おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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私はホウオウと違って人間に捕まる間抜けではないからな!

 

 

 

 あれから一ヶ月後──

 タンバシティの小さな港にある桟橋で、レッドはシジマを初めとした弟子達と別れの挨拶をしていた。

 

 

「師匠お世話になりました」

「この一ヶ月よくオレの修行に耐えた! 柔道、剣道、合気道に加え槍や棍、棒術もお前に叩き込んだ! まあどれも初段ギリギリの腕前だが並大抵の奴なら問題ないだろう。だが、お前の一番の武器はなんだ⁉」

「無論、この拳!」

「なら見せてみろ!」

「覇ァ!」

 

 

 ──シジマのメガトンパンチ! 

 ──レッドのメガトンパンチ(という名の何か)! 

 拳と拳がぶつかり合う。その衝撃で風が舞い、海にも衝撃が走り水しぶきが舞う。

 最初に出会った時と同じ光景。しかし、あの時と違うのはシジマの顔が引きつっていることだ。

 

 

「見事だレッド。同じメガトンパンチとはいえ、その拳はすでにオレの遥か高み。師として嬉しく思うぞ!」

「押忍! ありがとうございます!」

 

 

 頭を下げ、一ヶ月分の感謝を伝えながら、脳裏に修行の日々が蘇る。指立て伏せ、片腕懸垂、タンバの海岸でカビゴンを背負ってのランニング、目隠して飛んでくるイシツブテやゴローン、ゴローニャを叩き飛ばしたりと辛くも充実していた日々を思い出す。

 しかし漢に涙の別れは似合わない。

 レッドは桟橋の傍で待っていたラプラスの背に乗り、別れを告げた。

 

 

「お前ら! 達者でな!」

『『『押忍! レッドさんもお元気でー!』』』

 

 

 こうして長きに渡るタンバでの修行の日々は終わった。

 

 

 

 

 ラプラスの背に乗って海を渡ること30分ほど。恐らくジョウトでは有名なうずまき島の前までやってきた。ゲームでは一マス程度のうずしおであるが、こちらではそうはいかない。それなりに大きな渦潮で、生身で泳いでいたら命を落とすことになるほど危険だ。船なら平気とも聞くが、ポケモンはどうなのだろうか、と考えるレッドであったが面倒になったのかリザードンを出してそのまま島に渡った。

 

 

「さてと。ルギアはいるんだろうか」

 

 

 ゲームでいう所の四つあるうずまき島の右上に上陸したレッドはそのまま洞窟内へ。一応ルギアを捕まえるルートがこの右上の島だったのは覚えていた。ただこちらでは、地下深くには一つの洞窟として繋がっているのではないかと想像はしてみたものの、確証はないので比較的安全なルートを選んだのだが。

 

 

「どうするか。あなをほるで一気に下までいくか」

 

 

 恐らくそれが一番早いルート。

 しかし二次災害が怖いのでやめる。例えるなら某ゲームで直下掘りしてマグマダイブといったところか。

 流石にそれはまずいと思ったのか、レッドは大人しくルギアがいるフロアを目指した。途中には滝があったが、横にある出っ張った岩を踏み場に軽々と昇っていくので大した障害ではなかった。

 洞窟内を進んでいくうちになんとなく見覚えがあるような感じがしてきた。先ほどの滝もそうだし、もしかしたらルギアが近いのかもしれない。

 少し目を閉じて周囲一帯のポケモンの氣を探る。イメージとしては小さな光が数多く存在する中、一際大きな光がある。これがルギアなのは間違いない。そしてそれはすぐそこだ。

 人ひとりが通れるような道を抜けると、今までとは比べ物にならない暗闇の世界が広がる。さすがにこれ程となると、レッドの目でも見通すことはできない。

 腰からピカチュウのボールを投げて言った。

 

 

「ピカ、フラッシュ!」

「ピ、ピカチュウ!」

 

 

 閃光。

 それは一瞬にして洞窟内を明るく照らしたと同時に、レッドとピカチュウの前に巨大な存在が立ちはだかり、二人を見下ろした。

 突然のことにピカチュウは驚きレッドの後ろへ隠れてしまうが、その主は動じることなくこの島の主でもあるルギアを注視していた。

 

 

 

「ルギア、でいいんだよな?」

 

 

 レッドは警戒することなくたずねた。

 ルギアほどのポケモンだ。自分が来ることはすでに気づいていたはず。それに、ここに入ってきた時点で攻撃をしてきたもおかしくはなかった。それをしないと言うことは、ルギア自身にもこちらに対して何かを求めているのかもしれない。

 そしてその考えは的中した。

 すでに慣れ親しんだエスパー特有の念話が頭に届いた。

 

 

『認められし者よ。なぜここに来た』

「理由は簡単さ。お前と話がしたくて来たんだ」

『話? 私と何の話がしたいのだ?』

「単刀直入に聞くんだけど、ホウオウについてなんだ。多分5年ぐらい前かな。それぐらいの時期にあいつ変じゃなかった?」

『私が外に出るのは数えるほどだが、あいつは私と違って常にこの大空を駆けている。だからこそ、このジョウトにいるときは存在を感じることができる』

「つまり?」

『君の言うように、その時期は確かにおかしかった。何処かへ旅立ったかと思えば、こちらに戻ってきたり。それが何度かあったのを覚えている。だが、ある日のことだ。巨大な力をあの塔で感じた。そして再びあいつは何処かへ消えた』

「あの塔って……エンジュにあるスズの塔か? だけど、巨大な力ってなんだ?」

『恐らく、あいつに仕える者達の力だろう』

「エンテイ、ライコウ、スイクンか」

 

 

 そうだとルギアはうなずいた。しかしレッドはそこである事に気づいた。

 もしそれが本当なら、その三匹はどこへ行ったのだ? ジョウトにはおそらくいない。ならば、ホウオウを追ってどこかの地方にいるなら納得ができなくもない。だがいまいち分からない。仮にホウオウがその当時捕まえられていて、それを解放しようとして三犬が何かをした。それで解放されたホウオウが何処かへ行き、三犬も消えた。スズの塔はホウオウの巣のようなものだ、とどこかで聞いたことがある。仮にそうだとするなら、帰るべき場所で三犬は待っていてもおかしくない。それこそ、ゲームのように焼けた塔とか。

 

 

「ん? 焼けた塔?」

 

 

 そう言えば、焼けた塔の一階に変な岩があったような気がする。結局自分ではどうすることもできないので、そのまま放置してきたのだが。だけど、ポケモンが岩になるわけがない。伝説のポケモンが突然イシツブテになるなんてどうかしている。新種のイシツブテの方が納得できるものだ。

 

 

『どうした?』

「いや、こっちの話。けどルギアのおかげで今の状況は掴めたよ。多分だけど、今のホウオウは普段通りだってこと」

『そうか。それなら私も安心できる。我々の力は強大だ。だからこそ、こうして誰も寄り付かないところにいるのだから』

「同族として謝罪するよ。ところで、最初に俺のこと認められし者って言ったけど、どういう意味なんだ?」

『君の中にあるサンダーの証がそうだからだ』

 

 

 言われて胸の辺りに力を集中させる。すると胸から「雷の玉」が現れ、これかとたずねる。

 

 

『そう。それはサンダーの力の一片。それだけでも強大なエネルギーとなり、ポケモンはおろか人の身が持つにはあまりにも危険な代物だ。だが、それを君に託したということは、サンダーは君を認めたということだ。いや、認めたというよりは信頼の証なのだろうな』

「あいつは一緒に旅をして、共に戦った家族だからな。俺もあいつを信頼してる」

『ふっ。共に戦うとは面白い。だが、以前はそうだった。人とポケモンも共に戦う時代もあった。本当に大昔の話だが』

「そうか、うんそうだよな。そういう時代もあるもんな。兎に角、俺にはレッドって名前があるんだ。レッドって呼んでくれ」

『わかった、レッド』

 

 

 何となく自分の名前を言ってくれて照れるレッドは頬を掻いた。

 けど、これからどうするかと頭の中で考えだす。肝心のルギアとの対話とホウオウについての情報は手に入った。あとは残りのジム戦をしてカントーに帰るだけになる。

 

 

『ところでレッド。私からも君に伝えたいことがある』

「ん? なんだ?」

 

 

 念話であるが言葉には不安を感じられる。それにルギアが真剣な顔つきをしている。そうレッドは感じ取った。

 

 

『ジョウトいや、この世界全体に大きな不安を感じるのだ』

「不安?」

『以前にもあったのだ。それは大きな災害、人間同士の争い、それに近いもの感じる。先のホウオウの話、もしかしたらまだ終わってないのかもしれない。それにこのジョウトやカントーにも近い内に何かが起ころうとしているような気がしてならないのだ』

「待って、それフラグじゃ……」

『フラグ……?』

「い、いやこっちの話だ。しかしカントーって言われても、俺がロケット団を一応壊滅させたんだが。まだ何かあるとは思えないんだが……」

『杞憂ならいいのだ。だが、それ以上に私自身にもその危険が迫っている気がしてならない。ホウオウの事もある、杞憂にしておくにはまだ早いと思っている』

「ルギア。俺が言う権利なんてないが、人間は欲望の塊みたいなものだ。そしてルギアをはじめとした伝説のポケモン達の力は、人間にとっては魅力的すぎるんだ。自分の野望を叶えるための道具として。最初は俺もサンダーを捕まえたよ。その力を借りて戦ったりもした。だから気づいたんだ。人が持つには危険だと。サンダーは一緒にいたいと言ってくれた。けど、俺はそれを拒んだ。お前達は自由であるべきだって言って」

 

 

 その最たる例がおそらくルビー・サファイア、ダイヤモンド・パールの物語であろう。グラードンとカイオーガ、ディアルガとパルキア。どれも伝説のポケモン中では一線を画す。だがそれ以上に、この世界を創造したアルセウス。きっとそれを狙う存在もいるだろう。

 それはきっとこの先に現れるであろうマグマ団やアクア団のようなそれぞれの悪の組織。ジョウトにはゴールドがいた。ならば、ホウエンにもいずれルビーやサファイアがその時代の主人公達が現れるだろう。きっと彼らがその問題を解決するだろうが、俺は俺なりに勝手にやる。

 この前のウバメの森にある祠で見せられた未来。そんなこと知るか。そんな都合よく俺が動くと思っているなら大間違いだ。俺は、勝手にやらせてもらう。

 

 

「ルギア。俺はポケモンが好きだし人間も好きだ。そしてこの世界が好きだ。だからこそ、その調和を乱そうとしている奴がいるなら、例えそれが人間やポケモンだろうと戦うぜ」

『レッド。君は……変わった人間だな。こうして、当たり前のように話している時点でそうだが』

「よく言われますねぇ! いや、胸張って言うことじゃないか」

『君は人とポケモンを繋ぐ存在か、はたまた別の存在か。だが、レッドならどうにかしてしまいそうな気さえする。……レッド、これを君に授けよう』

 

 

 するとルギアの翼から一枚の羽根を渡された。ぎんいろのはねだ。

 

 

『いつかそれが君を導いてくれるだろう』

「嬉しいけど、やっぱこれってフラグだって……」

『?』

「ところでさ、ルギアはここを出るのは数えるほどだって言ったけど、ぶっちゃけどこへ行くんだ?」

『かつてはホウオウと同じ地に私も降りていたのだが、落雷によってそこは焼け落ちてしまったのだ』

「え、それって焼けた塔じゃん」

 

 

 レッドはもう覚えていないが、スズの塔と対になるカネの塔が今の焼けた塔だということを。そこはホウオウと同じようにルギアが降り立っていた場所でもあった。

 

 

『まあ、なんで建て直してくれなかったのかと当時思ったりはしたが、いまは特に気にしていない』

「そ、それは辛いっすね。じゃあ今はどこへ行くんだ? やっぱ海の中を泳ぐのか?」

『私だって空を飛ぶぞ。実はこれは私だけが知っているのだが、カントーにある島にちょうどいい所があってな。たまにそこへ行ってエネルギーを貰っているのだ』

「はぇー。そのエネルギーが食事の代わりみたいなものか」

『うむ。そうなるな』

「でも、カントーにルギアがいるなんて噂とか伝承も聞いたことないけど」

『目立たぬよう夜中に活動しているからな』

「なるほど。それなら分からねぇな。ははは!」

『私はホウオウと違って人間に捕まる間抜けではないからな!』

 

 

 洞窟内に二人の笑い声が響き渡るが、まさか数年後。あんな事になるとは、ルギアの目を持ってしても見抜けなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




いま第三章書いてるけど、多分半分は消化したはずなのにいつ書き終えるか自分でもわかないっていう
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