おい、バトルしろよ   作:ししゃも丸

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ひでぇタイトルだあ

あとアンケートがあるので、ご協力お願いします。


シロナ金を貸してくれ

 

 

 鋼鉄島での修行から一か月が経過した。

 シロナはレッドが教える技を次々と体得していき、まさに正真正銘彼の弟子として相応しい成長を遂げていた。

 波動に関してもルカリオとシンクロしていることでコツをすぐ掴んだらしく、それほど時間はかからず体得した。ただレッドから言わせればそれはまだ第一歩。そこから技や応用に活かせてようやく波動使いと名乗れるらしい。

 実際覚えてしまえばあとは時間の問題で、波動の応用は旅をしながらもできるということで鋼鉄島を出て再び旅を再開した二人。

 ハクタイシティに戻って206番道路から207番道路を経由してヨスガシティへ。そのまま下に向かってノモセシティからリッシ湖のほとりで調査の後ナギサシティ。それから戻ってトバリシティからズイタウンにあるズイの遺跡を調査。

 また旅の道中でシロナと言えばガブリアスと言われるようにフカマルと、何故か気づいたら本人が捕まえてきたミカルゲがいた。

 なお彼は知らないが、ミカルゲの入手はゲームにおいては非常に手のかかるポケモンである。

 レッドもシロナのパーティーはすでに過剰戦力のため、これでは普通に育てても未来のエースであるガブリアスが埋もれてしまうことを恐れたのか二人でフカマルを育て上げた。何がヤバいかと言えば、ガブリアスでは覚えないりゅうのまいを覚えさせたことだろうか。

 ただそれがなくても純粋に強い。それ即ちビックリドッキリな力がなくとも、このガブリアスは強いのだ。

 なにせ、レッドのブイことニンフィア先生によるフェアリー耐久トレーニングを日々行っているからである。またグレイシアはまだのため、ラプラスとミロカロスによるれいとうビーム耐久トレーニングも毎日こなしている最中であった。

 人間だって苦手なものを少しずつ慣らしていけば克服できる。ならばポケモンだってそれは同じとはレッドの言葉である。

 それからなんやかんやあってトバリシティに戻ってきたレッド達。何故そのままカンナギタウンに向かわないのか。それは彼があるところに寄りたい言ったからである。

 二人の目の前には、まるで新築のような建設されたばかりのような建物『トバリゲームコーナー』があった。

 そして彼は手を握る先にいる少女に躊躇いなく言った。

 

「シロナ金を貸してくれ。一万円でいい」

「ダメ」

「なんでなんでなんで!!!」

「嫌な予感しかしないからめっ」

「頼むよ! 絶対勝つからさ!」

「わたし知ってる。そういう事を言う人ほど負けるって」

「大丈夫だって安心しろよ~。勝ったら今日のご飯俺が奢るからさ!」

「ん~~~どうしようかなあ」

 

 勝ってもそれは元々自分の懐から出ていることに気づかないシロナ。なにせレッドが自分からご飯をご馳走するという言葉に惑わされているからである。

 ゲームと違ってここはコインをちゃんと現金に換金できるが、コインで交換できる道具やわざマシンのが魅力的なため現金に替える人は少ない。店側としてもそちらがメインなのか、レートはあまりよくなく換金してもあまりうまみがない。

 

「勝ったらシロナに服だって買ってあげちゃう!」

「もぉしょうがないんだからレッドは~~。はい、一万円」

「おっしゃぁあああ!!」

 

 一万を握り締めて彼はゲームコーナーへと突撃していくのを、シロナは暖かい目でその背中を見送る。そんな彼女をサーナイトが心配して声をかけた。

 

『いいんですかシロナ。わたしが言うのもあれですけど、ちょっとマスターに甘すぎるのでは?』

「え~だってぇ、レッドが服買ってくれるっていうから」

『多分負けて帰ってきますって』

「負けたら負けたでわたしがレッドを慰めるからいいの」

『そうやって甘やかすからいけないのでは?』

「とにかく! レッドが終わるまでどこかで時間つぶそっか」

『なら近くにアイクリーム屋さんがありましからそこへ行きましょうか」

「さんせー!」

 

 アイスを選ぶのに一時間も費やすので時間を潰すのはちょうどいいとサーナイトは提案したのが、その本人はそれに気づくことなく嬉しそうにアイクリーム屋へ歩き出していた。

 

 

 

 

 

 ゲームコーナーは店を閉める以外音が止まぬ騒がしい場所である。スロット台やら店内に流れる音楽もあって、人の声はあまり耳に届くことはない。

 多くある台の内の一台の周辺に大勢の人間が取り囲んでいた。

 

「おい、まただぜ」

「すごい。なんなんだこの青年は……」

「ほう。ボーナス継続ですか……」

 

 一人の青年ことレッドが打つ台は、先程からコインが排出される音と『777』が揃う際になる音楽ばかりが鳴り響いていた。

 

「……む」

 

 慣れた手つきで左からボタンを押していくと、左のリールがBARで止まるとその動きを一瞬鈍らせた。そのまま真ん中を打って最後はまるで適当に打っていく。

 ──『BARBAR 』

 それ見た後ろのギャラリーにどよめきが走る。

 

「なんで外したんだ?」

「折角のBARなのに」

 

 ギャラリーを気にせず再びリールを回す。レッドにはリールが見えているのか左から『7』『7』とリールが止まっていき最後には再び『7』が止まった。

 何度も目かも分からない『777』を揃えると、再びコインがジャラジャラと排出されている。それをケースに入れて一杯になったのを床に置いてあるケースに重ねる。数にしていまのを含めて6箱は溜めている。

 レッドがスロットで勝てると言ってのけた自信はまさに本当だった。

 彼自身、初代のゲームコーナーでポリゴンを交換しようと必死にスロットをやった経験がここに来て発揮されているのだ。ただ初代の仕様では目押しができるようにみえて、実際にはモードに入っていないと狙えないものだ。

 だがレッドは初代のスロットの仕様を覚えていた。さらに初代より古い時代のスロットならもっと設定が甘いと踏んだのも理由の一つである。あとは運が絡んでいたのだが幸いにも天は彼に味方した。

 通常モードから少し回して7揃いモードを告げる第1リールが滑る現象が起き、そこから順調に彼は7揃いモードの継続を狙っていったのである。

 あとは先程のようにBARが揃うと継続が途切れるためそれに気を付けながら打っていくだけだった。

 

「そろそろいっか」

 

 時間にして数時間。そろそろシロナが痺れを切らす時間と判断し、彼はわざと継続を外して入っているコインを消化した。コインが溜まった6箱を軽々と持ってレジに向かう。

 すると背後で自分もそれにあやかろうとその台に飛びついた。後ろの騒ぎなど気にせずレッドの対応する店員が言った。

 

「本当にすべて現金の換金でよろしいですか?」

「はい」

「わかりました」

 

 コインを機械に入れて枚数を確認している。

 店員が再度確認してきたのは換金レートが悪いからだ。元の世界と違ってここはあくまでポケモン世界のゲームコーナー。ポケモンは扱っていないがわざマシンは扱っており、多くの客はそれが目当てでスロットを打っているのでわざと換金レートを低くしていると思われる。

 清算を終えた店員が札と紙を渡してきた。

 

「ではこちらを持って外の換金所へお願いします。

「どうも」

 

 それから外にある換金所に行って現金を受け取る。一万の投資で戻ってきたのは三万。二万円の利益である。

 元々遊び半分で来たので勝てただけで問題ない。負けていたらどうなるかなんて考えてすらいなかった。

 

「あ、レッドー!」

 

 どうやら終わるまで外に待っていたのかシロナとサーナイトが手を繋ぎながらこちらにやってきた。シロナに至ってはダブルのアイスを手に持って。

 恐らくすでに一個食べてしまったのだろう。

 

「どう勝てた?」

「おう! 一万が三万だ!」

「すごいじゃない! これで今日のご飯は豪勢ね!」

『マスター。本当に勝ったんですか? ズルとかしてません?』

「信用しろって。じゃあ夕飯までの時間ショッピングでもするか。予算内だったら何でも買ってやるぜ!」

「いぇーい!」

『嬉しすぎて元々自分のお金だということを忘れていますねこの子』

「サーナイトも欲しいのがあったら言うんだぞ」

『え⁉ わたしもいいんですか⁉』

「遠慮するな。今日は無礼講だ」

 

 そう言うとレッドの腰にあるボールが開いてポケモン達が出てくる。

 

『ボクたちもいいんだよね⁉』

「ああ。好きなもの選べ!』

『Yeaaaah!!』

 

 かつてない士気をあげながら彼らは近くの店へと向かった。

 なお、時代が時代なため中々欲しいものが見つからず、結局高そうなポケモンフードで妥協するポケモン達。それに対してシロナは新しい服を買ってもらい大層喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

 ──その頃の元祖レッド軍団たち──

 

 マサラタウンは田舎なれど土地は広く、一家が保有する土地面積は他の町と比べると広い。研究所とは別に一軒家を持つオーキド家も例外ではなく、ポケモン用なのか子供用なのかは不明であるが裏庭はかなり広い。

 そんな広い場所の一角に巨大なポケモンが寝転んでポケモンフードを食べていた。

 彼はカビゴン。レッドの手持ちにしてとてもユニークなポケモンである。

 その傍らでリーフのラッキー相手にトレーニングにしている黒竜ことレッドのリザードンが、その手を休めて仲間であるカビゴンに呆れながら言った。

 

「カビゴン。お前最近たるんでないか?」

「もぐもぐ……いいのいいの。おいらたちはあくまで助っ人なんだし、もしもの時のためにリーフちゃんを守ればいいんだから」

「けど、カビゴンさんってば最近食べてばかりで鍛錬してないじゃないですか。このままだと太る一方ですよ?」

「おいらは太るのが仕事だから……もぐもぐ。にしてもこのポケモンフードはいまいちだなぁ。メーカーに改善点を送ってやろうっと」

 

 そう言いながら寝返り打ってうつ伏せになると、ノートパソコンのキーボードを器用に叩いてメールを送る。

 そんな彼を見て深いため息をつきながらリザードンが再度言う。

 

「そんな調子では、レッドが戻ってきたとこに痛い目にあうぞ?」

「平気だって。マスターは当分戻ってこないって……たぶん」

 

 リザードンはカビゴンと違って自分達の主である彼を呼び捨てで呼ぶ。それはスピアーとピカチュウも同様で、三人はレッドとタイマンで戦える力があるため自然と呼び捨てで呼んでいた。

 

「リザードンさんの言う通りですよ。鍛錬のサボりすぎでレベルが下がっています」

「みんな心配性だなあ。マスターが居た時みたいに命をかけるような戦いなんて早々ないって。現に二年はこうして平和なんだしさー」

「だからこそ、もしもの時のために鍛えておくのだ」

「リザードンは頭が固いなあ。もっと緩くやればいいのに」

「オレの勘が告げているのだ。常に鍛えろと。それにスピアーはレッドと共にいる。ならばアイツも昔以上に強くなってるに違いない」

「スピアーさんもお強いですからね。皆さんも頑張ってるし、わたしももっと頑張らないと!」

「その心意気、イエスだね!」

「ラッキーは強くなりすぎると挑戦者が泣くので止めたほうが……」

 

 自分だけまともな思考をしていると言わんばかりにラッキーの鍛錬を止めようとするカビゴン。彼が言うようにラッキーはリーフと戦う際の第二の壁として君臨しており、現在誰ひとりとしてラッキーを倒せる者は現れていなかった。

 

「あ、いたいた。おーい、ラッキー、リザードーン、カビゴーン。出かけるから戻っておいでー!」

「ラッキー!」

「リザァ!」

「ゴンゴン!」

 

 いまの主であるリーフが家の方から叫ぶと、彼らはそれに応えて彼女の元へ走り出した

 

 

 

 

 トキワジムのバトルフィールド中央で、サイドンとカメックスが互いに取っ組み合っていた。二人の中央でジムリーダーであるグリーンがそれを見守っている。

 

「サイッ!」

「ガメェ」

 

 ただの力比べとはいえそのレベルはかなり高い。なにせ相手はレッドのカメックス。技や相性といったポケモン本来のバトルではなく、純粋な力のみで競うこれは彼自身の力の現れでもある。体重はサイドンのが重い。とはいえ、カメックスの表情は余裕だ。

 サイドンに余裕はなく、気づけばカメックスによってどんどん後ろへ押されてしまう。それを見たグリーンがそこで声をかけた。

 

「そこまで!」

「さ、サイ……」

「サイドンはよくやったさ。相手はレッドのカメックスだからな」

「ガメェ!」

 

 互いに称賛を送ると、カメックスは誇らしげに胸を張った。

 

「アイツのことだ。どうせ誰も思いつかないようなやり方でトレーニングしてたんだろう」

「が、ガメェ……」

 

 それを言われると何も言えない、そんな顔しながらカメックスは頭を掻く。彼からすればグリーンのトレーニングは本当に真っ当だと思っている。ある意味でグリーンらしく、これが本来のポケモンのトレーニングなんだと実感するほどだ。

 彼は思い出す。あの辛く過酷な日々を。電気が弱点だからと問答無用でピカチュウによる耐電気トレーニングに、マスター自らとの実戦トレーニング。

 よく生きてるなと思う反面、あれがあったから今の自分がいるのだと遠くにいる主に感謝するカメックス。

 

「さて。今度はオレとやってもらうか。最近ジム仕事で体が鈍ってるからな」

「ガメェ!」

 

 上に一枚来ていたジャケットを脱ぐと、グリーンはカメックスと力比べを始める。カメックスも本気で相手を務めるために力を入れる。

 しかしグリーンが後ろに下がったのはほんの数センチ。彼は自身の力量を把握すると、一旦力を解き、距離を置いて再度構えた。

 

「やはり鈍ってるな。カメックス、少し組手を頼む」

 

 やはりマスターの幼馴染だ。グリーンは自身の武器である刀ではなく主と同じく拳を構えている。一緒に過ごすようになりグリーンの人なりは彼のポケモン達並に知ったつもりだ。妹のリーフやブルーと違って自分は真面目、あるいは普通を演じている彼であるが、その本性は主であるレッドとまるで変わらない。

 マスターの言葉を借りるなら、「これがマサラの血か」と言ったところだろうか。

 故にその血には抗えないのだ。

 

「ガメェガメェ!」

 

 ならばそれに応えよう。

 カメックスは本気でグリーンの下へ駆け出した。

 

 

 

 

 かれこれ二年の付き合いになる今の自分の保護者というかトレーナーであるブルーを見ているフシギバナ。

 時間が合えば週に数回仲間達とよく現状報告みたいなのをするが、彼らから聞いた話と自分の生活を比べると、ブルーが一番女性らしくしているなと思っていた。

 何故そう思うのか。現にいま、つるを使って鏡を持ちながら彼女のしていることを見ればそう思わざるを得ない。

 

「ふふふーん」

 

 その場で思いついたメロディを奏でながらブルーは櫛で髪を梳いている。その仕草は十代の女の子というよりは成人した女性を思い立たせる。

 

「どうかしらフシギバナ」

「バナバナ」

 

 その手を止めてブルーは笑みを向けてたずねてきたので、とりあえず笑顔でうなずく。マスターもよくナツメにそうしていたので心の内で彼に感謝の言葉を送る。

 マスター、ありがとう。マスターのおかげでうまくやっていけているよ。

 

「鍛錬も大事だけど、女も磨かなくちゃね」

 

 それを聞くと真っ先に最初の主であったあの人を思い浮かべた。

 お姉さんは綺麗な人だ。いや、おそらくこの世界で一番美しい人間なのだと思う。付き合いは自分が一番長いと自負しているが、その生活の中でお姉さんは手入れというものをしたことがないような気がする。髪は普通に梳かす程度で、化粧は多分一度もしていない。常にすっぴんだったと思う。

 だからこそ男女ともに憧れの眼差しを向けられるのだが、そんな彼女を射止めたのが自分のマスター。

 正直罪な人だと思っている。目の前のブルーも彼のためにこうして女を磨いているのだから。

 

「けど、ロングも悪くないわね。今までは動きやすいからミニだったけど。こっちの方が魅力的かしら」

「バナァ!」

「フシギバナもそう思うの? ふふっ、ありがと。あとでシルバーにお礼を言わなきゃね」

 

 二年前と違ってブルーの服装は変わった。ノースリーブであるのは変わらないが、ミニのワンピースからロングのワンピースになったのだ。それも弟のシルバーがプレゼントにと送ったらしい。

 ただしそれだけではない。ロングの所為で足が隠れていて分かりづらいが問題はその足である。彼女が履いている靴。それは靴にしてはごつい。

 いや、まるで鎧のようなイメージだ。

 自分を含めたポケモン達は知っているがブルーの戦闘スタイルは足技が主体。なので少し前から鎧を身に着けている。俗にいう騎士がつけている足の鎧に近いだろうか。

 一応ワンピースにはスリットがあるので戦いに干渉はしないものの、若い男にとっては目の毒となっている。

 まあそれも、マスターのためなんだろうけど。

 

「でも、これでパパとママに会いに行っても平気かしら?」

「バナァ」

「そうよね。あたしらしく、よね」

 

 ブルーは笑みを作るが同時にどこか複雑な表情をしていた。

 最近オーキド博士経由でブルーの両親との連絡がついたとフシギバナは聞いていた。なんでも誘拐されたあと、両親は各地を旅をしながらブルーを探していたらしい。昔と違ってここ数年は表舞台に出ていて、またオーキド博士も両親を探すために手を尽くしてくれていた。

 彼女が言うには11年ぶりの再会。もう顔も覚えていないと言うが、向こうが送ってきてくれた写真を見て涙を流していたのは、きっとどこかで両親の顔を覚えていたからなのだと思う。

 

「あーあ。レッドがいれば二人に紹介できたのに、ちょっと残念」

「ば、バナァ……」

「ほんと、あのバカレッドったら。今頃どこで何をしているのやら。ね、フシギバナ」

「バナバナ」

 

 それには同意する。フシギバナはどこにいるかも分からない主に心から訴える。

 マスター。早くしないと、みんなから外堀を埋められちゃうよ。

 

 

 

 

 

 ウバメの森でレッドに会ってからすでに二年以上が経過し、それと同じ年月を過ごした彼のピカチュウことピカは、依然と変わらずイエローの家で厄介になっていた。たまにナツメが心配で週に一度はヤマブキシティに戻るが、その当人は思っているよりも普通だったので、心配は杞憂に終わった。

 レッドもおらず、仲間達と会うのも週に数回あるかないか。同じトキワシティにいるカメックスとは時間が合えば一緒に鍛錬をするものの、今のように都合が合わなければ一人で鍛錬をするのが日課となっていた。

 

「ピッ、ピッ!」

 

 ジャブをしながら二足歩行でトキワシティを走る。いっちょ前にピカチュウ専用のフード付きのパーカーを被りながら。

 トキワシティにおいてピカチュウはそこそこ有名である。レッドのピカチュウというよりも、いつのまにか街で一番かわいいと噂されているイエローのピカチュウとして。

 なので街に出れば人気者の彼は住民からも慕われている。彼がランニングに出れば子供たちが集まって競争だと言わんばかりに街中を駆け巡るのだ。

 

「あ、ピカだ!」

「今日は負けないぜ!」

「ピカ!」

 

 ピカは走る。少年達よりも早くその先頭を走る。二足歩行で。

 手加減などせず全速力で走って子供達を突き放す。ルートは日によって変われど、ゴール地点はいつもと変わらない。彼はゴール地点であるトキワジムの屋根にあがると両手を広げて叫ぶのだ。

 

「ピカピ~~~~~~!!」

「ピカ! それはやめろと何度も言っているだろ!!」

「けちグリーンめ」

 

 ただここの責任者であるグリーンに見つかるとよく怒られるのですぐ逃げ出すのだ。

 トキワジムを後にしてイエローの家に戻ってもピカは鍛錬を続ける。今度は片手腕立て伏せといった筋力トレーニングを開始する。

 しかしピカの手は小さいので、傍から見れば腕立てをしているようには中々見えない。

 そんな彼を探しにイエローがやってくると、鍛錬を見守っていたチュチュの隣に座った。

 

「ピカったら最近トレーニングばっかりだね」

『そうなの。その所為で夜もマンネリで』

「何がマンネリなの?」

『あ、イエローにはまだ早い話だったね』

「?」

 

 チュチュの言葉の意味を無垢なイエローにはまだ理解できないでいた。実を言えばレッドの自宅に金髪ロリ本仕込んでいるのは何を隠そうピカなのである。なのでまだイエローは色々と純粋なのだ。

 

「それにしてもピカのこの気迫はどこから来たのかな? 以前から体を鈍らせないためにトレーニングはしてたけど、ここ数か月はすごい追い込みだよ」

『なんでもね? いきなり危機感を感じたんだって』

「危機感?」

『うん。看板ポケモンとしての立場が奪われるとかないとか』

 

 またしても言葉の意味が分からずに首を傾げる。ピカといいレッドさんといい、彼らはたまに自分達が理解できないことを言ってくるので困ったものだとイエローはため息をつく。

 

「それであれなんだ」

『そ。でも、イエローも最近トレーニングしてるよね?』

「うん。守られてばかりだから自分の身は守れるぐらいにはね。ボクって力を使い過ぎると眠くなるから、できるだけもっと力を使えるようにしようとがんばってるんだ」

『まあ、頑張った結果がアレだけど』

「言わないで……」

 

 イエローは思い出したくないのか両手で顔を覆った。チュチュは彼女の肩を優しく叩きながら同情していた。

 

 

 

 




シンオウ編はあと三話(唐突)

今回ご要望があったので、一応アンケートを取ってその反応で設定集というかキャラ紹介?をキリがいいところで出したいと思います。
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