中井さんありがとう! フラ――ッシュ!
諸君らはカントーのとあるとこに無人発電所と呼ばれる建造物があるのはご存じだろうか。そこはその名の通り発電所であるのだが、一体どういう目的で建てられたのかまったく不明なのである。建造時期もそれなりに古く、今では知っている人間はほとんどいない。
そもそもあそこ一つでカントー中の電気が賄えるかと言えば分からない。現在は各都市に発電所はあるし、最悪電気ポケモンで発電してたりもしている。
それで何がそこにあるかと言えば、施設はほぼ当時のままの形で残っている。動力は電力で、つまり電気があればいい。無人になったことで周囲にいた電気ポケモンが集まって気づけば多くの電気ポケモンの住処となってしまったのだ。
そして、そこは伝説のポケモンであるサンダーの住処ともなっている。
なぜそんな話をするか。それは簡単である。なにせ、
「いま私はその話題の無人発電所に来ているからです!」
「ピカピカ!!」
「やっぱピカは張り切ってやがるな」
ぱちぱちと拍手しているピカチュウは可愛いと思った。こほんと咳払いしてレッドはマイクを持った振りをしながら叫んだ。
「ついでに新しく入ったイかれたメンバーを紹介するぜ! 自転車を受け取るついでに、ハナダの洞窟ブートキャンプで鍛えたカメックス!」
「ガメェ!」
「あとなんかサイクリングのレースでなぜかいて、ポケモンのふえが無くてもなんとかなって捕まえたニューフェイスのカビゴン!」
「zzz」
「おらぁ起きろ!」
「ごふ!」
あのカビゴンですらレッドの一発で起きてしまうのだから末恐ろしいとポケモン一同は心に思った。
レッドはずらりと並んだ手持ちのポケモンたちを見て誇らしげに胸を張る。
「にしても。気づけば6匹集まったな。スピアー、ピカチュウ、リザードン、フシギバナ、カメックス、カビゴン……。うーん、バランスいいんだかこれはもうわかんねぇな」
まぁ一部を除いてレッドの手持ちまんまだから特にこれといって問題はないのではないかと勝手に納得している。それに戦うポケモンは6匹だけど、手元に持ってていいポケモンに制限はないから。なにせ、マチスはあんなにポケモンを従えていたんだから平気だと思ったからである。
「さてと。改めて本日のメニューはカビゴンの集中鍛錬とサンダー捕獲でお送りいたします」
「マスター、おいら寝てたいっす」
「うるせぇ、やれ」
「うっす」
カビゴンが普通に喋っていることなどお構いなく、レッドら一行は発電所の中へ進んでいく。中には案の定コイルやレアコイル、マルマインといったカントーの電気ポケモンばかりだ。エレブーもいるが、それならエレキブルぐらいいてもよくねとレッドは思う。
「ピカは発電所のブーストでかなり強化されてるからピカとスパーリングだな。特にカメックスは電気に慣れさせておく必要があるし、まぁ10万ボルトを10回ぐらい耐えれば問題ないだろ」
「ガメガメ!」
「お前のそのやる気、イエスだね! じゃあカビゴンは一人で野生のポケモンを倒すんだぞ」
「……一人か、やったぜ」
「あ、どうせサボりそうだからスピアーが付き添いで頼むぞ。手を抜いたりしたら容赦なく刺していいから」
「ガーンだな」
両手をつくカビゴンに早速スピアーが喝を入れるのを横目にレッドは施設の奥へと歩き出す。それをリザードンとフシギバナが心配そうにたずねる。
「リザァ?」
「バナナ」
「ん? 一人で平気かって。大丈夫だって安心しろよー。最近、電気には耐性がついたからな。じゃ、行ってくる」
シュッと手を振りレッドはサンダーの下へ駆け出した。
道中のポケモンはやはり野生のポケモンだけあって感覚が研ぎ澄まされているのか、レッドの力量をすぐに察知し隠れるか、遠目に見るだけで手を出してはこなかった。
歯応えがないなと素直に思った。ハナダの洞窟のやつらのが殺る気で溢れていたというのに。これだから最近のポケモンは軟弱だ。と、おっさんみたいなことを口に出すレッド。
「近いな」
一度死んだからなのか、妙な能力を身に着けてしまったレッド。今もおそらくサンダーが発する電子の反応を肌で感じている。こちらが気づいているということは恐らくサンダーも気づいているはずで、現に逃げないのは待っているからだろうか。
まぁ行けばわかるか。
レッドは歩みを早め、かなり大型の機械があるフロアにサンダーはいた。
「ギャーオ!」
「うぉ! 生で見るとすげー尖ってるってはっきりわかんだね」
レッドの余裕そうな態度が癇に障ったのか、サンダーは容赦なく『でんじほう』を放った。例えるならそれは巨大なエネルギー弾で、レッドなど易々と飲み込んでしまう。それを見てサンダーは高らかに吠えた。
「ギャーオ! ……ンダ⁉」
「ほう。さすがサンダーのでんじほう。中々の威力ですね。だがしかし、俺に電気技は止めた方がいい。なにせ……」
バチバチとレッドの周囲がはじけ、先程の攻撃でえぐれた床の破片が宙に浮かんでははじけ飛んでいく。彼は帽子を外して腰にかける、すぅーと息を吸って吐き、ふんと力を入れた瞬間謎のオーラを纏い始めた。
「俺にエネルギーを与えるだけだからな」
「ンダーwwwww」
「さぁ、ポケモン解体ショーの始まりや」
レッドは実験のために持っていたイシツブテを構え、先程のサンダーのような巨大なエネルギーを生み出し、
「イシツブテ砲!」
という名の『でんじほう』もどきが放たれた。超スピード? なそれは視認することすら容易ではなく、さらに二人の距離はたったの数メートルほど。サンダーが避けられるわけなかったのである。
サンダーはその場に倒れアニメのごとく目を回していた。
それを見ても容赦なくレッドはボールを投げた。
若い頃はボタンを連打すれば捕まると思ってました……。
そんな遠い昔のことを思い出しながらゲットしたサンダーを手に相棒たちがいる場所まで戻るレッドは、早速サンダーを紹介した。
「新しい仲間を紹介する! サンダーです!」
「ギャーオ!」
サンダーの伝説ポケモンとしての威圧がレッドのポケモンたちを襲う!
「……(槍をチラつかせるスピアー氏)」
「ピカぁ?」
「リザぁ?」
「バナぁ?」
「ガメぇ?」
「なんだァ?てめぇ……」
「……ぎゃーお……」
高速でレッドパーティーのヒエラルキーが決まった瞬間であった。
場所は変わってシオンタウン。別にそらをとぶを持っていないが、リザードンは空を飛べるんだからいけるだろの精神でレッドは簡単にたどり着いた。
予想通りシオンタウンは不気味で、あのBGMが脳裏に聞こえてきそうな雰囲気だ。ふとポケモンタワーを見上げた。すると、タワーの中腹ほどに大きな穴が開いているのが目に入る。
もしやと思いレッドはこの町の住民ぽい人にあることを聞くために声をかけた。
「すみません。フジ老人の家はどこですか?」
「フジさんの? なら──」
教えてもらった人に礼を言って別れたレッドは彼の家を目指した。
フジ老人の家の前について扉をノック。すると年寄りの声とともに扉が開いた。
「はて。誰だったかな?」
「あ、初めまして。自分はレッドと言います」
「レッド……レッド……ああ、リーフちゃんが言ってたのは君のことか」
「リーフをご存じで?」
「ああ。彼女のお兄さんのグリーンくんも知っておるよ。まぁ立ち話はなんだ。中へ入ってくれ」
彼の淹れたお茶を飲みながらレッドは事の経緯を知った。
なんでもグリーンがポケモンタワーに行って戻らず、心配したリーフが追いかけたあとに二人してボロボロになって帰ってきたのだと。
「それで二人が戦ったのがロケット団だと?」
「そう言っておったよ。いつの時代も悪党は存在するものだねぇ……」
「……そうですね」
レッドは悩んでいた。
フジ老人は初代においては意外な重要人物。ミュウを発見し、その細胞からミュウツーを作り出した張本人。しかしそれはゲームでの話で、実際にこちらでは違うのかもしれないという可能性もあるからだ。だが彼はここシオンタウンにいる。それが答えなのではないかとも思えてしまう。
悩んだ末にレッドは、フジにたずねた。
「フジ博士。あなたはミュウツーを作りましたか?」
「……何かの間違いだ。私は科学者ではないよ」
「俺知ってるんですよ。グレンにある今ではポケモン屋敷と呼ばれている建物が博士のものだって。それとカツラとは友人同士だってことも」
「どうしてそれを……」
「言ったでしょ、知ってるって。だから教えてほしい」
ふぅと息を吐いたフジは覚悟を決めたのかゆっくりと語り始めた。
「……ミュウにはすべてのポケモンのDNAがあることは知ってるかね?」
「ええ」
「それはつまり、そのDNAを一つ一つ解析すれば理論上はすべてのポケモンを人造的に生み出せるということになる」
「確かにその通りです」
「だが私はある欲望に駆られた。誰も知らない、私だけが見つけ生み出したポケモンを作ろうと」
「それがミュウを模して作ったミュウツーですか?」
「いや、違う」
フジは否定し、続けた。
「私は新しいポケモンを生み出す理論を考えたにすぎない。ミュウツーという名前も仮につけた名前なんだよ」
「では誰がミュウツーを……まさか」
「察しの通りだ。カツラくんだ」
「まさか、博士もロケット団にいたのですか?」
「それはわからない。私はある組織の援助の下ミュウを見つけ、そのあとその組織の施設で研究をしていた。そしてあの理論を完成させた瞬間、今までどこかに失くしていた善の心が戻った。それで怖くなった私はすべてを捨ててここにいるというわけだ。だが君はこれを聞いてどうしたいんだ?」
「いえ。ただ確認しておきたかっただけです。すみません、無理を言って」
「怒る権利など私にはないよ」
湯のみをテーブルに置きレッドは立ち上がる。聞くべきことは訊いた。なら、ここには用はなく次の目的地であるタマムシを目指すだけだ。
「行くのかい」
「はい。お茶ごちそうまでした。……あ、最後に聞きたいことがあるんですが」
「ん? なんだね」
「最果ての孤島の場所って覚えてます?」
「ミュウかい? といっても、偶然あそこにミュウが居たというだけで常にいるわけではない。それに当時の資料はすべて処分してしまったんだ。すまないね」
「そうですか。ま、機会があったら自分で見つけることにします。俺はトレーナーですから。では、お元気で」
幻のポケモンミュウ。正規の手段で手に入る方法は限られていて、その一つが最果ての孤島だった。しかし、彼の言う通りミュウがそこにいるとは限らない。現にミュウはマサラタウンにいたのだ。ふとレッドは空を見上げた。もしかしたらこの雲の上にいるかもしれない、何故かそう思えた。
8番道路を自転車で走るレッドはタマムシへと通じる地下通路を目指していた。ヤマブキシティに関してはやはり通行止めになっており、強引に突破することも考えたが今はまだその時ではないと判断し思いとどまった。
そんな時だ。前方に自分と同じぐらいの少女がこちらに声をかけているのに気づいた。
「そこのお兄さんー! ちょっと寄ってかなーい?」
綺麗な声をしているなと思ったのが第一印象。レッドはつい気になって彼女の前で自転車を止めた。
「実は私、ポケモンに役立つ便利な道具をたーくさん持ってるの。よかったら見ていかない?」
そう言いながらグイグイと迫る彼女。その時レッドはある既視感を抱きつい口に出した。
「……リーフ?」
目の前の少女は同じマサラで育った幼馴染にとても似ていた。
目の前にはある廃墟が見えた。大きく、辺りは気味が悪い雰囲気を纏っている。そこに一人の大柄の男が何かわめているように見えた。あれは、知っている人間だ、多分マチス。
ということは、これは予知夢か。
私はエスパーあるいはサイキッカーと呼ばれる女だ。だからなのか私は普通の夢を見ない。見るとしたらそれは今のように予知夢だ。生まれてから夢は一度も見たことはない。すべてが予知夢。
原因は分からない。寝ている間に無意識に力が働いているのかもしれないと幼い頃は思ったが、今ではどうでもいいことだと割り切るようになった。
するとビジョンが変わった。
これは珍しいこともあるものだ。
ナツメは予知夢の中で不敵に笑みを浮かべる。いつもは一つの映像だけだなのだが、極稀に二つ目を見ることがあり、それがいま起きている
そこは……広い場所だ。なんとなく知っているような場所。先程と違って景色がぼやけている所為かハッキリと見ることがでない。
あれは……トレーナーか?
そうなると誰かとバトルをしているのだろうか。ナツメはその相手は誰なのかと疑問を抱くと、それに呼応するかのように景色が変わる。
──私だ。
先程とは比べ物にならないぐらい鮮明としていた。だから間違いなく目の前に映っているのは自分だった。目の前にいるナツメはとても柔らかい表情をしていた。その光景はとても受け入れがたい光景だった。
ありえない、あんな顔をするわけがないと。
だが、その光景を羨ましく思っている自分も確かにいるのもまた事実であった。
「最悪の目覚めだ……」
意識が覚醒し寝ている体を起こしての第一声がそれだった。
ナツメは首を振りベッドから出てシャワーを浴びてから身支度を整え、手持ちのポケモンであるユンゲラーの補佐のもと、ボスがいる場所へとテレポートした。
一度死んだからというパワーワードには草生えますわ。
あと感想などでヒロインのことを言われるのですが、ハーレムタグ付けた方がいいですかね。
個人的に例えるとシティーハンターの獠と香、うる星やつらであたるとラム、コブラだと……あ、死ぬわ。え、例えが古い? そんな感じでハーレムを意識しているわけではないんだけど。
意見を貰えると助かります。