おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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そういえば今日は8月10日ですね。
深い意味はないよ?


わたしはレッドの彼女よ!

 

 

 

 イエロー達がリーフと合流した直後。

 現在カントーにあるジムリーダーがいる都市にのみ四天王から襲撃を受けている中、攻撃を免れているマサラタウンにてオーキドはパソコンから各都市に呼びかけるが、誰もそれに応答することはなかった。

 

 

「すでに四天王の総攻撃が始まっておるのか……!」

「おじい様大変です! 外に来てください!」

 

 

 ナナミに言われ慌てて研究所の外へ出る。そこには各都市から煙があがっているのが見える。しかしナナミが言うにはそれではなく、西の空を指をさした。

 

 

「あれです!」

「な、なんじゃアレは? 隕石いや、それにしては角度が違うが……」

 

 

 空を見上げれば、そこには4つの流星が飛んでいる。

 

 

「綺麗。でも、あの方角は」

「ああ。間違ってなければ間違いなく、あれはスオウ島に向かっている」

 

 

 幸運を呼ぶのか、それとも不吉の前兆なのか。ただスオウ島に向かったイエロー達を信じるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マチス、キョウ、カツラそれに……ナツメ! あんた今更──」

 

 

 彼らを見て一番に声をあげたのはブルーだった。イエローから見ても、今の彼女は少し正気じゃないと気づく。それも一人の女性、ナツメと呼んだ女性にだ。素直にきれいな人だと、同じ女性として思った。長い黒髪はとても煌びやかで、まさに大人の女性のオーラというやつを放っている。

 

 

「ブルーか。まあ落ち着け。この時のために私は待っていたのだからな」

「待っていたって。それにマチスとキョウよ! こいつらロケット団じゃない⁉」

「え⁉」

 

 

 ロケット団。それはイエローでも知っていた。二年前のシルフカンパニーの事件はまだ記憶に新しいし、故郷であるトキワの森をおかしくしたのも彼らだという。

 それを聞いて思わず身構えた。

 

 

「落ち着けブルー。お前の言う通りロケット団とは色々とあるが、今は協力関係にある」

「グリーン。それってどういうことよ?」

「なに。俺達も四天王が気にくわねぇってだけだ」

「左様。元々カントーは我らロケット団が支配するはずの場所。余計な真似はさせん!」

「先に言っておくが、私はもうロケット団を抜けた。こいつらがどうしてもと言うんで連れてきただけだ。まあ戦力としては十分だからな」

「よく言うぜ」

「ふん。女になり丸くなったようだな」

「それ以上言えば、お前らから潰してやるぞ?」

 

 

 見せしめなのか、近くにいたイシツブテ……によく似た岩が粉々になる。

 

 

「おー怖い怖い」

 

 

 ナツメという人が元ロケット団なのはにわかにまだ信じられないでいるイエロー。だがそれを裏付けるようにピカチュウがナツメの胸に飛び込んだ。

 

 

「ぴ、ピカ⁉」

「ピカ……そう。辛かったわね」

「!」

 

 

 ピカチュウに語りかけるその顔は、先程とはまったく違う顔だった。本当に優しい人なのだこの人は。それにあのピカがあんなにも心を許しているのが遠目からでもわかる。

 

 

「でも大丈夫よ。もう少しでまた元通りになるわ」

「え、それって……」

「ほら。今はあなたのおやはあの子なのでしょう? 助けてあげなさい」

「ピカ!」

 

 

 ナツメに言われてイエローの下へ戻るピカチュウ。思わずナツメを見ると、ピカチュウに向けた優しい笑みを浮かべていた。けどそれも一瞬で、すぐに先程のキリっとした真面目な顔に戻った。

 

 

「さあお喋りはここまでにしましょう。フーディン!」

 

 

 フーディンの手に念力で作り出されたスプーンが人数分作られ、それが各々の手にわたる。

 

 

「これは運命のスプーン。そのスプーンに強く思い、念を込めなさい。そうすればフーディン がその念を受け、運命のスプーンで相手を決めるわ」

 

 祈る。レッドさんを助けるために、四天王との戦いからもう逃げるわけにはいかない。

 そして運命のスプーンが曲がった。

 一組目。イエローとカツラ。

 二組目。グリーンとキョウ。

 三組目。リーフとマチス。

 四組目。ブルーとナツメ。

 そしてただ一人マサキのスプーンだけが曲がっていなかった。

 

 

「な、なんでわいだけ曲がらんのや!」

「戦う意志のない者や組むべき相手がいないときは曲がらない。つまりはそういうことだ」

「がはは! まあいい。お前は俺とこい! いくぞ、リーフ」

「ちょっと命令しないでよマチス」

 

 

 マサキを担ぎ上げると、マチスは勝手に4つの道の一つに向けて歩き出しリーフもそのあとを追う。続いてキョウとグリーンも無言で歩き出し、ブルーとナツメは互いに納得がいかない顔をしながら移動をはじめる。

 

 

「我らも行こうかイエローくん」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 マチスを先頭にリーフとマサキが洞窟を進んでいく。行きはそこそこいい感じだったのが、突然マチスが不機嫌になって嫌な空気になったのでリーフが彼にたずねた。

 

 

「ねぇマチス。なんでそんなに機嫌が悪いのよ?」

「うるせぇ! オレのジムがあるクチバであんなことをされて怒らないわけないだろうが!」

「ロケット団の癖によく言うわねー」

「ふん。何とでもいえ。だがな、本当はクチバで四天王を誘い出す計画があのイエローっていうガキに潰されちまったんだよ!」

「イエローごときに潰されるなら、四天王にだって潰されるって」

「まぁまぁ。リーフもそう煽らんといて……」

「ちっ。ん? おい、あれを見ろ」

 

 

 マチスが歩みを止めて言った。

 狭い洞窟から出ると今までと違って広い空洞に出る。しかし下には薄汚い水が行く手を阻む。あるのは岩の橋でできたそれを渡らなければならないようだ。

 足場が悪いため一歩踏み外せば下へ落下してしまう。それでもマチスはどんどん先へと進む。

 なんだろう。この感覚。

 マチスの後ろを歩いていたリーフは何かを感じ取った。

 はじめての感覚ではないのは分かる。稀に感じることがあったこの強い人と出会うたびに頭の中のセンサーというべきものが訴えてくる。考えるより先に手がマチスの腕を掴んでいた。

 

 

「どうした?」

「待って。誰かいる」

「なんやて!?」

 

 

 目の前に白い霧が漂うと、その奥から下だけ道着を履き、上には筋肉という服を纏っている男がその手の両端にモンスターボールが付いたヌンチャクを持って現れた。

 

 

「ほう。オレの気配に気づいたか。若いのにデキるな。だがまだ正確にコントロールできていないようだ」

「お前は……四天王だな」

 

 

 マチスが睨み、モンスターボールを構えながら言う。

 

 

「如何にも。オレは四天王のシバだ」

「ちょうどいいぜ。お前らを倒したくてうずうずしてたんだ。まずはこのオレ様が──」

「待って」

「リーフ?」

「なんだよ邪魔すんな」

「わたしがやる」

「いや、ここはお前よりオレのポケモンの方が」

「ダメ」

 

 

 マチスの言うこともわからなくはない。自分のポケモンは半分が大型のポケモンで、この繋がった岩の橋では不利。対してマチスはレアコイルといった浮遊しているポケモンを有している。シバのポケモンが分からない以上、マチスで様子を見るのが作戦としては正しいと言えば正しい。

 だが、そうはいかない。そのために今日まで修業してきたのだ。

 マチスの前に出て、纏っていたポンチョを投げる。

 

 

「り、リーフ。その服は……」

 

 

 それは今までの可愛い女の子らしい服装ではなかった。

 白のレギンスパンツに黒のアンダーギアの上にジャケットを羽織り、さらに足首まで垂れている腰マント。手には赤のグローブを身に着けたリーフの姿が現れた。それを見たシバの口角が上がる。自分とは別の形であるが、それを戦装束だと気づいたのだろう。

 

 

「改めて名乗るわ。わたしはリーフ……マサラタウンのリーフ!」

「お前もマサラタウンの……。いいだろうリーフ。そして戦う前に教えよう。ここの下にある水は脱出困難な水性粘液。さらにこの岩の橋はただの岩ではない」

「……そうか! どこかで見覚えがあると思ったら、これはイワークなんやな! だがそれではお前が有利やないか!」

「勘違いするな。このシバ、そのような姑息な手は使わん。このイワークはここに住む野生のポケモン。互いに条件は同じ。この極限の状態でこそ、真の実力が問われる。オレが求めるのは、心を熱くさせてくれる戦い!」

「いいじゃない。なら初めにバナちゃん!」

「バナァ!」

「──!」

 

 

 自分の後ろにフシギバナを出すと、この洞窟全体につるを延ばしてネットをつくった。これで戦いの反動でマチスとマサキが落ちることはない。

 

 

「卑怯、とは言わないわよね?」

「ハハハ! それも一つの戦術よな。ならばこちらも!」

 

 

 ヌンチャクを操ってボールから出したのはサワムラーとエビワラー。どうやら相手はかくとうタイプ専門らしい。だが突然、後ろにいるマサキが叫んだ。

 

 

「そ、そのサワムラー! さてはお前がわいの家を襲撃したんやな!」

「……オレのサワムラーが、お前の家を?」

「しらばっくれるな!」

「マサキ、今は黙ってて。そのことは後よ。さぁシバ。やりましょうか……」

「いいだろう! エビワラー!」

 

 

 二体の内エビワラーが迫る。まるでボクシングのように構えながら距離を詰め、右手にほのおのパンチ、左手にかみなりパンチを宿らせる。僅かな動作だが、よく見れば分かる。

 ──エビワラーのほのおのパンチ、かみなりパンチ! 

 どっち……? 

 エビワラーの距離はもう目前。だがリーフはまだ動かない。

 

 

「リーフ!」

 

 

 マサキが叫ぶ。だが動かない。

 何もしてこないリーフにエビワラーは警戒しつつも、その左のかみなりパンチを出した。

 

「──!」

 

 

 紙一重。

 重心を右に少しずらし、最小限の動きでかみなりパンチを躱ししてその右手を振った。その振りはまさに神速であった。

 ──リーフのはたく! 

 パンッ! その音だけが鳴ると同時にエビワラーはマチス達から見て洞窟の左側へ吹き飛ばされ、壁に激突した。

 速すぎて見ることすらできなかったマチスとマサキであるが、シバだけはその一瞬を確かに捉えていた。

 

 

「見事。その若さでそこまでの領域に至るとは」

 

 

 激励を送りながらエビワラーをボールに戻し、その体を震わせながら彼は高らかに笑う。

 

 

「ハハハ! まさかレッドのような男いや、強者(つわもの)が他にいたとは。嬉しい、嬉しいぞリーフ!」

「レッドを知ってやがるのか⁉」

「よく言うで! 四天王が寄ってたかってレッドを!」

「二人とも黙って!」 

『は、はい……』

 

 

 戦いはまだ続いている。それを邪魔するのは例え仲間であろうと許されることではない。なによりリーフはいま、自分の力を確かに実感している。故につい口角が上がってしまう。自分もレッドのように戦えるのだと。それがリーフには嬉しくてたまらなかった。

 けど、二人の言うようにレッドの件もある。シバは武闘家であり礼儀も弁えている。そんな男がこんな非道な事をするのか。

 

 

「レッドは以前言っていたわ。修業仲間ができたんだって。それはあなたね? シバ」

 

 

 シバは無言でうなづいて答えた。

 

 

「それがどうして。あなたは卑怯なことをする男ではないはずよ!」

「そうだリーフ。オレもあの日、いつものようにレッドと──うっ、また頭が──」

「シバ……?」

 

 

 ぐったりと両腕が垂れると、ゆっくりと顔をあげる。そこにシバの意識はなかったとリーフはすぐに感じ取る。そしてカイリキーを出して、サワムラーと共にこちらへ襲い掛かってきた。

 

 

「マチス、マサキをお願い! 姐さん!」

「ラッキー!」

 

 

 ──ラッキーのかたくなる! 

 ──カイリキーのからてチョップ! 

 カイリキーの腕は4つ。そして四天王のポケモンとなれば、その4本の腕を駆使して同等の威力を持ったからてチョップを放つ。

 だがリーフのラッキーもまた普通ではない。あのレッドのリザードンすら何度もふみつけを行いやっと倒れた悪魔。その程度の攻撃ではラッキー倒すことは不可能に近い。

 むしろ──

 

 

「り、リキィ⁉」

 

 

 以前よりも強度は上がっている。

 カイリキーの技を防ぎさらには骨にヒビを入れてやった。

 しかしまだサワムラーがいる。本来は足を主軸に戦うポケモンだが、シバのサワムラーは腕も脚同様に伸ばすことができる。リーフを捉えようと両腕を延ばそうするが、彼女は右腕を横に振った。

 ──リーフのエアスラッシュ! サワムラーは倒れた! 

 風の刃によって奥へとサワムラーは吹き飛ばされた。

 

 

「レッドの言葉を借りるなら、これもはたくの応用ってやつね。まあ聞こえてないだろうけど」

「リーフのレッド化が止まらなくてヤバい……」

「オレ達いらねぇんじゃ……」

「うぉおおお⁉」

「リーフ気を付けろ! シバの野郎が突っ込んできたぞ!」

 

 

 手持ちのポケモンを全部出し切ったのかは分からない。だがシバはとにかく吶喊しながらこちらへ向かってきた。

 

 

「四天王の癖に操られてるんじゃないわ、よ!」

「ハァーーーー!」

 

 

 ──シバのメガトンパンチ! 

 ──リーフのはたきおとす! 

 シバの突き出した右手のメガトンパンチを文字通りはたきおし、再度攻撃の体制に入った。

 ──リーフのおうふくビンタ! シバに大ダメージ! 

 シバの頬に何度もビンタをし続けるリーフを見て震えるマチスとマサキ。

 

 

「お、おい。マサラ出身のヤツはみんなああなのか?」

「わ、わいに聞かんといてな……」

「か弱い女かと思ったら、メスゴ──」

「なんか言った⁉」

「言ってないデース!」

「マチスがキャラ崩壊しとる……」

 

 

 マチスが原因なのか、リーフは未だにシバを叩く右手を止めることはなかった。手を止めたのはシバが正気(リーフ基準)を取り戻した時だった。

 

 

「お、オレは一体……」

「あなたは意識を失っていたの。誰かに操られてまるで人形みたいにね」

「そうだ。あの時も、レッドの戦っている最中に急に激痛がはしって……。それから何度も同じことがあった」

「シバ。どうしてあなたのような人が四天王に協力を?」

「……最初はワタル達の思想に同意していた。だが、その過激なやり方にオレは反対だった。だからなのだろうな。恐らくキクコがオレを操っていたのだろう。目的を知るオレを見逃すはずがないからな。いや違うな。オレは強者と戦いたかっただけなんだ」

「シバ……。じゃあレッドの行方をあなたは知らないのね」

「ああ。そして俺にもう戦う気はない。リーフ、お前の勝ちだ」

「でもあなたは操られていて」

 

 

 しかしすでに決意が固いのかシバを顔を横に振って拒んだ。

 

 

「それでもオレの負けだ。リーフ、お前と戦えて誇りに思う。だがお前はレッドとどういう関係なのだ?  同じマサラタウン出身と聞いてもしやと思ったのだが」

 

 

 シバからの問いにリーフは堂々と答えた。

 

 

「──わたしはレッドの彼女よ!」

「堂々とウソをつくんやない!」

「こうやって外堀を埋めていけばいいってブルーも言ってた!」

「あ、あいつ……」

「ハハハ! まあいい。リーフ、お前に一つ頼みがある」

「頼み? 別にいいけど」

「もしレッドに会ったら伝えてくれ。今度こそ誰にも邪魔されない所で拳を交えようと。では、さらばだ。マサラタウンのリーフよ」

「シバ!」

 

 

 背を向け別れを告げるシバは白い霧と共に消えてしまう。マチスとマサキはリーフに駆け寄り言った。

 

 

「で、これからどうするんや?」

「皆と合流するに決まってるでしょ。マチスも文句ないよね?」

「悪いがオレはオレで動くぜ。四天王の一人は倒した。ある意味ノルマは達成したからな」

「全部わたしがやったんだけどぉ」

「ふん。ま、生きてたらまた会おうぜ」

 

 

 数体のレアコイルで作り出した電磁バリアに乗ってマチスはどこへ行く。残された二人は先を目指すために前に進む。

 

 

「しかしたまげたで。まさかリーフもレッドみたいなことになるとは」

「だってレッドのヤツ面倒だって言ってこれしか教えてくれないんだもん」

 

 

 シュッとはたくをやって見せるが、やはりマサキには見えないのか目を丸くしていた。

 

 

「とにかくわたし達と同様に他の皆も四天王と戦ってるはずよ。急いで合流を──!」

「どうしたんやリーフ?」

 

 

 思わず上を見上げた。そこは洞窟の天井しかない。だが確かに感じる。シバの時よりも正確に強い力を感じるのだ。

 

 

「何かが……来る」

 

 

 直後、島全体を大きな揺れが襲った。

 

 

 

 

 

 

 




リーフの戦闘服のイメージはリリカルなのはヴィヴィオのバリアジャケットですかね多分。
赤いグローブが乙女ポイントです。
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