミュウツーはまだ眠っていた。歩きながら施設を見渡す。どうやらここはかなり重要な区間らしく、モニターがずらりと並んでいて監視室の役目も担っているようだ。モニターの映像にはここの施設内はもちろん、街の映像にジムにまでカメラが設置されていた。ロケット団もジムリーダーであるエリカを警戒しているのだろう。

 キィイイン──

 

 

(うっ、なんだ。頭に何か……)

 

 

 突然の頭の痛みに思わず頭を抱える。だが痛みはすぐに消えた。原因を探ろうとするがある会話が耳に入る。

 

 

「なんとかここまでこぎ着けたミュウツーの完成度は90%といったところです」

「残りの10%はどうすれば埋まる?」

「それは難しいでしょう。このミュウツーは強さだけなら無類の強さを持ち合わせていますが、その分凶暴で我々の制御下に置くことは非常に困難。強さと管理能力を併せ持った新たなミュウツーを生み出すには、やはり今あるサンプルだけでは不可能です」

 

 

 声の方に向くと、そこにはサングラスをかけているスキンヘッドの男、カツラがここの責任者と思しき人間に報告している。

 男はそんなことをわかりきっているのか怒鳴って言い返した。

 

 

「それは承知している! だからこそ再度ミュウを捕獲してこいと言うのだろう」

「ええ。ですが……それは不可能」

「そのために血眼になってあの小娘を追っているのではないか! ミュウのデータを記録したディスクを取り返さなければ、捕まえることはおろか見つけることもできん!」

「……小娘?」

 

 

 まさかリーフのやつじゃ。

 それを聞いてレッドは思わず不安になった。ロケット団と関わるような少女なのは彼女ぐらいしか思いつかないからだ。シオンタウンでロケット団を退けたことで彼らと関わることになってしまったのかもしれない。

 最悪の事態を想像するところで、警報機が騒ぎ始める。

 

 

「どうした⁉」

「見つけました! 東16ポイントにあの少女が現れました!」

 

 

 メインモニターに映し出されたのはリーフではなかった。この前一度だけ会い、不良品のふしぎなアメを買わされバッジを盗んだブルーであった。

 

 

「総員出動! お前も突っ立ってないで行くぞ!」

「あらほらさっさー!」

 

 

 脱出する手間が省けた、レッドは笑みを浮かべながら先を走るリーダーの後ろに続きながら現場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東16ポイント。タマムシシティから少し離れた郊外に位置するここは、森を抜けると崖があり危険な場所である。危険である故に住民は滅多な事では近寄らないし隠れるのは絶好の場所であった。しかしさすがに監視カメラには気づかなかったブルーは、こうして崖っぷちに追い込まれていた。

 

 

「やーね。か弱い女の子一人に大勢で囲んじゃって。ロケット団にしては随分と大袈裟じゃなーい?」

 

 

 ピンチながらも余裕を演出する。見渡せばサイドン、カイリキー、サワムラー、ゴローン、ウツボット、ナッシー等々と強力なポケモンが待ち構えているが、これぐらい乗り切れる自信があった。

 

 

「さぁ渡してもらおうか。ミュウのデータが入ったディスクを。大人しく返せば命だけは助けてやろう。命だけはな」

「あら怖い。けどそれはダメよ。だって、アタシがミュウを捕まえるんだもーん!」

 

 

 持っていたディスクをカメールに持たせる。こうすれば相手は手加減をせざるをえない。あとはどうやってこの場から逃げるのかが問題だ。すると痺れを切らしたリーダーはポケモンたちに命令してきた。

 中々やるけど、この子の敵じゃない。

 カメールはその身軽な体を駆使して相手を翻弄し蹴散らす。

 

 

「ふふ。ディスクを気にしてまともに戦えないようね。ま、ジムバッジを二つも持っているあたしにかかれば当然よね。おほほ」

 

 

 この間の少年から盗んだバッジをイヤリングにして見せびらかすブルーに、リーダーは新たなポケモンケンタロスを繰り出した。

 鼻息を荒くし、今に突撃してきそうな見るからなに凶暴なケンタロスにブルーの額に汗が流れる。

 

 

「ははは。こいつはサファリゾーンでリーダーだったやつだ。それも尻尾で指揮することもできる。やれぃ!」

 

 

 ピシッピシッと鞭のように自身の尻尾を振るケンタロス。すると倒れていたポケモンたちが突如立ち上がり、カメールに襲い掛かる。さすがに数の暴力に勝てない。そのままディスクを落とし、ブルーのところまで飛ばれてしまう。

 慌ててカメールをボールに戻すブルーに容赦なくケンタロスに命令を下すロケット団のリーダー。

 

 

「いけぇケンタロス! とっしんだ!」

「まにあ──!」

 

 

 新たなにポケモンを出そうにも間に合わない。ブルーは思わず目をつむった。

 

 

「……あれ?」

 

 瞼を開ける。どうしてケンタロスは来ず五体満足に無事。だが代わりに目の前には黒い服を纏ったロケット団の一人が立っていた。

 顔を傾ければどうやら自分とケンタロスの間に入ったらしい。

 でも、なんで? 

 

 

「やれやれ。結局こうなるんだから」

「……あはは。ひ、久しぶりぃ……」

 

 肩をすくめてこちらを向いたその顔には見覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、貴様! 一体何の真似だ!」

「何の真似、と言われてもね。さすがにこいつを殺させるわけにはいかなくて……」

「一体何を……! ええい、お前は何者だ!?」

 

 

 答える気など毛頭ないレッドが頬をかいていると、後ろにいるブルーが勝手に着ていたロケット団の服を剥ぎながら言った。

 

 

「はーい! この人あたしのダーリンでーす!」

「な⁉ 貴様はマサラタウンのレッド⁉」

「あれ? あたしの反応と違うんだけど」

「なら話は早い! お前を手土産に幹部に昇進だ。やれ、ケンタロス! ……ケンタロス⁉」

 

 

 ケンタロスはレッドが間に入ってから一度も動いておらず、今もリーダーである男の命令を聞いてはいなかった。むしろ、モォーと鳴きながらレッドに頭をこすり付けている。

 

 

「おおよしよし」

「そ、そんな馬鹿な! あのケンタロスが手懐けられているだと⁉」

「トレーナーたる者、ポケモンと心交わすことなど当然のこと。それが野生でも、相手のポケモンでもだ。それじゃあ頼んだぞ」

「ぶもぉ!」

 

 

 レッドに頼まれて気分が高まったのか、ケンタロスは再び尻尾を振ってポケモンたちを操りロケット団に襲い掛かる。

 

 

「さ。逃げるぞ」

「ええ、もちろん!」

「あ、その前に」

「なによ」

「ぷちショック」

「ぁ──」

 

 

 ブルーの肩に手を置いて軽い電気を流す。そのショックで気を失ったブルーを抱きかかえた。

 こいつちゃんと飯食ってんのかな。

 腕の中で眠るブルーはとても軽く、女の子と言ってもこんなにも軽いのかと驚きつつレッドはその場から急いで離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって。研究施設で見た監視室のモニターに映っていない死角があるタマムシの一角に、レッドはブルーを運んでそこに生えていた木に彼女を縛り付けた。

 念のための用心しないと。

 彼女には前科があるため、さすがのレッドも無警戒ではいられなかった。眠っている間に彼女の体を検査する。どうせあのディスクは偽物だろうと思ったからで、案の定彼女の胸の谷間にあったので普通に取らせてもらった。

(白か。意外とピュアなんだな)

 しっかりと下着の色を確認したあと服をちゃんと直す。あとバッジも返してもらう。

 そろそろ起こそうと思って気絶させた同じ要領で電気を流した。

 

 

「わっ!」

「お、ちゃんと起きた」

「ちょっと! あんた、あたしに何をしたのよ!」

「それはこっちの台詞だろう。偽物売りつけた上にバッジまで盗みやがって」

「それは……おほほ……」

「それと、これ」

 

 

 ミュウのデータが入ったディスクを見せると、胸を見て顔を真っ赤にして怒り出した。

 

 

「エッチ!」

「意外だな。てっきり受け流すと思ったのに」

「なんで逆にあんたは冷静なのよ! もっと年相応に照れなさいよ。乙女の体に触ったんだから」

 

 

 年相応か。なんだか随分と遠い昔のように感じる。そんなことを考えているとハナダのお姉さんのことをつい思い出してしまう。あれを美しいというんだろうな。

 レッドはブルーとお姉さんを比べた。思わず吹き出す。最初から比較にすらならない。

 

 

「ふっ」

「いま、すっごい失礼なこと考えたでしょ、あんた」

「ところで、あんたじゃなくて俺にはレッドっていう名前があるの。はい、復唱」

「あーはいはい。わかりました! じゃあレッド、これほどいて」

「何も盗まないなら」

「……わかった。レッドから何も盗まないわよ(今は)」

 

 

 俺以外は盗むのか。

 呆れつつレッドは縛っていた縄を解いて解放した。改めてブルーに事の経緯を問いただし、総括すると。

 

 

「ミュウを売るとか頭にきますよ!」

「なんでよ⁉ ミュウは151番目の幻のポケモンなのよ⁉ それを買おうっていう人間はたくさんいるわ。それも大金を積んで!」

 

 

 807種類です(現在進行形で増えてます)……なんて言えるわけもなく、適当に相槌をうって否定する。

 

 

「いいか。幻は幻だからこそ夢や浪漫があるんだ。いくら人間がポケモンを捕まえられるからって、超えちゃ一ならない線っていうのがあるんだ、それをわかれよ!」

「なにいい子ぶってんのよ。所詮人間なんてポケモンを道具としか思ってないのよ。だからロケット団みたいな組織が平気で金もうけに使う。なんでそれがわからないのレッド⁉」

「じゃあお前もポケモンを道具だと思ってるのか?」

「そんなわけないじゃない。それはそれ、これはこれよ」

「……」

「……」

 

 

 

 互いに意見の違いで睨み合う二人。先に折れたのはレッドだった。状況が状況なだけに言い争っている時間はない。

 

 

「とりあえず、ロケット団にミュウを渡すわけにはいかないからお前の話を聞く」

「最初からそう言えばいいのよ」

「で。そのディスクで何ができるんだ?」

「ふふふ。これを使うの」

 

 

 取り出したのは見覚えのあるアイテムシルフスコープだった。まさかこんなところでお目にかかるとはレッドも思いもよらなかった。

 

 

「これにデータを入れてっと。で、これを被る」

「なんか赤い彗星ぽい」

「青い巨星の間違いでしょ」

「胸だけに?」

「ふん!」

 

 

 ――ブルーのげんこつ! レッドは前が見えない! 

 

 

「今度セクハラしたらもっと酷いわよ」

「これぐらい軽く流せよぉ……」

「待って。反応があるわ! それじゃあメタちゃんお願いね」

 

 

 メタモンが現れるとへんしんを使ってミュウに化ける。そのままメタモンは空、方向的に街方へと向かっていく。

 

 

「囮か?」

「そうよーん。その間にミュウを捕まえるのよ。付いてきて!」

 

 

 先に走り出したブルー。レッドはため息をついて重い腰をあげてから少し遅れて彼女を後を追いはじめた。

 

 

 

 

 

 それから場所は変わりタマムシの北部。あたりは平原で自然の風景が広がっている。それだけではなく、意外にも野生のポケモンが一匹もいなかった。

 

 

「で、どこにいるんだ?」

「いい? ミュウはエスパータイプだと言われているの。エスパーポケモンは特殊な波長、ようはサイコキネシス等の念力を体から発しているの。これはその波長を捕らえることができるってわけ」

「ふーん」

「もっと驚きなさいよ」

「いや別にそんなに凄いとは思ってないし……あ、なんか来るぞ」

「ちょっと、適当なことを……ってきたわ!」

 

 

 ブルー特製スコープよりも、レッドの電気レーダーが早くにミュウの波長を感じ取った。同時にミュウが発するサイコキネシスが風をまるで嵐のように変える。立っているだけで精一杯のブルーとは違いレッドは、高速で動いているミュウを当たり前のように追っていた。

 

 

「ちょっと、捕まえるのを手伝いなさいよ!」

「ロケット団の邪魔をするために手伝うとは言ったが、ミュウを捕まえるとは言ってないぞ」

「ああもう! カメちゃん!」

 

 

 やけくそ気味にカメールを出すブルー。しかしカメールではミュウを捕らえることは難しかった。レッドのフシギバナであれば簡単にいったかもしれないが、元々ミュウを逃がすつもりでいるためその方法が実現することはなかった。

 そんな時。タマムシの方で大きな爆発と同時に煙が上がっているのが見えた。

 

 

「なんだ?」

「──! いまよ!」

 

 

 ミュウも謎の爆発音に気を取られてたのか動きを一瞬止めたところを、カメールが攻撃を当ててミュウにダメージを与えて弱らせた。そのあとカメールがミュウに飛びついて拘束する。

 

 

「おほほ! やったわ、ミュウちゃんゲッ──」

「ブルー!」

 

 

 ブルーを抱えてその場を避けるのと、元いた場所に巨大な岩が落ちるのはほぼ同時だった。

 飛んできたであろう場所に視線を向けるレッド。そこにはロケット団がずらりと崖の上からこちらを見下していた。

 

 

「貴様ら、よくも騙してくれたな。ただでは帰らせんぞ! お前らをこいつと同じ目に合わせやる!」

「メタちゃん!」

 

 

 そう言って囮になっていたメタモンが投げ落とされ駆け寄るブルー。

 

 

「やれ、ルージュラ! サイコウェーブ!」

「きゃあああ!」

「……」

 

 

 サイコウェーブは例えるとちょうおんぱの念力版である。それを直接人間に向けるとどうなるか。ちょうほんぱとは違って耳を塞いでも直接脳に届くため防ぎようがない。場合によっては拷問にも使われ人を狂わし、操ることもできる恐ろしい技だ。

 だがレッドは違う。特殊な電波で打ち消すことで被害を抑えている。ブルーまで守れないのは、まだ調節が難しく鍛錬が足りていないためだ。

 ロケット団のリーダーはレッドが失神でもしたかと思い高らかに勝利の雄たけびを上げる。ミュウを捕まえていたカメールもこのサイコウェーブでミュウを解放してしまったからだ。

 

 

「捕まえろルージュラ! これで俺は晴れて幹部昇進だぁ!」

 

 

 ルージュラが地面を蹴って宙にいるミュウへとその自慢の髪の毛を伸ばし拘束する。

 

 

「捕まえちゃ、った! (じゅら!)」

「……」

 

 ミュウも少なからずダメージが残っているが、レッド同様に別の波長を出してルージュラのサイコウェーブを打ち消している。にも関わらず、ミュウは逃げなかった。

 その目には紅い閃光が見えているから。

 

 

「──スピアー、その髪を斬れ」

「──!!」

「ああん。きれちゃった! (じゅらじゅら⁉)」

「トドメだ。ダブルニードル」

 

 

 そのままルージュラに向けて急降下し、主に忠誠を捧げた二本の槍を構え、ルージュラを貫いた。

 ──スピアーのダブルニードル。きゅうしょにあたった! こうかはばつぐんだ! ルージュラはたおれた。

 どんなポケモンでも急所を見抜き、さらに効果抜群の技を食らって立っていられるポケモンはいなかった。

 

 

「強くてカッコいいのね。きらいじゃない、わ──(じゅら──)」

「──」

「ん? ああ、そうだな。死なない程度にやれ」

 

 

 スピアーは崖の上にいるロケット団をどうするかとレッドに指示を仰ぐと、期待通りの命令が来た。体が動けなくなる程度のどくをロケット団全員に打ち込むと、スピアーは真っ直ぐレッドの手にあるボールへと戻った。

 さてと。あいつは……いた。

 ミュウは空の上でこちらを見ていた。これで二度目だ。

 

 

「また助けてやったぞ。お礼は……いいや。またどっかでな」

「みゅー」

 

 

 初めて聞いた鳴き声は意外と綺麗で驚いた。ミュウが飛んでいなくなってから、レッドはブルーに声をかけた。

 

 

「ブルー大丈夫か?」

「ええ、なんとかね。それにしてもレッドってば、すごい強いのね」

「鍛えてるからな。しかしミュウは行っちゃったし、今回はただ働きだったな」

「あら、そうでもないわよ。じゃーん、ミュウをカメラに収めたわ! これだけでもコレクターに売れるわよぉ!」

「はー。お前のその商人魂には俺も叶わないよ」

「ふふふ。ありがと。それとねレッド」

「ん?」

「これは助けてくれたお礼とお詫び。だから勘違いしちゃダメよ」

「……え」

 

 

 手を後ろに組んで、こちらに歩いてきたブルーは、背伸びをしながら頬に顔を近づけてきた。

 

 

「ふふーん。かっこよかったわよ」

 

 

 頬に柔らかい感触に不思議と甘いにおいが同時にした。あまりにも突然なことで脳の処理が追い付かず、数秒経ってやっと彼女がキスをしたのだと理解できた。

 

 

「それじゃあ、レッド。またどこかであい──」

 

 

 別れを告げようとするブルーの言葉は、第三者の怒りの叫びによってかき消された。

 

 

「あ、アンタたち! な、なにやってんのよぉおおお!!」

 

 

 そこにはブルーと似た顔をしている幼馴染のリーフがそこに立って二人を、特にレッドを睨んでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一年ほど前に諸事情により手放したポケスペを買い戻すことに決めました。
やっぱ面白いや。みんなも買おう!

そしてこれで当分の作業については安心だぜ

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