おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

23 / 83
彼は伝説の超ブイズ使いのアキヤマさんだよ

 

 

 

 

 

 エンジュシティ。そこはレッドからすれば、ある意味では前世でのあの町に近い風景が広がっている。ホウオウの巣とも言われているスズの塔に隣の焼けた塔。そして歌舞練場である。

 レッドもエンジュジムをとっとと終わらせ、この歌舞練場を見に来ていた。舞妓さんの踊りに合わせて踊るイーブイ達。

 それはとても癒しであり、兎に角可愛いのだ。

 

 

「舞妓さんもキレイだぁ……。あ、ナツメに聞かれたらお仕置きされるわ」

「なに。別にいないんだから、もっと素直になればいいさ」

「それもそうか。で、あんた誰?」

「酷いな。さっき、ぼくをぼこぼこにしただろ?」

「あ、マツバか。ごめん、ジムが暗くて全然見えなかった」

「それはすまなかったよ、チャンピオンのレッド」

 

 

 思わずターバンがちゃんと巻けてなかったと思ってつい確認したがちゃんと巻いている。マツバはそんな自分に答えを教えた。

 

 

「これでも千里眼で見えてたんでね。それにきみの手持ちを知らない程、無知なジムリーダーじゃないさ」

「はぇー、すごい便利そう」

「そうでもない。かなり集中力を使うし、まだまだ修行中だ」

「何か千里眼で見たいもんでもあるの?」

「ああ。ホウオウをいつかこの目で見てみたいんだ」

 

 

 レッドはそれとなく相槌を打った。

 

 

「いつか見れるといいね」

「ああ。……お、今度は支配人の舞だ。これは見物だぞ」

「は? 支配人?」

 

 

 すると舞妓さんとイーブイ達が舞台から降りると、別のイーブイ達が現れる。もちろん、エーフィーにブラッキーもいる。

 自分が知らないイベントに驚くレッドの前に、さらに驚愕すべき光景が現れた。

 イーブイの……衣装らしきモノを着た男が舞っていた。それも舞妓さんと同レベルの舞をだ。もしや、あれが支配人なのだろうか。思わずたずねた。

 

 

「だぁれ、あれ?」

「知らないのかい? 彼は伝説の超ブイズ使いのアキヤマさんだよ!」

「あんたも誰だよ!?」

 

 

 マツバではなく隣に座る謎の青年が答えてくれたが、まったくの初対面である。しかし、声だけはどこかで聞いたことがあるような気がした。

 

 

「ボクは通りすがりのバトルお兄さんさ! ほら、見てごらん。アキヤマさんのブイズの舞だ!」

「アキヤマのブイズの舞を見られるなんて、レッド。君は運がいいぞ!」

「……」

 

 

 舞台の中央でイーブイが踊り、次にブースターや他のブイズと交互に踊りながらセンターを交代する中、その後ろで支配人のアキヤマの衣装が一瞬にしてセンターのブイズの衣装になるという摩訶不思議な光景を目の当たりにする。

 思わず周囲を見渡す。誰もがアキヤマの舞に見とれているのだ。奥にいる舞妓さんですら「流石アキヤマさんどすえ」とか聞こえる。

 なんだ、俺がおかしいのか。

 確かにアキヤマの舞は文句がないものだ。だがどうしてか、それを認めてしまったら負けたような気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって歌舞練場の稽古部屋。

 

 

「で、なんで俺歌舞練場の稽古部屋にいるわけ?」

「何を言ってるんだいレッドくん! アキヤマさんから直々に指導してくれるなんて、これ以上の名誉はないよ!」

「いや、何でバトルお兄さんも一緒にいるんですか? 俺名乗ってないよね?」

「え、隣のマツバさんが言ってたからそうかなって……」

「そ、それもそうだよな。うん」

 

 

 何ともペースが掴みにくいバトルお兄さんと二人きりの空間に閉じ込められること5分ほど。入り口の襖を開けてアキヤマとブイズ達が現れた。

 

 

「いやぁ、お待たせしてすまないねぇ」

「あのーどうして俺をここに? ていうか帰っていいですか?」

「君には同じイーブイ使いの波動を感じたからね! ささ、君のイーブイを早く出してくれたまえ! もう待ちきれないよ!」

「は、話が通じない……」

 

 

 観念してボールからイーブイを出す。目の前にいる同族達に会えて喜ぶイーブイにアキヤマは一目見ただけで、自分のイーブイの特殊な出自を見抜いた。

 

 

「この子、訳ありなんだね。とても苦しい思いをしてきた目をしている。だが、君と出会ったことで今はとても楽しいようだ」

「分かるんですか?」

「当たり前だよ。アキヤマさんはポケモン研究において、イーブイの第一人者だよ? 最近発見されたエーフィとブラッキーだってアキヤマさんが最初に進化させたんだからね!」

「ま、マジかよ……」

「ははは。そんな大したことはしていないよ。ただボクは、この子達の声を聴いているだけなんだ」

 

 

 それは本当だろうとレッドはすぐに信じた。彼のイーブイ達を見ればわかる。あの子らは彼に絶対的な信頼を置いている。誰ひとりとして嫌な思いをしていない。アキヤマといることが、彼らの幸せなのだと感じる。

 

 

「でも、その衣装を着る意味は?」

「これを着ることで、よりこの子達の気持ちがわかるのさ!」

「は、はぁ……」

「ところで、レッドくんのイーブイは何に進化させる予定なんだい? おじさん、すごーく気になるぅ!」

 

 

 アキヤマが向ける満面の笑みを初めて気持ち悪いと感じながらも、レッドはイーブイの複雑な事情を話した。

 

 

「ううぅ、なんて主人想いのイーブイなんだ! わかった、このアキヤマがそのお手伝いをしようじゃないか!」

「い、いえ結構です。自力でなんとかするんで……」

「まあまあ。ここはアキヤマさんの力を借りようよレッドくん。折角伸ばしてくれている手を掴まないのはよくないよ」

「というわけで、まずはこのイーブイの衣装を着るんだ! ポケモンとトレーナーの心が一つになった時、きっと道は開ける! さぁさぁさぁ!」

「やめろー! 離せー!」

「往生際が悪いよレッドくん!」

 

 

 ──レッドは逃げ出した! しかし、バトルお兄さんからは逃げられない! 

 そして強引にイーブイの衣装を着せられたまま半日が経過した。

 ──おめでとう! イーブイはエーフィとブラッキーの進化を身につけた! 

 

 

「Congratulation! スゴイよレッドくん! まさか半日でできるなんて!」

「ブラッキーの条件のせいで夜まで待たないといけませんでしたからね」

「ぜぇぜぇ……。もう着ない。絶対にこれ着ない!」

「えーいいと思うけどなぁ。動きやすいし」

 

 

 腰をくねくねさせながら快適に過ごせることをアピールするバトルお兄さんに対して、レッドは二度と着ないことを胸に誓っていた。

 いや、彼の言う通り通気性、伸縮性に優れてとても着心地がいいのは本当なのだ。

 

 

「いやぁボクもレッドくんに触発されて、またイーブイの可能性を見出せそうだよ!」

「と、言いますと?」

 

 

 バトルお兄さんが言った。

 

 

「うん。実はね、僕はまだイーブイにはまだ進化の可能性があると思っているんだ。エーフィとブラッキーは昼夜に進化したけど、けしてレベルは高くない。進化の条件を満たしているとは思っていなかった。でも、最近学会でポケモンとのなつき度によって進化するポケモンがいるなんて話題があってね。実際この二匹がそれに該当したんだけど」

 

 

 

 どうやらイーブイの第一人者というのはあながち嘘ではないらしい。現にレッドはあと三つ進化先があるのは知っている。だが、内二つは特殊な環境下での進化。もう一つは……何かをしてフェアリー技を覚えさせればよかったはず。

 それもカントー、ジョウトでは絶対に満たせない条件。だが、この人ならそれすらやってのけてしまいそうな気がする。

 

 

「兎に角。ボクのイーブイへの愛はまだ止まらないってことだね! 

「流石アキヤマさんだ!」

「ところで……」

 

 

 レッドは話の間に割って入ってバトルお兄さんにたずねた。

 

 

「お兄さんって、普段なにしてんの?」

「ボクはね……立派なフリーターなんだ! あ、サインほしいならあげるよ?」

「あ、いらないです」

 

 

 即答で拒否したらいじけたので、結局サインをもらうレッドであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 朝一番で焼けた塔へ向かうことにしたレッド。

 150年ほど前に火事で焼けたとされているこの塔は、以前はスズの塔と同じで九重の塔であったと言われている。現在でもここが撤去されていないのは、未だに神聖な場所だと重んじられているか、過ちを繰り返さないための戒めであろうか。彼からすればここはライバルとのバトルイベント、そしてライコウ、エンテイ、スイクンとの邂逅イベントの印象が大きい。

 レッドはもう覚えていないが、この焼けた前の名称は「カネの塔」と呼ばれており、ホウオウと対の存在であるルギアがここに飛来していたのではないか、そう語るキャラクターが存在している。

 彼はそうとは知らずに焼けた塔へと侵入する。一応入り口の手前までは観光目的で見ることは可能になっているが、それ以上中に進むことはできない。できるだけ壊さないように細心の注意を払って焼けた塔の地下へと向かう。

 しかし、あるのは焼け崩れた塔の残骸と岩ばかり。

 

 

「……いないな。どう見ても」

 

 

 ならばもうこのジョウト地方を走り回っていることになる。その割には気配を感じたことは今のところ一度もない。伝説のポケモンは普通のポケモンと違ってオーラ、まあ存在感が違うのでわかりやすいのだが。

 仕方がないので一階へ戻る。そこで入った時には感じなかった妙な気配を感じ取った。

 

 

「ん? イシツ……じゃない、ただの岩か」

 

 

 てっきり擬態していたイシツブテ、ゴローン辺りかと思ったのだが変哲もない大きな岩であった。しかし不思議なことに、この岩から何かの意志みたいなものを感じる。試しに叩いてもうんともすんとも言わない。かわらわりでもしようかと思ったけど、やってはいけない気がして思いとどまる。

 

 

「……俺ではどうにかできない。つまり、俺がやる必要はないと言うこと。よし、アサギシティへ向かおうそうしよう」

 

 

 内心、ウバメの森の祠で見た未来に叛逆してやったぜと鼻を高くするレッドであるが、その行動こそが正しいとは本人も知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




突然ですがちょっとネタバレありきの相談です。
イーブイをリーフの石とかこおりの石で進化させるのはありですかね。まあこのイーブイ自由に進化できるっていう原作基準の設定なんですけど。
ニンフィアについてはまあゲームではなくポケモン世界目線で考えると、なつきに切り替わって、フェアリー技を覚えさせるって感じでいいはず。
または一度シンオウにいって進化させたあと、触媒として使用する形にしようと思ってます。
理由としては石を触媒にすることでイーブイの負担を減らすという目的があります。
あともれなくレッドくんがそれっぽいガントレットを装備します。
けして、指パッチンがしたい訳ではないです。 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。