おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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ちなみに言い忘れていましたが。
グリーン・キョウ対キクコ戦は展開に違いがないので全カットです。



私も……トキワのトレーナーだ

 

 リーフ達がシバと戦いを始めたころ、イエローとカツラもまた別の場所で戦闘を開始していた。場所は洞窟内ではなく、洞窟の外。それも火山の火口付近。

 何故そうなったか。それはカツラが出したポケモンミュウツーと戦うために、ワタル自らがこの戦場へと導いたからだ。

 

 

「ははっ! プテラちょうおんぱ!」

「バリアだミュウツー!」

 

 

 ──プテラのちょうんぱ! 

 ──ミュウツーのバリア! 

 カツラが左手を掲げれば、ミュウツーもまた左手でバリアを張る。ちょうおんぱとは相手を混乱させる技。だがこの世界ではその音自体が武器となる。音波の攻撃を防いだ衝撃が当たり一面に広がる。

 

 

「ミュウツー!」

『──!』

 

 

 ミュウツー細胞を通じて彼の指示に従いミュウツーはカツラとイエローをそのまま浮かせ、空中にいるプテラへとバリアを張りながら突進をしかける。そのままバリアの攻撃を食らったプテラから投げ出されたワタルはプテラを戻し、二体のハクリューを出した。

 

 

「む⁉」

「風を呼べ! 雷雲を呼べ!」

 

 

 すると二体の周囲に風が吹き荒れ、雷が発生する。今度はこうそくいどうをすると、風と雷を纏いながらカツラたちに襲い掛かる。

 

 

「まるで風神と雷神だ!」

「言い得て妙だなイエローくん。ハクリューには天気を操る力があるというが、あいつはそれぞれにその能力を持たせているんだ。さすが四天王と言うべきだ。だが!」

 

 

 カツラの言葉にミュウツーはうなずくと、イエローを肩に乗せて左手で支えながら、その分のリソースをカツラを浮かせるための念力にまわす。そしてバリアを解き放ち技を放つ。

 

 

 ──ミュウツーのサイコウェーブ! 

 

 

「ほう! サイコウェーブで竜巻を作り出したか。なるほど、では気象対決と行こうか!」

「うぉおお!」

『!』

 

 

 ハクリューの力は確かに強い。だが力比べならミュウツーに分があると踏んだカツラは集中し、ミュウツーに指示を送る。

 力を増したサイコウェーブの竜巻は二体のハクリューを飲み込んだ。この中はまさに蟻地獄でそのまま中心へと引きずりこもうとするが、二体のハクリューが円になりそのまま突撃をしかけてくる。

 

 

『ちっ!』

 

 

 ミュウツーは咄嗟に竜巻を解いて、カツラとイエローを抱えて下がる。

 

 

「下がっていいのか? プテラ!」

 

 

 ──プテラのとっしん! 

 それもただの突進ではない。その鋭く鍛え抜かれた刃物と化した翼を向ける。

 

 

「ミュウツー!」

『わかっている!』

 

 

 念力で作り出したスプーンでプテラの攻撃を受け止め弾く。

 

 

『守ったら負ける。攻めるぞ!』

「構わん──ぐっ」

 

 

 膝をつくカツラを気にも留めずミュウツーはプテラと応戦する。一見薄情にも見えるが、彼にはミュウツー細胞を通してそれが分かっている。

 自分達には時間がないのだと。

 それを知らないイエローがカツラを心配しながら進言した。

 

 

「カツラさん一旦距離を置きましょう! ワタルはカツラさんがミュウツー共に接近戦をしかけてくるのをあえて受けています。これではカツラさんの体がもちませんよ!」

「分かってる。そんなことは、分かっているんだイエローくん」

「え?」

「私は、私とミュウツーは離れて戦うことが出来ないのだ。この右腕に移植したミュウツー細胞がそれをさせない。遠く離れてしまえば、こいつは私の腕からいずれは命を奪い取る。逆にミュウツーもそうだ。これのせいで満足に戦えない。だから共に戦わなくてはならないんだ!」

「カツラさん」

「いいかイエローくん。ワタルの戦いをしっかりと見ておくんだ。私達には時間がない。もってあと僅かだろう。その限られた時間の中でワタルを倒せればいい。だができなかった時はイエローくん、きみがやるんだ」

「わかりました」

「そのためにプテラを頼むぞ!」

「はい! いくよピカ!」

「ピカ!」

「むっ。プテラ!」

 

 

 カツラの読み通りワタルはピカチュウに反応した。ワタルはレッド戦っている。ならばそのピカチュウの強さも分かっているはずだ。だからこそ、無視などはできず対応に目を反らす。

 

(分かっているな? チャンスは一度だ)

 

 その言葉に横目でカツラを見ながらうなずくミュウツー。そして予想通りワタルはピカチュウに食いついた。そして集中し、攻撃すべき場所のイメージをミュウツーに送る。

 

 

「うぉおおお!」

『──!』

「なに!?」

 

 

 ミュウツーが持っていたスプーンがゴムのように伸びはじめ、ワタル目がけて飛んでいく。そして形状をフォークのように形を変えて、腰にあるボールの開閉スイッチに狙い定める。

 

 

「ここだミュウツー!」

 

 

 エネルギーをフォークの先端へと集中し、残りの3つのボールの開閉スイッチに手をかけて……破壊した。その余波でボールは地面へと転がり落ちる。

 

 

「やっ……た──」

「カツラさん!』

『はぁはぁ……』

 

 

 タイムリミット、その時が来たのだ。そして限界まで精神を集中した反動でそのまま意識を失ってしまったのだとイエローは気づく。

 同時にワタルを見た。彼もあの攻撃の余波で地面に横たわっている。ボールを見ればヒビが入いっている。つまり、これでワタルは新たなポケモンを出すことはできない。

 

 

「勝った。勝ったんだ!」

「フフフ……フハハハハハ! 喜ぶのはまだ早いぞイエロー」

「な⁉」

 

 

 ボロボロのマントを捨て立ち上がるワタルの顔に敗北というものはなかった。むしろ先程と同じで勝利を確信しているように見える。

 

 

「流石だよ。ハイパーボールは現存するボールの中でもそれなりの強度を誇っている。それを壊すとは素直に称賛する。だが!」

 

 

 パチンと指を鳴らすとプテラが翼の先端でボールを破壊した。一瞬驚くがそれは空のボールだ。ポケモンは最初から入ってなかった。

 

 

「だ、ダミー……」

「いや違う。すでに残りのドラゴン達はもう出ている!」

 

 

 突然の揺れ。地面を割って地下からカイリュー、ギャラドスが姿を現した。

 

 

「最初お前達をここに出したのはこいつらさ。改めて紹介しよう。白竜(ハクリュー)海竜(カイリュー)凶竜(ギャラドス)翼竜(プテラ)。これが四天王ワタルの竜軍団! さぁどう戦う!」

「くっ」

 

 

 イエローがどう戦うか考えていると、隣にいたミュウツーがワタルに向けてスプーンを向ける。だがそれはギャラドスによって防がれてしまう。そして情けを与えるようにミュウツーに言う。

 

 

「ふふ。いいのかご主人様は? お前らの繋がりを知らないと思ったか? 先程の戦いでわからない俺ではない。確かにお前なら俺と戦えるだろう。だがそこのカツラはどうなるかな?」

『──』

 

 

 そうだ。二人は離れれば離れるほど命を蝕む。イエローは倒れているカツラに目を向けた。今の攻撃でうめき声をあげている。それだけの苦痛を伴っているのだ。

 ミュウツーはカツラの声を聞くと素直にボールの中に戻り、イエローの傍へと転がる。

 カツラさんを傷つけないためなんだね。

 ボールの中にいるミュウツーに問いかけると、彼はうなずいた。

 もうここには自分一人しかいない。ブルーさん、グリーンさん、リーフさんがいつ来るかもわからない。ならば──

 

 

「うぁあああ!」

「来るか」

 

 

 ボールを投げる。ピカチュウ、ラッタ、キャタピー、オムナイト、ゴローン、ドードー。これがイエローのポケモン達でありそう戦力。

 

 

「どれも進化していないのか」

「そうだ。毎回キャンセルしてきた!」

 

 

 託されたレッドのポケモン図鑑の機能である進化キャンセルを使ってラッタ以外のポケモン達はずっとキャンセルしてきた。

 他のトレーナーが見れば舐められたものだと侮蔑の眼差しを向けるだろう。だがワタルは笑って言う。

 

 

「ははは! 面白いやつだ。よかろう、だが手加減はしない! 本当に戦う意思があるなら付いてこい!」

 

 

 カイリューの背に乗って火口付近へと向かうワタルを追いかけるイエロー達。

 だがそこである光景を目にする。二匹のハクリューとプテラに手を当てると、そこに暖かい光があふれる。

 

 

「そ、そうか。だからブルーさんはボクを選んだんだ」

 

 

 あの人は何処かで知っていたんだ。ワタルもまたトキワの出身であり、自分と同じポケモンを癒す力を持っているのだと。でなければ自分みたいな少女にこんな旅はさせないだろう。そしてワタルと戦うために自分を送り出したのだ。

 共に走るみんなに目を向ける。そこに恐れはない。自分と一緒に戦ってくれる覚悟があった。

 そしてワタルを追いかけてたどり着いたのはスオウ島の火山の火口。下を見ればマグマがぶくぶくと沸かしたお湯のように沸騰している。ここにいるだけかなり熱い。

 

 

「ふふふ。最後の戦いに相応しい舞台だろう? さぁいくぞカイリュー!」

 

 

 ──カイリューのかいりき! 

 カイリューが砕いた岩がイエローに襲い掛かる。さらに砕けいたところから溶岩があふれ出る。それすらも襲い掛かってくる。

 

 

「ドドすけつつく! ラッちゃんいかりのまえば!」

 

 

 ──ドードーのつつく! 

 ──ラッタのいかりのまえば! 

 二体の攻撃にカイリューはまったく動じていない。まさに蚊に刺された程度にしか思ってないのだ。体を捻るだけで二体を吹き飛ばす。

 

 

「ゴロすけとっしん! オムすけみずてっぽう! ピーすけいとをはく!」

 

 ──ゴローンのとっしん! 

 ──オムナイトのみずてっぽう! 

 ──キャタピーのいとをはく! 

 しかしどれも先程と変わらない。今度はしっぽをふるだけで薙ぎ払われた。あまりにも不甲斐ない戦いにワタルが言った。

 

 

「悪あがきはよせ。ドラゴンのこの鎧のような固い皮膚に小手先の技は通用せん」

「くっ」

「それとも今更尻尾を巻いて逃げるか? イエロー!」

 

 

 倒れているラッタを抱きかかえながらイエローはカイリュー見た。そこであることに気づく。少し、ほんの少しだけお腹の模様が違う。人で言うなら痣のようなものだ。ワタルの言う通りなら誰かがあそこにダメージを与えたんだ。ならばあそこだけ皮膚がまだ完治していないはず。

 隣にいるピカチュウに手を当てて指示を送るとピカチュウはすぐに駆け出した。

 

 

「逃げるわけない! ピカ!」

「なにっ⁉」

 

 

 ──ピカチュウのこうそくいどう! アイアンテール! 

 こうそくいどうで距離をつめて跳び、空中で一回転しながらお腹にある痣にアイアンテールを叩きこむと、再びイエローの所に着地する。

 

 

「──!」

「やっぱり、そこはまだ治りきっていないんだ!」

「ちっ。よく見抜いたな。まだレッドから受けた傷が癒えてないところを狙うとは」

「れ、レッドさんが!?」

「ピカピ⁉」

「ふふふ。そうだろうなピカチュウ。お前は一人逃げ出したから知らないのも無理はない。お前の主は大した男だったよ。最後の一人になっても我ら四天王軍団のポケモン達に一人立ち向かい、我が最強の僕であるカイリューをも倒して見せたんだからな! だが感謝するんだな。レッドのおかげで我らはその傷を癒すために少しの時間を必要とした。まあほんの少しだけだがな」

 

 

 称賛の中に怒りが混じっているのが確かに伝わる。自分のポケモンが傷つけられたのだ、怒らないわけがない。

 だからこそ、納得がいかない。

 

 

「そんなあなたが! どうしてこんなことをするんですか!? どうしてカントーを滅ぼそうとするんですか⁉」

「滅ぼすのではない。このワタルが創り変えるのだ! 身勝手な人間を排除して、ポケモン達が住みやすい環境を作るために!」

「違う! そんなことは間違ってる! たしかにあなたの言うように人間の勝手で住処を奪われ、食料を求めるポケモン達が大勢いるのを見てきた! だけど人間だけを排除するなんて決定権、あなたにも誰にもないんだ!」

「だまれ!」

「ボクもあなたと会った時にそれを言われて悩んだ。理由はどうであれ、あなたもまたポケモンのために泣く人なのだと。だけど、そのためにポケモンに人殺しをさせるの⁉ 目的のために利用するの⁉ そんなの、他の人達と変わりはしない!」

「自分だけが綺麗な手をしていると思ったか⁉ 俺もまたすでに手を汚している。そんな俺の夢にこいつらは、我らが四天王は共に戦ってきた!」

「ボクは戦うことがキライだ。傷つけあうのもキライだ。だけど、時には戦わなくちゃいけない時があるんだと知った。旅の中でボクは大勢の人を見てきた。良い人も悪い人も大勢いた」

「だからなんだ? 良い人間だけを選べと言うのか?」

「違う! あの人は、レッドさんは言った。親が悪いことをすれば、ポケモンも悪い子になるって。だからそうならないようにすればいい、声をかければいい。そうすれば、いつかそんな人達はいなくなる!」

「そんなの綺麗事だ!」

「そうだよ! だからこそ現実にしようと人は頑張るんだ! あなたは人間を身勝手といった。だけどボクは思う。人間もまた自然の一つ! ポケモンと人間と自然。この三つはどれも共に支え合っているんだ! だからどれか一つが欠けちゃダメなんだ!」

「あの男と──レッドと同じことを言うか!!」

「え?」

「カイリューだいもんじ!」

 

 

 ──カイリューのだいもんじ! 

 カイリューから放たれた大文字がイエロー襲う。

 

 

「うぁあああ!」

「これはただのだいもんじではない。エネルギー源はこのマグマ! そのまま火山に飲み込まれろ!」

 

 

 立っていた岩が崩れマグマに落ちようとしてた時、なみのりをしたピカチュウに助けられるイエロー。

 

 

「このマグマの上でなみのりとはな。さすがレッドのピカチュウか。だが俺は上を取っているぞ!」

 

 

 ──カイリューのはかいこうせん! 

 ──ピカチュウの10まんボルト! 

 縦横無尽に迫るはかいこうせんを的確に対応するピカチュウ。

 その中でイエローはワタルと戦う決意をしていても、未だに心のどかに優しさという甘さが残っていた。自分と同じトキワの力を持つ者が、大量虐殺などをしてほしくない。そのためにこの戦いを終わらせなければならない。

 ミュウツーが入ったボールを手に取り、あの時の戦いを思い出す。

 

 

「ピカ!」

「ピ!」

 

 

 ピカチュウにミュウツーのような竜巻は起こせない。だがこの下はマグマ。高速で回転し続ければできるはずだ。

 

 

「頑張れピカ!」

「逃げ回ってばかりでは意味が──な⁉」

「今度はこの溶岩でアレを再現する! いっけぇえええ!」

 

 

 巨大なマグマの渦を作り出し、マグマの蟻地獄を作って引き寄せる。

 

 

「降伏してください! これ以上あなたに町の人々を攻撃させたくないんです!」

「勝ったつもりかイエロー⁉ このワタルを、なめるなぁあああ!」

「な、渦を突き破って⁉」

 

 

 マグマの渦を破って突進をかけるワタル。だがそのままカイリューごとマグマに飲み込まれた。

 

 

「わ、ワタル? やったの?」

 

 

 静かだ。ただマグマが湧き上がる音だけが聞こえる。このままいても仕方がない。そう思った時、上にいたキャタピーが糸を垂らしてくれた。そのまま糸を使って火口を脱出して再度下を除くイエロー。

 結局最後まで分かり合うことができなかったな。

 勝利したはずなのに浮かれた気分になれない。下にいるカツラと合流するために歩こうとするが、ピカチュウがなぜか動かず火口を覗いている。

 

 

「ピカ? ……ん、あわ?」

「──! ピカピ!」

「な、ワタル⁉」

 

 

 そこには巨大な泡で包まれた中にギャラドスと二匹のハクリュー。そしてワタルがこちらを見ていた。

 そして大量の泡が襲い掛かるが、突然泡が視界から消えた。

 

 

「な、消え──がっ!」

 

 

 泡の一つが右腕に当たり折れた。痛みを抑えながらキャタピーの糸で即席のギプスを作る。

 

 

「あれはバブルこうせん。泡を作って溶岩から身をも待っていたのか。だけど、どうして消えるんだ……」

 

 

 そうか光の三原色。

 そこで泡に3つの色があることに気づいた。赤、青、緑の3つの色をしたバブル光線が交錯ししてまじり合うことで無色になる。さらに昇り始めてきた太陽の反射する透明球となって襲ってくる。だが手品が分かってもどうするべきか。

 考えても仕方がない。まずは動くんだ。

 イエローは火口の途中にある出っ張りに飛び降りた。そしてキャタピーの糸を火口内部に糸を張る。

 

 

「ほう。何かしてくるつもりか」

「みんな頼む!」

 

 

 見えない泡の攻撃に対抗する。そのためにはラッタの敏感な髭が感知し、それをピカチュウに伝え迎撃。電気が通りやすいようにオムナイトの水が糸にあらかじめ湿してある。そして、こちらに向けたその一瞬をつく。

 

 

「今だ!」

 

 

 ゴローンがドードーを巨大泡に向けて投げ飛ばす。

 ──ドードのドリルくちばし! 

 確かにドードーのくちばしは泡を捉えた。だが貫くまでは至らなかったのだ。

 

 

「この状況で即席のトラップを作るとは。やるなイエロー。だが悲しいな……進化しなかったツケが回ってきたな! それではパワー不足だ!」

「うわぁあああ!」

 

 

 再び見えないバブルこうせんがイエローを襲う。

 

 

「なに⁉」

「え?」

 

 

 だがイエローは生きていた。それも第三者の登場によって。間一髪のところだっため、すでにボロボロのイエローはその人に言った。

 

 

「だ、誰ですかあなたは? 助けて、もらって感謝します。けど、ワタルはトキワのトレーナーでないと倒せないんです」

「──」

「だから、ボクがなんとかしなくちゃ……え?」

 

 

 立ち上がろうとした体を、その人は肩においてボクに言った。

 

 

「心配するな。私も……トキワのトレーナーだ」

 

 

 真っ黒いスーツを身に纏ったおじさんが僕の目の前に立っている。彼は言った。同じトキワのトレーナーだと。だけど、こんな人見たことがない。

 隣にいるピカチュウが鳴いている。声からして警戒している。まるでその人を知っているかのように、ピカチュウはその人に叫んでいるとイエローは感じた。

 

 

「お前は……」

「それにここへ来たのは私だけではない」

「え?」

「貴様、それはどういう……!」

「フフフ。噂をすれば」

「あれは……隕石?」

 

 

 イエローとワタルは共に空を見上げた。スーツの男は分かっているのか澄ました顔をして見向きもしない。

 4つの隕石がこのスオウ島上空に落ちてくる。いや、違う。落ちてくるのは一つ。他の三つの隕石はそれぞれ別の方角へ飛んでいく。つまりは隕石ではない

 そして残った一つ。よく目を凝らせばそれは、巨大な炎の塊だった。

 それは猛スピードで落下しスオウ島の麓に墜落した。

 

 

「まさか──」

 

 

 それが何かだという事に気づいたワタルに、男は口角を鋭く上げて言った。

 

 

「その、まさかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 




スーツの男。一体何者なんだ……

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