おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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ソーナノの可愛さに書いていて気づいた


そうなんですよ! ハナダのお姉様ですよ!

 

 

 

 

 

 106番水道のど真ん中を航行中の大漁丸と書かれた小さな船の船内にて、元キング兼旅人のレッドは船長であるハギ老人に土下座をして感謝の気持ちを述べていた。

 

 

「この度はこの命を救っていただきありがとうございます!」

「なーにいいってことよ! まさか一日で二人の人間を吊り上げるたぁ、オレも思わなかったがな! けどよ、何でおめぇさん遭難してたんだ?」

「いやぁ、自分でもよく分からないんですよねぇー。最初嵐に巻き込まれたと思ったら無人島に漂着して、脱出しようとはかいこうせんぶっぱしたらまた嵐に巻き込まれたまでは覚えてるんですけど」

「あはは! おめぇさんも面白いこと言うなぁ!」

 

 

 ハギは高らかに笑う。レッドは改めて命の恩人であるハギ老人を観察した。身長は自分よりも高いため180はあるかないかだろう。頭部は綺麗な肌がテカリ、年を感じさせない鍛えられた体を維持していた。

 これでも自分もまだ成長期なので、自分より背の高い人間に会うのは久しぶりであった。健康診断を受けていないので目測になるが、175ぐらいあってもおかしくはない。

 それにしてもと、まさか助けてくれた人間があのハギ老人だとは思わなかった。

 ていうかイメージと全然違うんだけど。

 ゲームではモデルがみな同じなのでアレだが、こう実際に出会って見ればまさに海の男と言わんばかりだ。さらにはキャモメのピーコちゃんもいる。

 なんでも話を聞けば、ハギ老人は今まで隠居していたらしいのだがあるポケモンの情報を得て漁に出たという。

 で、そのポケモンがジーランスであった。

 確かダイビングできる場所でしか現れなかったような気がするが、レッドもあまり詳しくは覚えてないし、漁師であるハギの誇りを傷つけると思い口には出さなかった。

 

 

「まあ、そこの坊主と一緒に休んでな」

「ありがとナス!」

 

 

 外に出るハギ老人に改めて礼を言って、船内の隅っこにいる一人の少年を見る。こちらの視線に気づいたのか、少年は怯えながら言ってきた。

 

 

「な、なんですか……?」

 

 

 

 

 

 

「きみ名前は⁉」

 

 

 自分と同じようにハギ老人に助けられたお兄さんがいきなり肩を掴んで名前をたずねてきた。肩を掴む手の力が尋常ではなく、さらに目をキラキラと輝かせて自分を見てくる。

 

(な、何なんだこの人⁉)

 

 どう見ても変質者にしか見えない。赤い帽子に趣味の悪いTシャツを着て、左腕はなんかごつい鎧みたいなものを付けているし、ハッキリ言えばお近づきになりたいとは思えなかった。

 だが沈黙を保つ勇気もないので普通に教えた。

 

 

「えーと、ルビーです」

「ほうほう! で、ルビーくん! すこーし聞きたいんだけど!? ジョウトで最近大きな事件起きなかった⁉」

「え、ジョウトでですか? まあ最近というか、二年前に大きなじけ──」

「ファッ⁉ 二年前⁉ うっそだろお前⁉」

「う、ウソじゃないですよ! 最近ジョウトからこっちに引っ越してきたんですから!」

 

 

 お兄さんは尋常じゃない驚き方をしていた。今度はいきなり肩から手をはなすと、自分の頭を抱えながらぶつぶつ呟き始めた。「え、なんで? まだたった数日だよね?」とか「数日遭難していたと思ったら、二年経っていた。ま、まさにポルナレフ状態だぞこれ……」等々。

 ルビーは遭難したショックでおかしくなったのかと思った。もう関わらないようにしようと船の隅っこに逃げようとすると、お兄さんの腰にあるボールが勝手に開いて見たことがないポケモンが現れた。

 そのポケモンはひょいっとお兄さんの頭に上って鳴いた。

 

 

「ソーナノ!」

「……なんてかわいいポケモンなんだ⁉」

「──―え?」

 

 

 

 

 

 

 勝手に出てきたソーナノが頭に乗ると、まるで人が変わったようにソーナノを食い入るように見始めた。

 

 

「何なんですかこのかわいいポケモン⁉ 初めて見ます!」

「え、ソーナノ知らないの?」

「ソーナノって言うんですか!?」

「ソーナノ!」

「ちゃんと答えるところがさらにcute!」

「え、なに? ルビーってかわいいポケモンが好きなの?」

 

 

 あの日、ジョウトでボーマンダと戦った少年とまるで正反対な行動をとる彼に思わずたずねた。

 

 

「あったりまえじゃないですか⁉ こんなにかわいいポケモンがいたら、ボクだって仲間にしてコンテストに出場しますよ!」

「……コンテスト? ああ、あのコンテストか。でも、カントーとジョウトにコンテスト会場なんか在ったっけ?」

「ソーナノ?」

 

 

 するとルビーの耳が何かに反応したのか、バッグから一冊の雑誌を顔に押し付けてきた。

 

 

「お兄さんってカントー出身なんですか⁉ じゃあこのお方をご存じですかいやご存じですよね⁉」

「る、ルビー押し付けられて見えないんだが……」

「あ、すみません。ボクとしたことがつい。いやぁ、この人の事になるとつい熱く語ってしまうんですよ!」

 

 

 そう言って今度はちゃんと雑誌を渡してきてそれを受けとる。どうやら月刊誌らしくタイトルは「ゲーフリ」とあり、今月号はポケモンコンテスト特集とある。さらにその表紙には知っている女性が載っていた。まさに天女あるいは女神と呼ばれてもおかしくない女性と、一緒に写るポケモンハッサムが載っている。

 

 

「お、お姉さん……⁉」

「そうなんですよ! ハナダのお姉様ですよ!」

「え、そんなにすごいの?」

「凄いなんてものじゃありませんよ⁉ あなた本当にカントー出身なんですか⁉ いいですか? お姉様はですね、コンテストのノーマルからマスターランクのすべての部門をこのハッサムのサミュエルだけで優勝しているお方なんです!」

「うそーん……」

「ソーナノ……」

 

 

 お姉さんのために鍛えたあのハッサムが、気づいたらポケモンコンテストで活躍していた。いやいいことなんだろうけど、なんか納得できないというか飲み込めない。

 そもそもの話。お姉さんがコンテストに出てるなんて聞いたことないのだが……。

 

 

「ていうかハッサムでかわいさ部門勝てる……勝てなくない?」

「そう思うでしょう? ですが、見てくださいここ! この黒い眼帯をしたサミュエル! かわいいと思いませんか⁉」

「いや、これどうみてもかっこよさとかしこさとたくましさ用のアイテムだって」

「ふ、これだから素人は困るんですよ」

「貶されてるけど、全然怒る気になれない」

「それに今年はホウエンのコンテストも全制覇したんですよ!」

「え、こっち来たの……?」

「ソーナノ……?」

「あとですね、お姉様のパートナーであるナナミさん!」

「マジかよ……」

「ソーナノ……」

 

 

 別のページを開くと、お姉さんとハッサムの調整というかメイクアップしているナナミが写っていた。本来ならオーキド研究所で仕事をしているはずなのだが、どうやら文章を軽く読む限りだとお姉さんの専用アドバイザーというか助手みたいなことしているらしい。

 

 

「ナナミさんはあまり表には出てこないのですが、彼女のプクリンことぷりっちもまたいいんですよ!」

「マジかよ……って、これしか言ってないや」

「ソーナノ」

 

 

 何故か自分の感情に呼応するように似た反応するソーナノが可愛いので頭を撫でておく。

 

 

「でさ、話変わるけど。ルビーはコンテスト制覇が目的なのか?」

「はい! そのために家出……こほん。旅をしている最中なんですから」

「ふーん……」

 

 

 家出。確かにそう言った。推測するに、ルビーとセンリとの親子関係は最悪なんだと容易に想像できた。あのレックウザを逃がした失態で、その捜索を命じられて家を離れていたに違いない。あの年では、一番親にいて欲しい時期だろう。本当の事も告げられないセンリも辛いだろうが、子供であるルビーも同じぐらい辛かったに違いない。

 

 

「じゃあルビーにとってあのポケモン達はどうなんだ?」

 

 

 船内にある水槽にいるポケモン達を指でさす。中にはハンテール、ナマズン、コイキング、ドジョッチがいる。

 

 

「ボクの趣味にはあいませんね。何より美しくありませんから」

「俺は美しくはないと思うけど、可愛げはあると思うけどね。まあ、コンテストをやってすらいない俺が言うのもあれだけど……」

「なんですか?」

「ルビーはその程度ってことかな。外見でしか判断できないうちは、絶対に真の美しさに気づけないよ」

「初対面のあなたにそんなことを言われる筋合いなんてありませんけどね!」

「ま、その通りだけど。まあちょっとしたアドバイスみたいなもんだ」

 

 

 案の定ルビーは怒った。それも当然だろう。見るからに挑発した言い方をしていたから。レッドはそれを自覚しつつも、ルビーの言葉で過去に見たあの光景が思い出されたのだ。

 カンナに氷漬けにされたあのオツキミ山で、何とかあの世から戻ってきた時に見た光景。谷を覆いつくすほどの野生のポケモン達。一部を除けば一度しか触れ合っていないポケモンばかり。

 誰もが自分を心配してここに来てくれた。その気持ちが暖かく、そして美しいと呼べる出来事だった。

 野生であろうと人とポケモンは心を通じ合えるのだ。

 自分とルビーの価値観は違うし、美しいと感じる感覚も違うだろう。だけど、見た目だけで判断している内はまだ半人前だと思ったのだ。

 

 

「さてと。十分休んだし行くか。な、ソーナノ」

「ソーナノ!」

「……行くって、どこにですか?」

「んーまあ、とりあえず陸に」

 

 

 階段を上がって外に出ると、ハギ老人が糸を海中に垂らしてポケモンを釣ろうとしていた。

 

 

「なんだ。どうした?」

「いえ。もう行こうかと」

「行くっておめぇ、水ポケモン持ってるのか?」

「いますよ。けど、ゆっくりしている時間はないんで」

 

 

 レッドはそう言うとFR号が入ったボールを投げる。自動で感知したのか、海には落ちずホバーモードになって海の上に浮いていた。

 

 

「な、なんだぁそりゃあ⁉」

「バイク」

「そんなバイクあるか!」

 

 

 驚くハギ老人に目もくれずレッドはバイクに跨り、彼に陸の方角を教えてもらう。いざ向かおうとすると、船内から気持ち悪そうにしながらルビーが現れた

 

 

「あ、あの、ボクだけ名前教えて、お兄さんの名前聞いてませんでした……おえ」

「ああ。そう言えば自己紹介してなかったな。俺はレッドだ。ただの旅人のな」

「れっど……? あれ? どこかで聞いたことがあるような……?」

「ふっ。それじゃあ二人とも、元気で!」

 

 

 ルビーの反応をみて苦笑しながらレッドはFR号を陸へと向けて走りだした。

 

 

 

 

 

 




Q.美しさとはなんですか?
レッド「筋肉!……と、人とポケモンの心」


出番がなくても、特に想定しているわけでもないのにどんどん凄さが増すお姉さんでした。
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