おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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え、ニョロゾ? いいやつだったよ……



そうだ。俺がわざマシンになればいいんだ

 

 拝啓。

 天国にいるかもしれないお母様。あなたの息子がマサラタウンを旅立って早五日。私はいまトキワの森で野宿をしています。

 ここはとても自然が豊かで虫ポケモンたちであふれかえっていて、なんていうか……とても開放的なのです。それと同時に四六時中ポケモンなのか人間なのかわからない謎の視線を感じているので、夜もおちおち寝ていられないことを除けばここはいいキャンプ場なんじゃないでしょうか。

 

 あ、ポケモンもちゃんと捕まえましたよ。なんとスピアーですよ、スピアー! 

 え? そんなのトキワの森で出てくるわけないだろ! いい加減にしろ!? ちょっと待ってください。ここはゲームじゃないんですから、ビードルやコクーンがいるってことはスピアーもいるってことでいいんだよ。

 どうやって捕まえたかって? イシツブテを投げました! 

 

 

 さて。最初に捕まえたのがスピアーというのが中々マニアックかもしれないが、スピアーはかっこいいから許されると思う。うろ覚えだけど、メガシンカしたらかっこよかった気がする。

 ただ、このスピアーは少し面白いやつで。多分群れのリーダーだったららしく、そこら辺のポケモンよりちょっと強い。なにせ、捕まえようとした際に容赦なく頭と心臓目がけてくるんだからそりゃあ強いわけだ。

 そのことでスピアーに尋ねてみた。

 

 

「お前ってさ、人間の弱点っていうかそういうのがわかるのか?」

「……」

 

 

 コクリと頷くスピアー氏。やだ、この子怖い。でも、嫌いじゃないわ。

 

 

「成程なぁ。やっぱ野生だけあって縄張り意識が強いのかね。それはお前もか、ピカチュウ」

「ピッカ! ピカピカ、ピッカチュウ!」

 

 

 小さな手でジャブをしながら相手を叩きのめし、最後には自慢の電気技でトドメを刺す! というようなジェスチャーをしてくるピカチュウ。

 こいつもスピアーの次に捕まえたポケモン。いや、単純にカスミ戦のために捕まえただけなんだけどね。それでもいざ探そうと思ったら意外といなくて、たまたま歩いていたらそっちから不意打ちで攻撃してきたのが最初の出会い。冷静に考えるとひでーや。

 

 

「お前も野生の割には強いよな。ま、俺のパンチ一発で倒れるようじゃまだまだだね」

「ピカピカ」

「……」

 

 

 お前は何を言っているんだ、そういわんばかりな目で俺を見つめる。いや、スピアーはまったくわからないんだけど。

 

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 

 あ、そうだ。ゲーム序盤のイベントであるセキエイ高原でのライバルとの戦いは普通にスルーした。だってもう完全に出遅れてるし、あのグリーンがタイミングよく現れるわけないだろうしね。

 リーフ? 知らね。

 そもそも、あいつの手持ちってどうなるんだろうか。ゲーム基準で言ってもグリーンと被るわけないし、いざバトルってなったら絶対に不利だ。

 

 

 バトルと言えば、トキワの森にいるトレーナーは全員倒した。スピアーとピカチュウを捕まえたのでレベリングを開始したからだ。ただ相性が悪いので時間はかかった。

 しかし、ここはゲームではない。何度もバトルができる。そう、できたんだけど……。

 終いにはあまりにも俺が何度もバトルを挑む=おこづかいゲットを繰り返していたので、たぶん今のトキワの森にはトレーナーは一人もいません。

 それに気づくまでの間、必死に森中を探し回って誰もいないことを知った俺は、叫んだ。

 

 

「誰か俺と、俺とバトルしろぉおおおおおおおお!」

 

 

 そんなこんだんで、トキワの森で早三日。そろそろニビシティを目指そうかなと思っているのだが、どうしても大きな問題がある。

 

 

「タケシ戦、どうすっかな……。いや、マンキーとかニドラン見つければいいんだけど、めんどくさくてなぁ」

 

 

 手持ちはどう見てもいわタイプに不利。くそぉ、ゼニガメなら楽勝なのに。

 悩むこと数分。俺はあることを思い出した。

 ピカチュウはたしか、アイアンテールを覚えたはずだ。あれは、はがねタイプの技だったはずだからいわにはこうかばつぐんのはず。

 でもあれはレベル技じゃないし、技マシンもない。ていうか今のカントーにあるのか? 

 俺はピカチュウをじっと見つめる。

 人間は教えてもらえばそれを学習し、自分で実践することができる。ならば、ポケモンにだって実際に見せてやればできるのではないか。

 そうだ。俺が技マシンになればいいんだ。

 

 

「よし、ピカ。俺がアイアンテールをするから覚えろ」

「お前バカじゃねぇの!? (ピカピカ⁉)」

「いいか。俺の右足をお前の尻尾とする。でだ。こう助走をつけて」

 

 

 俺は目の前の木を目がけて走り、少し手前で大地を蹴って前方宙返りをして叫んだ。

 

 

「アイアンテール!」

 

 

 レッドのアイアンテール? 木は真っ二つだ! 

 ドスンと斬られた側の木が地面に倒れ大きな音を奏でた。

 

 

「ざっとこんな感じだ」

「ピカ! (できるわけないよ!)」

「そうかそうか。お前もやる気満々か」

「ピカチュゥ!! (ちげぇよ!)」

「あ、スピアーは感謝のミサイルばり千回な。1ターンキルできるようにならきゃこの先生き残れないからな!」

「……」

 

 

 スピアーとピカチュウは思った。とんでもない人間に手を出してしまったと。だが捕まえられてしまった以上仕方がない。二匹はトレーナーの命令に従い特訓を始めるのであった。

 

 

 

 数時間後。

 ピカチュウはアイアンテールをおぼえた! 

 

 

 

 

 

 

 五日目のお昼ごろ。

 俺はトキワの森を抜けてニビシティにたどり着いた。早速ジム戦といきたいところだったが、何故かポケモンセンターが爆発四散していた。

 

 

「は? なにあれですか。縛りプレイですか?」

 

 

 かつてあったポケモンセンターの前で愚痴を吐いているのは自分でだけではない。ここはトレーナーだけではなく多くの人が利用する場所だ。それがなくなればどうなるか。例えるなら街に一軒しかない病院が突然閉鎖してしまえば、当然市民はパニックになるというものだろう。

 そんな俺を嘲笑うかのように背後から数日ぶりに知った人間の声が耳に入った。

 

 

「はーいレッド。久しぶりね」

「げぇリーフ! それと……グリーンか」

「ふっ。どうやら自己紹介は不要なようだな」

「レッドも災難だねー。ジム戦の前にポケモンセンターがこうなっちゃうなんて! まぁ、わたしと兄貴はその前にもうバッジを手に入れたんだけど!」

「う、うぜぇ……」

「そもそもレッド。お前、ポケモンはどうした? リーフから聞いた話では、お前はおじいちゃんからポケモンを貰ってないと聞いているが」

「あぁん? ゲットしたぜ。しかも二匹」

「うそぉ! どうやって!? まさか、人のを盗んだんじゃないでしょうね!」

「どうって、イシツブテと拳で」

「……」

「笑えない冗談はよせ」

 

 

 リーフはぽかーんとしているし、グリーンに至ってはこれぽっちも信じている素振りではない。ていうか今気づいたけど、このグリーン「チャオ!」とか「バイビー」と言うような男には見えんな。

 

 

「そもそもさ。俺のこと心配しているのか、それともこの現状見て嘲笑っているのかどっちのだよ」

「え、両方!」

「ねぇ。あなたの妹性格悪いって言われたことない?」

「俺ほどじゃあない」

「うわぁ。じゃあ、キズぐすりとか分けてあげるとか……なさるおつもりはないと?」

 

 

 二人はグッとサムズアップして答える。やっぱ兄妹だわ、こいつら。

 するとグリーンがバッジをちらちらと見せつけながら挑発してきた。

 

 

「まさかレッド。ポケモンセンターが使えないだけでジム戦を諦めるのか? 別にいいんだぜ。ここで留まる間俺達はどんどん先に行ってバッジを集めてポケモンリーグに出るからな」

「えーまだバッジを一個も持ってないのー? それが許されるのはトキワシティまでだよねー!」

「……で」

「で?」

「ん、どうした」

「できらぁ!」

 

 

 二人を背にして俺は走り出した。糞っ、なんで子供二人に言葉責めにあわなきゃいけないのか。ふざけんな、大人をからかうんじゃない。

 別に悔しくない、悔しくなんてないんだからな! 

 

 

 

 

 その後。タケシに事情を話したらジムにあるマシンでポケモンを回復してくれた。

 うほっ、いい男! 

 でも、タケシのやつ上半身裸の割には意外と筋肉ついてなかった。まったくがっかりだぜ! 

 あと、タケシのイワークはピカのアイアンテールで口では言えない状態になってしまった。なんていうか、イワークなんだけどイワークじゃないみたいな。

 

 

 そしてジム戦のあと二人に報告しようとしたらすでにいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




作中ではやってないけど、レベリングはレッドと戦った方が簡単にあがります。
あとその内一人称やら三人称になったりします。

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